『サガ』と佐賀の魅力を語るトークショー

 2014年3月13日~16日の期間、東京・六本木ヒルズで行われたイベント“ロマンシング 佐賀 LOUNGE”。スクウェア・エニックスの『サガ』シリーズと、佐賀県の夢のコラボレーションで話題を呼んだこのイベントの最終日、トーク&ライブイベント“ロマンシング 佐賀 プレミアムナイト”が開催された。
※“ロマンシング 佐賀”初日のリポートは→こちら

 会場には、抽選で選ばれたスクエニメンバーズの100人のファンが来場。“ロマンシング 佐賀”キーマンたちのトークと、伊藤賢治氏のライブが織りなす、まさに“プレミアム”な夜を堪能した。本記事では、写真を交えて、このプレミアムナイトの模様をリポートしていこう。

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■『サガ』と佐賀を人々の心に留める試み

 最初に登壇したのは、スクウェア・エニックス エグゼクティブプロデューサーの河津秋敏氏と、佐賀県知事の古川康氏。『サガ』と佐賀県の顔であるふたりが並び、“ロマンシング 佐賀”を実現できたことの喜びを改めて語った。

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▲ゲームはプレイする人がいて初めて成立するもの。これからもファンの皆さんに、北極星のように我々を導いてもらいたい、と語る河津氏。
▲今回のコラボを通じて、佐賀県にも関心をもってもらえたらうれしい、と古川知事。“ロマンシング 佐賀LOUNGE”の来場者は、予想を超える約7000人で、入場までファンを待たせてしまうこともあったが、「ゲーム(の発売)を待っている身からすれば、1~2時間はどうということはない」というたのもしい言葉をもらった、というエピソードを披露した。

 続いて、今回のプロジェクトのリーダーを担当した、スクウェア・エニックスの市川雅統氏(『エンペラーズ サガ』プロデューサー)と、佐賀県 FACTORY SAGA 金子暖氏が登場。河津氏、古川氏を交え、今回のコラボが実現にいたるまでを振り返った。

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▲市川氏、河津氏の『サガ』チーム。
▲古川氏、金子氏の佐賀チーム。

 こちらの記事でも紹介したとおり、以前お互いからラブコールを送りながら、なかなかコラボを実現できなかったというスクウェア・エニックスと佐賀県。今回、『サガ』シリーズが生誕25周年を迎えるにあたり、河津氏に「なんかやれ」と言われた市川氏が佐賀県の観光連盟に電話をかけたことが、“ロマンシング 佐賀”の始まりとなった。

 金子氏は、観光連盟スタッフから「スクウェア・エニックスの方から電話があった」という連絡を受け、その日に企画書を制作。さっそく翌日、市川氏に連絡を取り、プロジェクトが動き出した。河津氏も古川氏も、ラブコールを送ったのはかなり昔だったため、実現に向けて本格的に動き出したときは、ちょっと驚いたという。

 そしてついに開催された“ロマンシング 佐賀LOUNGE”。市川氏は、「アンディ・ウォーホル展の横に、小林智美さんの絵が並んでいるのを見たときは、やってやった! と思った」、金子氏は「佐賀県のよさと『サガ』シリーズのよさを、本気で表現できた。有田焼大皿の封を開けたときは鳥肌が立った」とコメント。古川氏は、“佐賀はいい街”という情報を、人々の心に引っ掛かる窓をどう作るかが工夫すべきところだ、と述べ、今回『サガ』シリーズをフックにして、佐賀県を心に留めてもらえたことへの手ごたえを語った。

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▲佐賀県のいちご“さがほのか”を使ったコラボメニューも販売された“ロマンシング 佐賀LOUNGE”。古川知事は「これだけ覚えて帰ってください」と、いちごの正しい食べかたを紹介。その食べかたとは……まずヘタを取り、ヘタのあるところから食べていく。とがった部分は最後に食べる、という食べかた。いちごのおいしさは、そのとがった部分に凝縮されているからとのことだ。

■花束を持って小林智美氏が登場

 “ロマンシング 佐賀LOUNGE”の目玉と言えば、『サガ』シリーズのイラストレーションを担当している小林智美氏が絵付けした有田焼大皿。ここで、小林氏が登壇し、絵付けを行ったときの思い出を語った。

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▲『サガ』25周年のお祝いとして、河津氏に花束を渡す小林氏。お花屋さんに“金髪で腰まで髪がある恐ろしい人で、優秀な司令官で、でも妻への配慮を怠らない人”をイメージして作ってほしい、と電話をかけたところ、お店の人にゲラゲラ笑われ、「お店に来てお花を選んでください」と言われたのだとか。そんな逸話を持つこの花束が表しているキャラクターとは……『ロマサガ』のナイトハルト様! 情熱的なボルドーの色が印象的です。

