『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた

Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『三國志13』のIP(知的財産)を使用し、同社監修の元で開発されたスマートフォン向けゲームアプリ『三國志 真戦』。 iOSとAndroidでサービス中の『三國志 真戦』をもっと楽しむためのインタビュー企画を掲載。第1回となる今回は、『三国志』研究の第一人者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に、三国武将についての詳しいお話を伺った。

公開日時:2021-12-26 16:00:00

 さまざまな武将たちが織りなす群雄割拠の物語が魅力の『三国志』。iOSとAndroidでサービス中の戦略シミュレーションゲーム『三國志 真戦』も、そんな『三国志』を題材としたゲームとなっており、ゲームには史実に登場したさまざまな武将たちが数多く登場している。

 その武将たちには個性的なパラメータやスキルなどが備わっており、同じ能力を持つ武将はひとりとしていない。それぞれに個性があり、唯一無二の働きをしてくれる。

 しかし、この武将たちのことを、我々はどれくらい知っているのだろうか? 本稿では、三国時代の歴史の第一人者たちにお話を聞き、『三國志 真戦』をさらに楽しむためのインタビュー記事を掲載。第1回となる今回は、『三国志』やそれを題材とした小説『三国志演義』の研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に登場いただき、『三国志』の歴史や武将について、詳しいお話をお伺いすることにした。

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プレイヤーは群雄割拠の三国時代の君主となり、さまざまな武将を従えて激しい戦いに身を投じていく。

渡邉義浩氏
 早稲田大学文学学術院にて教鞭を振るう。『三国志よりみた邪馬台国』『「古典中国」における小説と儒教』など、三国時代の研究書を数多く執筆する。

仙石知子氏
 二松学舎大学文学部講師。『三国志演義』の研究者で、書籍や論文などを多数執筆。直近には、渡邉義浩氏と連名で『三国志で楽しく学ぶ中国語 初級編』を出版した。

識者が語る三国武将

――『三國志 真戦』には、100人を超えるさまざまな武将が登場します。今回は本作で人気だったり、史実で有名だったりする武将について、ぜひお伺いしたいと考えております。まずは曹操から。全体的に高水準なパラメータを持っていて、統率の数値が全武将中1位となっています。

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渡邉 曹操の統率力は、非常に高いと思いますよ。曹操は本当に時代を超越した人で、郭嘉(魏の武将・官吏。長きに渡って曹操に仕え、さまざまな助言で曹操を助けた)あたりの人物にならないと、曹操の描いていた未来図の大きさは見えてこないはずです。統率力が高いとさきほど言いましたが、信賞必罰な性格だからというのが大きいです。言うことを聞かないとすぐに首を斬られてしまうので。荀彧(曹操に「わが子房である」と言わせるほどの軍略の才を持つ魏の軍師。“王佐の才”とも称される)みたいに徳が高いといった描かれかたではなくて、何かやってしまうとあっという間に見抜かれて首を斬られてしまうという。そういう意味での怖さが、魅力とつながるかなという感じはします。

――首を斬られるというのは、比喩ではなくて本当に斬られてしまうということですよね。

渡邉 はい。曹操は自分の思うがままに軍が動かないということをものすごく嫌う人で、軍令を出して細かな指示を与え、さらには“護軍”や“監軍”という将軍を監視する人をつけて、自分の意図のままに戦わせました。言い換えれば、そうしないとどんな人物でも首を斬ってしまうという制度を作り上げた人なので、軍の統率力が非常に高い人物だと考えています。

――そういったエピソードを聞くと、仕えるのが怖い印象がありますが。

渡邉 彼の魅力とは、漢という国家に変わる新しい中国の未来を描いていたところなんです。でも、それが実現するのに、中国は300年かかった。その300年後にならないと実現しなかった世界を描いていたというのが、曹操のすごさなんですね。そういった曹操のビジョンが見えていなかった人からすると、曹操は怖くてしかたがなかったんじゃないかなと思います。

――そのほか、パラメータを見て気になるところはありますか?

