PS4と連動する世界初の実演デモも公開

 東京ゲームショウ2013が本日2013年9月19日、ついに開幕した(9月19日、20日はビジネスデイ)。初日となる19日の午前には、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の代表取締役社長 兼 グループCEOのアンドリュー・ハウス氏とSCE SVP 兼 第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏、そしてSCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏の3人による“「プレイステーション4」が創造する世界”と題された基調講演が行われた。ここではその内容をリポートする。

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▲アンドリュー・ハウス氏。ほぼ原稿なしで日本語のスピーチをするのは初めてなのだとか。

 まず、登壇したのはアンドリュー・ハウス氏。ハウス氏は、いま世の中で家庭用ゲーム専用機はどういう役割を担うべきなのか、PS4はどういう体験をユーザーに届けるのか、そして発表されたばかりのPS Vita TVがどうエンターテインメントライフを進化させるのか、という3つのテーマについて説明した。

■ゲーム専用機の進化と役割

 ハウス氏は、最近の家庭用ゲームの傾向として、まず、ユーザー層の広がりを挙げる。「家庭用ゲーム機はおもにコアユーザー向けと捉えられているものの、最先端のゲーム体験を求める人も増えてきています」(ハウス氏)。その例として挙げられたのは、昨年発売15日間で10億ドルを売り上げた『コール オブ デューティ ブラックオプスII』、そして海外で発売されたばかりながら、発売初日で8億ドルを達成した『グランド・セフト・オートV』など。両作とも記録的な滑り出しとなり、コアユーザーだけでは実現できない驚異的な販売成績を収めている。ハウス氏は、PS4も最先端のゲーム体験を求める人々をこれからも大切にしたいと語った。

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 ふたつ目の傾向として、ゲーム機はもはや“ゲーム専用機”ではなく、総合的なエンターテインメントマシンにシフトしてきており、さらにタブレットやスマートフォンなどの連携が新しいゲーム体験をもたらし、ソーシャル要素がより強く求められていると指摘。

 3つめとして、フリープレイゲームの増加やダウンロードコンテンツ販売の増加など、デジタルコンテンツの重要性が増している点を挙げた。

 上記の傾向を踏まえ、ハウス氏は新世代のゲーム機に求められるものとして、ゲーム機としての性能のさらなる進化はもちろん、優れたUIによる使いやすさや、積極的なネットワークコンテンツの活用、さらに、あらゆるゲームのソーシャル機能強化などを挙げた。
 こうした観点に立って開発されたのがプレイステーション4というわけだ。

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PS4が届けるユーザー体験

 PS4はゲーム機最高水準の性能を誇り、コアゲーマーが求めるより没入感のあるグラフィックを目指して開発されている。もちろん、それだけではなく、スマホやタブレットでいつでもつながること、(オンラインゲームなど)ゲームを通じてつながる体験の実現にも力が入れられている。「PS4は起動する度に新しい出会いがあり、ゲームの楽しさを広げてくれるハードなのです」(ハウス氏)。

 一方でハウス氏は、バーチャルなつながりだけではなく、家族や友だちなどその場にいる仲間とみんなで体験できることもゲームの大きな魅力のひとつだと語り、“プレイステーション”をみんなで楽しむ体験をどう提供するか、という点にいまもっとも力を入れて取り組んでいるとコメントした。

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ゲーム開発の変化

 続いてハウス氏は、開発側からの視点に立ったPS4の特徴を紹介。同氏は最近のゲーム市場の傾向として、開発コストの大規模化により特定のタイトルに人気が集中する一極化の傾向と、才能ある若手クリエイターの台頭やネットワーク経由での配信環境の普及によりインディーズゲームの増加を挙げる。この傾向は映画業界と似ており、とくにインディーズ系ゲームが活発になれば、(映画もそうだが)多様化が進み、よりユーザーにとって選択肢も増え、歓迎すべき状況が生まれる。

 こうしたインディーズ系開発のゲームにおいても、PS4は大きな受け皿となる。これまでいろいろと報道されている通り、PS4はPCベースのアーキテクチャを採用していることで、同ハード向けのゲームは開発しやすいと言われている。SCEとしてもゲームを開発しやすい環境を今後も提供していく予定で、インディーズ系開発会社に対しても、開発面はもちろん、ビジネス面でも強力にサポートしていく考えだ。そうした施策もあり、現在、PS4への参入メーカーは620社に拡大しているとのことだ。

 今後、家庭用ゲーム機に求められる要素を取り入れつつ、開発者にとっても開発しやすいPS4。今年2月の発表以降、世界から好意的に受け入れられている印象だ。北米・欧州の予約も好調で、ハウス氏は2013年度の全世界販売見込みを500万台と発表。この勢いなら、十分達成できる数字だろう。

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PS Vita TVはアップデートによりDUALSHOCK 4にも対応

 続いてPS Vita TVについて。先日2013年9月9日に開催されたソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのプレスカンファレンスで発表されたばかりのPS Vita TVは、予想以上の反響があったという。ハウス氏はその反響のなかで挙がった、同ハードに関するおもな質問について回答した。

