どうなる、取材。
トロントスタジオリポート ~その1~(→【コチラ】)から引き続き、『スプリンターセル』シリーズの最新作、『スプリンターセル ブラックリスト』(以下、『ブラックリスト』)を手掛けたユービーアイソフト トロントスタジオ(以下、トロントスタジオ)の取材リポートを掲載。
前回のラストでもお伝えしたとおり、トロントスタジオで取材中に館内の全スタッフが緊急避難するアクシデントが発生! 記者も急いで取材用の機材を片付けてスタジオの外に出ると、なんと消防車が現れた。ただごとではない雰囲気の中、スタジオの中に突入していく消防隊員たち……。同行していたトロントスタジオの女性スタッフ曰く、「オーマイガー! こんなの初めて!」って、記者も初めての経験です……。そして、消防隊員の皆さんの命懸けの調査の結果、以下のことが判明した。
■サイレンの原因は、2階の水道管破裂による漏水
■これにより、スタジオの一部は水浸し状態
■被害者はゼロ
■復旧にはかなりの時間を要する
とりあえず、被害者がいなかったのが不幸中の幸いだ。どうやら古い工場を改築したスタジオなので、水道管などが老朽化していた模様。だがしかし、しばらくのあいだスタジオに入れないようだ。……せっかく日本からはるばるトロントまでやって来たのに、ここでまさかの取材中止!? いやいや、ここまで来たのに手ぶらで帰るわけにはいきません! ということで、トロントスタジオの目の前にいるカフェの一角を陣取り、そこに『ブラックリスト』のキーパーソンを呼んでインタビューを行うことに。ユービーアイソフトの看板タイトルの新情報を、まさかカフェで聞くことになるなんて夢にも思わなかったが、成果なしで帰国する事態だけは避けられたので、ほっと胸をなで下ろす記者だった……。
3つのプレイスタイル
インタビューを掲載する前に、ここでゲームの基本事項について説明しておこう。『スプリンターセル』シリーズは、10年の歴史を持つステルスアクションゲームである。据え置きゲーム機では、これまでに5作品がリリースされてきたが、時代の流れやファンの意見に合わせて、少しずつゲームプレイの内容が変わってきたのが特徴だ。前作にあたる『スプリンターセル コンヴィクション』(以下、『コンヴィクション』)は、ステルスアクションとしてはアグレッシブな作りとなっていて、流れるようなアクションで敵をスピーディーに始末しながらガンガン進めることができた。
さて、『ブラックリスト』のゲームプレイに導入された目玉のシステムは何だろうか? それは、3つのプレイスタイルだ。まるで幽霊のように戦場から消え去り、誰にも見つからず誰も殺さずに進む“ゴースト”、敵と正面から撃ち合い、派手にぶっ殺していく“アサルト”、じゃまになる敵を暗殺しながら進む“パンサー”といった3種類が用意されており、プレイヤーは状況や気分に合わせてスタイルを自由に変えて進むことができる。
たとえば、「よし、今日は気力が充実しているから、誰にも見つからない“ゴースト”のスタイルで進めてみよう! ……うーん、でも、よく考えたらこの場所は敵がたくさんいてけっこう面倒だな。ここは相手をせん滅する“アサルト”のスタイルで行ってみようかな」といったように、プレイヤーがいつでも気軽に遊びかたを切り替えられるのがおもしろい。
どのプレイスタイルを選択しても行動に応じたポイントを獲得でき、ポイントの量次第でミッションクリアー時の報酬が変化する。“ゴースト”で進むのがいちばんポイントを稼げるのだが、全編通じて“ゴースト”で進むのはかなりの腕が要求されるらしい。ちなみに、開発スタッフの話では、“パンサー”で進めていく人がもっとも多いとのこと。アクションゲームの腕前に自信がある人は、“パンサー”や“アサルト”ではなく、“ゴースト”に挑戦してみてはいかがだろうか?
