ゲームスタジオのC#4R4CT3Rが制作中のSteam向けサイコサスペンス&ロマンスアドベンチャーゲーム『Rain98』。 1998年にタイムスリップした主人公は、謎の少女・雨原玲奈の“世界を滅ぼす”企てに手を貸すことに。そんな退廃的なシチュエーションを、偏執的にこだわったアニメーションや映像演出、癒しさえ感じられる音響で彩った期待作です。

その世界観から醸し出される大いなる魅力はすでに伝わってくるものの、一方でストーリーはまだまだ謎に包まれている本作。その中心に居るのが、雨原玲奈というミステリアスな少女です。
今回、ファミ通.comではそんな玲奈を演じる声優・土屋李央さんにインタビューする機会をいただきました。玲奈の魅力を象徴する暗い瞳には、いったいなにが見えているのか? 彼女を演じた土屋さんの証言から、その一端が垣間見えるかもしれません。
【土屋李央さんによる歌唱楽曲を使用した最新トレーラーはこちら】

土屋 李央(つちや りお)
1997年8月19日生まれ、神奈川県出身の声優。代表作はスマートフォン・PC用アプリゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』樋口円香役、アニメ『ポールプリンセス!!』星北ヒナノ役など。ラジオやWeb番組のパーソナリティとしても活躍している。(文中は、土屋)
「精神的にも負担が大きいだろう」と言われたけれど、演じたかった

――オファーを受けたとき、このゲームと玲奈という女の子にどんな印象を持ちましたか?
土屋
マネージャーさんからオファーのおはなしをいただいたとき、暗いテーマを扱っている面もある作品で、玲奈ちゃんの生い立ちに重いものがあることも聞いたんです。フルボイスでの収録になることもあり「精神的にも負担が大きいだろうから、断ってもいいよ」と言われました。
オファーの段階で作品概要や玲奈ちゃんの設定からなにから、かなりボリュームのあるテキストをいただいて、制作者さんたちの強い熱意を感じました。私自身、暗い世界観に惹かれるところがあるんです。インディーゲームの声を担当することがいままでなかったので、こういう尖った魅力を押し出す作品に関われるいい機会だと考えたこともあり、「ぜひやりたいです」とお返事させていただきました。
最終的にはシンプルな「おもしろそうじゃん!」という想いが決め手でしたね。

――収録はすべて完了しているのでしょうか?
土屋
一度は全部録ったのですが、また最初から録り直したりしています。すごく癖“ヘキ”を感じる作品だなと言いますか(笑)、万人に受けるというより、こういうものが好きな人を目掛けて刺しに行くことへの執念みたいなものを台本を読んでいてもすごく感じますよね。
ディレクターのショーンさん(※)を筆頭に、制作に関わっている皆さんの玲奈ちゃんへの解像度がどんどん上がって、「ここはもっとこうしたい」という想いが日々膨らんでいるのかなぁと思います。
※本作を手掛けるゲームスタジオ“C#4R4CT3R”所属ディレクターであるショーン・T氏。弊誌では今年のBitSummitなどで話をうかがっている。――癖(ヘキ)と言えば、最新の試遊版では玲奈にルーズソックスを履かせる場面がありました。ああいった場面も後になって追加されたものなのでしょうか?
土屋
もともとミニゲームをたくさん入れたいという話は聞いていました。ルーズソックス以外にもガチャガチャの中身を詰める内職のミニゲームとかがある説明は受けていたので、その流れで「そういうのもあるんだ」と。「なんだこれは?」とまったく思わないわけではなかったですけど(笑)。


――録り直しの話もありましたが、土屋さんの負担もなかなか大きそうです。
土屋
たしかに、シナリオ自体が当初想像していた5倍くらいのボリュームがあって、たいへんじゃないとは言えません(笑)。でも演じていて楽しいです。「もっといいものを!」とこだわりが伝わってくるので、やりがいは大きいですね。
あと、台本にト書きがすごく多いんですよね。玲奈がしゃべっていないところも詳細な描写がしっかり書き込まれていて、状況がわかりやすいのは演じるうえでありがたかったです。
――そんな玲奈と土屋さんの共通点、あるいはまったく価値観が異なると感じることがあれば教えてください。
土屋
玲奈ちゃんが経験してきた暗い過去に私が簡単に共感することはできないので、ぜんぜん違う自分の人生の中からなんとか引き出しを探して演じる感じだったかもしれません。


――自分とぜんぜん違う人生を歩んできた人物を演じるとき、なにか“取っ掛かり”みたいなものはあるのでしょうか?
土屋
「この子は私だ」みたいにシンクロするわけじゃなくても、ひとりの女の子として玲奈ちゃんを理解できないわけではないんです。「こういうときはこういうふうに感じるよね」みたいなイメージを、台本を読み進めながら固めていったように思います。
ビジュアルやキャラクター設定の印象だと、いわゆるダウナーな子っていうのが真っ先にあったんですけど、物語が進んでいくといろいろな表情を見せてくれるようになるんです。意外と笑う子だし、年相応のちょっとお茶目な部分もあったり。人間味みたいなところを知るたびに素敵な子だなって感じるようになりました。

