パトリック氏のJRPGへの熱い思いから実現した『チャイルド オブ ライト』

 本日2013年10月20日、東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催された“UBIDAY2013”。本日正式に日本語版の配信が発表された、プレイステーション4/Xbox One/Wii U/プレイステーション3/Xbox 360/PC用ダウンロード専用ソフト『チャイルド オブ ライト』のステージが行われた。最後に、クリエイティブ・ディレクターのパトリック・プルーデ氏へのインタビューも敢行。
 ステージには、『チャイルド オブ ライト』のクリエイティブ・ディレクターのパトリック・プルーデ氏と、ローカライズ・ディレクターの岩本けい氏が登壇。岩本氏の通訳をはさみながら、パトリック氏のJRPGへのリスペクトが語られた。

日本産RPGへのリスペクトから生まれた2D RPG! 『チャイルド オブ ライト』ステージリポート【UBIDAY2013】_01
日本産RPGへのリスペクトから生まれた2D RPG! 『チャイルド オブ ライト』ステージリポート【UBIDAY2013】_05
▲ローカライズ・ディレクターの岩本けい氏(右)が通訳しながら、セッションは進行した。
日本産RPGへのリスペクトから生まれた2D RPG! 『チャイルド オブ ライト』ステージリポート【UBIDAY2013】_04
▲『チャイルド オブ ライト』クリエイティブ・ディレクターmパトリック・プルーデ氏。

 本作は、ユービーアイソフトのモントリオールスタジオが開発を担当している2D RPG。『ファークライ3』や『アサシン クリード』シリーズに携わってきたパトリック氏をはじめ、開発チームには『レインボーシックス ベガス』や『Just Dance Wii』などの開発を手がけたスタッフが所属しているそうだ。チームの規模は小規模ながら、“Ubi Art Framework”という革新的なゲームエンジンが、パトリック氏の“JRPG愛”の実現にひと役買っているという。
 このゲームエンジンでは、水彩画のような表現をそのままゲーム画面として表現したり、「『ファイナルファンタジー』のパッケージに使われた天野喜孝さんイラストがそのままゲーム画面にする」(パトリック氏)ことが可能になった。
 本作のゲームの柱となるのは、“アート”と“ゲームプレイ”。“アート”に属するものとしては、おとぎ話(それも『グリム童話』などの古典的なもの)をモチーフにしたようなストーリー、水彩画のようなグラフィックの表現、そして音楽。JRPGのように、メインストーリーを重視し、主人公の少女が成長していく様子が描かれる。また、音楽は通常のステージではピアノをベースとした音楽が流れていて、戦闘になると壮大なオーケストラ音楽で盛り上げる。パトリック氏いわく「チームには『ファイナルファンタジーX』でこういう使いかたをしているシーンがあるから、ぜひそのようにしてくれ」と依頼したそうだ。
 “ゲームプレイ”には、パトリック氏の大好きな『グランディアII』からヒントを得たという時間をベースにしたターン制のバトルのほか、画面上を自由に飛び回れることや補完しながらゲームを進める協力プレイを上げた。この協力プレイは、『マリオギャラクシー』の協力プレイを進化させたものを目指しているとのこと。
 続いてトレーラーが流された。このムービーは、実際のゲームの映像によるもので、システムがわかるような最新映像も来週以降には公開される予定。ゲームの配信日も、2014年のなるべく早い時期に配信できるようにがんばっているそうだ。

日本産RPGへのリスペクトから生まれた2D RPG! 『チャイルド オブ ライト』ステージリポート【UBIDAY2013】_02
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▲神秘的なビジュアルとともにステージは進む。最後にはドラゴン(?)のような敵が……。

 ひと通りプレゼンが終わると、簡単な質疑応答が行われた。まず、プレゼン中にも話題となった『グランディアII』をはじめ、JRPGが好きだというパトリック氏に対し、ほかにどんなタイトルが好きかという質問があった。
「本当に好きなタイトルは『ファイナルファンタジータクティクス』、『オウガバトル64』です。また、今年のベストゲームは『グランド・セフト・オートV』……ではなく、ニンテンドー3DSの『ファイアーエムブレム』ですね」(パトリック氏)
 また、JRPGと海外のRPGの違いについては、「まず構造的な違いがあると思います。海外のRPGでは、たとえば『The Elder Scrolls V: Skyrim』のように、メインストーリーは短いが、サブクエストが非常に多く、さまざまな方向にストーリーが広がります。一方、JRPGは、メインストーリーやキャラクターが重視されているのだと思います。僕が最近プレイしたタイトルだと、『二ノ国』や『ファイアーエムブレム』、『ディスガイア』などがありますが、昔のタイトルに比べると少しコア向けになったように感じます」とコメントした。
「僕は日本をとてもリスペクトしているので、ここに来られてうれしいと同時に、緊張しています。このタイトルがみんなに楽しんでもらえるように、がんばります。アリガトウゴザイマシタ」(パトリック氏)