すっかり前置きが長くなってしまったが、ここからはクリエイティブディレクターであるマキシム氏のインタビューを掲載する。氏がステルスアクションゲームというジャンルをどのように定義し、そして『スプリンターセル』シリーズならではの“味つけ”をしたのか、探ってみた。さらにインタビューの後半ではトロントスタジオの特徴も聞いたので、興味がある人は最後まで読んでほしい。
マキシム・ビラ氏
――さっきはたいへんでしたね! マキシムさんはスタジオの外で何をしていましたか?
マキシム・ビラ氏(以下、マキシム) まさかこんなことになるとはね……(笑)。スタジオの中に入れなくなったので、今日の作業は手つかずの状態です。何もやることがないので、とりあえずランチに出かけるしかありませんでした。ランチの後、メディアの取材対応を別の建物で行って、いまはこうしてカフェにいるわけです(笑)。
――ご苦労様です(笑)。それでは、早速質問させていただきます。『スプリンターセル』シリーズといえば、ステルスアクションゲームというジャンルを代表する作品だと思います。まずはマックスさんが、ステルスアクションゲームをどのように定義しているか教えてください。
マキシム 私にとって、ステルスアクションゲームとは、“動く前に考えるゲーム”です。まずは敵兵の移動ルートや主人公の位置などを把握し、それらをパズルのように組み合わせて解放を導き出す必要があります。そして、自分のイメージに沿うように目の前にあるアクションにチャレンジするのです。いろんな意味で考えさせられるゲームだと思いますね。
――現代のステルスアクションゲームに求められているものとは何だと思いますか?
マキシム 敵兵のAI(人工知能)がリアルで、プレイヤーと対等に戦えるほどの賢さを持っていることかな。プレイして楽しくて挑戦しがいがあり、それでいてリアルなAIを構築するのは骨が折れる作業ですが、ステルスアクションゲームの開発はAIのブラッシュアップが中心です。リアルなAIはとても大事な要素ですし、つねに求められていると思います。
――ステルスアクションゲームとしての『ブラックリスト』の特徴を教えてください。
マキシム 隠密活動にはいろいろな形があると思います。AIに見られないこと、足音を聞かれないように動くこと、そして影に隠れること。『ブラックリスト』では、それらを全部サポートしています。とりわけ影の表現にはこだわっていて、ダイナミックシャドウという技術でリアルタイムに影を生成しているので、ぜひ注目してください。また、プレイヤーキャラクター(=サム)の登攀やダッシュ、パイプを伝っての移動など、状況に合わせていろいろなアクションを用意している点もポイントです。ひとつのゲームでさまざまな要素がうまく噛み合って機能しているのが、『ブラックリスト』の美しいところだと思います。
――今回は、敵の死体を運んで物陰に隠せるシステムが復活しました。前作『コンヴィクション』はアグレッシブなステルスアクションゲームで、ガンガン前に進んでいくタイプの作品だと感じましたが、今回はひと味違うのでしょうか?
マキシム 先ほど説明した“考える”というテーマを強調するために、従来のシリーズ作品で採用されていた“死体を運ぶアクション”を復活させました。周囲をパトロールしている敵兵は、味方の死体を見つけると、警戒度を強めるとともに増援を呼んでサムを捜そうとします。そうならないためには死体をコンテナなどに隠して進む必要があります。
――ゴースト、パンサー、アサルトといった、プレイヤーが自由に選択できる3つのプレイスタイルは、本作ならではの要素ですね。
マキシム ええ。それぞれのスタイルを簡単に説明すると、ゴーストは隠れて動いて誰も殺害しない。パンサーは障害となる敵を暗殺して進む。アサルトは立ちはだかる敵を目立つ方法で殺害して進む。我々はプレイヤーにステルスを強制することをやめ、3つのスタイルを状況に応じて使い分けるゲームシステムを提示しました。プレイヤーにいろいろな選択肢が用意されているのが理想です。
――なるほど。ところで本作のテストプレイでは、3つのスタイルのうちどれを選ぶプレイヤーが多かったのですか?
