インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?

インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
 ゲームやアニメ、マンガなど、日本のコンテンツが世界的に注目を集めているのはご存じの通り。そんな日本のコンテンツ産業には国も注目しており、積極的に数々の支援策を打ち出している。
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 今回紹介するIGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)による“Global Game Growth Gateway(G4)”もそのうちのひとつ。“世界市場でのゲーム成長を加速させる架け橋”とでも訳すべきこの取り組みは、おもに日本のゲーム会社の海外販売・マーケティング担当者に向けて、専門家が海外販売につなげる知識・ノウハウを習得できる機会を提供するプログラムのこと。

 “G4”は、文化庁が展開する、日本の文化芸術の未来を担うクリエイターやアーティストを、国が腰を据えてバックアップするために日本芸術文化振興会に設置された“文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター支援基金)”の一環として提供されているプログラムだ。
インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?

 国のコンテンツ産業への支援と言うと、クリエイターやスタートアップ企業を支援する、経済産業省のアクセラレーションプログラムの“創風”や、こちらもクリエイター支援基金によりCESAが実施する次世代ゲームクリエイター育成プログラム“トップゲームクリエイターズ・アカデミー(TGCA)”などがあるが、“G4”がとても興味深いのは、ゲーム会社の海外販売やマーケティング担当者を対象にしていること。

 ぶっちゃけて言えば、日本のゲーム(おもにPC、Steam)を海外で売るためのノウハウを伝授するのが“G4”だ。「国のコンテンツ産業に対する支援も幅が広がってきたなあ」というのが、“G4”のプログラムを知ったときの率直な感想だが、それだけ国がゲームを始めとするコンテンツ産業に将来性を感じている証だとも言えるし、日本のゲームメーカーに対して、“もっと世界に打って出てほしい”という期待の現れとも言える。

 昨年2025年9月に参加者が募集された“G4”は、11月に育成対象者となる10名が決定。この1月からプログラムがスタートしている。プログラムの期間は3年間で、その内容はなかなかに濃い。

  • オンライン講義……海外ゲームマーケティングの専門家によるオンライン講義を2028年3月までに合計26回実施予定。
  • 海外イベント視察……主要な海外イベントへの視察を実施。現地のゲーム会社やPR会社、メディアなどへの企業訪問も併せて実施予定。
  • ゲームストアでの共同展示……本プログラムに参加しているゲーム会社のゲーム作品を海外に向けてプロモーションする実践の場として、ゲームストアでの共同展示を予定。

 会社の業務をこなしながらこれだけのプログラムを履修するのはけっこうなパワーが要求されそうだが、3年間のプログラムで得るものは多そうだ。

 そんなことを考えていたところに、今回ご縁があって “G4”に関してお話をうかがうことができた。対応してくれたのは、文化庁 参事官(芸術文化担当)付参事官補佐の是永寛志氏、独立行政法人日本芸術文化振興会 沼下佳子氏、IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本) SIG-Growth正世話人 佐藤翔氏だ。お三方に “G4”の目指すものや今後の展望などを聞いた。
インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?

是永寛志氏これながひろし

文化庁 参事官(芸術文化担当)付 参事官補佐 (文中は是永・写真中央)

佐藤翔氏さとうしょう

IGDA日本 SIG-Growth正世話人 (文中は佐藤・写真右)

沼下桂子氏ぬましたけいこ

日本芸術文化振興会 企画部 基金・助成事務局 基盤強化事業課 メディア芸術係 専門職員 (文中は沼下・写真左)

※この記事は“Global Game Growth Gateway(G4)”の提供でお届けします。

日本のコンテンツをもっと世界に届けたいとの思いから“クリエイター支援基金”を設立

――まずは皆さんの自己紹介をお願いします。

是永
 文化庁の芸術文化担当という部署で参事官補佐を務めております、是永です。いまの役職に着任したのは2024年の4月ですが、文化庁自体には長く所属しております。著作権や国際文化交流、文化財などに関わることを担当してきました。コンテンツの世界にはそれなりに親しんでいるかな、と思います。

――せっかくの機会なので、ゲーム歴などもうかがってよろしいでしょうか。

是永
 昭和54年、1979年生まれなので、まさにファミコン世代ですね。親が共働きだったので、保育園のころからファミコンで遊んでいて、『スーパーマリオブラザーズ』などのゲームにハマって、小学1年生のころにはすでに視力が0.8になっていました(笑)。

 好きだったのは、『
熱血硬派くにおくん』シリーズですが、メジャーなタイトルはひと通り遊んできたかなと思います。『女神転生』シリーズや『天誅』シリーズも好きでしたね。

――相当なゲーム好きですね。

沼下
 日本芸術文化振興会の沼下と申します。よろしくお願いいたします。着任から1年ほど経って、いまはクリエイター支援基金を担当させていただいています。ゲームのほかには、アートやファッション、メディアアートなどを含むデザイン分野を担当しています。

 現職に従事する前は、文化庁の参事官(芸術文化担当)付のメディア芸術発信係というところで、メディア芸術祭やメディア芸術クリエイター育成支援事業に関わる研究補佐員として、5年間働かせていただいておりました。当時は是永さんが上司で、とてもお世話になっていました。在職中に基金の計画などが始まったのですが、そのご縁もあって、また人材育成関係の仕事をしたいなと思い、現職に転職しました。

――沼下さんのゲーム歴はいかがですか?

