PS4で展開される“一騎当千”の凄さとは!?
プレイステーション4(以下、PS4)で、新世代のゲーム開発を進めているトップクリエイターに聞く、連載インタビュー企画。第5弾は、プレイステーション Vita(以下、PS Vita)、プレイステーション3(以下、PS3)、PS4で展開される『真・三國無双7 with 猛将伝』の鈴木亮浩プロデューサーに、PS4版の魅力をうかがった。
『真・三國無双7 with 猛将伝』プロデューサー
鈴木亮浩氏
PS4によってパワーアップするのは“ワラワラ感”だけじゃない!
――『真・三國無双7 with 猛将伝』とは、どのようなゲームなのでしょうか?
鈴木亮浩氏(以下、鈴木) この『真・三國無双7 with 猛将伝』は、今年の2月に発売されました『真・三國無双7』に数々の要素を追加したソフトです。ファンの皆さんにはおなじみの『猛将伝』ですが、プレイステーション4では『真・三國無双7』が発売されていませんので、『真・三國無双7』の内容も『猛将伝』の内容も、丸ごと楽しんでいただける形にしました。「『真・三國無双7』を遊び尽くしていただこう!」ということで、新キャラクターや新武器、新モードを追加しています。また、呂布に焦点を当てたストーリーモードを追加しているほか、『真・三國無双7』で好評だった“歴史IF”の要素もふんだんに取り入れていますので、お楽しみいただけると思っています。
――『無双』シリーズにはさまざまなタイトルがある中で、PS4用タイトル第1弾として『真・三國無双7 with 猛将伝』を選んだのはなぜでしょうか?
鈴木 PS4で本作を開発することになった理由のひとつは、シリーズの中で、いちばんビジュアル表現が進んでいるのが『真・三國無双7』だったからです。PS4本体が発売されるタイミングと、本作をリリースできるタイミングが合っていた、という理由もあります。
――初のPS4での開発の手ごたえはいかがですか?
鈴木 PS4のスペックは、PS3と比べ、ものすごくパワフルになっています。PS3では、『無双』シリーズの特徴である“ワラワラ感”、キャラクターをたくさん表示することを最優先で作っていたのですが、PS4版では、これまで優先していなかった部分についてもどんどんクオリティーを追求することができて、現在すごく手ごたえを感じています。
――では、PS4のスペックは、開発スタッフの皆さんの期待にバッチリ応えているということですね。
鈴木 はい。PS4のスペックについては、もちろん事前にうかがってはいましたが、実際に開発者として触ってみると、思っている以上のことができて。パフォーマンスを追及したとき、それに応えてくれるハードだな、と感じています。
――鈴木さんは、これまでにPS2、PS3で『無双』シリーズを開発されてきましたが、PS4は過去のハードと比べていかがですか?
鈴木 PS2のときもPS3のときも、前のハードから飛躍的にスペックは上がっていて、そのスペックを活かしたクオリティーのタイトルを作ることはできたのですが、そのクオリティーを実現するまでに非常に時間がかかりました。ハードの特徴を掴んで、スペックを引き出すのが難しかったんですね。ですが、PS4に関しては、その作業が非常にやりやすい。こちらが施した調整に対して返ってくる反応がものすごくよくて、パフォーマンスを出しやすいです。
――スペックの高さはもちろん、開発のしやすさも魅力ということですね。では、『真・三國無双7 with 猛将伝』のビジュアル面では、PS4のスペックによって、具体的にどんなところがパワーアップしたのでしょうか?
鈴木 まず、PS3版に比べて、ワラワラ感が飛躍的に上がっています。これは、皆さんも想像されていたことだと思いますが、それ以外にも向上した面があります。いちばん変わったのは、ライティングに関するところですね。ライティングは“リアル感”を表現するためのものですが、ステージやキャラクターモデルのライティングの質が非常によくなりました。
――先ほどおっしゃっていた、PS3では優先していなかった箇所が向上したのですね。
鈴木 そうですね。また、モーションに関しても技術的な向上がありました。たくさんのキャラクターが表示される中で、おのおのが同じ動きをしていたら、若干興がそがれるかもしれませんが、PS4ではリアルタイムでキャラクターのモーションを制御・補完することができ、戦場での武将たちの動きを、よりリアルに表現できるようになりました。
――PS4は、ハードのスペックだけでなく、コントローラDUALSHOCK 4にもさまざまな機能がついていることで知られていますが、『真・三國無双7 with 猛将伝』ではDUALSHOCK 4のどのような機能を活かしていますか?
鈴木 以前からSHAREボタンには注目していまして、プレイヤーどうしのコミュニケーションを促進するものとして、非常に有効な機能だ思っています。まだ検討中ですが、『真・三國無双7 with 猛将伝』にも、SHAREボタンを使って動画を共有できる機能を実装したいと考えています。たとえば、チャレンジモードで上位ランキングにいる人がプレイ動画をアップして、それを見た人が攻略法を学んで、自分も新たな記録に挑戦する……という、いいサイクルを作れるんじゃないかな、と。コメント機能にも対応しようと思っていますので、コメントで動画をアピールしてください。
――タッチパッドや、内臓スピーカーについてはいかがでしょうか?