マキシム ほとんどのプレイヤーがパンサーを選んでいました。やはりパンサーがちょうどいいバランスにできていると思います。アサルトだと多数の敵に集中攻撃を受けることもありますし、ゴーストで進めるのはとても難しいので。ゴーストで最初から最後までプレイするのは、マップのレイアウトを頭に叩き込むような完璧主義的なプレイヤーでないと難しいと思います。パンサーの場合は考えるのとアクションとのバランスが取れているのでしょうね。
――そのほかに『コンヴィクション』との明確な違いがあれば教えてください。
マキシム 違いはたくさんありますが、ふたつほど挙げるとしたら、ひとつはサムたちの拠点パラディンにある“SMI(ストラテジック・ミッションインターフェース)”です。これはいわゆるミッション出撃の画面なのですが、プレイヤーは、SMIを通じてシングルプレイや協力プレイ、マルチプレイなどのミッションに出撃することになります。それぞれのモードでサムの資金やランクが共通しているので、シングルプレイとマルチプレイが解け合っているような形です。もうひとつは、“スパイvs傭兵”モードが復活したこと。『スプリンターセル』シリーズの過去作に収録されていたマルチプレイ対戦用のモードなのですが、このゲームでも非常に大きな部分を占めていて、自分たちもプレイヤーがどのように楽しんでくれるか、おおいに期待しています。
――SMIのネットワークの仕組みを教えてください。
マキシム ゲーム内にある架空のポータルサイトとして“シャドウネット”が登場します。プレイヤーはシャドウネットを通じて、フレンドの状態を知ることが可能です。シングルモードのどのミッションを遊んでいるのか、それともマルチプレイだったら協力プレイや“スパイvs傭兵“モードを遊んでいるかがわかります。マルチプレイの場合、フレンドのゲームにジャンプインすることもできるんですよ。また、シャドウネットにはさまざまなチャレンジが用意されていて、たとえば、「銃で敵を何回倒す」というものもあります。チャレンジは、その日限りのものや週替わりのものが用意されているので、ぜひフレンドと競争してみてくださいね。ちなみに、チャレンジの達成度合いは、SMIのメニュー画面からいつでも確認可能です。
――お話を聞いていると、今度の『スプリンターセル』には、多彩な要素が収録されているようですね。
マキシム その通りです。我々は、「これまでで最大の『スプリンターセル』を作ること」を合い言葉に開発を続けてきました。『ブラックリスト』は、おそらくプレイステーション3とXbox 360では、最後の『スプリンターセル』になるでしょう。ですので、すべてが凝縮された集大成的な作品を作ろうと思ったのです。
――なるほど。それでは『スプリンターセル』シリーズはこれからどこへ向かうのでしょうか? 答えられる範囲でお願いします。
マキシム いやいや、現時点では次回作があるのかどうかも教えられませんよ(笑)。
――それは残念です(笑)。では、『スプリンターセル』には映画化の話もありますが、そちらの進捗状況はいかがですか?
マキシム 本当に心苦しいのですが、映画の件についてもまだお答えできることが少ないんですよ。いまはまだ個人的にワクワクしているとしか言えません(笑)。良質なスパイ映画になってほしいと願っています。
――わかりました。ここからは少し話題を変えたいと思います。マックスさんは2010年にモントリオールスタジオからトロントスタジオに移籍されましたが、ふたつのスタジオで大きな違いはありますか?