沼下
 私はファミコンも買ってもらえなくて、親がゴルフの景品でもらってきたゲームボーイで『テトリス』を遊んでいたりポケモンで遊んでいたりしたくらいでした。ただ、仕事でメディア芸術に関わることになると、扱う対象は範囲が非常に広くて、マンガやアニメ、ゲームなども含まれてくるんです。その兼ね合いで勉強させていただいたりしています。近年はとくに、メディアアートクリエイターとインディーゲームクリエイターの方々の活動が、本当に親和性があるものになってきているなと感じています。

――アートとゲームも近しいものになってきていますね。

佐藤
 IGDA日本の佐藤と申します。私は、日本のゲームメーカーさんが海外の市場に出ていくお手伝いをしてきました。そうしていく中で、日本のゲームメーカーさんが抱えている課題にも直面するのですが、とくに日本のインディーゲームが世界に出ていく際の課題として、パブリッシャーの方々が育つことが重要なのかな、と考えていました。そのなかで今回、文化庁様、芸文振様とともにIGDA日本も新しいプログラムに参画させていただいております。

 ゲーム歴は、もういろいろと遊び過ぎていてよくわかりませんが(笑)、最近いちばん気になっているのは『
I am Jesus Christ』や『こふんは生きている』でしょうか。もちろん大規模で制作されている大作も好きですが、やはりゲーム業界が発展していくためには、小規模の、尖ったゲームも重要だと思っています。我々としてもそういったところを応援していきたいですね。

――今回の主題である“G4”についてお聞きする前に、そのもととなった文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター支援基金)について教えてください。

是永
 クリエイター支援基金ができたきっかけとして、日本のコンテンツをもっと世界に届けたい、クリエイターたちにもっと世界で活躍してもらいたい、という考えがありました。これはもちろん経済的な側面もあって、いわゆるコンテンツ産業は従来の基幹産業である半導体や鉄鋼といった産業に匹敵する規模にまで成長しているんです。

 加えて、ゲームを始めとする日本の文化は、世界中で親しまれています。たとえば、東京オリンピックのときには選手入場時にゲーム音楽が使用されていましたが、それぐらいゲームが日本の文化として世界で認知されています。

 私自身ゲームミュージックが好きなのですが、小学校のときは教室にあったオルガンで、男子たちが競ってゲームミュージックを弾いていたんですよ。みんな片手で。そのゲーム音楽がオリンピックという場で流れたのは感慨深かったです。
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――経済的にも文化的にも大きな存在となったゲームを、国としても積極的に支援していこうということですね。

是永
 日本の基幹産業として、ゲームを含むコンテンツ分野をもっと伸ばしていかなければ、ということですね。そうなったときに、政府の中では文化庁は人を育てて、文化を発信していく部分を担うことになります。コンテンツを生み出すのはクリエイターである、というのが我々の基本的な認識です。コンテンツ分野を伸ばすにはより多彩なクリエイターを育成していく、応援するための基金が必要であろう、ということで、令和5年度にクリエイター支援基金が作られました。

沼下
 令和5年度補正予算の事業では、まずクリエイターにフォーカスした事業を行いました。具体的な例としては、CESA(コンピュータエンターテインメント協会)さんと連携して実施したTGCA(トップゲームクリエイターズ・アカデミー)、若手クリエイターの育成支援があります。補助型のものとしては、渋谷あそびば制作委員会さんの、インディーゲームとアートを架橋させる分野横断型の取り組みも採択されています。

 令和6年度の補正予算事業では、社会人のリスキリング、専門人材の育成、教育機関におけるカリキュラム見直しなどによって、業界が必要としているスキルを持った人材を、いかに学校機関で育てていただくか、という点に焦点を当てています。学生向けの部分では日本電子専門学校さんや立命館大学さん、電気通信大学さん、社会人向けとしてはIGDA日本さんやDeNAさんなどの取り組みが採択されています。

 DeNAさんはモバイルゲームに特化した取り組みをされているんですよ。プロデューサー、ディレクター、マーケター、エンジニア、デザイナーなど、職能ごとの違いを明文化して、グローバル展開に貢献できる人材をどのように育てられるか、これをまず自社の中で整理していただき、そのノウハウを他社さんにもご共有していただくようなことに取り組んでいただいています。

是永
 最初は作り手の支援にフォーカスしていましたが、クリエイター支援としてプロデューサーやコンテンツを販売していく人材の育成もサポートしていかなければならない、という流れになっています。まさに、IGDA日本さんが今回行われるような、開発者の方や販売者の方に向けて、どう世界に展開していくかという知見を深めていくようなトレーニング、こういったものが必要である、ということです。

――ゲームコンテンツ産業振興の動きが、クリエイターからそのまわりの人材にまで広がっていったわけですね。

是永
 そうです。これまで文化庁はあまりゲームの人材育成支援はしていなかったんです。それはなぜかと言えば、大手メーカーさんを始めとするゲーム業界がもともとうまくいっていたからなんですね。ただ、いまは小規模、個人でもゲームを作れる時代になってきていて、海外もかなりインディーゲームやクリエイターの育成に力を入れていますよね。

 CNC(セーエヌセー。フランス国立映画映像センター)も最近はインディーゲームにも力を入れていますし、東京ゲームショウでも東南アジアのブースがあったりして、各国が本腰を入れて動きだしているんです。だからこそ、日本としてもゲームクリエイターを始めとして、ゲームという分野自体を支援していくべきだろう、と判断したのです。

 たとえば、伝統文化の世界でも、放っておくとなくなりそうだから行政の支援が必要というものもあれば、人気があってなくなる心配はないけど、行政がさらに支援して強化する必要があるというものもあるんです。ゲームはそちらに近い考えかたですね。

 産業としての直接的な支援に関しては経産省が、海外に展開するビジネスへの補助金を出されていますが、文部科学省の外局である文化庁としては、やはり人を育てる、というのが根っこにあります。ですので、人材育成という形で支援を行っています。

佐藤
 本当に、ゲームの経済的、文化的な価値は世界的に高くなってきています。数年前には欧州議会でも、ゲームは欧州に経済的、文化的な価値をもたらすものである、という決議が圧倒的多数で認められました。アジア諸国も含めたいろいろな国で、ゲームは波及力のある文化である、という認識は間違いなく広がっていると感じます。

――ゲームの作り手を支援するところから、そのまわりの販売者などにも支援が広がっているということで、予算は年々増加しているのでしょうか。

是永
 そうですね。いま、政府のコンテンツ関係予算はざっくり言って昨年の倍以上になっていて、上げ潮ですね。

佐藤
 それは実感としてありますね。5年前、10年前からすると考えられなかった状況になってきています。たとえば、10年前ならほかの国ではすでに支援もありましたが、日本でゲーム開発者が何か助けがほしいと思っても、何に応募すればいいかがまずわかりませんでしたし、枠自体もすごく小さかったと思うんです。それが、ここ数年でそういった状況は大きく変わりました。

