『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』岡村佳人ディレクター&阿知波大輔サウンドチーフインタビュー【完全版】

ガストの『アトリエ』シリーズ最新作『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』。週刊ファミ通2012年7月12日号(2012年6月28日発売)に掲載された、ガストの岡村佳人氏、阿知波大輔氏へのインタビューを完全版でお届け。

●読者の皆さん、そろそろ妹は救えましたか?

 アイテム調合やバトルなど、楽しい要素がたっぷり詰まったガストの『アトリエ』シリーズ最新作『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』(2012年6月28日発売)。週刊ファミ通2012年7月12日号(2012年6月28日発売)に掲載された、ガストの岡村佳人氏、阿知波大輔氏へのインタビューを完全版でお届け!


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左:ガスト ディレクター
岡村佳人氏 Okamura Yoshito
右:ガスト サウンドセクション チーフ
阿知波大輔氏 Achiwa Daisuke

■新シリーズの幕開けを迎えて
――ついに発売日を迎えたいまのお気持ちはいかがですか?
岡村佳人氏(以下、岡村) 毎年この時期に思っていることではあるのですが、「ようやく終わったな」と……。無事に発売することができて、ほっとしています。

――『アトリエ』シリーズは1年に1作必ず発売されていますが、その開発期間の短さにはいつも驚かされます。
岡村 『アトリエ』シリーズはガストの看板タイトルですので、どうすればコンスタントに発売できるかは、つねに考えていますね。内外スタッフとの連携の取りかただったり、リソースの活用法だったり。

――本作の開発を振り返って、苦労した点、思い出深い点はありますか?
岡村 今回は新シリーズということで、方向性や仕様が決まるまで、大いに苦労しましたね。アーランド3部作のときは、ユーザーの皆さんが期待しているものがある程度見えていましたが、今回は前作までのイメージをリセットしましたから。
阿知波大輔氏(以下、阿知波) 新しさを実現しつつ、『アトリエ』らしいものを作るためにどうすればいいか、試行錯誤しながら開発しました。

――ひと足先にプレイさせていただいたのですが、今回はストーリー面でもシステム面でも、キャラクターの個性がぐっと強まったという印象を受けました。仲間がフィールド上で喋り、採取をしてくれるというのは、今回が初めてですよね。
岡村 『アトリエ』シリーズの魅力のひとつは、個性豊かなキャラクターが登場することだと思っています。その魅力をもっとシステムに反映させようということで、仲間が採取に参加する仕様にしました。

――パーティーメンバーだけでなく、街の人々のイベントも充実していますね。
岡村 イベントは全部で500個近く用意しましたので、たっぷり楽しんでいただけると思います。
阿知波 どのキャラクターについても、イベントは最後まで見ていただきたいですね。途中で止めるともったいないと言うか……。
岡村 イベントを最後まで見ることで、そのキャラクターの生きかたや目的がかいま見えるようになっています。いままでのシリーズ作のイベントとはまた違う印象の内容になっていますよ。

――いままでと違うと言えば、すべてのイベントが3Dキャラクターモデルで表現されるようになったのも印象的です。
岡村 フライトユニットさんは本当にいい3Dモデルを作ってくださるので、そのモデルをもっと活かすべく、一枚絵を除くイベントはすべて3Dモデルで作りました。キャラクターデザインを担当された左さんの絵のいちばんいいところが、そのまま3Dモデルになっていますので、ぜひ注目して見てください。


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▲イラストレーター・左氏のイラスト(左)とフライトユニットが手掛けた3Dモデル(右)。

――ちなみにおふたりのお気に入りのキャラクターは誰ですか?
岡村 もちろんみんな好きですが、あえてひとり挙げるなら、キースグリフですね。最近の『アトリエ』作品にはいない、渋いおっさんです。
阿知波 僕はリンカが好きです。岡村にとられなくてホッとしました(笑)。リンカのイベントは、つねに彼女が付き従っているマリオンとの関係性が描かれるところがポイントですね。また、いろいろ奇天烈なことを言うかと思えば、シリアスなシーンもあったりして見ていておもしろいです。

――週刊ファミ通編集部の中では、ウィルベルが人気です。
岡村 ウィルベルは、わかりやすいデザインと性格に、声優の瀬戸麻沙美さんのハッキリした声がマッチして、非常に魅力あるキャラクターになったと思います。

――ウィルベルは、バトルでの動きもかわいいですよね。バックアタックをするとき、ホウキに乗ってぎゅーんと回るところがとにかくかわいいです。
岡村 あの動きは、バトルの演出を考えているスタッフのこだわりの結晶です。最近は「バトルの演出、やりすぎなんじゃないの?」と言われることもありますが(笑)、本当に細かい動きまで作っていますので、楽しんでいただきたいですね。