マキシム いちばんの違いは、人員の数ですね。モントリオールスタジオには2400人ものスタッフが働いているので、誰かが病気になったり休暇を取ったりしたときにも必ずバックアップしてくれる人間がいるのですが、トロントスタジオは300人程度なので、すべてのスタッフがそれぞれの責任を持っていて、替えがきかない存在です。たとえば、スクリプトライターが急病で突然辞めてしまった場合、別のチームから人材を借りることがとても難しいのです。モントリオールスタジオでは小さな問題が、ここでは大きな問題になります。
――トロントは、商業だけではなく、文化の発展も目覚ましいと聞きました。インディーゲームや映画や音楽の世界からこのスタジオに飛び込んでくる人が多いと思いますが、不慣れなスタッフをトレーニングしながらトリプルA級の大作ゲームを作るのは、たいへんだったのではないでしょうか。
マキシム 新しく入ったスタッフには、それぞれのやりかたで創造力を発揮してもらいたいので、ユービーアイソフトのやりかたを押しつけたりはしません。チームでの共同作業のプロセスは学んでもらう必要がありますが、あとは自由です。反対に、いろいろな会社からスペシャリストと呼ばれる人がやって来て、自分たちもアイデアをもらうこともあります。こちらから教えることもあるし、向こうから教わることもあります。
――マキシムさんは、スタジオのある土地の文化的背景や地理的背景がゲーム作りに影響すると考えますか?
マキシム イエス。モントリオールスタジオで作ったゲームは、やはりモントリオールスタジオらしいというか、そのスタジオならではの“味”があると思います。『アサシン クリード』シリーズや『ファークライ』シリーズなどをプレイすると、モントリオールスタジオらしさが溢れていますよね? たとえば、高いところに上って飛び降りたり、敵拠点を制圧してマップを解放したり。それらはモントリオールスタジオの象徴みたいなものです。今後はトロントスタジオの“味”をゲームで出せるようにしていきたいですね。
――私はトロントを初めて訪れたのですが、この街について教えてもらいたいです。マキシムさんは、この街のどんなところがゲーム作りに影響していると思いますか?
マキシム 答えるのが難しい質問ですね……。うーん、ゲーム作りへの影響、か……。トロントの街は、いま現在も広がって成長し続けている街だと思います。昔はビジネスや金融の街だったのですが、ここ数年はおもしろい変化が訪れていて、インディーゲームの影響だったり、音楽シーンだったり、映画業界の進出だったり、カルチャー面でもアート面でも、いままでにないほどの盛り上がりを見せています。そういったものに触れてきた人材が、現在トロントスタジオでゲーム作りに励んでいるのです。トロントはまだまだ若い街なので、今後が楽しみですね。
――最後にもうひとつだけいいですか? 個人的に気になったのですが、ゲーム中のサムがマキシムさんにすごく似ていると感じました。ご自身でもそう思いませんか?
マキシム じつを言うと、サムの3Dモデルは、私の髪型を使っているんです。というのも、私のように短い髪だとポリゴン数を少なくできるからです。だから似ていると感じるのかもしれませんね。でも、サムが自分に似ているというよりも、自分がサムに似ているという感覚が近いかな。だから私もいつかは世界を救えるかもしれませんね(笑)。
まだまだ続きます!
