2025年7月より放送・配信されたショートアニメ[NOLINK]『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』(以下、『ミルサブ』)。軽快な掛け合いや、コミカルなキャラクターたちの活躍などで人気を博した。
2026年2月6日にはショートアニメシリーズ全12話に新作パートを加えた映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が公開。本稿では映画の公開を記念して、『ミルサブ』の監督を務める亀山陽平氏との特別対談をお届け。
亀山監督のお相手を務めるのは、カプコンより2026年4月24日に発売を予定している『プラグマタ』のディレクターを務める、趙 容煕氏だ。『ミルサブ』も『プラグマタ』も、宇宙を舞台にメカニカルなキャラクターたちが登場するほか、趙氏は『ミルサブ』の大ファンとのこと。
おふたりが業界を目指したきっかけや、SFとは何か、映像作品とゲームの違いなど、さまざまな話題が飛び交った対談を、ぜひじっくりと読んでみてほしい。
※本稿には『ミルサブ』のネタバレが含まれます。未視聴の方はご注意ください。亀山陽平 氏(かめやま ようへい)
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』監督。2022年に専門学校の卒業制作で公開した『ミルキー☆ハイウェイ』がネット上で話題を呼び、2025年にその続編となる『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』をショートアニメ全12話でシリーズ化した。(文中は亀山)
趙 容煕 氏(チョウ ヨンヒ)
カプコン『プラグマタ』ディレクター。以前は『バイオハザード』シリーズのキャラクターデザイン、アートディレクションなどを担当していた。(文中は趙)
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ふたりが業界を目指した経緯とは?
――まずは亀山監督がこの道を目指したきっかけを教えてください。
亀山
自分は中学生ぐらいのころから映画がすごく好きで、なんとなく映像系のエンターテインメントの仕事がしたいなって、ふんわりと思ってました。映画監督になりたい、みたいな明確なビジョンがあったわけではないんですが。
――ちなみに、とくに好きだった映画はありますか?
亀山
『第9地区』や『エリジウム』などのニール・ブロムカンプ監督の作品ですね。あのSF世界がとくに好きです。
――そこからどのように、映像作品を作ることになったのでしょうか?
亀山
高校を出てから「あれ、このままだと映像業界に入れないんじゃ?」と、ふと危機感に気づきまして(笑)。これはまずいと専門学校に入ったら、3DCGにのめり込んだんです。
いろいろ学んでいざ卒業となったとき、もしこの先どこかに就職したら、好き勝手に映像を作る機会はやって来ないだろうと思って、やりたいことを全部詰め込んだのが『ミルキー☆ハイウェイ』でした。結果的には、いまもそれを『ミルキー☆サブウェイ』として継続してやらせてもらっている感じです。
――映像作品と言っても手描きアニメ、実写などいろいろありますが、なぜ3DCGにハマったのでしょうか。
亀山
昔からディズニー作品ですとか、海外のアニメもたくさん見ていたので、アニメーションをやりたいという気持ちはありました。ただ、日本のアニメとなると、テレビシリーズ作品などを見ても、キャラクターの細かい仕草にこだわれるチャンスが少ないのかなと。自分は、細かい仕草や何気ない会話みたいなところを描く映像作品が好きなんですよ。
あと個人的にはアニメーターは食べていくのが厳しい、みたいな印象もあったので、だったら3DCGならなんとかなるかもしれない、と思って手を出した感じです。で、実際に学び始めたら3Dは3Dなりに独自の楽しさがあって、その魅力にハマっていきました。
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――専門学校で学んだこと以上に、亀山監督の才能や努力が『ミルキー☆ハイウェイ』の評判につながったと思います。どのように腕前を上げていったのでしょうか?
亀山
自習できる環境が整っていたんですよね。いまはYouTubeにも映像の作りかたのチュートリアルみたいな動画がたくさんアップされているので、それを見るだけでも勉強になります。また、自分が3DCGを作るのに使っているのは“Blender”というツールなのですが、専門学校に入ってからはとくにツールの使いかたが上達していきました。
上達すればするほどやれることも増えて楽しくなって、身につくスピードも早かったです。その楽しさがあったので、自発的に何かやりたいという気持ちがどんどん膨らんでいったのが大きかったのかなと思います。あと、専門学校時代はコロナ禍の最中だったので、家の中で過ごす時間が長かったのも、振り返るとよかったのかなと。
――おそらく3DCGの造形ができる方々って、絵心もあると思うんです。『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ ビジュアルブック』に亀山監督の学生時代のイラストが掲載されていますが、もともと絵を描くのは好きだったんですよね。
亀山
小さいころから、自由帳の落書きみたいに絵を描いていました。漫画のアニメのキャラクターを描くみたいなことは、なんだか恥ずかしくて全然やってなかったです。写実的な絵や、何かのスケッチを描くことが多くて、アニメらしい雰囲気の絵は描いておらず、メカっぽいものを描いたりしていました。
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――ですが『ミルサブ』って、めちゃくちゃアニメらしいデザインですよね?