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■プラスの幅が広がったバトルと調合
――バトルは、距離の概念が入ったことで戦略性が豊かになりました。
岡村 『メルルのアトリエ~アーランドの錬金術士3~』のバトルをそのまま発展させるだけでは、難度が高いものになってしまうので、距離の概念を設けて、別の方向に発展させてみました。

――距離とサポート行動をうまく使うと、有利に戦闘が進められますね。
岡村 アイテムとスキルを使うだけでも、戦闘はふつうに進められるのですが、さらに距離やサポート行動も利用すれば、一段とおもしろく楽しんでいただけると思います。

――おすすめのパーティー編成は?
阿知波 全員女性キャラクターにしていただいてもいいですし、お姫様と執事とナイト(アーシャ・キースグリフ・ユーリス)にしていただいてもいいですし。
岡村 序盤は女の子パーティーにならざるを得ないですけどね(笑)。キースとユーリスを仲間に誘えるようになったら、ぜひ彼らの勇姿を見てあげてください。おすすめのパーティーと言うと……基本的には、どのキャラクターも強いので、好きなキャラクターを使っていただければと。リンカは弱い敵を一掃できる広範囲のスキルが多い、キースはボス戦で役立つスキルが多いなど、それぞれ個性がありますので、自分に合うキャラクターを探してみてください。


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――続いて、調合について伺います。今回、調合の失敗がなくなったことに驚きました。
岡村 最近の作品では、調合に失敗することの意味がなくなっていたので、思い切って撤廃しました。
阿知波 昔の作品では、失敗してできた産業廃棄物を使わないと、作れないアイテムがありましたけどね。
岡村 新シリーズになったことですし、より多くユーザーの皆さんに遊んでいただくべく、調合の失敗やMPの消費など、プレイしていてストレスに感じられる要素はなくすことにしました。

――確かに、最近のシリーズ作では、調合に失敗したら、直前のセーブデータをロードしてやり直してしまっていました。
岡村 そうですよね。吟味した材料を使って失敗してしまったら、ロードするのがふつうだと思います。今回は、ロードではなく、いい結果を出すために時間を使っていただきたかったんです。
阿知波 マイナスの要素をなくして、プラスの幅を広くしたというイメージです。

――今回の調合は、いい結果を出すためにいろんな手順を試していると、どんどん時間が経ってしまって……ゲーム内の時間は進んでいないのに、現実の時間がどんどん進んでしまいます(笑)。
岡村 上から順番に材料を入れるだけでもアイテムは作れるので、調合の敷居は下がったと思うのですが、やり込み出すと詰め将棋になりますね。

――スキルをいろいろと使って、「ああ、やっとできる!」と思ったときにCPがなくなったときの悲しみと言ったら……。
阿知波 アイテム完成直前でやり直すことはよくありますね(笑)。
岡村 "手順を考える"という、前作の調合とは違うシステムを提案できたと思いますので、前作をやり込んだ方にも新鮮に楽しんでいただけると思います。
阿知波 「今回の調合は、ちょっと難しいな」と感じた方は、どんなアイテムでもいいので、ひとつのアイテムを高品質に作るべく、いろんな手順を試してみてください。いい結果を出すために有効なルールがわかってくるはずです。


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▲BGMの変更は、アトリエ内の日誌に触れることで行える。また、ワールドマップでも変更可能。

■ファミ通用にDLCを制作!
――本作でも、ダウンロードコンテンツ(以下、DLC)を配信されるのですよね。
岡村 はい。まずはソフト発売からまもなく、BGM追加パックを配信します。
阿知波 前作にもありましたが、このDLCを購入していただくと、BGMを好きな曲に差し替えることができます。今回は、ガストがこれまで発売したゲームや音楽CDから、1600曲以上を収録したパックを、なんと300円[税込]でご提供しています。
岡村 ガストサウンドチームの集大成ですので、ぜひお試しください。
阿知波 『ロビン・ロイドの冒険』とか、『ファルカタ』とか、マニアックなガストファンの方でないと知らないと思われるゲームの曲もいろいろ入っています。
岡村 僕のおすすめは『大正もののけ異聞録』のバトル曲です。僕が初めて開発に参加したタイトルなもので。
阿知波 きみ、好きやなぁ~(笑)。
岡村 (笑)。また、7月以降は、新たに作り起こしたコンテンツを配信していきたいと考えています。どんな内容になるのかは、ユーザーの皆さんの今後の要望次第ということで。

――DLCと言えば、週刊ファミ通8月9日号(2012年7月26日発売)の付録として、特別なDLCを用意してくださっているとのことですが。
阿知波 はい。BGM追加パックを用意させていただきました。DLCということで、本作の世界観からちょっと離れた曲でもいいんじゃないか……と思い、僕らなりの遊びを入れた曲を作りました。本編の曲には参加していないミュージシャンの方が演奏されているかもしれませんので、お楽しみに!

