『スリーピングドッグス 香港秘密警察』現地の活気と混沌と湿度を思い出させる体験

公開日時:2012-10-09 00:00:00

2012年9月27日に発売されたプレイステーション3、Xbox 360、およびPC用ソフト『スリーピングドッグス 香港秘密警察』。香港ノワールの空気感が漂うストーリー、カンフーアクション映画を彷彿とさせる格闘バトルや銃撃戦が特徴的なアクションゲームだ。本稿では、その手の映画が大好物と言ってはばからないライターが感じた、本作の魅力をプレイインプレッションでお届けしよう。

■香港映画の世界に沈溺できる力作

西洋文明と東洋思想が入り混じり、亜細亜的カオスを形成する街・香港。『スリーピングドックス 香港秘密警察』は、この地を舞台にくり広げられるオープンワールドタイプのアクションアドベンチャーだ。海外で圧倒的な高評価を受けているタイトルであり、いよいよ日本上陸を果たした作品である。

それでも念のため説明しておくと、本作はいわゆる香港ノワールやカンフー映画に代表される香港映画のような世界で、犯罪組織に潜入する捜査官を演じるゲームである。犯罪組織の刺激的すぎる内情、警察と犯罪組織の戦い、オトリ捜査、男どうしの絆と裏切り、スタントマンなしの過激なアクション、スローモーションで描かれる銃撃戦……といったキーワードにピンと来るなら完全にストライクな内容だ。

また、舞台となる香港自体の描写も見どころのひとつ。路上にせり出す色とりどりの看板、風水思想に基づいた高層建築群などを見れば、香港映画ファンでなくともそこが香港だと肌で理解できるはず。そうした香港の表の顔だけでなく、増築をくり返して迷宮のように成長した建築物、ゴミの散らかるゴチャゴチャとした路地裏、そこでひしめき合いながら暮らす人々の姿が、現地のじっとりとした湿気を思い出させるほどのクオリティーで描かれている。空調の効いた場所でプレイしたにも関わらず、プレイ中はつねに蒸し暑い!……ような気がしたほど。

Dvt2K69382u779GMl851Gd7kqzrQxd5o Zcm3Vzvax9rxc7rmub7bu1j218NJu2md
FOPmqaP3D4WHYed7538MgmQNWMTLGdxR cNQ5NT79fiFRjV6sK739BYZH4ejBRA4A

こういった見た目を裏切らない力作なので、香港映画ファンだけでなくオープンワールドをうろつくのが好きだったり、実際の香港の雰囲気に魅せられた人ならマストバイ!……と締めくくってしまってもいいぐらいだが、せっかくの機会なのでこの作品の魅力をもう少し詳しくお伝えしていく。

■ストーリーも濃い目!

本作の主人公、ウェイ・シェンは香港で生まれ、10歳のときにアメリカに移住している。そしてアメリカで警察学校を優秀な成績で卒業した後、今回の潜入捜査に協力することになった。

彼が選ばれたのは、その生い立ちの特殊さによるところが大きいだろう。犯罪組織のメンバーに彼の幼なじみがおり、現地でのコネクションが生かせると判断されたのだ。狭い土地に人がひしめく香港では、刑事と犯罪者が幼なじみであることも決して珍しくはない……実際にそうなのかは定かではないが、まあ香港映画では定番のシチュエーション。

幼なじみを利用するのはひどい気もするが、ウェイには犯罪組織を一網打尽にしたい理由がある。彼の家族がアメリカに渡ることになったのも、姉が薬物中毒の末に死んだのも犯罪組織が原因だからだ(少なくともウェイはそう感じている)。彼は職務への責任、組織への憎しみ、潜入がバレる恐怖、家族への愛、幼なじみとの絆、そしてトライアド(黒社会/犯罪組織の総称)に関わるうちに心ならずも芽生えた愛着など、さまざまな思いのあいだで揺れ動くことになるのだ。

この濃い人間描写と、キャラクターのエネルギッシュな演技にさえ相性が合えば、香港映画をあまり観たことがなくても物語にぐいぐい引きこまれていくはず。個人的にはおなじみの世界なので、共感したりツッコミを入れたりしつつ、ノッていきやすかった。

これは余談だが、観客も映画の世界と一体化して怒ったり笑ったり、いちいちリアクションしながら作品を楽しむのが香港スタイル。意外と楽しめるので、気の置けない友人とお試しあれ。

YV8ZMPwR5WSOus3X4L5e4M6519Gd1En6 VGkjEZAy8U4Bs83f4mWP7wBUSw5Q2lxO
DCWAgH72r5936Ml8aOQlLF8nj63ITL87 FSX7wNH2bY82atYq8zMCrbQ6DaU5W6T9

ウェイの心情はシステム面でも表現している。本作の戦闘に関するスキルはいくつかの系統に分かれているが、なるべく行儀よく行動していれば射撃などの警官らしいスキルが伸ばしやすく、逆に派手な暴れかたをしているとどんどん非道なアクションが可能になっていく。