 コンテンツに関連する分野として、映画や音楽、マンガやアニメはこれまでにも扱われていましたが、5年前、10年前はそこにゲームがほとんど含まれていなかったのではないかと思います。ここ最近になって文化庁や日本芸術文化振興会がゲームも重要である、と考えてくれるようになったので、その変化はすごく大きいと思います。

是永
 海外で売り上げているコンテンツということで言うと、ゲームが約6割を占めているんです。そこに次いで大きいのがアニメで、約3割。海外に向けて売り込んでいくうえで、ゲームがいちばん強い分野であるという事実があるので、コンテンツ分野の中心的存在ではあると思います。
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業界全体でインディーゲームのパブリッシングに強い人材を育てたい

――では改めて、今回“G4”という取り組みを実施するにいたった経緯を教えてください。

佐藤
 我々は設立から20年以上活動を続けているゲーム業界のNPO法人なのですが、これまでにもゲーム開発者やゲームに関わる方々に向けたセミナーなどを実施してきました。文化庁がクリエイター支援事業を始めた一方で、民間でも開発者人材を育てるプログラムはかなり増えてきています。それこそ、MIXIさんもインディーゲーム開発者を支援する“LVLZero Tokyo”というプログラムを始められていたりします。

 ただ、海外で展開していくためには、開発者だけでなく、海外で販売するための戦略も練っていく必要があります。日本のインディーゲーム開発者がまず頼りにするのは、日本のパブリッシャーですよね。もちろん大手であれば海外で販売するノウハウもあると思いますが、大手の会社でインディーゲームのパブリッシングレーベルを持っている会社はそう多くないと思うんです。

 そうなると、セルフパブリッシングで成功している事例がいくつかあるとは言え、基本的にはインディーゲームのパブリッシャー、最近であれば講談社さんや集英社ゲームズさん、Playismさんなどの力を借りないと、海外で売っていくことは簡単ではありません。その背景として、日本はSteamのマーケットがとても小さいというのもあります。

――家庭用ゲーム機が人気ですし、モバイルゲームの市場も大きいですね。

佐藤
 いまの時代、インディーゲームでモバイルのパブリッシングを行っていくのは、正直きびしいです。競争も激しいですし、広告宣伝費もたくさん必要なので、モバイルゲームの市場というのはなかなか選択肢に入ってこないと思います。インディーゲームでモバイル分野にて成功している開発者さんはまだごく一部です。世界的に見ても、まずはPC、Steamでインディーゲームを出していきましょう、というのが最初の流れになっていますよね。

 ところが、Steamのハードウェア調査を見てみると、日本のマーケット規模は3%以下なんです。いちばん大きいのが中華圏と英語圏で、この地域が6割以上を占めています。ですので、パブリッシャーが海外に売っていくノウハウを持っていてくれないと、日本のパブリッシャーを頼りにする多くの日本のインディーゲーム開発者はマーケットの大部分にものを届けることができないんです。

――セルフパブリッシングの場合はいかがでしょうか。

佐藤
 セルフパブリッシングをして海外で成功する例は、本当にごく一部です。Steamで販売されているタイトルの約7割以上がセルフパブリッシングなのですが、500本以上売れているゲームの7割以上はパブリッシャーが付いているものです。もちろん、『8番出口』のようにセルフパブリッシングでヒットして、後からパブリッシャーが付くというケースもあります。ですが、よほどの販売上の強みを開発者が持っていない限り、基本的にはまずパブリッシャーさんを頼らないときびしいです。
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2023年に個人開発者であるKOTAKE CREATEからPC版が発売された『8番出口』。2024年にはPLAYISMパブリッシングで家庭用ゲーム機向けにリリース。2025年には二宮和也主演で映画化もされ大きな話題を集めた。
 日本の大手パブリッシャーの場合、欧米に子会社があって、海外で売る戦略を考える専門家の方がいらっしゃいますよね。それがインディーゲームのパブリッシャーの場合、まず海外拠点がないんです。だからこそ、海外で売るための知見を持った人材を、日本で育てていかないといけないんです。これは実際にパブリッシャーにヒアリングをしても、強い意見として上がってくることです。

――だからこそ、業界全体でインディーゲームのパブリッシングに強い人材を育てていこうということなのですね。

佐藤
 個社ではなく、ですね。一社が国と組むのは不公平ですし、何よりもったいないですよね。業界全体に広げていくための取り組みとして、我々IGDA日本が、業界統括団体という立ち位置でお引き受けした、という形になります。

是永
 もちろん、こちらの取り組みについては日本芸術文化振興会において専門家を入れた委員会に審査を行ってもらって採択されたものです。業界が抱える課題と本取り組みの内容とを照らし合わせた結果、ぜひ行っていただこう、ということになりました。

沼下
 先ほどDeNAさんが行われている取り組みにも触れましたが、DeNAさんはまずは個社で取り組まれていることを他社へ業界へと広げていただく方法をとられていて、対する“G4”は業界内でより横断的に、いろいろな企業の方が参画できるような枠組みを作って、そこで得られた知見を個社に還元していっていただくように進められておられるという認識です。

――いまのお話にもあったかと思いますが、“G4”が目指すものについて、もう少し教えてください。

佐藤
 ひとつは、インディーゲームのパブリッシャーどうし、横のつながりを作ることです。これまで、私も関わっているiGiのようなインディーゲームの開発者を育てるプログラムを見ていて、皆さんがいかにひとりでがんばっているか、コミュニティーを作ってお互いに交流することがいかに大事かということは、理解していたつもりでした。ただ、インディーゲームを売っている人たちも、ものすごく孤独にものを売っていたんです。

 Steamにおけるマーケティングのノウハウは、すごく急激に変わっていきます。2025年には20000本以上のゲームが出ていて、その中でユーザーに興味を持ってもらうためのノウハウは、すごく変化が激しいんです。

――GDCやCEDECといったゲーム関連のカンファレンスでも、Steamにおける販売戦略を解説する講演は多いですね。

佐藤
 新しいツールの使いかた、インフルエンサーさんとの付き合いかた、いろいろなものがつねに変化していきますからね。そういった中で、ゲームを売る立場の人たちは、自分たちの打った施策で本当にこの国まで届くのか、時間と予算をかけてユーザーコミュニティーを作ったけれど、その人たちがちゃんと買ってくれるのか、皆さん悩みながら試行錯誤しています。

