作家ベニー松山氏による『デモンゲイズ』ショートノベル【第二回】「伝説を纏(まと)いし神聖騎士王」

角川ゲームスより2013年1月24日発売予定のPS Vita向け完全新作ダンジョンRPG『デモンゲイズ』を題材にしたショートノベルの【第二回】「伝説を纏(まと)いし神聖騎士王」をお届け。

●連載第二回を掲載!

matuyama.jpg

■ベニー松山氏
1988年、DRPGの元祖とされる『Wizardry』を題材にした小説『隣り合わせの灰と青春』(Jicc出版局:現・宝島社)を発表。その後、国産オリジナルWizardryのゲームボーイ用ソフト『ウィザードリィ外伝II・古代皇帝の呪い』(アスキー)のシナリオ・ゲームバランスを担当する等、DRPGとはとりわけ縁が深い。スタジオベントスタッフ所属。

 角川ゲームスより2013年1月24日発売予定のPS Vita向け完全新作ダンジョンRPG『デモンゲイズ』。ダンジョンRPGの制作に定評のあるエクスペリエンスが開発しており、ファンタジーの世界を舞台に、異質の半機械生命体 “デモン” を操る力を持つ“デモンゲイザー”となって迷宮を攻略していく作品だ。そんな『デモンゲイズ』を題材にしたショートノベルを、ダンジョンRPGに縁の深い作家のベニー松山氏がファミ通.comにて連載中だ。今回は、【第二回】「伝説を纏(まと)いし神聖騎士王」をお届けする。


●デモンゲイズショートノベル第二回「伝説を纏(まと)いし神聖騎士王」

 私は聖騎士となるべくこの世に生を受けた。我が名はネメシス――亡き父上は私に、正義の怒りをもって邪悪を討てと、そのような意味を込めてこの名を授けてくださったのだという。まさに、まさに私は父上の想いに応えんとしている。
 我が一族は長きにわたる、それこそ永遠とも思えるほどの雌伏の歳月に耐えてきた。家伝によれば、一族の祖が世界を分かつ大洋を越え、遙かなるアルダの地(◆)から西方のこの大陸へと移り住んだのは、もう数百年も前のことになる。我らが受け継ぐのは、崇高にして神聖なる血統――かつて円卓の騎士として魔王を討ち滅ぼし、闇に呑まれかけていた世界を救った英傑のひとりルミーナ・クライス・グロムバルク(◆)に連なる王家の血脈なり。
 もしも父祖がアルダに留まっていたなら、我が父はいずれルミーナ王女が興した新生グロムバルク王国の正統な後継者となり、私はそれに続く女王となって広大な王土を治めていたのやも知れぬ。だが、誇り高き父祖はあえて故国を離れ、新天地にて王の血統を育む道を選んだ。跡目争いによる国の乱れを避けたのか、あるいは、暗雲に覆われようとしているこの大陸の今を予期してのことであったのか……。
 いずれにせよ、高祖(こうそ)ルミーナ王女の血を引くこの私が、彼女と同じパラディンとして剣を取り、盾を掲げるのは至極当然のことであったのだろう。デモンなる悪しきものどもが大陸の辺域・呪われしミスリッドの地に現れ、滅びたグリモダールの城下にさらなる厄災を振りまいていると耳にするに及び、私は立ち上がった。今こそ雄飛の時なのだと!
 新たな地に根付こうと勤しむあまり神聖王家の使命を忘れ、耕作やら牧畜やらの俗事に精を出してばかりの一族郎党の目を覚まさせるため私は故郷を発った。ルミーナ王女がそうであったように、困難な戦いを乗り越えて自ら王権を授かる資格があると証を立て、荒廃したミスリッドに我が王国を建てるべく……この日があると信じて、私は家業などに注力して堕落することなく、ただただ武の研鑚に励んできたのだ! それこそが当主の務めなのだから!
 しかし、長い旅路の果てに辿り着いたミスリッド探索の拠点・宿酒場“竜姫亭”にたむろしていたハンターたち(◆)にとって、私はいささか畏れ多い存在であったようだ。
 賞金稼ぎと呼ばれる彼らに、私はこう語りかけた。汝(なんじ)ら、由緒正しき王の末裔(まつえい)たる我が剣のしもべとなり、邪なるデモンをともに討伐せん――と。そののち、魔物はびこるグリモダール城を清浄なる宮殿へと戻し、我が王朝を築いたあかつきには、汝らを第一の臣下として迎え働きに存分に報いるであろう、とも。早い者勝ちになっては不公平であろうから、殺到する応募者向けにクジまでこしらえておいたのだが、意外にも彼らはあいまいな笑顔を浮かべるばかりで一向に手を上げようとはしない。父祖伝来の鎧――口伝によれば円卓の指導者エクス・ランドライト(◆)の遺品とされる具足(◆)――を身に着けた私は、どうやら賞金稼ぎたちの目にはあまりにまぶしく、おいそれと近づいてはならない貴人に映ってしまったらしいのだ。無理もない。王の品格は知らずにじみ出てしまうもの。恐れ入る彼らを責めるのは酷というものだった。
 とは言え、単独でミスリッドの地の探索を強行するほど私は自惚(うぬぼれ)てはいない。いくら私自身が鉄壁の守りを誇る聖騎士であろうと、守護すべき仲間がいなければこの技能も宝の持ち腐れである。さてどうしたものか、と途方に暮れた矢先に、その男は現れた。
 デモンを捕らえる魔眼を持つ異能の存在・デモンゲイザー――この得難(えがた)き人材が私の仲間に名乗りを上げたことで、状況は一気に好転した。あれよあれよと言ううちにパーティのメンバーは揃い、私たちはデモンを狩る者として竜姫亭でも一目置かれるようになったのである。この強運もやはり、私に流れるグロムバルク王家の血が呼び寄せたものなのだろう。そう……ルミーナ王女(◆)のもとに、大英雄エクスに導かれた円卓の生徒たちが集ったように……。
 運命のうねりを今、私は感じている。私こそが選ばれし者、このミスリッドに永遠の平和をもたらす真の王者なのだ――と!