あくまでも捜査官としての立場を守って必要以上の殺しはやらないのか。それとも身も心も黒社会に溶け込んでいくのか。ウェイがどんなスタンスで潜入しているのかは、プレイスタイルしだいということになる。

■大雑把に楽しむのも細かく楽しむのもプレイヤーしだい

銃撃戦は意外に少なめ。そのかわりにカンフーで敵を倒す場面が、これでもかというほどの盛り具合だ。素早い打撃と力を込めた一撃を使い分けたり、カウンターから反撃したり、敵を掴んでからの“フリースタイルフィニッシュ”など、爽快でド派手なアクションを堪能できる。

とくにカウンターからの流れるような反撃は、本作のウリのひとつだと感じた。相手の蹴りを受け止め、ありえない角度に投げ返すなどは朝飯前。横や背後からの攻撃にも自由自在にカウンターを決めることができ、これがまたそれっぽい動きなのだ!

さらにある条件を満たすと道場で新たな技を教えてもらえるのだが、これを使いこなせばカンフー映画感はますます上昇していく。技は徐々に増えていくので、いきなり大量のコマンド表を前にして途方に暮れる心配はご無用。

pI6k1hTKLv6bpGy9d6T2Mm3BHAG4Sgv2 NT8A3mjjmoLO6Va4v8aX3xZ4rD8Hn8e1

銃撃戦にも香港映画らしい要素があり、銃の照準をのぞきこみつつ障害物を乗り越えると、スローモーションが発動し、有利な状態で撃ちまくることが可能に(まるでジョン・ウー映画ばりに)。障害物を乗り越えると敵の攻撃に身をさらすリスクを背負うが、カッコよく始末したときの爽快感はやみつきになりそう。

LQrtYrX4xsGFD34hGGL9qjoDgGvgOgZs LEZ3qF4reD4zZ8Uf5dld2grFVx7DDTNE

このほかにもコスチュームの購入・変更、レースやハッキング、カギ開けといったミニゲーム要素も豊富で、オープンワールド系のゲームに求められる自由な遊びかたも徐々に楽しめるようになっていく。わずらわしく感じたら本編のミッションを進めればいいし、こだわりたい要素が見つかればより深く楽しめるというわけだ。

IOUVB5ZPBaK6dmisZ4Z7479d884uw29W DS6eSGIs6lC4Mek4i7OV895h3Zyizxn9

■街の印象が徐々にできあがっていく愉しみ

本作をプレイしてあらためて思ったが、作り込まれたオープンワールドは“ある世界観”に浸る仕組みとしてとても優れている。物語が気になればそれを追えばいいし、カンフーが気に入ったならあらゆる技を極めてみるのも自由。カーラジオに耳を傾けながらクルマをカッ飛ばすだけでも街の空気を感じられるし、映画や観光地として知っているロケーションを見つけたら、どれだけ再現されているかじっくり眺めてみることもできる。自分がその場に存在している気持ちになれるだけの自由さと細やかさが、本作にはしっかりと備わっている。

ストーリーを追うだけではない、雑多な出来事がトータルで創りあげていく“香港”の印象。これを味わえるのが最大の魅力だ。そして香港映画に深い思い入れがあるほど、この作品に注ぎ込まれた開発陣の映画への愛とこだわりを感じ、思わずうれしくなってしまうはず!

JtMf648D45nVgXZQmhZgssjQZ2w18XTd YfZnD2cI9pOznD55sHEJ1u53qH55EGyA
MJcY3GWfirT7X5Uo8YQBQ7vA4Y9CSsf8 EAQ84u5KMcb3VG31t3e6rv31O2jj4fq1

著者:高橋祐介
ゲーム、デジモノ界隈に出没するフリーライター。幼少期からマカロニ・ウエスタンやカンフー映画、マフィア映画に慣れ親しんでおり、海外ゲームにごく自然になじんでしまう体質だったとか。

※スリーピングドッグス 香港秘密警察の公式サイトはこちら
Sleeping Dogs (C) 2012 Square Enix Ltd. Published by Square Enix Co., Ltd. 2012. Developed by UNITED FRONT GAMES. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. SLEEPING DOGS and the SLEEPING DOGS logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Ltd. Sleeping Dogs uses Havok TM: (C) Copyright 1999-2012. Havok.com Inc. Dolby and the double-D symbol are trademarks of Dolby Laboratories. This software product includes Autodesk(R) Scaleform(R) software, (C) 2012 Autodesk, Inc. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.
※本ソフトはCEROにより18歳以上のみ対象の指定を受けておりますが、掲載にあたっては、ファミ通.comの掲載基準に従い考慮しております。

この記事の個別URL

スリーピングドッグス 香港秘密警察 - ファミ通エクストリームエッジ

タイトル:スリーピングドッグス 香港秘密警察
対応機種:プレイステーション3、Xbox 360、PC
発売日:2012年9月27日発売予定
価格:7980円[税込](PC版はオープン価格)
ジャンル:アクション
プレイ人数:1人
CERO:Z
開発:UNETED FRONT GAMES