 とはいえ話を聞いていると、意外と同じような施策を打っていたり、似た失敗をしていたりもするんです。そういう意味で、横のつながりをしっかりと作ることは、すごく大事だと思うんです。欧米ではそういったつながりが強くて、GDCなどでもマーケティングの専門家が集まって交流したりしているんですよね。日本にはそういうものがなかった、ということに気付いたんです。

――イベントなどで開発者どうしが仲よくしているイメージはありますが、売る立場の人たちはそういったつながりがまだ弱いのですね。

佐藤
 そこは難しいのかなと思っています。会社の肩書があるから、というケースもあるでしょうし、そもそもそういう風に付き合う習慣もないと思います。だからこそ、我々IGDA日本があえて皆さんを集めて、いっしょにセッションを受けていただくなどして、つながりを持っていただいています。実際、参加された方からも、やってみてよかったと言っていただけることが多いです。

――開発者どうしに比べると、販売者どうしというのはライバルとしての感覚が強くなりそうな気がしますが、そのあたりはいかがですか?

佐藤
 確かにライバルではあるのですが、一方で仲間でもあるんですよ。採択者の方々にはDiscord上でコミュニケーションを取ってもらっているのですが、お互い積極的に相談やアドバイスをされていて、ここまで協力し合えるものなんだなと、驚かされました。

 いいタイトルを自分たちが販売したい、という点ではライバルになりますが、海外のマーケットを取れていないという現状は同じなので、そこはみんなで協力できるポイントになります。日本のインディーゲームでもワールドワイドで100万本、200万本を売り上げるタイトルが出てきましたが、さらに上を目指すには、お互いのノウハウや知見を共有していかないといけない。そういうフェーズに入ってきているのかなと思います。
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“G4”に対して46社からの応募があり、大きな手応え

――お話を聞いた印象だと、“G4”に対しては業界からも好意的な反応が多かったように感じますが、いかがでしたか?

佐藤
 対象者の枠を10名に設定して募集を開始したところ、46社からの応募が来ました。日本にあるインディーゲームのパブリッシングをしている会社、そこに所属している販売担当者1名が応募できる、としたうえでの46社だったので、まずはそれだけの会社があるということに驚きました。それだけ需要はあったんだなと思います。

――46社というのは確かに驚きですね。1社につき1名のみの応募、としたのはなぜですか?

佐藤
 たとえば1社で10名が入った場合、同じ会社にしかノウハウが広がらないですよね。このプログラムは文化庁、日本芸術文化振興会が関わっている、社会人育成のための事業ですので、やはり全体に広がるようなものでないといけないと思っています。そういう意味で、なるべく違った会社の、違った担当者に入ってもらうのが適切であろう、ということで1社1名の制限を設けました。

――46社の応募から10名を選抜するにあたり、審査基準はどういったものだったのでしょうか。

佐藤
 まず審査については、私ども指導者が6名、加えて外部審査委員会として国内外の方にも1名ずつ参加していただきました。大前提となったのは、Steamの重要なマーケットである欧米圏、中華圏に売っていく体制や能力があることです。これがないとどうしようもありませんから。

 そのうえで評価の基準となったのは、語学力と開発者への意欲、そして交流の意思です。海外との具体的なコミュニケーションスキルや現地での経験は、言うまでもなく重要です。そのうえで、開発者の作品が世界に届かないと意味がないので、開発者の作品を売っていく意欲がどれだけあるのか、それを示す実績がどれだけあるかも基準とさせていただきました。

 先ほどもお話ししたように、このプログラムはノウハウを業界全体に広げるためのものです。ですので、他社を含めてほかの方々とつながって、交流していく意思を持たれているか、そこも評価の対象になりました。

沼下
 育成対象者となる方の審査のプロセスなどもご共有いただいていたのですが、非常に多彩な方が選ばれています。大きな会社もあれば、新規事業としてゲーム業界に参入された会社や、個人で会社を立ち上げられた方もおられるなど、全体としてバランスがよいというか、偏りのない方々を採択されている印象を受けました。

 育成対象者となる方々にお会いしてお話をする機会もあるのですが、やはり皆さん業務を担当されている方なので、実務的に学ぶ意欲がすごいんです。オンライン講義でも皆さん積極的に質問をされていて、明日の業務にどう活かそうか、という意欲をとても強く感じます。

――選抜にあたっては、所属している会社だけでなく個々人のパーソナリティーなども見られたのでしょうか。

佐藤
 もちろんです。このプログラムを受けたことで学べるものがあるか、ということがとても大事なので、むしろ人の能力をかなり見ています。たとえば、英語力がそこまで高くなくても、欧米圏で実際にコミュニケーションを取った実績があるのであれば、そこをしっかりと評価しました。

 意識的にバランスがよくなるようにしたわけではないのですが、結果的に沼下さんがおっしゃったように、偏りのない方々を選ぶ形になりました。パブリッシング事業を始められたばかりの会社から、ファミコン時代からゲームの販売を続けられているコトブキソリューションさんのような会社まで、幅広い会社が揃っています。ミッドナイトカップケーキさんのように、個人のゲームスタジオの方もいらっしゃいます。ちなみにバランスという点で言えば、男女比もちょうど5:5になっていますね。

是永
 育成対象者の皆さんにはこれからがんばっていただくのですが、今回のプログラムは現役の方に技量をさらに伸ばしていただくためのものです。多様なバックグラウンド持つ方々、やる気があって、コミュニティーを作る意志を持っている方々に参加していただけているということが、ひとつ成功の鍵になるのかな、と思います。

 じつは日本の社会人って、世界でいちばん勉強していないと言われているんですよ。自主的に学んでも会社で評価してもらえないなら、学ばないのも無理はないかもしれません。そのため、日本ではリスキリング(※)はあまり成功しないケースが多いのですが、リスキリングを進めるうえで大事なことのひとつがコミュニティー作りなんです。そこで盛り上がりを作って、ある種、正の同調圧力を生むことで成功につながっていく面があるんです。そういう意味で、今回のように大きな座組を作って実施していただけるのは、非常によいことだと思います。
※リスキリング……デジタルトランスフォーメーションや技術進化などの産業構造変化に対応して、新しい職業や業務で必要なスキルを習得する“学び直し”のこと。
――考えてみると、このプログラムに参加することで支援金がもらえるというわけでなくて、それでも46社が選りすぐりのスタッフを送り出してきた、というのはすごい話ですよね。