亀山
味のあるデフォルメ、みたいな画風は最近になってようやくできるようになったことです。そこの調整は僕がいちばん苦労したところで、何ならいまでも苦労しています。
趙
昔描いていたというイラストを見せてもらっていいですか?
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亀山
これですね。もう本当に写実的なものばかりで。
趙
いや、かなりリアリティーありますね。作品からは想像できないような。僕はもう昔からアニメチックというか、漫画的なイラストばかり描いていて。で、なんか気づいたら写実的な方向に向かっていって、いまは写実的なアートスタイルになりました。
亀山
趙さんはいまどのようなイラストを?
趙
こんな感じです。
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亀山
おお、メカメカしい。
――お互い、始まりと現在のスタイルが逆なのも興味深いですね。趙さんは、どのようにゲーム業界を目指したのでしょうか?
趙
僕も亀山さんと同じで、やはり絵を描くことが好きなんです。アニメを作る仕事に就くか、漫画家を目指すかで悩んでいました。どちらかというと漫画家志望だったので。
僕は韓国出身で、小さいころは韓国で暮らしていました。そのとき読んでいたのが『ドラゴンボール』です。韓国にも週刊少年ジャンプ的なものがあって、連載されていたんですよ。もう『ドラゴンボール』のためだけに読んでいました。
それくらいハマって、絵を描くのも『ドラゴンボール』を参考にしてみたり、漫画を描いて友だちに見せて喜んでもらったり、楽しかったです。
――そこからどのようにゲーム業界へ?
趙
じつは漫画だけではなく、映画やアニメ、ゲームももともと好きなんです。小さいころは映画を1日に何本も借りてきて鑑賞したり、アニメをブッ通しで視聴したりして。その傍らでスーパーファミコンのゲームもたくさん遊んだりと、好きなものを楽しんでいました。
小さいころから漫画家になりたかったけれども、アニメの世界にも興味を持ち始めて……。そんなとき、友だちの親戚の家でプレイステーションに出会ったんですよ。初めて見たとき、CD-ROMでゲームが動くことに驚きながら初めてプレイしたのがカプコンの『バイオハザード』だったんです。
当時は3Dで描かれたグラフィックに驚きましたし、何よりメチャクチャ怖くて。でもプレイステーションが欲しい! って思いながら、そのときふと「ああ、ゲーム業界を目指す道もあるのか」と意識するようになりました。
よく考えてみると、グラフィックがあるから絵も描ける、物語を構築できる、アニメーションも作れる、おまけにゲームも遊べるなと、自分のやりたいことが全部詰まってると思ったんですよね。そこからはゲーム業界を目指すようになりました。
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亀山
ということは、趙さんがカプコンに入ったのは『バイオハザード』がきっかけだったんですね。
趙
そうですね。少年時代は『ロックマン』が好きな少年だったのですが、『バイオハザード』で衝撃を受けて。カプコンのゲームが自分に影響を与えてくれました。
――ではそのあたりから、ゲームの3DCGなどにも興味を持っていたのでしょうか。
趙
いえ、正直に言うと当時は幼少期ながらに3DCGから暖かさを感じられなかったんです。作るなら2Dがいいなと思っていました。ドット絵のキャラクターに魂が宿っている気がして。
亀山
わかりますわかります! 自分も3DCGって最初は興味なかったです。手描きアニメのほうが好きでした。ゲームは小さいときには遊んでいて、駄菓子屋に『メタルスラッグ』があったのですが、あれは2Dグラフィックがものすごいですよね。
イラストを描いたりしていると、絵ってなんとなくどうやって作られているのか想像できます。でも3DCGって何がどうなってるのかわからない、ちょっと入り込めない、みたいな感覚は多くの人が感じると思っています。
趙
わかります。そして紆余曲折を経てカプコンに入り、『バイオハザード』シリーズにも関わるようになった自分の人生には感謝しています。もちろんいまでは3DCGも大好きですし、しっかり魂を込めて皆さんに魂を感じてもらえるように心がけています。
――ゲームの場合って、2Dグラフィック、とくにドット絵だと昨今はクラシックゲームに見られたりと、それよりも写実的な3Dグラフィックが求められがちですよね。映像作品は、逆に手描き作品のほうが評価されたりして。
趙
そこはプレイヤーさんのニーズなのかなと思っています。ゲームは比較的高価なものですから、高級感のあるグラフィックであるほど納得性があると言いますか。プレイヤーさんもハイクオリティーな見た目を求める方も多く、そうなると3DCGがメインになるのかなと。
亀山
あと、3DCGがいちばん生きるのはゲームなんですよ。たとえば3Dだとフレームレートが比較的簡単に上げられるので、キャラクターを操作するという部分で3Dのほうが強い。2Dだとフレームレートをもし上げるとなれば、その分だけさらに描かないといけないため、ものすごい作業量になってしまいます。
また、3DCGアニメだと決まったカットを見せるだけで済みますが、ゲームだったら360度見まわしたりしたいじゃないですか。ですから、3Dはゲームだからこその体験を産み出せるツールなんだと思います。だからこそ、お客さんもそれが味わいたいんじゃないでしょうか。
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『ミルサブ』『プラグマタ』の魅力に迫る!
