クリエイターインタビューを実施!

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 スタジオリポートの4回目は、リードゲームデザイナーとしてDavid氏を支えてきたCaroline氏と、Quantic dreamのマネージメント業を担当するGuillaume de Fondaumière氏へのインタビューを掲載する。

Caroline Marchal氏
リードゲームプレイデザイナー
2003年にプロデューサーとして『ヘビーレイン -心の軋むとき-』の開発に従事。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』ではリードゲームプレイデザイナーを担当している。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その4】_04

――Carolineさんは、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のどの部分を担当しているのでしょうか?

Caroline Marchal氏(以下、Caroline) リードゲームプレイデザイナーとして、Davidが作り上げたゲームデザインとゲームメカニズムに関わる部分のアドバイス、そして、それらを実際にゲームに落としこんだときのチューニング(調整)などを担当しています。私はステージよりもコントロールの部分を重点的に見ていて、キャラクターを操作したときに意図したアクションに見えるか、グラフィック部門のプログラマーとも話し合っています。

――今回は、画面にほとんどアイコン類が表示されない、直感的なUI(ユーザーインターフェース)を採用していますが、これを実現するうえで、苦労した点はどこですか?

Caroline 幅広い層のプレイヤーがクリアーできるようにコントロールしつつ、直感的な操作方法を実現することに苦労しました。ゲーマー以外のカジュアルゲーマーだったり、ゲーマーのガールフレンドや若者たちが違和感なく遊べるように気をつけています。

――試遊機をプレイしてみて、ジョディとエイデンの操作をいつでも切り換えられるのが印象的でした。

Caroline ジョディは左アナログスティックで、エイデンは両方のアナログスティックを使って操作しますが、できるだけ同じような感覚で簡単に操れるような操作方法を心掛けています。

――エイデン操作時のポイントを教えてください。

Caroline エイデンを操っていていちばん楽しいのは、透明な存在で、しかも特別な力を持っているという点です。人間以上の力を使って、いろんなオブジェクトに働きかけられるのが非常に楽しい。今回のプレゼンテーションでは、実験室にいる中年女性キャスリーンにいたずらをするシーンを披露しましたが、ほかにもいろいろな楽しみがたくさんありますよ。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その4】_01

――エイデンはジョディそのものではないんですよね? プレイヤーが操作するキャラクターを切り換えていく形になると思いますが、たまにプレイヤーの手をエイデンが離れて暴走することもあるのでしょうか?

Caroline ネタバレになるのであまり多くのことは言えませんが、エイデンは驚きに満ちた存在です。ときにはジョディの意志に反する行動を取ることもあるでしょう。

――ゲーム中に、本筋とは関係ない“寄り道”のような要素はありますか?

Caroline 現時点では、マップを隅々まで探索することで、ジョディのことをもっと深く知る要素を用意しています。

――プレゼンテーションの映像では、ジョディの返事を選択肢から選ぶシーンがありましたが、答えによっては話の流れが変わるのでしょうか?

Caroline それは人生とも同じで、そのとき選んだ判断というのは、のちのちのストーリーにずっと影響していくので、もしその時点で選択を変えたければ、チェックポイントに戻って選択肢直すことも可能です。

――Carolineさんから見て、ゲームプレイの完成度はどのくらいですか?

Caroline 85%から90%程度ですね。とは言え、ゲーム開発は、最後の10%の追い込みがいちばんたいへんなのですが……(笑)。

――これからはどの部分をブラッシュアップして完成に近づけていくのでしょうか?

Caroline ゲームのペース調整に尽きます。あとは本当に細かい部分の修正です。あとはユーザーテスティングを行って、そのフィードバックを反映していきます。

――ゲームプレイを統括する立場からして、ゲームのどの部分を注目して楽しんでもらいたいですか?

Caroline エイデンの新しい操作感と、QTEを省いた新しいアクションです。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』では、新しいストーリー、新しいゲーム、新しい体験を味わえますので、期待していてください。プレイヤーの皆さんが、ジョディの人生に共感してもらえることを願っています。


Guillaume de Fondaumière氏
Co-CEO 兼 エグゼクティブプロデューサー
Co-CEOとして、すべてのビジネス案件を管理し、スタジオを運営する。また『ファーレンハイト』や『ヘビーレイン -心の軋むとき-』、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のエグゼクティブプロデューサーとしても活躍。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その4】_05

――Guillaumeさんは、Quantic Dreamの社長としてマネージメント業をこなしつつ、クリエイティブな分野でも活躍されているとうかがいました。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のトレーラー映像は、Guillaumeさんがたったひとりで作っているそうですね?

Guillaume de Fondaumière氏(以下、Guillaume) 昔はひたすらビジネスの勉強をしていましたが、デジタルエンターテインメント業界に足を踏み入れてからは、3Dアニメーションについても学ぶ、映像系のディレクションを行ったこともありました。ですので、トレーラー映像は、自分が持っているクリエイティビティーを存分に発揮できる場所なので、その作成だけは誰にも渡さないぞ、と(笑)。こうしてトレーラー映像を作っていると、Davidたち開発チームと深く関わることができるので、そういうプロセスはすごく重要だと思います。いつもDavidとアイデアの投げ合いをしているんですよ。イエス、ノー、イエス、って(笑)。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その4】_02

――トレーラー映像は、ある意味ゲームの顔だと思います。Guillaumeさんが考える『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』、それとQuantic Dreamの魅力とはなんでしょう?