マキシム氏から“サムの髪型のモデルはマキシム氏自身”という衝撃の事実(!?)が明かされ、動揺を隠せない記者だったが、気合いを入れ直してさらなる取材を敢行! 続いては、『ブラックリスト』のプロデューサーを務めるアレックス氏へのインタビューを掲載しよう。
アレックス氏には、マキシム氏のインタビューでも話題に上った『ブラックリスト』のネットワークまわりの仕様について聞いてみた。マキシム氏も説明していたが、“SMI”によるミッションと、“スパイvs傭兵”モードは、本作ならではのシステムだ。
サムたちフォースエシュロンのメンバーは、パラディンと呼ばれる飛行機を拠点として利用しているが、パラディンの司令室には、世界地図が表示されたテーブル型の端末“SMI”があり、プレイヤーはSMIを通してつぎに挑戦する任務を選択することになる。このときネットワークに接続すれば、シングルプレイのミッションだけではなく、オンライン協力プレイやマルチプレイもシームレスで選択できるのだ。さらにフレンドがリアルタイムに『ブラックリスト』をプレイしていれば、どのミッションを遊んでいるかわかるので、フレンドのゲームにジャンプインして協力プレイを楽しむことが可能だという。
“スパイvs傭兵”は、ファンの要望で復活したオンライン対戦モード。プレイヤーはスパイと傭兵というふたつの勢力に分かれて戦うことになるのだが、それぞれの勢力ごとに兵士の能力が異なるのが特徴だ。隠密行動は得意だが戦闘が苦手なスパイと、反対に隠密行動は苦手だが戦闘が得意な傭兵。自分がどちらの陣営に属するかによって、戦略が大きく変化するのがおもしろい。スパイvs傭兵モードについて詳しく知りたいという方は、下のトレーラー映像を見てほしい。
アレックス・パリゾー氏
――『ブラックリスト』の開発は順調でしたか?
アレックス・パリゾー氏(以下、アレックス) 比較的順調だったと言えますね。ただ、我々にとってもっとも大きなチャレンジは、『ブラックリスト』のプロジェクトと同時にトロントスタジオを立ち上げたことです。私はモントリオールスタジオから移ってきたのですが、新しくトロントで雇った人のほうが圧倒的多数を占めていたので。
――最初のうちは、ゲーム作りよりもスタッフのトレーニングに時間を費やしたのでしょうか?
アレックス トロントスタジオの第1弾に『スプリンターセル』シリーズの新作を選んだのは、人材を募集するためでもあります。トリプルA級のタイトルを開発すれば、それだけ人も集めやすくなるのです。トロントではインディーゲームの文化が発展していて、ゲーム業界に長年携わってきたベテランがたくさんいます。経験者には技術を教え込むのではなく、あくまでチームとして働くことに適応してもらった感じです。そのため、思ったよりもトレーニングの時間は少なかったですね。
――モントリオールスタジオからトロントスタジオに移籍したスタッフの人数は、どのくらいですか?
アレックス だいたい30人くらいです。
――それでは、あとはすべてトロントで新しく加わった人なんですね。
アレックス 概ねそうです。『ブラックリスト』には、最大で400人以上のスタッフが関わっています。その内訳は、モントリオールから移ってきたスタッフが約30人、トロントで雇ったのが約270人、そして約100人は、ユービーアイソフトのほかのスタジオのスタッフです。今回は、上海スタジオが協力プレイを、モントリオールスタジオがスパイvs傭兵モードを手伝ってくれました。
――400人ものスタッフの作業をコントロールするのはたいへんだったのではないでしょうか?
アレックス 確かにそうですね。開発スタッフが多いこともありますし、ゲームとしてもこれまでで最大の『スプリンターセル』を作ろうとしていたので、とても苦労しました。上海とモントリオールでも、シリーズに携わってきた熟練のスタッフを選び、いいゲームができるように努力したのです。ベテランが加わることで全体のクオリティーアップにつながりますから。
――アレックスさんから見て、トロントスタジオとモントリオールスタジオのおもな違いは何ですか?
アレックス いちばんの違いは、何と言ってもスタジオの規模とサポート体制ですね。モントリオールは2400人ものスタッフが働いているので、スタジオとして作業のプロセスが確立しています。トロントスタジオは、いまはまだスタジオとしての仕組みを築いている最中なので、作業プロセスやサポートがまだ万全ではありません。そのあたりの改善は、トロントスタジオのこれからの課題ですね。
――トロントの街への印象を教えてください。
アレックス 非常に大きな都市ですよね。ここは経済的にも文化的にも発展しているので、ゲームクリエイターや俳優など、すぐれた才能を持つ人材がたくさんいます。また、トロントにはインディーゲームの歴史があるので、クリエイターは創造力や豊かな発想を持っており、そういった人たちからいろいろなものを吸収できたのはラッキーだったと思います。
――トロントスタジオの規模は、ユービーアイソフトの中ではどのくらいですか?
