こんなに難しいシミュレーションRPGは久々

 うーむ……また死んだ。あ、こんにちは、北口徒歩2分です。僕はシミュレーションRPGが好きで、名作と呼ばれているようなタイトルは、けっこうプレイしています。腕前にそこまで自信があるわけではないので、根を詰めて縛りプレイをするようなことはないですが、ふつうにノーマルやハードくらいの難度ならクリアーできます。だから、『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』の開発中のバージョンを難度ノーマルで始めたときも、「ま、そんなに詰まることはないでしょ」とか思っていたんですよ。そうしたら、仲間が死んでゲームオーバーになったんです。それも、チュートリアルが明けた最初のステージで。

 いや、さすがに面食らいました。「死んだwwwwwwwwww1面でwwwwwwwwww」と思わず草を生やしちゃったくらいです。だって、ふつう1面ってそんなに難しくないはずなんですよ。なんてったって最初ですし、「そろーりそろーり、ここからゲームに慣れてくださいね~」ってなもんでしょうから。そうしたら開幕で死亡して、もう驚いちゃったわけです。そこで「このゲームはひょっとして難しいのかもしれない」とフンドシを締め直し、なんとか最初のステージをクリアーしたものの、そこからもゲームオーバーの連続。6面進むのに、7時間はかかりました。ちなみに、序盤のマップはすんなり行けば、それぞれ10分ほどでクリアーできます。このことからも、僕がどれだけ死にまくったかがわかりますね。

 このように、本作『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は、最近のゲームとしてはまれに見るくらいの高難度を誇っています。シミュレーションRPGをやったことのない人が手を出したら、心をバッキバキに折られるレベルです。では、その要因は何なのか。

『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_01
▲ちなみに、角川ゲームスの方にお話を聞いたところ、「えっ? ノーマルでやってらっしゃるんですか? 私は難しくてイージーにしました」とおっしゃっていました。マジかよ。

AIが賢い→そりゃシビアな戦いになるって

 ひとつは、“コンピューターが賢い”ということ。シミュレーションRPGの敵って、なんだかんだ言ってけっこう優しかったりするんですよ。たとえば、1撃で倒せるユニットがいても敢えて見逃してくれたりとか。あるいは、こちらが有利な布陣を敷いて待っているとホイホイ突っ込んできてくれたりとかもそうですね。
 
 でも、本作にはそういったことがない。ゴブリンの群れでさえ、こちらの弱いユニットを確実に狙ってきます。「ちょっと体力が減っているけど、前線に出してもまあ大丈夫だよね……」なんて甘えは一切通用しません。よほど運がよく、攻撃を回避しまくったといった奇跡が起こらない限り、“だろう運転”をすると、ほぼ確実に死にます。つねに最悪のケースを想定する“かもしれない運転”を心がける必要があるんです。ただ、逆の見かたをすると、“AIが最適な行動を取る”ということは、“予想外のケースが少ない”ということでもあるので、上級者であれば、コンピューターの動きを制御しやすいのかもしれませんね。

『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_02
『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_03
▲大挙して襲ってくるゴブリン。やめてくれ。

戦いはつねに二手三手先を読めと少佐は言いました。でも先を読むのが難しいんです

 難度が高いもうひとつの理由に、ユニットどうしが連携して同時に行動する“戦術リンク”の存在が挙げられます。本作は基本的にターン制で敵と味方が交互に行動するので、本来であれば未来の状況を予測することは、そこまで難しくはありません。しかし実際はと言うと、戦術リンクが発生することで、状況がガラリと変わることがままあるわけです。詳しくは、下の例をご覧ください。

『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_04
▲戦術リンクを発生させると、味方どうしが線で結ばれる。敵味方の行動順は画面上部に表示。

■イフ→ゴブリンA→ヴァシリー→ゴブリンB→ジーク→ゴブリンC→アンカ→ゴブリンD→ゴブリンE→ゴブリンF→イフ……

 主人公のイフたちが、ゴブリンの群れと戦っている局面のターンを抽出したものです。戦術リンクを使わなければ、このまま順番にターンが回っていくのですが、戦術リンクを起こすと、たとえば以下のように変わります。

■【イフ+ヴァシリー+ジーク+アンカ】→ゴブリンA→ゴブリンB→ゴブリンC→ゴブリンD→ゴブリンE→ゴブリンF→イフ……

 味方の行動トリガーに対してほかのキャラクターを呼応させるかどうかは自由に選ぶことができるのですが、今回はイフの行動に全員を呼応させてみました。この場合、味方4人が同時に行動した後、ゴブリンの行動が続くことになります。で、仮に4人の一斉攻撃でゴブリンを2体倒せたとすると……。