Guillaume Quantic Dreamは、最新のグラフィック技術だったり、パフォーマンスキャプチャーのスタジオなどを有していますが、いちばん大事なことは“意味のある作品”を作ろうという心意気を持っていることです。ゲームをプレイしたユーザーの世界観に影響を与え、人生の何らかの意味を見出してもらうことを目的としています。

――以前、Davidさんにインタビューした際に、「マーケティングを分析してゲームを作ることはない。自分がいまもっとも表現したいテーマをゲームに落とし込むだけ」とコメントしていました。Quantic Dreamの運営を支えるGuillaumeさんの立場としては、Davidさんと意見がぶつかることもあるのではないでしょうか?

Guillaume Davidと私とのあいだで意見が衝突することはなく、いつも協調しています。私はDavidが持っているビジョンをすべて信じているのです。『ファーレンハイト』や『ヘビーレイン -心の軋むとき-』を作ったとき、彼のビジョンをまわりに伝えるのが私にとってのチャレンジでした。幸いなことに『ヘビーレイン -心の軋むとき-』が多くの人に受け入れられ、状況は少しずつ変わってきていますが、将来的には彼のビジョンがもっと多くの人に広まることを願っています。

――いまとなっては、多くのゲームファンがDavidさんのビジョンに興味を持っていますが、『ファーレンハイト』や『ヘビーレイン -心の軋むとき-』のときはどんな状況だったのでしょうか?

Guillaume 自分たちのビジョンを誰かに共有してもらうのはすごく難しいことだと実感しました。『ファーレンハイト』を作っていたときは、アメリカであるゲーム会社にプレゼンテーションをしましたが、私がゲーム内容を説明してすぐに「NO」という返事で却下されてしまいました。14時間もかけてアメリカまで行ったのに、5分で帰されてしまったのです。あのときはゲームもマスター3週間前でほとんど完成していたというのに……。その一方で、ソニー・コンピュータエンタテインメントのフィル・ハリソンさんたちとのミーティングでは、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』のコンセプトを伝えました。すると彼らは「そのアイデアは実現するまでに長い時間が必要になりそうだから、いまからいっしょに仕事をしよう」という返事をくれたのです。それが、我々Quantic Dreamが7年間ソニー・コンピュータエンタテインメントと仕事をしている理由のひとつですね。

――ビジョンを信じてくれる信頼できる相手がいたわけですね。

Guillaume そうですね。私たちのように業界のメインストリームとはまったく違ったビジョンを持っていると、いちばん難しいのがどの時点で諦めなければいけないのか、という点です。ビジョンを実現するためには、いろいろなドアを叩いて売り込む必要がありますが、売り込み先でアイデアを聞き、ビジョンを変えてしまいがちなのです。その誘惑に耐え、一貫したビジョンを持って、長い時間をかけてよいパートナーを探すことが重要だと思いました。

——なるほど。『ヘビーレイン -心の軋むとき-』から3年、ビジョンを形にするために邁進していて、こうして世界中のメディアに披露することができました。感想はいかがですか?

Guillaume 開放感とともに高揚を感じます。今回のイベントは、世界中のメディアとコミュニケーションが開始されるキックオフみたいなもので、これを契機にインターネットや雑誌で情報がアップされたりして、それによってどんな反応があるのか、開発チーム全体で楽しみにしています。じつは、今回のプレゼンテーションでホームレスのシーンをチョイスしたのは私だったりします。どのシーンを実際にお見せするか本当に悩んだのですが、皆さんの反応がよかったのでひと安心です。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』の感情的な部分がうまく伝わったかと思います。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その4】_03

――これから2013年10月8日(欧米版の発売時期)までのあいだ、開発チームはどんな取り組みを行うのでしょうか?

Guillaume すでにゲーム全体の骨組みはできあがっていて、ストーリーも始めから終わりまで用意されている状態です。いま注力しているのは、ゲームプレイのブラッシュアップです。キャラクターの顔のひとつひとつの表情だとか、仕草だとか、そういった細かいところのクオリティーを上げていきます。ユーザーテストも行っている最中で、そこからのフィードバックも取り入れていくつもりです。そして最後のレイヤーとして考えているのが音楽です。すべての要素を盛り上げるために、効果的に入れ込んでいきたいですね。

――『ヘビーレイン -心の軋むとき-』のとき、スタッフの人数は100人程度だったのが、いまとなっては倍の200人に増えています。これからのQuantic Dreamはどこに向かうのでしょうか?

Guillaume 私たちは、ひとつのプロジェクトにすべての人員を割いているわけではありません。成長戦略のひとつとして、2010年にDavidと私でプレイステーション3からプレイステーション4まで含まれたロードマップを計画しました。今回のスタッフの増強は『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のためですが、際限なくスタジオを拡張するつもりはなく、すべては計画のうえで拡張しています。Quantic Dreamはさまざまなリサーチを行っているので、つぎのプロジェクトに向けて戦略的な増強を行っています。スタッフの人数が増えるとビジョンを共有するのが難しくなりますが、それぞれの部門どうしのコミュニケーションを増やし、それぞれのスタッフに影響する形でビジョンをシェアすることこそが大事だと思っています。


 スタジオツアーリポートの最終回は2013年4月18日(木)に更新予定。最後はDavid氏へのロングインタビューなどを掲載する予定なので、乞うご期待!


BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)
メーカー ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2013年発売予定
価格 価格未定
ジャンル アドベンチャー / ドラマ
備考 開発:Quantic Dream