佐藤
 そうですね。それだけ皆さん困っているということがわかります。中華圏でそれなりに成功されているインディーゲームパブリッシャーさんはいくつかいらっしゃいますが、日本から出たヒットタイトルで、欧米圏の比率が高いものというのはほとんどないですし、例外的に欧米圏で受けたものがたまたま出てきたとしても再現性がないことが多いです。欧米市場へのインディーゲーム展開のノウハウは誰も持っていなくて、困っていると思います。

 欧米のインディーゲームパブリッシャーと張り合えるくらいの販売力を持っている日本のインディーゲームパブリッシャーって、そんなにいないんですよ。そういった方々がノウハウを学ぶ場として“G4”を役立てていただいて、それによって日本の作品が海外にちゃんと届くようにする、それが大事なのかなと思います。

――“G4”の公式サイトにあるスケジュールでは、3年目までのプログラム内容が記載されています。いったん3年がひと区切りとなるイメージなのでしょうか。

是永
 そうですね。プログラム自体は5年計画となっていますが、基金というお金を活用するうえで、政府はまず3年間様子を見るという建付けになっているんです。そこでいったん検証を行って、そのうえで4年目、5年目の措置を検討していくことになります。

佐藤
 私どもの計画としては、4年目、5年目も続けていけるのであれば、第2期のような形で、新たに10社の育成対象者を受け付けたいと考えています。

是永
 理想としては、恒常的な人材育成の仕組みや体制が整えられて、続いていくことですね。

佐藤
 そういう意味では、現在育成対象者となっている10社さんとのプログラムが完了した後も、ご縁は続けていきたいと考えています。コミュニティーという形でご協力をいただいて、2期の方とも交流していただければ、今度は20社が集まることになりますよね。仮に3期、4期と続いていけば、今回ご応募いただいた46社を全部迎えることもできて、それこそ本プログラムが業界全体に広がることになります。
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“オンライン講義”や“海外イベント視察”などできっちりノウハウを学んでもらう

――公式サイトではプログラム概要として、“オンライン講義”、“海外イベント視察”、そして“ゲームストアでの共同展示”の3つが挙げられていますね。こちらについてもそれぞれ狙いなどを教えてください。

佐藤
 オンライン講義については、欧米圏、中華圏のノウハウを持っているゲームマーケティングの専門家の方にご登壇いただいています。これに関しては、座学を通じて皆さんのスキーム、知見を揃えることを目的にしています。

 参加していらっしゃる皆さんは、企業の規模も成り立ちもバラバラですし、他業種から入られた方もいれば、職種もそれぞれに異なるので、ある程度足並みを揃える必要があります。そのために、まずはオンライン講義で基礎知識、応用知識を身につけていただくことが大事だと考えています。

――オンライン講義は全26回と、けっこうな数が予定されていますね。

佐藤
 いくつかの講義に関しては、公開講演の形をとっています。こういった場を通じて、今回残念ながら採択されなかった会社、あるいはセルフパブリッシングを目指している開発者にも、知見を届けられるような仕組みにしています。

 実際に実施した公開講演の中では、欧州のゲームイベントでマーケティング系のサイドイベントを主催されているジュリア・ケニーさんをご招待しました。どの分野でもそうだと思うのですが、欧米の専門家はクローズドサークルを作りがちです。そこに入っていかないとノウハウが手に入らないので、そういったクローズドサークルにいる人たちとガッツリつないでいく、というのもオンライン講義の目的になっています。

――個人でも企業でも、日本人が欧州のクローズドサークルに入っていく、というのはなかなかに難度が高く感じられてしまいますからね。

佐藤
 そうです。その点、国のお力添えがあれば招待もしやすくなりますから。もうひとつの施策である海外イベント視察については、イベントの視察を通じて、海外のパブリッシャーの販売方法、出展方法を学ぶ場になっています。

 それに加えて、いまお話ししたようなクローズドサークルにいるトップの方々と、直接コネクションを作っていただく、というのも目的にしています。実例で言えば、今年のGDCでは、毎年Steamマーケティングの第一人者として登壇しているクリス・ズコスキーさんや、『
Among Us』のコミュニティーマネージャーを務めるビクトリア・トランさんなど、世界トップクラスの方々とお会いできています。そういった関係性を築いていくことも重要ですね。

――海外パブリッシャーとも会っているのですか?

佐藤
 はい。直近ですと『Inscryption』のDevolver Digitalさんや、『Clair Obscur: Expedition 33』のKepler Interactiveさんなどにお会いして、どんなことをしているのかを教えていただく場を設けてもらいました。最初にこの施策を計画したときは、私も日本人が欧米のパブリッシャーのもとに出向いて、ノウハウを教えてくださいと言って教えてもらえるものか、確信がありませんでした。

 ところが実際にお願いしてみると、意外と関心を持っていただけたんです。向こうは向こうで、日本やアジアがどういうふうに取り組んでいるか、知りたかったようなんです。そういう意味でも、パブリッシャーどうしライバルではありますが、協力し合える関係なんです。

――国内のパブリッシャーに言えることが、世界を通じても同じだったということですね。

佐藤
 たとえば、欧州と日本のパブリッシャーが手を組んで、アジア圏は日本側が、欧米圏は欧州のパブリッシャーが対応する、みたいな連携は珍しくないです。そのためにも、お互いの関係を築いていって、ノウハウを共有していくことは大事ですよね。あちらが東京ゲームショウなどに来る場合、日本のパブリッシャーとつながりを持っておきたい、という考えもあると思いますし。
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2025年11月に中国・上海で開催されたWePlay Expoに参加。あわせて中国ゲーム市場の視察を行った。和やかな雰囲気のうちに視察は進んだようだ。
――3つ目の施策として掲げられているゲームストアでの共同展示、というのはややイメージが湧きにくい印象ですが、こちらはどういったものなのでしょうか。