■ゴブリンC→ゴブリンD→ゴブリンE→ゴブリンF→イフ→ゴブリンC→ヴァシリー→ゴブリンD→ジーク→ゴブリンE→アンカ→ゴブリンF……

 こうなります。前半部分に注目してほしいのですが、ゴブリンの行動が続いていますね。ここでゴブリン4匹が戦術リンクで同時に行動すると、またイフからのスタートになるのですが、ゴブリン側がちょっと工夫するとどうでしょうか。たとえば、ゴブリンCからゴブリンEまでが同時に行動したとしましょう。

■【ゴブリンC+ゴブリンD+ゴブリンE】→ゴブリンF→イフ→ゴブリンC→ヴァシリー→ゴブリンD→ジーク→ゴブリンE→アンカ→ゴブリンF……

 上のような感じですね。すると、その直後は以下のようになります。

■ゴブリンF→イフ→ゴブリンC→ヴァシリー→ゴブリンD→ジーク→ゴブリンE→アンカ→ゴブリンF……
 
 またゴブリン側の行動ですね。ここでさらに工夫をして、ゴブリンF、D、Eの3体で連携します。

■【ゴブリンF→ゴブリンD→ゴブリンE】→イフ→ゴブリンC→ヴァシリー→ジーク→アンカ……

 敵を倒して有利だと思っていた状況から一変、いきなりきびしい場面になりました。ゴブリン側は、3体による連続攻撃を2ターン連続でくり出しただけではなく、イフのすぐ後にゴブリンCの行動を残すことによって、ゴブリンCを起点に、再び戦術リンクが組めるようにしているのです。しかも、戦術リンクには、“複数の味方で連携するほど、ダメージやクリティカルヒットの発動率がアップする”という効果もあります。こんな集中攻撃を立て続けに食らえば、いかに硬い盾役といえども、耐えるのは難しいでしょう。

『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_05
▲死、5秒前。
『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_06
▲中央のロボットっぽいのが味方です。これムリじゃね?

できないことがやれるようになる楽しみ

 このように、『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は率直に言って、シミュレーションRPGの初心者には、あまりオススメできません。よほどやる気のある人なら別ですが、戦いに挑む“覚悟”がなければ、心を粉砕されて終わるでしょう。自分も実際に、心が折れそうになった瞬間が何度もありました。でも、悔しくてつい、ゲームオーバーになっても再挑戦してしまいます。
 その理由は、“ゲームがおもしろいから”にほかなりません。「ここでゴブリンが行動するから……アンカは連携させずに残しておかないとな……」なんて考えつつ、うっかりアンカも連携させてしまい、集中攻撃を受けて死亡なんてことも多々ありました。しかし、それは自分の戦略が浅はかだからであって、しっかり考えられるようになると、そんなポカミスもなく、ピンチを容易に切り抜けられるようになります。個人的に、アクションゲームなどで達成感を得られる瞬間は、自分の技術の向上を感じられたときだと思うのですが、それに似た感覚を味わわせてくれるのです。

『NAtURAL DOCtRINE(ナチュラル ドクトリン)』は“一見さんお断り”の超骨太シミュレーションRPGだった!【プレイインプレッション】_07
▲各キャラクターが持つスキルを使いこなすことが、勝利への絶対条件!

シミュレーションRPGが好きなら絶対にやるべき

 というわけでこれまで長々と述べてきましたが、本作は、シミュレーションRPGが好きな人にはぜひ遊んでみてほしいタイトルです。戦術リンクに加えて、1マスに最大で4体までユニットが入れたり、FPS視点と俯瞰視点を使い分けたりと特徴的なシステムが多数盛り込まれており、新たなシミュレーションRPGを感じられることは間違いないでしょう。しかも、再三再四にわたって書いている通り、遊び応えは言わずもがな。それに加えて、ほかのプレイヤーとの対戦や協力が楽しめるマルチモードも用意されていますから、もはや一生遊べると言っても過言ではありません。いや、それは過言かもしれませんが、とにかくシミュレーションRPGが好きなら、触れないのは本当にもったいない! 死にまくっても心が折れないような猛者の方、我こそはシミュレーションRPGの達人であるという方は、ぜひ挑戦してみてください。