アレックス すごく大きいのですが、よくわかりません(笑)。おそらく上から数えて3番目か4番目だと思います。
――それほどの規模のスタジオがトロントに作られたのはなぜでしょうか。
アレックス ユービーアイソフトの方針として、政府からの財政援助制度があるカナダをつねに注目しています。トロントはカナダ最大の都市であり、さらにインディーゲームや映画などの歴史があるので、人材も豊富です。今回は、才能溢れる人々を募集するためにトロントにスタジオを設立しました。
――ここからは、『ブラックリスト』のゲームシステムについてうかがいます。まずはミッションの種類についてですが、ゲーム本編とは別に“4Eミッション”と呼ばれるサブミッションがありますよね? その魅力について教えてください。
アレックス ゲーム本編で登場する主要人物、グリム、チャーリー、コビン、ブリッグス、彼らから請け負うのが“4Eミッション”です。それぞれのミッションはキャラクターの個性に関連したもので、形式や目的が異なります。そのうちのブリッグスのミッションは、協力プレイでしか遊べません。協力プレイのプレイヤーキャラクターはサムとブリッグスです。フレンドといっしょに遊ぶことで、ゲームプレイの幅が大きく広がることでしょう。なお、4Eミッションをクリアーすれば、本編に隠された謎が明らかになるので、ゲーム全体のことを深く知りたい人は、ぜひ遊んでみてください。
――続いてネットワーク関連について教えてください。今回の協力プレイのポイントは?
アレックス 従来のシリーズ作でも協力プレイは大事な要素でしたが、今回は、シングルプレイ本編と密接な関わりのあるミッションを、協力プレイで遊べるようになりました。戦略を組み立てて、しかもフレンドといっしょにゲームが遊べるのがポイントですね。また、シングルプレイで手に入れたサムの装備品やガジェットをカスタマイズした状態で協力プレイミッションにチャレンジすることも可能です。14個のマップで協力プレイが楽しめるので、やり応えはばっちりだと思いますよ。
――スパイvs傭兵モードを復活させた狙いは?
アレックス 『コンヴィクション』をプレイしたファンがもっとも強く望んでいたのが、このモードの復活でした。それぞれ能力が異なるスパイと傭兵の2勢力に分かれて戦う“スパイvs傭兵モード”は、もっとも画期的な対戦方法のひとつだと思っています。動きが速くて隠密行動が得意なスパイに対して、強固なアーマーに身を包みパワフルに戦う傭兵が登場します。チームごとの戦略の違いを楽しんでほしいです。
――今回は、プレイヤーキャラクター(サムとブリッグス)のカスタマイズにも力が入っていますよね。
アレックス カスタマイズはどのモードを遊んでも、どのキャラクターを使用しても、自分で稼いで購入した装備品やガジェットを使えるようにしました。自分のお気に入りの装備で、いろいろなモードをシームレスに遊ぶことができます。
――発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
アレックス 日本語版の『ブラックリスト』は、2013年9月5日に発売予定です。本作は、『スプリンターセル』シリーズ史上、もっともボリュームのあるゲームで、最大のコンテンツを盛り込んでいます。ゲームプレイの選択肢も多く、多様性があるので、ぜひ購入して楽しんでいただきたいです。『スプリンターセル』シリーズのファンが気に入る要素はすべて入っていると思いますよ。
――最後にひとつだけいいですか? 今回のスタジオツアーで、一部入れないエリアがありました。おそらく未発表の新作を作っているのでしょうが、トロントスタジオのつぎの動向に期待してもよいでしょうか?
アレックス もちろん! いまはまだ言えませんが、いろいろなプロジェクトが進行中なので、ぜひ楽しみにしていてくださいね!!
次回の記事は2013年8月21日(水)更新予定!