現役サッカー選手も熱中する『FIFA』シリーズの完成度

 エレクトロニック・アーツは、イギリスのロンドンで2012年4月19日と20日(現地時間)の両日、プレス向けイベント“EA EU SHOWCASE 2012”を開催。その二日目となる4月20日、『FIFA』シリーズ最新作『FIFA 13 ワールドクラス サッカー』の発表、およびプレゼンテーションを実施した。会場では、『FIFA』シリーズのキーマンたちから話を伺うことができたのだが、ここでは、エグゼクティブプロデューサーのDavid Rutter氏とラインプロデューサーのNick Channon氏のミニインタビューをお届けしよう。

※『FIFA 13』の紹介記事は→こちら

実在の選手からのフィードバックも反映

『FIFA 13』エグゼクティブ プロデューサーが明かす現役サッカー選手からの意外なリクエスト【EA EU SHOWCASE 2012】_04
エグゼクティブプロデューサー:David Rutter氏

――『FIFA 13』では審判のAIも向上しているということですが、具体的にはどう賢くなっているのでしょうか。

David Rutter まず、競り合いと反則を取られるぶつかり合いをゲーム内で判定するのは非常に難しいことなんだ。新しいプレイヤー・インパクト・エンジンではさまざまな体の各部位でどういう力が働いていることを判定可能になった。これを応用して、こういった場合は反則を取る、あるいは取らないといった区別ができるようにしたんだ。また、反則に厳しい審判、厳しくない審判という個性もあるので、そういった違いも戦略に活かしてほしいね。

――プレゼンでは『FIFA 13』はサービスにも力を入れていくというお話がありましたが、どんなサービスが予定されているのですか?

David いい質問だけれど、申し訳ないがまだ答えられないんだ(笑)。でも、たとえば、その週に実際にあった試合をすぐにゲームに反映して、それを体験できるような仕掛けも考えているよ。

――いろいろできることは増えていますが、その分、操作が複雑になるのでは、という危惧もあるのですが。

David いや、とてもシンプルな操作で楽しめるので、その点は安心してほしい。

――初心者でもすぐに楽しめると?

David もちろん。ファーストタッチ・コントロールなど不確定要素もあるので、予測不可能な展開も期待でき、何が起きるかわからないといったサッカーの醍醐味も味わえるはずだ。ファーストタッチ・コントロールにより、トラップミスが逆に思わぬチャンスボールになったりね。現実のサッカーでは強い者が必ずしも勝つとは限らないけれど、それと同じようにゲームでも番狂わせが起きることがあるかもしれないね。

――『FIFA 12』からのユーザーのフィードバックで『FIFA 13』に反映されているものはありますか?

David いちばん多くあった意見が、ボールを持ったときに味方選手のサポートがないといった攻撃時の味方のAIについてのものだったんだ。それを解消すべくボールを持っていないときの選手の動きを改良して、『FIFA 13』から盛り込まれる“アタッキング・インテリジェンス”という要素に落とし込んだ。

――『FIFA』シリーズは実在の選手にもファンが多いようですが、そういった選手たちから何かリクエストはありましたか?

David たくさんの要望を受けているよ(笑)。「ゲーム内の自分の能力をもっとよくしてくれ」とはよく言われるし、ユニークなリクエストでは、自分が入れているタトゥーをゲーム内の自分にも入れてほしいと言われたこともあったね(笑)。一度、マンチェスター・シティの選手たちを開発スタジオに招いて、『FIFA』シリーズをプレイしてもらって、どこを改善したらいいか意見をお願いしたことがあるんだけど、選手側からはチートのやりかたを教えてくれ、と頼まれたり(笑)。でも、そこまで実在の選手に熱中してもらえて光栄だよ。

――選手からの要望で実際に取り入れたものは?

David 実際に頼まれたわけではないんだけど、昨年、ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)の髪が話題になったことがあったけど、ちょうど『FIFA 12』の発売間近のころで、急遽、彼の髪をフサフサにしておいたよ(笑)。

――最後に日本のファンへメッセージを。

David 日本ではナンバーワンのサッカーゲームではないけれど、そんな『FIFA』シリーズをプレイしてくれている人にまずはお礼を言いたい。日本のファンのリクエストも今後のゲームに活かしたいと思うので、ぜひ意見を送ってください。

『FIFA 13』エグゼクティブ プロデューサーが明かす現役サッカー選手からの意外なリクエスト【EA EU SHOWCASE 2012】_03
『FIFA 13』エグゼクティブ プロデューサーが明かす現役サッカー選手からの意外なリクエスト【EA EU SHOWCASE 2012】_02

カジュアルゲーマーにも楽しんでもらえるような創造性豊かな作品にしたい

『FIFA 13』エグゼクティブ プロデューサーが明かす現役サッカー選手からの意外なリクエスト【EA EU SHOWCASE 2012】_05
ラインプロデューサー:Nick Channon氏

――ラインプロデューサーでキャリアモードとオンラインを担当されているということですが、具体的には?