■寂しげで壮大なサウンド
――本作のサウンドは、阿知波さんおひとりで手掛けられたのでしょうか?
阿知波 いえ、私と、ガストサウンドチーム新人の下田祐、以前ガストに所属しており、現在はフリーで活動している柳川和樹さんの3人で作曲しました。

――岡村さんから、サウンドについて何かリクエストはされたのですか?
岡村 統一感を出してほしい、フィールドのイメージを再現してほしい……ということはお願いしていますが、あとはほぼお任せしています。
阿知波 『アトリエ』シリーズは世界観が明確に決まっているので、イメージイラストなどを見て、曲の方向性を決めます。アーランド3部作は、地に足のついたアイリッシュケルト系の曲を作りましたが、黄昏の大地は、アーランドよりも現実からの遊離度が高いので、少し"異世界"風に……オリエントな音楽を混ぜました。ひと言で言うと、"怪しげ"な成分が増えました(笑)。

――怪しげ、ですか(笑)。
阿知波 たとえば、『アトリエ』と言えば"笛"のイメージがあるかと思います。アーランド3部作ではリコーダーや縦笛など、かわいらしい音の楽器を使っていましたが、今回はパンフルートという、かすれた音が出るフルートや、寂しげな音を出すオーボエなどを使っています。ですが、ずっと寂しい曲が続くわけではなく、ゲームの展開によって刻々と曲は変化していきますので、その変化をお楽しみください。
岡村 今回はアトリエが複数ありますが、それぞれのアトリエで曲が違うのもおもしろいポイントです。
阿知波 そのせいか、アーシャのアトリエの曲、なかなか聴かないんですよね(笑)。
岡村 基本、旅してますからね(笑)。

――お気に入りの曲はありますか?
岡村 なかなか聴かない、アーシャのアトリエの曲です。寂しげでありながら、いままでの『アトリエ』らしさも残っていて。フィールドですと、だいぶ物語が進んでから行けるようになる"浮遊地帯"の曲が好きです。寂しげかつ壮大感のある曲で、今回の世界観を端的に表していると思います。
阿知波 僕は、全部です。でもそれは、単純にすべての曲に思い入れがあるからではなくて、全部の曲がまとまって『アーシャのアトリエ』の世界を現出しているからです。ゲーム音楽のおもしろさというのは、すべての曲がひとつになっているところにあると思うので、ぜひまとめて聴いていただければと思います。サウンドトラックは3枚組で発売中です!

――今回はサウンドトラックとは別に、ボーカルアルバムも発売されましたね。
岡村 今回は前作よりも多くのアーティストの方にお願いして、ボーカル曲を9曲用意しました。ゲームのシーンと合わせて楽しめるのはもちろん、曲だけで聴いても楽しめるものになっています。ゲームをプレイした後に歌詞を読むと、より内容が理解できるものもありますよ。

――阿知波さんはシリーズ第1作から開発に参加されていますが、当時と現在とで、音楽作りはどのように変わりましたか?
阿知波 そうですね……ハードが進化したことで、一般の音楽制作と同じスタイルでゲーム音楽が作れるようになりましたよね。生演奏や生声を入れられるようになった。僕が大事だと思うのは、そのことによって、外部のミュージシャンの方々の考えかたやバックボーンが、ゲームの中に入ってくるようになったことです。これは意図的にそうしなくても、歌ったり弾いたりしてもらえば自然と入ってくる。そういった新たな個性が、それこそ調合のように影響し合って、新しいものができる。そんな化学変化のような制作ができるようになったことが、大きな変化ですね。非常に刺激を受けます。昔は、自分が歌を作るなんて、思ってもいなかったんですけどね。

――今回の『アーシャのアトリエ』の曲も、そのような化学変化によってできあがったものなのですね。それでは、最後に読者にメッセージをお願いします。
岡村 いつも『アトリエ』を支えてくださっている皆さんのおかげで、無事発売日を迎えることができました。本作には、新シリーズということで、新しい試みを多数入れています。初めての方には、「これが『アトリエ』なんだ」と興味を持っていただけるとうれしいです。とはいえ、もちろん『アトリエ』らしさは残っていますので、シリーズファンの方もご安心ください。ぜひプレイした感想、今後の『アトリエ』がどの方向性を目指すべきか、ご意見をお送りください。よろしくお願いします。
阿知波 『アーシャのアトリエ』で新シリーズが始まりました。自信を持ってお送りしてはいますが、いい意味でも悪い意味でも、皆さんの予想していたものとは違うかもしれませんので、ぜひご意見いただければと思います。また、DLC第1弾はかなりオトクだと思うので、ぜひ試してみてください!




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