母親との思い出のゲームは『クロックタワー3』
――土屋さんはゲームがお好きだとうかがっているのですが、アクション性が高いゲームを好んでいる印象が強いです。『Rain98』のようなアドベンチャーゲームはプレイされるのでしょうか?
土屋
謎解き系のアドベンチャーゲームは解けたときの快感が好きでプレイすることもあるんですけど、詰まって先に進めなくなってしまうことも多くて……。やっぱり自分でプレイするのはアクションゲームが多いですね。血の気が多いので(笑)。
ただ、ストーリー性があるゲームを実況などで観るのは好きなんです。親がけっこうストーリー性があるゲームをプレイしていて、幼いころからそれを隣りで観ていたので、そうやって客観的にプレイ画面を観る感覚が染み付いているのかもしれません。

――ご家族のプレイを観てきた中で強く印象に残っているゲームはありますか?
土屋
『クロックタワー3』! 母親もやっぱりアクション性があるゲームを多くプレイしていて、『バイオハザード』なども印象に残っていますね。
――『クロックタワー3』はすごいチョイスですね(笑)。『バイオ』もですけど、ホラー色が強めなのでしょうか。
土屋
ホラーは好きです。『クロックタワー』はほかのシリーズ作も強く印象に残っていて、ああいう世界観が私はめちゃくちゃ好きなんだと思います。ある意味で母親の影響をモロに受けていますね。
――『Rain98』は『パーフェクトブルー』や『serial experiments lain』など、90年代特有の内省的な作品からの影響がインタビューなどで公言されていますが、こういった作品群に触れたことはありましたか?
土屋
私は1997年生まれなので、まさに生まれたころの作品なこともあって、観たことはありませんでした。とくにそれらの作品を「収録の前に観ておいてね」みたいに言われることはなかったです。『Rain98』の世界観や雰囲気は、BGMや事前の説明、イラストの雰囲気などからつかみつつ収録に臨みました。作品でやりたいことを丁寧に伝えてもらって、いっしょにすり合わせていった感じでしたね。


思ったよりもリアルな演技を求められた“猫の鳴き真似”
――演技の方向性などは、ディレクターのショーン氏ともやりとりして固めていったかと思うのですが、なにか印象的なことなどありましたか?
土屋
ショーンさんってインタビュー記事などを読むと凛々しい感じですけど、実際にやりとりしているとだいぶおもしろい感じの方なんです(笑)。台本をいただいた段階だと「これはどんな芝居を求められているんだ?」って、よくわからない台詞がいくつかあって。自分の中で「これかな?」と思うものを収録してもらってから様子をうかがったら、ショーンさんがなんかめちゃくちゃウケてて!
変だったのかなと思っていたらOKだったらしく、「めっちゃいいですね!」と言ってくださって。そういう“笑われながら収録する”みたいなことも少なくない現場でしたね。

――今後、ショーンさんを取材する機会があったら突っ込んでみます(笑)。
土屋
「土屋さんこれ知らないよね? こういうのが俺は作りたいんだよ!」ってオマージュもとのことを教えてくれたり。作品は暗いんですけど、現場はかなり明るい雰囲気で楽しいですね。私が不安になって「これで合っているんですか?」と聞いているのに、ショーンさんの返事が「なんだこれは?」みたいな。和気あいあいとしていますよ。
もちろん、後半のストーリーともなるとシリアスなシーンも多いので、私自身は“笑いながら録る”みたいなテンションではなくて、そこは切り替えて、集中して臨んでいます。休憩時間も静かに台本を読んだり。収録が一段落して、スイッチを切り替えたときに新しくでき上がったばかりのスチルを見せてもらえて、「かわいいですねぇ!」と盛り上がることもありました。


――すでにゲームイベントで試遊出展されていて、今後デモ版の配信も予定されているということですが、土屋さんもプレイされましたか?
土屋
イベントに出展されたバージョンはプレイさせていただきました。BGMをはじめ、音まわりがすごく繊細に作られているので、収録したときよりさらに作品世界に惹き込まれる感じがありました。発売されたら改めてじっくりプレイしたいですね。
個人的に製品版で気になるのは、“マービィのCVがどうなっているのか?”。玲奈ちゃんの部屋に置かれているぬいぐるみで、クリックすると「ふあ~」と喋るんですけど、ノイズと反響音が目立つ音質なんですよ。会議室で録ったのかな。あくまでまだ仮のボイスだと聞いているんですけど、私はめちゃくちゃ気に入ってしまったので、製品版でもそのまま採用されてほしいと思っているんです。

『Rain98』作中に登場する喋るぬいぐるみ・マービィ
――90年代の喋るおもちゃという点を踏まえると、チープに感じる音質のままでちょうどいい気がしますよね。最後に、ネタバレにならない範囲で「玲奈のこういう一面の芝居に注目してほしい」みたいなところがあれば教えてほしいです。
土屋
玲奈ちゃんは基本的に淡々としているんですが、物語が進むにつれて、普段とは違うテンションになったり、思いきり崩れたりする場面が結構あるんです。ただ、やりすぎると玲奈ちゃんではなくなってしまうので、どこまでやるかっていう塩梅を、「やりすぎですか?」とか確認しながら収録しました。最終的にどんな感じになったのか、注目してほしいです。
あとは、猫の鳴き声を録ったのもおもしろい経験でした。玲奈ちゃんが鳴き真似をするシーンっていう説明は受けているんですけど、「にゃあ」と鳴いてみたら「もっと本物の猫っぽく出来ますか?」と、思ったよりリアルな猫を追求されまして。ショーンさんのこだわりポイントだったみたいなんです。どこで使われるのか、みなさんもぜひ探してみてください(笑)。