――映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が公開となりましたが、いまのお気持ちはいかがでしょうか。
亀山
もともと『ミルサブ』は1話あたり3分30秒のショートアニメで全12話です。それを劇場版になんとか1本につなげたので、なかなかしんどかったです。また、劇場作品として完璧かと言われると、正直「ぐぬぬ……!」とまだまだこだわりたかったところもあります。
ショートアニメシリーズをそのまま続けて流すみたいな方向性も考えていたのですが、それだとおもしろくない、味がないなと思い、1本にまとめることにしました。おかげで劇場版ならではの体験を味わえるものになったと思います。ぜひ多くの方に楽しんでほしいですね。
――趙さんは劇場版の試写をご覧になられたほか、ショートアニメシリーズも全部見ているんですよね。
趙
もちろんです。もう大ファンです! とくに好きなのがキャラクターたちの演技です。先ほど亀山さんが「細かい仕草が好き」とおっしゃっていましたが、まさにそこです。登場人物たちの身振り手振りもそうですし、あとは声優さんの演技も一般的なアニメっぽくないですよね。生々しいセリフになっていて。ひとりひとりのキャラクター作りもすごく上手で、本当に大好きです。
亀山
ありがとうございます。自分でもそういう細かい演技が好きで描きたかったんだなという自覚があります。僕は昔から映像作品を見るとき、シーンごとのキャラクターの演技や演出を見るのが好きでした。ですからキャラクターの立ち振る舞いや、声優さんの演技についてはかなりこだわって作っています。
趙
『The World of GOLDEN EGGS』を見ている感覚に近いものもありました。
亀山
たしかにアニメっぽく聞き取りやすいセリフではなく、生の会話のライブ感みたいなものを出すのは影響を受けているかもしれません。僕が小~中学生のときに『The World of GOLDEN EGGS』や『Peeping Life』といった、アドリブ的な声優さんの演技が光る作品が好きだったので。
それに加えてストーリー性のある映画も大好きでした。そのためアドリブ的なライブ感のある会話を演出しつつ起承転結のしっかりある物語も作るというのが、自分の中で行きついたスタイルかもしれません。
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趙
後半、マキナが「ゴミ野郎じゃねーわ!」とカッコつけるシーンで、アカネが「でもいま……」ってちょっと茶々入れるシーンがありますよね。そこはイジらなくていいじゃん! みたいな、ああいうノリが大好きで。その、SFモノってなんかこう、ちゃんとやると地味で重くなりがちじゃないですか。そこをキャラクターたちが緩めてくれているような。
亀山
ありがとうございます。ただ、僕は『ミルサブ』をSFだとはあまり思っていなくて、どちらかというとコメディ作品と言いますか。劇中に出てくるメカやガジェットって、かなりご都合主義でして、科学的な設定よりも物語を優先して組み立てているもので。
SF作品って、その作品に出てくる設定を中心に、物語が展開するものだと思っています。『ミルサブ』はキャラクター優先で物語を作っているので、ガワの部分だけSFっぽさがあるコメディなのかなと。
昨今はSFの定義も曖昧と言いますか、それっぽいだけでSFと呼ぶこともあるのは理解してます。ただメカが登場する、宇宙が舞台である、と設定されていても、それだけではSFではないはずですよね。
趙
あぁ、わかります。たとえば『スター・ウォーズ』ってSFじゃないですよね。
亀山
そうですそうです。ファンタジーですよね。わかりやすいSFって、『ドラえもん』だと考えています。ひみつ道具という技術があって、それに対して人間たちが愚かなことしたりするっていうのが基本になっていて。ものすごくわかりやすいSFだと思います。
趙
同感です。同様に僕の中では『バイオハザード』シリーズもSF作品と思っています。
亀山
ゾンビは出てきてもオカルトではなく“t-ウィルス”といったリアルな設定が中心ですからね。それで言うと、『プラグマタ』からはかなりSFモノっぽさを感じていますが、実際はどうなんでしょう?