佐藤
 展示と言うとイベントなどでの展示を連想されるかもしれませんが、こちらはSteamや家庭用ゲーム機などのプラットフォームと交渉をして、“○○ウィーク”のような特集にタイトルをまとめて掲載していただく、というものになります。海外に向けたプロモーションを実践する場を用意する施策ですね。

 現時点ではまだイベントでのブース展示などは予定していませんが、そのあたりは適宜、状況に応じて変化していく部分かなと思います。イベント視察についても、世界情勢などを考えて計画は柔軟に変更できるようになっています。そういった変更を許容できる仕組みになっているのも、本プログラムのありがたいところかと思います。

是永
 一般的な役所の事業ですと、1年ごとに使える予算が決まっているかと思うのですが、基金の場合、3年間で使っていただけるようになっています。ですので、今年は予定していたイベント参加ができなかったから返金してください、みたいなことはなくて、柔軟な執行が可能になっています。
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参加者からは高い評価。欧米圏のトップレベルのマーケターとつないでいくことが課題

――プログラムとしてはすでに動いていますが、現時点での手応えを教えてください。

佐藤
 いまのところ、イベント視察としてはWePlay ExpoとGDC 2026のふたつに参加しました。実施後にアンケートも行ったのですが、基本的にはものすごく高い評価をいただいています。報告会も毎回ほぼ満席になっていて、そこでも高く評価していただけているのを感じます。

 ただ、欧米圏のトップレベルのマーケターとつないでいく、という部分はまだまだだと思います。販売の世界はものすごく幅が広いです。マーケティングには“プロダクト”、“プレイス”、“プライス”、“プロモーション”というマーケティングの4Pというものがありますが、分野ごとにいろいろな専門家がいらっしゃいますから。ここにつないでいくことに関しては、これからも工夫していきます。
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3月にアメリカ・サンフランシスコで行われたGDC 2026の模様から。
――参加者の方からの印象的なフィードバックはありましたか?

佐藤
 非常に学ぶところが多かったと言ってくださる方が多いです。しかも、そこで得た知見をしっかりと実務に役立ててゲームを売ってくださっているんですよ。そこがすごくいいなと思います。Discord上で皆さんが情報のやり取りをして、Steamに出す前には何をするべきか、セールのときにはどうしたらいいか、みたいな情報を積極的に交換されていますね。

 もちろん、そういった付き合いに慣れていない方もいらっしゃいます。たとえば、もともとアニメや映画のディレクターをされていた方などもいらっしゃるのですが、少し入っていきにくいですよね。そういう場合は、こちらから前職の分野ではどうマーケティングを行っていたか、ゲームと比べてどんな違いがあるか、みたいなことをお聞きして、皆さんとつながりやすくなるようにしています。

是永
 個々の会社で行って知見を集めていこうとした場合、人事異動で担当者の方がいなくなってしまう、みたいなことも多いと思います。本プログラムはそこをIGDA日本さんが取りまとめていただき、どんどんノウハウを蓄積していただきたい。

 世界中の専門家とのネットワークを機関としても蓄積していただきつつ、各社にもそのつながりを共有していただくことを、今後も引き続き行っていただきたいです。

沼下
 オンライン講義は私も拝見しているのですが、以前、育成対象者さんたちが取り扱っている実際のSteamページをレビューする会があったんです。これがすごくおもしろかったです。とても具体的な指摘が挙げられていて、そこで語られたことがすぐつぎに活かせるようになっていたんですね。それがすごく刺激的でした。

佐藤
 たとえばSteamのタグって、抽象的なものも多いですよね。“かわいい”のタグは英語圏だと“Cute”になってしまうので、若干ニュアンスが変わってくるとか、そういったところまで解説されていました。トレーラーの見せかたやスクリーンショットの色合いのバランスなど、細かいところまでガシガシと指摘が入っていましたね。

沼下
 欧米からはこういうふうに見られていますよ、というのを率直にレビューされていましたね。プロの目線だからこそ気づける部分もあって、自分たちだけでは見落としてしまうところもあるな、というのを私としても感じました。

佐藤
 やはり、日本で蓄積しているマーケティングの知見と欧米圏のそれとでは、また内容が違ってくるんですよね。そこは大きな学びになっているのかなと思います。
インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
2026年4月に行われたGDC 2026の視察報告会の模様。

セルフパブリッシングをしているゲームスタジオを支援する取り組みも計画中

――公式サイトで明かされている以外にも、予定されている施策についてお話しできることがあれば教えてください。

佐藤
 今回は10社のパブリッシャーを対象にした施策についてお話ししましたが、じつはセルフパブリッシングをされているゲームスタジオのリーダーさん、プロデューサーさんなどを支援する取り組みも計画しております。まだ諸々を整えている最中ですが、今年度中には動き出せると思うので、ご期待ください。こちらも海外が絡んでくるようなものなりますので、おもしろくなると思います。

――今回お話しいただいたもの以外では、クリエイター支援基金の事業として採択されているプロジェクトにはどのようなものがあるのでしょうか。

是永
 政府としては特定のプログラムを推すわけにはいかないのですが(笑)、CESAさんは令和5年度補正予算の採択プログラム“トップゲームクリエイターズ・アカデミー(TGCA)”に加え、令和6年度補正予算でも採択され、将来的な“ゲームクリエイター検定”の創設も見据えた“ゲームクリエイタースキル実証プロジェクト”を開始されています。

 教育機関への支援という点で言えば、釧路工業高等専門学校さんでは、高専では唯一の採択校ですが、“高専の実践力に基づいたクリエイティブ・イノベーター育成プログラム”としてゲーム・デザインを中心とした取り組みを始められています。東京音楽大学さんでは“ミュージック・イノベーション特別課程”というプロジェクトで、ゲーム音楽も作れるような新しい教育をしよう、という動きもあります。

 今後、もっと初等中等教育機関にアプローチして、子どもたちに「ゲームってこうやって作るんだよ」とか、「ゲーム業界はブラックな環境ではないよ」、という周知をして、若い世代からすそ野を広げていくようなプロジェクトも始めていきたいと考えています。