 佐賀での旅を通じて、佐賀県のすばらしさを知ったという小林氏。とにかくごはんがおいしくて、とくに、小高い山の上の洋食屋さん(カフェれすとらん こぱん)の料理が絶品だったという。ハンバーグカレーもパフェもものすごくおいしく、お店で使われている有田焼の器もすばらしかったそう。この“こぱん”については、古川知事も「おいしい」と太鼓判を押していた。

 絵付けをしているときの集中力がものすごく、周囲の人々は声をかけられなかったぐらいだという小林氏。小林氏は絵を描くのが趣味でもあり仕事でもあるので、とても楽しかった、と振り返った。ただ、大皿は腰を100度ぐらいに曲げて、立ったままで絵付けしなければならなかったので、腰はちょっと疲れてしまったそう。

『ロマンシング 佐賀』 小林智美氏 直筆の有田焼 制作風景

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▲“明けの明星 -いつか旅するものへ-”と名付けられた大皿。小林氏は、『ロマサガ2』最終皇帝ふたりのことを、“明けの明星”と呼んでおり、ふたりが遠くを見つめて、「つぎはあそこへ行ってみようか」、「みんなで行こうよ」と語っている情景をイメージして絵を描いたとのこと。

 佐賀県の焼き物は、かつてとても大切にされており、その技術が外に漏れないように、陶工たちを山に閉じ込めて作らせていたという。佐賀県の大川内山には、外の大地を知らずに死んでいった陶工たちのお墓がたくさん並んでいるそうだ。いまから400年前、有田は初めて磁器を作ることに成功し、外国に輸出し始めた。外国の人々はどうすれば日本の磁器を再現できるのか手法がわからず、日本の磁器は宝石のように扱われていた。ようやくそれから70~80年経って、ドイツのマイセン社が磁器の生産に成功。そう、有田の焼き物は、世界が真似をしたがる、当時のリーディング産業だったのだ。

 日本の産業が、世界からマネされることは少ない。焼き物は、日本のリーディング産業だった。そして、もうひとつリーディング産業を挙げるとするならば“ゲーム”だ、と古川知事は語る。有田焼という過去のリーディング産業と、ゲームという現代のリーディング産業のコラボレーションが“ロマンシング 佐賀”である、と古川知事が述べると、会場では感嘆の声とともに、大きな拍手が巻き起こった。

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▲コラボ有田焼大皿を担当した“しん窯”の橋口博之氏。小林氏の絵に合わせる模様がなかなか浮かばず、朝5時にすとんと降りてきた、という。今回の大皿に描かれている“菊唐草”という模様は、焼き物が全盛期のころにデザインされたものだとか。
▲ゲームボーイのころからの『サガ』ファンであり、コラボに参加できて感無量だったという“幸楽窯”の徳永隆信氏。ドット絵と有田焼のコラボレーションが好評でうれしい、と笑顔で語った。

■伊藤賢治氏がピアノ演奏を披露

 ここで、『サガ』シリーズの楽曲を多数手掛けている、作曲家の伊藤賢治氏がゲストとして登場。『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』から、「オーバーチュア」を披露し、来場者をマルディアスの世界へと誘った。

 古川知事は、七ツ釜の海のような、美しいが、荒れ狂う波も予感させるような曲だと称賛。河津氏は「寝てないらしいんですが、がんばって弾いてくれました」とコメントした。

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▲河津さんからの無茶振りを受けながら、曲作りをしていたことを振り返る伊藤氏。

 楽曲についての思い出を聴かれた小林氏は、『サガフロ』アセルス編のラストバトルで、寵姫がぐるぐる回りながら伊藤氏の楽曲が流れる様がすごく耽美で、眩暈がした、と述べた。小林氏はアセルス編がお気に入りで、伊藤氏が「佐賀県をイメージした曲は浮かびますか?」と聞かれると、「耽美な曲なんてどうですか?」と薦めていた。

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▲佐賀県庁はお昼休みに音楽が流れるので、伊藤さんに書いてもらいたいなあ、と金子氏。佐賀空港の曲を書いてもらうのもいいな、と盛り上がる皆さん。

 また、小林氏が描いた有田焼に合う楽曲は何か? という話題では、河津氏は、「透明感がある曲が似合う気がする」、市川氏は「制作風景の動画で流れている、『ロマサガ2』のオープニングが似合うと思う」と答えていた。