Nick Channon 『FIFA 13』では、ラインプロデューサーを担当しているんだ。役割としては、ざっくりとした言いかたで申し訳ないけが、なるべくよりよい製品になるようチェックする役目を担っているよ。

――具体的にはどういったチェックを?

Nick プロデューサーといっしょに盛り込むべき新機能を検討したり、それを実際に実現すべく開発チームをまとめたり、パッケージデザインを決めたりなどだね。

――『FIFA』シリーズは年に一度というハイペースでナンバリングをリリースしています。開発はどういう体制で行われているのですか?

Nick 開発のコアチームは80~100人ほどで、そのチームが毎作開発しているんだ。それ以外にも、たくさんのスタッフが関わっているけれど。

――『FIFA』のパッケージに起用する選手は、どうやって決めているのですか?

Nick それについては、私は関わっておらず、マーケティングのチームが地域ごとに選出して決めているんだ。ありがたいことに、最近は「『FIFA』シリーズのパッケージに使ってほしい!」と言ってくれる選手もいて、『FIFA』シリーズがサッカー界でも浸透していることを誇りに思っているよ。

――プレス向けに実施されたプレゼンテーションでは、『FIFA 12』からの進化ではなく、“革命”だとのお話がありましたが、それはどういうことなのですか?

Nick 『FIFA 12』までは、どの選手も完璧なトラップをしていたけれど、『FIFA 13』から実現した“ファーストタッチコントロール”によって、選手によってトラップの能力が異なり、不確定要素が発生するんだ。また、“アタッキング・インテリジェンス”によって攻撃のバリエーションが増えたりと、『FIFA 13』は飛躍的にリアルなサッカーゲームとして生まれ変わっている。本物のサッカーは予測不能な部分が魅力のひとつだけれど、サッカーゲームでもそれを実現したかったんだ。また、選手の挙動をよりリアルに再現できる“新プレイヤー・インパクト・エンジン”によって、ボールを持っていないときの動きもかなり現実に近いものになっているよ。

――『FIFA』シリーズも作品を多数重ねてきましたが、まだ、今後進化する余地があるのはどの部分でしょうか?

Nick 今後のプランにも影響するので、詳しくは言えないけれど(笑)、サッカーというスポーツは奥深いので、ゲームで実現すべきことはまだまだ残っていると思うよ。我々の目指すところとしては、現実のサッカーに忠実でありながら、コアゲーマーだけでなくカジュアルゲーマーにも楽しんでもらえるような創造性豊かな作品にしていきたいという点なんだ。

――作品を重ねたシリーズは、進化する部分がどんどんマニアックになっていくという傾向がありますか、『FIFA』シリーズに関してそういった懸念はありませんか?

Nick それはひとつの課題として我々も認識している点だよ。ただ、データでは、いままでのところ新規のユーザーも多数獲得できているようなんだ。私たちは「いいゲームを作れば、新しいユーザーを含め、みんながプレイしてくれる」という信念で作っているんだけど、それと同時にこれからも新規ユーザーのことも意識しつつ、いい作品がリリースできるようがんばるつもりだ。

――ほかのジャンルとは違い、サッカーゲームのシェアはエレクトロニック・アーツとKONAMIが独占といっても過言ではない状況ですが、サッカーゲームの開発というのは、やはりかなりハードルが高いジャンルなのですか?

Nick そう思うよ。我々もシリーズを重ね、幾度となくゲームエンジンの改良を行って、いまの形ができあがったわけだから、進化の過程や長年蓄積してきたノウハウはとても重要なんだ。KONAMIさんの『ウイニングイレブン』からも刺激を受け、そのおかげでいいペースで進化できたとも思っているよ。

――『ウイニングイレブン』もプレイされるのですか?

Nick ああ(笑)。プレイして勉強させてもらっているよ。

――ゲームとは関係ないですが、今回の“UEFA EURO 2012”はどこが優勝すると思いますか?

Nick もちろん、イングランドさ! と言いたいところだけど、スペインかな……(笑)。

――確かに、スペインは強いですよね……。サッカークラブではどこのファンなんですか?

Nick リバプールだ。スティーブン・ジェラードのファンなんだ(笑)。

――日本のファンにメッセージを。

Nick 日本でも徐々にではあるけれど、『FIFA』シリーズをプレイしている人が増えているようでありがたく思っています。『FIFA13』は『FIFA 12』からさらにパワーアップしているので、期待して待っていてください。そしてプレイされたら、ぜひご意見をフィードバックしてくれたらと思います。

『FIFA 13』エグゼクティブ プロデューサーが明かす現役サッカー選手からの意外なリクエスト【EA EU SHOWCASE 2012】_01