沼下
 教育機関での取り組みも、立命館大学さんはこれまで、“立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)”を中心として学際的なゲーム研究・ゲーム教育に取り組まれてきたことを活かし、今回の基金では、さらに“学術・文化・制作教育”を融合するカリキュラム開発も進められています。加えて、補助金の委託先に東京藝術大学が含まれていて、東京藝術大学に新設されたゲーム・インタラクティブアート専攻の八谷和彦教授と協力するなど、関西と関東で連携するような動きも出ています。

 東京藝術大学はDeNAさんとも連携されていて、東京藝術大学出身でDeNAさんに就職された方が、東京藝術大学でワークショップの開発をされているんです。そういった感じで、今回のプログラムで採択されている団体が、ほかの方々とも協力しながら、積極的にいろいろなことを試してくださっているというのは、担当者としても感じています。

是永
 国の支援というのは、呼び水というか、そういった動きのきっかけを作ることが重要だと思っているので、実際にそういった動きが出てきているのはうれしいです。

――最後に、今後の抱負を含め、本インタビューを読んでいる読者へのメッセージをお願いします。

是永
 デジタルクリエイターのデヴィッド・オライリーが、「19世紀は小説の時代、20世紀は映画の時代、21世紀はゲームの時代」と言ったということですが、ゲームって総合芸術と言われているんですよね。いまのゲームは情報技術としても圧倒的なものになっていると認識しています。

 ユーザーがゲームの中でインタラクティブに世界とつながっていく、ゲームそのものが人と人をつなぐものになっています。文化芸術の基本的な性質って、人と人をつなぐものなんですよね。文化庁として今後も“ゲーム”という文化には力を入れていきたいと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。

沼下
 アートやデザインの分野でもそうなのですが、人材育成プログラムで皆さんが同じ目標に向かって取り組まれていると、あるときに強い親和性が生まれる瞬間がありますよね。それぞれ取り組んでいることは違っても、同じような課題を抱えていて、互いにつながりを持って協力していく。そういった動きが見られるのは、担当者としてとてもおもしろい部分だなと思います。

 日本芸術文化振興会のような立場にある人間ができるのは、そういったつながりを生み出すことなのではないかと思っています。クリエイター支援基金という枠組みがあるからこそ、分野を越えて課題を共有できて、それによって可視化されることが出てくる、それがおもしろい。今後もプログラムに参加していただいている方々に、確実に前へと進んでいるという実感を持っていただけるよう、がんばっていきたいです。

佐藤
 今回のプログラムは10社を選定して、というものでしたが、最終的には日本でゲーム販売を行っている全会社に届くようなノウハウ作り、カリキュラム作りを目指しています。

 先ほどお話ししたように、開発者としてセルフパブリッシングを目指しているような方にも、ノウハウを届けるための仕組みを計画しています。そういった意味で、日本のゲーム業界全体が海外に打って出やすくなるような仕組みを作っていきたいです。その仕組みを通して、読者の方々が好きなゲームが世界中にもっと広がり、異なる国の人と日本のゲームを共通の話題にして盛り上がれるような、いい結果につなげていければと考えています。
インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?

【G4参加メンバーの感想】

 最後に、G4に参加しているメンバーに意見をうかがった。お話を聞いたのは、東映 岩川日和様、集英社ゲームズ プロデューサー・福田匠氏、松竹 ゲーム事業室 マーケティング担当・吉岡佐和子氏の3名。

東映 岩川日和氏「参加者が新参者も温かく迎え入れてくれるのは感謝しかない」

インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
Q.G4に参加するにいたった経緯を教えてください。

岩川 私は、東映としてゲーム事業の立ち上げ準備が本格化し始めた昨年10月に現部署に異動しきたのですが、異動したその日に、上長から「G4というものがあって…応募してみないか」と打診をもらい(締め切りは2025年10月3日だったと記憶しています)、東映としてゲームビジネスの知見がほとんどない中、これ以上の機会はないと思い飛び込ませていただきました。

Q.実際に参加してみての感想を教えてください。

岩川 ほかのG4採択者の皆様はゲーム業界の歴戦の猛者の方ばかりで、講師の方ももちろんなのですが、参加者の皆様の現在進行形でのご経験や困りごとをリアルタイムで聞けるのがたいへん貴重だなと感じています。

Q.ほかメーカーの参加者との、印象的なやり取りを教えてください。

岩川 G4の講義は基本的にオンラインなのですが、海外ゲームショウのアフターパーティでG4メンバーにたまたまお会いしたりすると、我々はもちろん知り合いがほとんどいない状態の中、「この人が来てるから紹介するよ!」という風に、皆様の人脈を惜しみなく紹介していただける方がたくさんいて……。我々のような新参者を温かく迎え入れてくださって感謝しかないです。

Q.国がこういった取り組みをすることに対する感想を教えてください。

岩川 ありがたい限りです…! とくに、まだスタートしたばかりで手の届かない地域(北米や欧米など)の知見をいただけたり、実際に視察に行かせていただけるのがものすごくありがたいです。

Q.今後G4で取り組んでみたいことを教えてください。

岩川 7月から10月にかけて、複数の海外視察に行かせていただけることになっているので、現地の温度感を肌で感じて、現地の企業の方と積極的にコミュニケーションしていきたいです。

集英社ゲームズ 福田匠氏「これまで会社が蓄積してきた海外販売に関する知見をさらに深められるチャンスだと感じた」

インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
Q.G4に参加するにいたった経緯を教えてください。

福田 まずひとつめに、純粋に海外販売の知見を深めたかったというのが大きいです。

 私は昨年(2025年)2月に発売した『
都市伝説解体センター』というタイトルを担当していたのですが、このゲームは海外でも一定の反響をいただけた一方で、日本の強い反響を鑑みると、もっと多くの国に、もっと多くの方々に届けられる伸びしろを感じました。そういったことを考えていた中でG4の募集が始まり、これまで会社が蓄積してきた海外販売に関する知見をさらに深められるチャンスだと感じました。