渡邉 曹操は個人的な武力も強いんですよ。虎と格闘して殴り倒したりしていますし。あと、知力ももっと高いかなぁと個人的には思っています。

――続いては劉備について。曹操同様に高水準なパラメータを持っていて、なかでも魅力の値が全武将中1位となっています。

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渡邉 曹操よりもパラメータが低いけど魅力が高いというのは、その通りだと思います。曹操はすごく遠くのことを見据えているのに対し、劉備は身近な人に対して愛情を持って接するところがあります。僕は史実で語っていますが、『三国志演義』でも魅力の高い人として描かれています。劉備自身も、自分は魅力が高い人間でありたいと考えていて、自分で自分の人物像を作ろうとしています。具体的には、彼の祖先に劉邦という前漢を作った人がいるのですが、その人のようでありたいと考えて努力していました。そのほか、劉邦とはいろいろなところが似ています。劉邦は項羽に追われているときに、自分の馬車が重くなるのが嫌だと言って子どもを2回捨てているのですが、劉備も同じように子どもを捨てて逃げています。せっかく趙雲が助けてくれた子どもを。

――『三国志』には、趙雲が劉備の子どもを敵軍の中から助けたというエピソードがありますが、そのときの子どもを、敵から逃げる際に投げ捨てたのでしょうか?

仙石 そうです。受け取ったときにポイっと。最近の映画だと、投げ捨てるのはマズイと思ったのか、カットされることが多いですね。羅貫中(中国の明の時代に活躍していた作家)が基礎をつくり、毛宗崗(中国で流通している『三国志演義』を完成したとされる人物)が最終的に仕上げた『三国志演義』という小説では、劉備の仁に傷がつかないように、臣下がすぐに拾い上げたと書き足されています。

渡邉 そのときは民を連れた行軍の最中でした。民の中には、子どもと離れ離れになった人がほとんどだったんです。君主だからという理由で自分の子どもだけが助けられるのはおかしいから、という理由で投げ捨てたんです。あと、子どものために趙雲という大事な武将を失うところでしたし。べつに劉邦のマネをして捨てたわけじゃないんですけど、僕からはそう見えてしまうという(笑)。

――魏と蜀のリーダーに続いては呉のリーダーということで孫権についても語っていただきたいと思います。スキルやほかの武将との相性もあるのでパラメータがすべてではないのですが、曹操と劉備と比べると若干能力が低くなっています。

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渡邉 父の孫堅や兄の孫策は個人的な魅力や武力も高いです。弟の孫権がどうだったのかというと、調整型の政治家なんですよね。なので、個人的なカリスマ性みたいなものは、孫堅と孫策に劣ると思います。孫権は知識人たちをどんどん自分のバックにつけて、その人たちの意見を聞いて政治を動かしていきます。こういった能力は上に立つ人にとっては非常に需要なことで、孫堅や孫策はできなかったのですが、孫権は非常にうまくできました。

――周囲の人の協力を得るのがうまかったと。

渡邉 ですが、孫権は若いころの、赤壁の戦いで周瑜や魯粛を使っていたときが全盛期だったなと思います。年をとってからは後継者争いで国を真っ二つに割ってしまって呉を滅ぼしてしまうというエピソードもあるので、曹操と劉備に比べるとちょっと見劣りしちゃうかな、というのが僕の感想です。

――続いては蜀の武将についてお話をお伺いしたいと思います。諸葛亮は渡邉先生イチオシの武将ですが、パラメータを見ていかがでしょうか。

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渡邉 知力が1位なのは納得ですね。諸葛亮の軍隊の率いかたは曹操に似たシステムを使っていたので、統率の高さもうなずけます。前線に出て戦うような人ではなかったので、武力や速度も低くなるのもそのとおりですね。

――諸葛亮はゲーム中でもかなり強く、人気の武将となっています。

渡邉 そうなんだ。諸葛亮好きとしてはうれしいですね。

――趙雲はいかがでしょうか。武力と統率がかなり高い武将となっています。

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渡邉 僕は数いる三国武将の中でも、趙雲がいちばん好きなんですよ。この趙雲という武将は忠義の人で、もしゲーム中に“忠義”とか“忠誠”とかいうパラメータがあったら、ぶっちぎりで1位だと思います。自分としてはかなり納得感のあるパラメータだと感じます。騎兵隊長として前線で戦う人物だったので、統率力の高さも納得ですね。