■質疑応答コーナー

 事前にファンから寄せられた質問に、登壇者が答える質疑応答コーナー。ここでは、その一部をピックアップしてお届けする。

――今後の『サガ』シリーズに取り入れたい佐賀ネタはありますか?
河津氏 ワラスボはぜひモンスターにしたいと思ってますね。あれは外せない(笑)。

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▲“ロマンシング 佐賀”サイトで最終皇帝が戦っているのが、エイリアンのモデルと言われる魚、ワラスボ。酒の肴として人気らしい。
▲会場では、干したワラスボが売られていました。

――古川知事と金子さんにお答えいただきたいと思います。『サガ』シリーズとのコラボが決まったときのお気持ちと、今後について、教えていただけますでしょうか。
古川氏 決まったときは、「やった」という気持ちで、いままで会えなかった人に会える、と広がりを感じました。また、僕に似ているドット絵が存在しているので、あれが欲しいなと。自分のものにできるんですか? LINEのスタンプにしようかな、と(笑)。それから、世界中の“SAGA”をいっしょにして、何かできないかなと思っています。
金子氏 決まった瞬間は「やりましょう!」という感じでした。今後については、ゲームは続いていくものなので、コラボレーションも続けていければいいなと思っています。

――小林先生が描かれたキャラクターの中で、とくに思い入れが強いキャラクターを教えてください。
小林氏 描きますと、思い入れが湧いちゃうので、皆思い入れがあるんですけれども、リテイクがあると、さらに頭から離れなくなっちゃったりするんです。それを考えると、ヒューズ(『サガフロ』)かなと思うんですが。カッコいい系ですと、ナイトハルトとか。カッコいい人描くの、すごくたいへんなんですよ。
河津氏 確かに、ヒューズは最初はカッコよすぎたので、直していただいたら、くずしすぎちゃって……というので、行ったり来たりしましたね。

――伊藤さんは本当はバトル曲が苦手とうかがいましたが、苦手なものを求められるのはプレッシャーなのでしょうか。また、煮詰まったときのリフレッシュ法を教えてください。
伊藤氏 はっきり、プレッシャーですね(笑)。ピアノ曲から音楽を始めたので。ロッカーじゃないですし、ああいうスピリッツもないですし。毎回疲弊しながら作っていますね。前作よりも上、またその上を自分の中で目指さなくてはいけないのもプレッシャーです。煮詰まったときは、バラエティー番組を撮りまくってそれを見ます。「水曜どうでしょう」が好きです(笑)。

――町長(『ロマサガ3』)を懲らしめたいです。
河津氏 無理ですね(笑)。本当に厚かましいですから。今後、町長が出てくるかはわかりませんが、新しい作品を作っていこうと思いますので、よろしくお願いします。

■『シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール』に『サガ』シリーズの名曲が登場

 質疑応答の後は、サプライズ発表が! こちらの記事で紹介したとおり、『シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール』に『ロマサガ』の曲が追加コンテンツとして配信されることが明らかになった。今回、判明した曲は「下水道」と「四魔貴族バトル1」だが、ほかの曲も配信が予定されているようだ。

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▲伊藤氏は「とても光栄」、河津氏は「激ムズであることを期待します」とコメント。伊藤氏は「でも、選ばれたの「下水道」なんですよね?」と突っ込んでいた。

■伊藤氏のピアノの旋律とともにフィナーレ

 一夜限りのプレミアムナイトもいよいよフィナーレへ。金子氏は「この後も、皆さんと出会えるような企画を展開していきますので、よろしくお願いします」、市川氏は「皆さんの声がつぎの作品につながっていきます」と、来場者にメッセージを送った。

 そして最後は、伊藤氏によるピアノ演奏。“ロマンシング 佐賀LOUNGE”のスタッフから、来場者は愛のあるファンの方々ばかりだったこと、これからも佐賀県と『サガ』、ファンが幸せな形でつながっていけたらいいと思ったということを聞いた伊藤氏は、最後は1曲だけ演奏予定だったところを、ファンへの想いを込めて2曲に変更! 「ポドールイ」と「オープニングタイトル」という、美しい旋律の2曲を弾き、夢のようなイベントを締めくくった。

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 “ロマンシング 佐賀LOUNGE”は幕を閉じてしまったが、コラボプロジェクト“ロマンシング 佐賀”はまだまだ続く。コラボグッズの一部は、ゆくゆくはスクウェア・エニックスのe-STOREで販売されるようなので、続報を楽しみに待っていよう。