 ふたつめに、ともに高めあえる、年代の近い仲間を見つけたかったというのもありました。業界で名前が出てくるようなベテランの方々は、作品を通して年月をかけてつながっている印象を受けています。私も同様に、今後この業界を牽引していくであろうほかの会社の同世代の方々とつながることで、組織の枠組みを超えて切磋琢磨する仲間が見つけられるのではないかと思いました。

Q.実際に参加してみての感想を教えてください。

福田 まず大きな点として、前述の目的は達成されたように感じました。

 メンターの方々は、欧米・中華圏といった主要市場に非常に強い知見を持っており、かつ第一線でいまもSteamでビジネスをしていらっしゃる方々で、講義内容はいつも非常にためになり、すぐ業務に活かせるような実践的知識ばかりでした。

 また、私のほかに参加されている方々も、非常に高いモチベーションを持っておられて、日々自分の勉強不足や語学力の不足を感じ、勉強や仕事により一層励むきっかけにもなりました。G4を通じ、こういったすばらしい方々と出会えたというのもとてもうれしかったです。

 加えて、参加するまで想定していなかったうれしいこととしては、こういったプログラムを通じてでないと出会いにくいような業界の第一人者の方々とたくさんお会いできた点です。タイトルスカウト、マーケティング、コミュニティー育成、いずれも目から鱗のノウハウを聞くことができ、またそういった方々とのつながりもできました。

Q.ほかメーカーの参加者との、印象的なやり取りを教えてください。

福田 G4でGDCに行かせていただいた際、前述の通り業界の第一人者の方々と多数お会いすることができたのですが、ここで教えていただいた知見に関し、サンフランシスコのおいしいご飯をいただきながらほかメンバーとざっくばらんに議論できたのは非常に楽しく、意義深い時間でした。

Q.国がこういった取り組みをすることに対する感想を教えてください。

福田 本当にありがたいことだと感じています。

 本記事内でも触れられている通り、日本のSteam市場のシェアはまだとても小さく、ここで戦うためには確実にグローバルマーケットを取りに行かなくてはいけないビジネスであると体感しています。近年、日本でもSteam市場は注目されてきてはいるものの、作り手側としては言語の壁やノウハウ不足もあり、海外展開に苦戦している印象を持っています。一方で、日本にはゲーム開発者の数が多く、届けることさえできれば世界中に広がりうるおもしろいゲームが規模の大小を問わずたくさんあると感じています。この“届ける”という厚い壁を、このプログラムを通じた知見によって突破させていただき、ノウハウを浸透させることができれば、ゲーム市場、ひいては日本のゲーム業界全体にも貢献できるはずだと信じています。

 加えて、このような特別な機会をいただいている以上、成果でお返ししなくてはという私自身の責任感も感じています。

 このすばらしいプログラムを継続させるためには、参加したメンバーが力を合わせて成功し、取り組みに正当性を与える必要があるのではないかと考えています。私の立場としては、G4で得た知見を活かし、みずからがプロデュースを担当するゲームを成功させることでG4に報い、さらにそこで得た知見を日本の業界全体にも浸透させていきたいと考えています。

Q.今後G4で取り組んでみたいことを教えてください。

福田 講義やイベント視察を通じ、ノウハウや知見をたくさん共有していただいたので、つぎはそれを実践させていただく機会があればと考えています。

 たとえばゲームイベントに出展したり、実際にコミュニティー運用や各種マーケティング活動をしながら、お互いにその成果を報告し合い、議論し、改善するサイクルができれば、ノウハウを実践的知識に変えることができるのではないかと感じています。やはりノウハウをお聞きしただけでは、実際にやってみるとうまくいかないケースも多々あると思いますので、実践の機会をいただければより成果につなげられるのではないかと考えています。

松竹 吉岡佐和子氏「参加している皆さんのモチベーションが非常に高く、私も刺激を受けながら高い意欲を持って取り組めている」

インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
Q.G4に参加するにいたった経緯を教えてください。

吉岡 弊社として今後グローバルパブリッシングタイトルが増えるため、海外での販売方法を体系的に学びたいと考えていたところ、まさにこのG4がぴったりのプログラムでした。

 また私個人としても、もともとは別業種でマーケティング業務に従事していたため、ゲーム市場への理解をさらに深め、専門的な知識やノウハウを習得したいと思い応募いたしました 。

Q.実際に参加してみての感想を教えてください。

吉岡 これまでは講義とイベントへの参加がメインでしたが、講義内容が非常に具体的でたいへん参考になっています。

 ゲームマーケティングの基礎知識から、Steamページの最適化、海外メディアとの向き合いかたといった実践的なTipsまで幅広く網羅されており、日々変化するゲーム市場の最新トレンドをキャッチできる点も魅力です。

 また、ともに参加している皆さんのモチベーションが非常に高く、私も刺激を受けながら高い意欲を持って取り組めています。

Q.ほかメーカーの参加者の方との、印象的なやり取りをお教えください。

吉岡 G4の講師陣や参加者の皆さんが集まるDiscordのグループチャットがあるのですが、あるとき、私がわからないことがあり、過去事例を質問したことがありました。

 その際、皆さんがご自身の実際の経験を惜しみなく教えてくださったことが非常に印象に残っています。垣根を越えて、お互いに協力し合える関係性が築けていることに深く感謝しています。

Q.国がこういった取り組みをすることに対する感想を教えてください。

吉岡 今後も世界のゲーム市場はさらなる成長が見込まれるため、国が主導して次世代のゲーム人材を育成する取り組みは非常にすばらしいことだと思います。私個人としても、このプログラムに参加させていただき学びが本当に多く、感謝の気持ちでいっぱいです。

  今後は一期生としてしっかりと成果を出し、このすばらしいプログラムが続いていったらうれしいです。

Q.今後G4で取り組んでみたいことを教えてください。

吉岡 今後はこれまでに学んだ知識を活かし、実際にアウトプットする場として“共同出展”などに挑戦してみたいです。実践を通じて学びをしっかりと自分の身につけたいですし、成果を報告することで少しでも自分が学んだことを還元していきたいです。
インディーゲームを海外で売るためのノウハウや知識を教えます!国がゲームに本気で注力する“クリエイター支援基金”の“Global Game Growth Gateway”(G4)って何?
吉岡氏が視察したGDC 2026の模様(写真提供:吉岡氏)
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