――趙雲は忠義の人だったと。

渡邉 諸葛亮の言うことをいちばん聞いていたのは趙雲だし、諸葛亮がいちばん信頼していたのも趙雲でした。逆に、関羽と張飛は諸葛亮の言うことをあまり聞かない人だったんです。

――そうだったんですね。

渡邉 劉備を経由しないと、関羽と張飛はあまり諸葛亮の言うことを聞いてくれませんでした。史実では、馬超(後漢の名将である馬援の子孫。曹操に敗北したあと、劉備の下に身を寄せた)が降伏してきたときに、関羽が諸葛亮に「新しいやつが来たみたいだが、どれくらいの人物なのか」と聞いてきたのですが、「張飛と同じくらいすごい人物だけど、髭殿(関羽)とは比べ物にならないほどですよ」という手紙を書いたというエピソードがあります。それくらい、諸葛亮は関羽に気を使っていたのです。それに対して、何もせずとも趙雲はきちんと働いてくれたので、諸葛亮は絶対的な信頼を寄せていたと思います。

――続いては関羽についてのお話もお願いいたします。武力が全武将中3位という高さが特徴です。

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渡邉 関羽は中国では神さまという扱いになるほど、人気を集める人物です。だから中国の人が考えると魅力はもっと高くなりそうですが、本作は日本版のゲームなので、魅力については控えめですね。それでも7位とかなり高いですが。

――信仰の対象にまでなっている人物だと。

渡邉 そうです。神さまですから。

仙石 そういった背景があるため、中国で書かれた『三國志演義』では、関羽が活躍する場面がかなり増えていますよ。

渡邉 実際に倒していない武将も、『三國志演義』では関羽が倒したものとして描かれていることも。そのくらい、絶大な人気を誇る人物なんです。統率のパラメータはやっぱり高いですね。でも、関羽は部下があまり言うことを聞かなくて、知識人の部下に背かれて荊州を取られてしまったというエピソードがあるので、そういった点が知識や政治のパラメータに反映されているのかなと思います。

――関羽の義兄弟、張飛はいかがでしょうか。武力がなんと、関羽よりも高い2位となっています。

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仙石 中国では、張飛がすごい人気なんですよ。

――関羽と同じくらいですか?

渡邉 ちょっと扱いが違っていて。関羽が出てくると尊敬するんだけど、張飛が出てくるとすごい喜ぶみたいな感じです。映画『レッドクリフ』では、関羽が出てくるときに見得を切るシーンがあるのですが、それを観た人は、拍手をしたり、シーンとしたりするんです。それに対して張飛が出てくると、それこそ劇場が揺れるくらい喜んで応援します。

――関羽とは方向性こそ違いますが、かなり人気なんですね。

渡邉 武力が関羽よりも高いですが、それもそのとおりだと思います。『三国志演義』において関羽は「自分には自分より強い張飛という弟がいる」という言葉を曹操に投げかけているほどなんです。

――関羽も、張飛のことを高く評価していたんですね。


マジメな研究者たちによる『三國志 真戦』武将語りは後編に続く!

 なお、著名研究者である満田剛氏にさらなるお話を聞くインタビュー第2弾も掲載。こちらもぜひチェックしてほしい。

『三国志』のことはプロに聞け! 第3回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

◆『三國志 真戦』とは
『三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの監修の下で開発したスマートフォン向けゲームアプリです。『三國志』シリーズ原作の遊び方をしっかりと継承しています。

▼ゲームダウンロード
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id1524742294
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.qookkagame.sgzzlb.gp.jp

▼公式情報サイト
公式サイト:https://sangokushi.qookkagames.jp/prism-kldd0u80
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『三國志 真戦』ファミ通.com特設サイト

タイトル
三國志 真戦
メーカー
Qookka Games
対応ハード
iOS/Android
価格
基本プレイ無料(アイテム課金制)
ジャンル
シミュレーション
公式サイトはこちら