いつでもどこでも『FIFA』に触れられる機会を作りたい

EA SPORTSのトップが分析する『FIFA』シリーズヒットの要因――日本での戦略も語る【EA EU SHOWCASE 2012】_02

 エレクトロニック・アーツは、2012年4月19日、20日(現地時間)、イギリスのロンドンにおいてプレス向けの発表会“EA EU SHOWCASE 2012”を実施。その二日目となる4月20日は、『FIFA』シリーズ最新作『FIFA 13 ワールドクラス サッカー』の発表、およびプレゼンテーションのためだけに費やされた。このことからも、エレクトロニック・アーツが『FIFA』シリーズをいかに重視しているかが伺える。ここでは、そんなエレクトロニック・アーツのスポーツゲームブランド“EA SPORTS”のトップであるシニアバイスプレジデント、Andrew Willson氏に会場で直撃。『FIFA 13』の魅力や『FIFA』シリーズの日本での戦略などを聞いた。

※『FIFA 13』の紹介記事は→こちら

今後はDLCなどサービスで勝負することがもっと重要になってくる

EA SPORTSのトップが分析する『FIFA』シリーズヒットの要因――日本での戦略も語る【EA EU SHOWCASE 2012】_03

――まずはAndrew WillsonさんがEA SPORTSでどういった役割を担われてきたのかご説明いただけますか?

Andrew Willson エレクトロニック・アーツには12年間在籍しているんだけど、スポーツゲームやレースゲームなどたくさんの作品に携わってきたんだ。『FIFA』シリーズにはエグゼクティブプロデューサーとして『FIFA 07』から『FIFA 10』まで関わっていて、それ以降はEA Sportsのシニアバイスプレジデントとして、EA SPORTS全体を統括している。私が関わったあいだに『FIFA』シリーズが進化と言うよりも画期的に変化したことをもっとも誇りに思っている。

――『FIFA』のゲーム内容に関して、いまでもリクエストを出すことはあるんでしょうか?

Andrew 『FIFA 09』までは、ゲーム内容に関していろいろリクエストを出していたんだけど、いまはビジネス的な役割の比重のほうが大きいね。

――『FIFA』シリーズは、いまや欧州のサッカーゲームのシェアを大きく獲得していますが、その要因はどこにあると分析していますか?

Andrew 『FIFA 07』から大きくシステムを変えたことがひとつの転機になった。その当時はまだKONAMIさんの『Pro Evolution Soccer』(『ウイニングイレブン』欧州版のタイトル名)が大きなシェアを誇っていたんだけど、『FIFA 07』の革新的な変化が徐々に受け入れられ、以降はシリーズを重ねるごとに『FIFA』シリーズのシェアも拡大していったんだ。

――その革新的な変化がシェア拡大につながったと?

Andrew 毎作ごとにゲームプレイ部分をポリッシュ(磨く、の意。ゲームの完成度を高めること)してきて、それが大きな要因であることは間違いないけれど、ここ数年はサービスにも力を入れていて、それも奏功していると思う。そのサービスというのは、オンライン対戦や“EA SPORTS Football Club”(好きなチームをゲームでもサポートするという機能。プレイヤーの行動によって経験値が入り、クラブごとに集計され、平均などが算出される)というゲームでも好きなクラブに思い入れが深まる要素やダウンロードコンテンツなどだね。つねにユーザーが楽しめる施策を用意していることが、これからはもっと重要になってくると思う。

――『FIFA』シリーズは作品を重ねるごとに完成度が高まり、これ以上、劇的な進化は難しいのではと感じてしまうんですが。

Andrew 完璧なゲームというのはないと思っているんだ。というのは、ゲーム機自体も進化していくし、それにともないデバイスも進化し、プレイスタイルも変化する。最近で言うとKinect(キネクト)という新しい入力インターフェイスが登場した。我々はそういったものに合わせたゲームデザインを追求していく必要があるんだ。

――日本ではKONAMIの『ウイニングイレブン』が大きなシェアを獲得しています。これについてはどうお考えですか?

Andrew 日本での『ウイニングイレブン』ブランドの強さは認識しているし、個人的にも『ウイニングイレブン』はとてもいいサッカーゲームだと思っていて、学ぶべきこともたくさんある。ただ、『FIFA』シリーズと『ウイニングイレブン』はプレイスタイルが異なるので、『ウイニングイレブン』のファンの中にも『FIFA』シリーズを受け入れてくれる人もいると思っているんだ。実際に、日本からの『FIFA』のオンラインユーザーは増加傾向にあるしね。

――日本でのプロモーションで何か秘策は?

Andrew 『FIFA』シリーズのゲームプレイ部分の開発チームには日本人スタッフもかなり多くいるので、彼らの意見も聞きつつよりいい作品にしていくつもりだ。その日本人スタッフも日本で『FIFA』がトップシェアを取るべく情熱を持って開発してくれているので、そうなる日が早く来ればいいね(笑)。

――『FIFA』シリーズはマルチプラットフォームで展開し、iOS向けのアプリなどでも派生作品をリリースしていますが、多岐にわたって作品を展開する狙いは?

Andrew 家で腰を落ち着けてプレイできるときは据え置き機で、外出先なら携帯ゲーム機、ランチタイムなどちょっと時間にはスマートフォンといったように、いつでもどこでも『FIFA』に触れられる機会を作りたいんだ。これは『FIFA』シリーズに限らずエレクトロニック・アーツの方針でもあるんだけれど。

――『FIFA 12』についてもひとつだけ伺いたいのですが、いままで『UEFA EURO』はパッケージとして展開していましたが、今回は『FIFA12』のダウンロードコンテンツとしては配信することにした理由を教えてください。

Andrew ゲームは発売されてしばらくすると、プレイヤーが離れていってしまう。だが、ダウンロードコンテンツがあると継続的にプレイしてもらえ、ゲームの寿命が延びるのでは、との狙いからなんだ。また、継続してプレイしてもらうことで、新作、つまり今回では『FIFA 13』にも関心を持ってもらえるだろうという期待もある。

――Andrewさんは個人的にサッカーはプレイされていたんですか?

Andrew もちろん。サッカーに限らずいろいろなスポーツを経験したけど、サッカーは小学生からプレイしてたんだ。

――好きなサッカークラブは?

Andrew チェルシーだ! まだUEFAチャンピオンズリーグに勝ち残っているので(2012年5月15日現在。チェルシーは2012年5月19日に実施される決勝でバイエルンと対戦する)、ぜひ優勝してもらいたいね(笑)。

――では、最後に日本のファンにメッセージを。

Andrew もっともっと『FIFA』シリーズをプレイしてください(笑)。『FIFA 13』は前作からかなり進化しているし、発売後はダウンロードコンテンツにも力を入れる予定なので、いろいろと魅力が詰まった作品になると思う。ぜひ期待していてください。

――日本向けにJリーグのダウンロードコンテンツの配信はありませんか? 『UEFA EURO』のように。

Andrew いまはライセンスの問題などもあって難しいね(笑)。でも、いつか実現できたらと思っているよ。

EA SPORTSのトップが分析する『FIFA』シリーズヒットの要因――日本での戦略も語る【EA EU SHOWCASE 2012】_01