「……といった妄言を吐く困ったちゃん、ネメシスくんはちゃんとオズくん(◆)の役に立ってるのかねぇ? 賞金稼ぎの連中にも相手にされてないところを、彼に押しつけちゃったワケだけれども」
 竜姫亭(◆)で道具屋を営むエルフ、レゼルム(◆)が大広間のテーブルでプリンをつつきながら、いかにも他人事といった調子で続ける。「ボクが知る限り、ルミーナ王女以降のグロムバルク王家に傍系(ぼうけい)があったなんて話は聞かないし、ましてこっちの大陸に渡ってくる物好きな王族がいたなんて与太話はねえ……ないない、ないよ。父からも聞かされたことがない」
「たぶん御先祖さんが吹いた大ボラを真に受けちまったんだろうな」
 武器屋のカッスル(◆)が、こちらは幾分同情した口調で溜め息をつく。「あの伝説の鎧とやらも、どう見てもガラクタだしな。エーテルを注ぎ込む(◆)だけ無駄ってもんだ」
「はい……先日強化したいとおっしゃったので、むしろ手を加えず記念品として取っておいたほうが良いと説得して、倉庫にお預けいただきました」
「ひゃっ! プ……プロメスくん(◆)、いたんだ? でも、そりゃナイスだ」
 地下室の棺桶を寝床にする葬儀屋の少女プロメスが、いつもの下着姿でいつの間にかレゼルムの背後に立っている。
「まあ、それでも自分が物語の主人公だ! って信じてるだけ、あの娘はオズのいい仲間なんだろうよ。ああいう、自分が特別だと思い込めるのも才能だと思うぜ」
「はい……そうでなくては“復活”も困難です」
「心の強さってヤツかねぇ? 少しばかりイタイけれども。ふひっ!」

*************************************

「確かにスーパーキャラじゃなかったですけれども! こいつ、このパラディン、ネメシス、要は厨二病じゃあないですかあ!」
 担当K野が電話の向こうで何やら騒いでいるが、携帯を耳から30センチほど話しているBはどこ吹く風といった表情である。
「笑いあり涙ありの感動スペクタコー! とか言ってたじゃないですかあ! しかも『円卓の生徒』のキャラまで引っ張り出してきて、妄想だけって、パンダですか!」
「孟宗竹はモウソウチクって読むそうですよー」
「ああもうそんなトコだけ答えやがって! もう今日が年内最終更新日なのでこのまま行きますけど、次回もこんな仲間ばっかりじゃないですよね!?」
「いけないK野さん! 来年のことを言えば鬼が笑いますよ!」
「あと4日で来年だよ! むしろ私に正月は来るんですか!? もしもし、もしもォし!」
 すでに通話は切れている。K野の脳裏には今はっきりと、タンカーに武装海賊が乗り込んでくるさまが思い描かれていた……。