おとぎ話とJRPGの融合を目指した『チャイルド オブ ライト』

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 パトリック氏に、取材する機会を得たのでここで紹介しよう。

--パトリックさんは、『ファークライ3』のゲームディレクターを担当していたそうですが、『チャイルド オブ ライト』は雰囲気がまるで違いますよね。ある意味、正反対のテイストを持つゲームを作った理由を教えください。
パトリック おっしゃる通り、『ファークライ3』は、とても暴力的でクレイジーなゲームでしたね。でも、私は小さいころから日本のRPGに触れていて、それをゲームで表現したいという夢がありました。また、『ファークライ3』の開発には600人以上ものスタッフが関わっていたので、巨大すぎるがゆえに息苦しさを感じることがありまして……。今回はあえて小さい規模のゲーム作りにチャレンジしようと思ったのです。
--開発チームの規模はどの程度ですか?
パトリック だいたい30人くらいですね。
--じつに1/20ですね! 『チャイルド オブ ライト』で、おとぎ話の世界とJRPGの要素を融合させたのはなぜですか?
パトリック RPGの多くは、レベルアップなどの成長要素がありますよね? そして、おとぎ話には子どもが成長したり、苦難を乗り越えてハッピーエンドが待っていると、ふたつにたくさんの共通点を見つけました。だから『チャイルド オブ ライト』でふたつを融合させることにしたのです。
--おとぎ話というと、ときに残酷な内容だったりしますが、『チャイルド オブ ライト』のストーリーにもそういう要素は含まれていますか?
パトリック 『ファークライ3』ほど残酷ではありませんが、『チャイルド オブ ライト』にもそういう要素は少しあります(笑)。劇中で“光と闇”について描いているので、たとえば両親が死んでしまった子どもを笑顔に導いたりするシーンがあります。
--話題をゲームプレイに戻しますね。日本で主流のターン制のRPGを欧米で発売することに、苦労はありましたか?
パトリック 僕は、もともと初代プレイステーション時代のRPGなど、日本のゲームで育ってきたのですが、海外ではなかなか同じようなタイプのゲームを作る機会がありませんでした。ただ、ずっと頭の中でアイデアを温めていて、ある日周囲のスタッフにプレゼンしてみたところ、思ったよりも賛同してくれる人が多かったのです。「それならいっそやってみよう」と思い立ち、今回の企画を会社に提案しました。『チャイルド オブ ライト』は、昔のゲームを遊んできて大人になった人が、いまの子どもに向けて開発したゲームです。最近リリースされた『二ノ国』シリーズは、グラフィックが非常に美しい最高のRPGでしたが、私は自分の子どもがベッドに入るまで、家の中でプレイすることができませんでした。最近のRPGはひとりで楽しむものが多いですよね? だったら、自分が子どもといっしょにプレイできるゲームを作ろうと思ったのも、このゲームを企画したきっかけのひとつです。
--ターン制のRPGに協力プレイの要素を持ち込むのは難しかったのでは?
パトリック そこまで難しいことではありませんでした。野球やサッカーなどのスポーツで得点が入ったときに、ハイタッチで喜びを共有しますよね。そういうシンプルな楽しさを提供すればいいと思いました。本作では、文字が読めなくても意思疎通できるような、簡潔な協力プレイができるようにしています。本当に協力してお互いが助け合ってプレイする感覚を大事にしたいです。
--パトリックさんは、いろいろなJRPGからインスパイアを受けていると思いますが、その中でもとくに影響が強いのは何ですか?
パトリック このゲームに関して言えば、『グランディアII』や『ヴァルキリープロファイル2』などにインスパイアされていますね。個人的なチョイスで言えば、『オウガバトル』シリーズや『ファイナルファンタジー タクティクス』などが大好きです。
ーーつまり、松野泰己さんの大ファンであると。
パトリック その通り(笑)。彼は僕の中でベストな人物です!
--最後に、このゲームを日本のファンにどう楽しんでほしいですか?
パトリック 僕はJRPGが大好きなので、少し緊張しています。というのも、僕のようなカナダ人が、日本にこういうタイプのゲームを持ち込んでちゃんと評価されるかが心配だからです。とは言え、ユーザーの皆さんには、お金を払ってプレイしてもらうことになるので、プレイを終えて最終的に「とてもいいゲームだった」と楽しんでもらえるように精いっぱいがんばって開発中です。過去から現在まで、日本ではすばらしいゲームがたくさん作られてきました。その波動が伝わり、海外にも私のような日本のゲーム好きな人がたくさんいるわけです。こうして日本のゲームに影響を受けて作られた『チャイルド オブ ライト』をきっかけに、日本のゲームのよいところがより多くの人に伝わればうれしいです。