 PS Vita TVは小さな筐体にPS Vitaのシステムを内包。PS Vitaのゲームはもちろん、現在PlayStation Storeで配信されているゲームアーカイブスなどを1300タイトルがテレビでプレイ可能だ。操作はDUALSHOCK 3で行う。近い将来は、アップデートによりDUALSHOCK4にも対応するという。さらに将来の話として、E3 2013でもアナウンスされたGaikai技術を活用してストリーム配信されるプレイステーション3用ゲームにも対応(ちなみに、PS3用ソフトのストリーミング配信はPS4、PS3、PS Vitaで対応予定。当然、PS Vita TVも対応されるというわけだ)。

 最後にハウス氏は今後のSCEの方向性として、コアゲーマーの期待に応えながら、ゲーム以外のコンテンツも充実させ、家族や友だちみんなで楽しめるゲームを提供すると宣言。それが家庭用ゲーム業界のさらなる発展には必要で、我々の使命だと語り、SCE SVP 兼 第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏にバトンタッチした。

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PS4を開発する段階で目指してきた世界

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▲SCE SVP 兼 第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏

 伊藤雅康氏はPS2、PSP、PS3、そしてPS4の開発に携わってきた人物。伊藤氏はまずPS4の開発コンセプトを説明した。

 伊藤氏はPS2以降のハードの開発に携わってきた経験から、PS4の開発ではユーザーフレンドリーとデベロッパーフレンドリーという要素を大切にしたという。

 ユーザーフレンドリーという部分に関しては、お求めやすい価格での提供と、これまで同様に没入感のあるゲームを大切にする、ということを意識。ただし、変化するゲームライフに対応すべく、ソーシャル要素やスマホやタブレットなどとの連携も重要視したという。

 デベロッパーフレンドリーは、開発しやすい環境の提供するということ。開発しやすいハードを目指すため、多数のクリエイター陣からもさまざまな意見を聞いたという。その中でGDDR5メモリについてリクエストがあがり、開発当初4GBの予定だったが、多くのクリエイターの意見を取り入れ、8GBに変更したことなどのエピソードを披露した。

 伊藤氏の話の中では、一時話題となったオンラインの実名登録に関する話題も触れられた。PS4はいままでどおり、PSN ID(匿名)に加え、実名での登録も可能になっている。伊藤氏は、オンライン初心者にとって誰だかわからない匿名の相手のとやり取りは不安を感じさせ、オンライン対戦などを躊躇させてしまうひとつの要素と考え、実名による登録も可能にしたと説明した。

PlayStation App、PS4とPS Vita TVデモ

 基調講演の最後に、スマホやタブレットなどでPS4と機器連携するためのアプリ“PlayStation App”(iOSとAndroid向け)の実演デモが披露された。このPlayStation Appを自分のスマホやタブレットにインストールしておけば、それらデバイスでPS4を操作したり、PS4上のゲームに参加することなどができるのだ。

 実演デモはSCEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏が担当。

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▲吉田氏はソニーのスマホ最新機種Xperia Z1で操作。PS4にプリインストールされる『プレイルーム』では、スマホやタブレットで描いた絵を『プレイルーム』に飛ばすことができる。

 実演デモでは、PlayStation Appでフレンドがどんなことをやっているかがチェックできたり、PS4のゲームをスマホで操作、いわゆるセカンドスクリーンとして利用する様子などが披露された。また、PlayStation Storeにアクセスしたり、出先など離れたところからPS4の世界とつながることができるという。

 続いて、PS4とPS Vita TVとのリモートプレイ実演デモも披露。リビングでPS4のゲームをプレイ中、家族の誰かがテレビを観たい、と言ってきた場合など、別の部屋にPS Vita TVとつながったテレビがあれば、その部屋ですぐにゲームの続きをプレイすることができるのだ。「PS Vita TVはDUALSHOCK 4にも対応する予定ですので、PS4で遊んでいる感覚でPS Vita TVのリモートプレイがお楽しみいただけます。PS Vita TVでもPS4のアプリケーションソフト(PS4独自の機能を使わないものに限られる)が基本的に操作できます」(吉田氏)

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▲リモートプレイの実演では、まずPS4で操作していた『KNACK(ナック)』を……。
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▲一時停止させて、PS Vita TVを起動。
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▲ゲームの続きを即プレイ。このお手軽さがリモートプレイの魅力のひとつ。

 PS4を中心にPS3、PS Vita、そしてPS Vita TVといった“プレイステーション”ファミリーに加え、スマホやタブレットなどとの連携。今後、“プレイステーション”がどんな体験をもたらしてくれるのかワクワクしてしまうのは筆者だけではないだろう。伊藤氏は「これから皆さんの期待以上の経験を提供していくつもりですが、これからもまだまだプレイステーション4を進化させていきます」と語り、今回の貴重講演を締めくくった。
 
 今回の東京ゲームショウのソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアブースでは、PS4やPS Vita TVなどが出展されている。東京ゲームショウに来場する予定の人は、プレイステーションの“これから”をぜひチェックしよう。