demon/アルダ地図.jpg demon/エクスランドライト.jpg demon/ルミーナ.jpg

◆アルダの地
ミスリッドの東にある巨大な大陸。先住の民であるドワーフらの古い言葉で「人々の」という意味を持つ。
※PSP『円卓の生徒 The Eternal Legend』の舞台となっている。

◆エクス・ランドライト
円卓の騎士のリーダー。その昔、アルダの地で活躍した英雄。魔王に打ち勝つための強い絆を育むべく、円卓の騎士たちを自らの生徒として育成し活躍した。
※PSP『円卓の生徒 The eternal Legend』の主人公。

◆ルミーナ・クライス・グロムバルク
グロムバルク王家の末裔。亡き両親の遺志を継ぎ、魔王の打倒と王都の復興を目指し、円卓の生徒となり尽力した。
※PSP『円卓の生徒 The Eternal Legend』に登場したキャラクター。

demon/竜姫亭.jpg demon/ハンターたち.jpg demon/レジェンダリメイル(鎧).jpg

◆竜姫亭
賞金稼ぎたちの憩いの宿で、ミスリッドで開業している最後の宿。魔物が住むミスリッドの城下を見下ろす小高い丘の上に建っている。賞金稼ぎたちが集う酒場でもあり、ここで女主人に認められた賞金稼ぎは、この館に下宿する事を許される。

◆ハンターたち
竜姫亭に出入する賞金稼ぎたち。ミスリッドの地に眠る財宝を狙う。迷宮から帰ると、いつも館の大広間で酒を浴びて管を巻いている。

◆レジェンドメイル
未だ色褪せぬ英雄が携えし鎧。空の叙事詩に登場するシュバリエの鎧。歴戦を経て傷すら付かぬ正に伝説級の一品。
※PSP『円卓の生徒 The Eternal Legend』に登場する主人公エクス・ランドライトが身に付けたとされている。

demon/オズ.jpg demon/レゼルム.jpg demon/カッスル.jpg

◆オズ
記憶を失った謎の青年。デモンゲイザーのデフォルト時の名前。デモンを捕らえる魔眼の力を買われ、賞金稼ぎとして生きる事となった。己が抱える謎と、竜姫亭で暮らすための家賃を稼ぐため、ミスリッド城下で戦いに明け暮れる。
※実際のゲーム中では、プレイヤーの任意で名前を変更できる。

◆レゼルム・ランティール
竜姫亭で道具屋を営むエルフ族の青年。お調子者の性分からかトラブルをよく招く。魔法に関する知識は広く、たびたび主人公もその世話になる。カッスルに絡んでよくケンカをする。そして酔うと脱ぐ。

◆カッスル・グロンダイク
竜姫亭で武器屋を営む青年。この地に隠された、とある財宝を探している。不器用だが熱い性格で、意外と話好きでもある。またミスリッド地方の事に詳しい。道具屋のレゼルムとは犬猿の仲。

demon/プロメス.jpg demon/エーテル圧搾機.jpg

◆プロメス
竜姫亭で葬儀屋を営む謎の少女。傷つき倒れた者を復活させる秘術を持つ。いつも眠そうで無気力な発言が多く、何を考えているか全く分からない。女の子としての羞恥心がないのか、下着のまま平気で館内を歩き回ったりする。

◆エーテル圧搾機
武器や防具に秘められた魔力の元「エーテル」を抽出し、武器や防具を強化できる特殊な機械。

【第一回】「終末の鐘声(しょうせい)、魔城に鳴り響く」はこちら
【第三回】「救世の不死鳥は舞い戻る」はこちら



デモンゲイズ
メーカー 角川ゲームス
対応機種 PSV PlayStation Vita
発売日 2013年1月24日発売予定
価格 6090円[税込]
ジャンル RPG / ダンジョン
備考 PS Store ダウンロード版は5040円[税込]、開発:エクスペリエンス

(C) 2013 KADOKAWA GAMES / Experience ※画面は開発中のものです。