鈴木 『真・三國無双7』はもともとPS3で出たゲームですので、タッチパッドを利用する特別な操作はありませんが、タッチパッドを“ラフに押せるボタン”として活用しています。タッチすると、ゲーム中の情報画面表示ができるようにしているんです。もともとはSTARTボタンに割り当てていた機能ですね。内蔵スピーカーは、こちらも検討中ではありますが、音の演出のひとつとして使いたいです。また、“つねに同じボリュームで、手元で音を出す”ということができるので、UI(ユーザーインターフェース)のような使いかたができるのでは、と思っています。たとえば、『真・三國無双7 with 猛将伝』では“護衛武将”のシステムを刷新しまして、自分の護衛武将に指示ができるようになりました。自分の指示に対して護衛武将がとるリアクションを、手元のスピーカーから出すというのは、システム的な使いかたですよね。
――内臓スピーカーの音は、実際にお聴きになりましたか?
鈴木 はい。高いクオリティーの音が出ますので、使いかた次第では、演出の効果を高めるのに非常に有効だと思います。使い出があります。
――そのほかの、PS4の機能についてもうかがいたいと思います。PS4のゲームは、PS Vitaを使ってリモートプレイを行うことが可能ですが、このリモートプレイを使って、『真・三國無双7 with 猛将伝』をどのように遊んでほしいですか?
鈴木 『猛将伝』で追加された要素のひとつに、“チャレンジモード”があります。記録更新を目指して、短い時間でくり返し遊ぶというモードなので、PS Vitaを持って、寝転びながら手軽にプレイするのに適していると思います。
――PS4版のデータを、PS3版やPS Vita版で使うことはできるのでしょうか。
鈴木 はい。クロスセーブに対応していますので、すべてのハードで同じセーブデータを利用していただくことが可能です。
――PS4では、序盤のゲームデータをダウンロードすると、すべてのデータをダウンロードする前にプレイを始めることができますが、この機能についてはどうお考えですか?
鈴木 いちプレイヤーとして考えると、プレイをすぐに始められるようになる、とても快適な機能ですよね。また、開発者として考えると、別の面でもうれしいことがあります。
――と言いますと?
鈴木 最近、据え置き型ゲーム機の問題のひとつに、“ユーザーさんが(ゲーム機を)立ち上げてくれない”というものがあります。据え置き機は起動までに時間がかかりますし、ロムを入れてゲームを入れてもなかなかプレイを始められない、というユーザーさんからの意見を聞いていましたので、ハードのシステムでそのような障壁を取り除くことができる、というのは非常にうれしいですね。
――“快適なプレイ”に関係するお話ですが、『真・三國無双7 with 猛将伝』は、ロードをあまり気にせずに遊べるのでしょうか?
鈴木 『無双』シリーズは、ひとつのモードやステージだけでも読み込むべきデータが非常に多いため、ユーザーさんが何を遊ぶかを決めてから、ロードを始めなければならないんです。そのため、ロードが発生することを避けられないのですが、PS4のハードの機能を活かして、一度読み込んだデータをとっておいて、くり返し読み込む必要がないようにしていますので、プレイすればするほどロード時間は短くなります。なるべく皆さんにストレスを感じさせないように作っています。
今後、PS4で実現したいアイデア
――PS4の5つのキーワード“Simple(使いやすさ)”、“Immediate(サクサク )”、“Social(ソーシャルとの融合)”、“Integrated(さまざまな機器・サービスとの連携)”、“ Personalized(ユーザー体験の最適化)”について、どう思われますか?
鈴木 この5つのキーワードのうち、最初の3つは、ソーシャルゲーム・スマートフォンゲームにも当てはまるキーワードなんですよね。いまのソーシャルゲームは、「カンタンにサクサク遊べる」ことで市場を拡大してきたと思います。そのソーシャルゲームのよさをしっかり分析して、PS4という据え置き型ハードに融合させる、という意味だと私は感じました。非常にいいキーワードだと思います。
――今後、PS4と『無双』シリーズが合わさることで、どんなおもしろさが実現できそうですか?
鈴木 『真・三國無双7 with 猛将伝』でも、いろいろなアイデアを取り入れていますが、将来的に新しいことを実現するうえで、PS4のパワフルな性能を活かした“物理シミュレーション”がひとつのキーワードになってくると思います。PS3のタイトルのときから、プレイヤーモデルに対して“汚し”の処理を入れているんですけれども――汚しというのは、例えばプレイヤーが倒れたときに衣服に土ぼこりをつけたりということなのですが――それをもっと進化させて、戦場にいるすべてのキャラクターに施したいです。刀傷をつけたり、鎧を部分的にへこませたり、布が敗れたり。もっとリアルな表現が実現できるのではないかと思います。
――PlayStation Cameraを利用したアイデアなども、今後生まれてくるのでしょうか?
鈴木 そうですね……『無双』シリーズは、モーションのバリエーションの豊かさも特徴のひとつですので、たとえばカメラの前で構えを取ってもらって、その構えをモーションデータとマッチングさせることで、ゲーム内で自分の構えが体験できる、なんてこともできるのではないかと思います。
――『無双』シリーズ以外で、鈴木さんがPS4で作ってみたいと思うゲーム、実現してみたいと思うアイデアはありますか?
鈴木 いつか、ゲームの中で、キャラクターの衣装を“本当に”着替えさせたいと思っているんですよね。裸のモデルを作って、その上に鎧や着物を着せるということができたらいいな、と。コリジョン(複数のデータの信号が送られ、衝突してしまうこと)などの問題があるので、非常に難しいのですが、いつか実現できるのでは、と思っています。昔からやりたいなと思っているんですよね。
――そのアイデアが実現できたら、衣装の着せ替えがもっと楽しくなりそうですね。では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
鈴木 今回、『無双』シリーズ初めてのPS4タイトルとして、『真・三國無双7 with 猛将伝』を発売することになりました。ビジュアル表現が強化されたのはもちろんのこと、AIもかなり賢くなっていますので、ほかのハードのバージョンと比べて、かなり違うデキになってきたと感じています。ご期待ください。