趙
『プラグマタ』は少なくとも見た目をSFっぽくしています。でも、月面施設を監査するためにやってきたヒューと月面施設にいた少女型アンドロイド・ディアナ、このふたりの物語が中心なんですよ。そのため、SFという一面は強く押しすぎないようにしています。
――ちなみに本作はどのような物語なんでしょうか。
趙
月面施設はAIが管理していて、AIが3Dプリンタで建設したり製造して運営しています。もちろん人間も居たのですが、その月面施設のクルーたちと突然連絡が取れなくなってしまうんです。そして地球から派遣された主人公・ヒューが調査することになり、危険な目に遭ってしまいます。そこからディアナと出会い、ふたりで危険な月面施設を脱出しよう……というお話です。
亀山
そうなんですね。調査しに来た先で危険な目に遭い脱出を目指す……という流れは『バイオハザード』に似ていますね。
趙
ゲームの王道的な話ではあります。何か問題がないとキャラクターたちは動きませんから。
亀山
謎の現象や何かがあってそこへ行く。たしかにSFというよりは、ゲームの王道ストーリーなのかもしれませんね。
趙
ですから最初、『プラグマタ』をハードなSFモノにするか、もっとライトにするのか悩みました。結果的にはハードSFで進めると、やはり理解できない方々が多いだろうと思い、ふたりの物語にフォーカスしました。もちろんそういった設定もあるのですが、理解できなくても楽しめる作品にしたほうが、多くの方々に遊んでもらいやすいですよね。
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亀山
あぁ、わかります。映像作品でもハードなSFモノを作るとなったら、設定をすべて説明しないと理解してもらえないないし単純におもしろくありません。とは言えその説明パート自体はつまらなくなってしまったりして。楽しめる人はいるけれども、大衆向けではないんですよ。
趙
そうなんですよね。
亀山
僕はゲームのほうがそういう部分を受け入れてもらいやすい、楽しんでいただける媒体なんだと思っていましたが、同じようなジレンマを抱えていらっしゃるんですね。
僕も作品の世界全体を映像で楽しんでもらうにはどうしたらいいんだろうって、つねづね考えているんです。僕は時代劇も大好きなのですが、いまの日本って時代劇モノが少なくなっているるように感じています。おそらく江戸時代など当時のルールや昔の文化への知識が弱くなっているのかなと。それで時代劇の世界に入り込めなくなっているんだなと思っています。
そういう前提の知識ありきで作られた世界を大衆向けに楽しめるようにお届けするのってなかなか難しいんです。『プラグマタ』もきっと、細かい設定や世界設定が作り込まれていますよね。
趙
はい。ですが、それを中心に楽しめるようにはしていません。せっかくゲームを買ったのに、なんでこの世界について勉強しなきゃならないの? ってなっちゃいます(笑)。
――世界設定って、ゲームなら読み物系のファイルなんかにしてプレイヤーが好きなときに読むことができたりしますが、アニメだとシーンとして魅せる必要がありますよね。
趙
『ミルサブ』はそこがうまいと思いました。たとえばマキナの身体のパーツについて、トイレでカートやマックスたちが「あの感情再現プログラム見た?」みたいに、ものすごいパーツを使っていることを会話していて。それだけで世界設定の一部が自然にわかるじゃないですか。そういうのがいいんだよなぁって。
亀山
それはニール・ブロムカンプ監督作品の影響が強いです。たとえばスマホって、もう昔の人が見たら意味のわからない未知の機械だと思うんですが、いまの現代人にとってはみんな使っている当たり前のデバイスですよね。みんな充電がどうとか、テクニカルな話も当たり前にできますし。
ですから、その世界の人たちが日常的に使っているガジェットや技術はカジュアルに会話の中に出てくるんだなと。そういった部分を想像しながらセリフに取り入れています。
趙
そういう演出の何がいいかって、「え、何。自分も知りたい。話に混ぜて!」という気分になって、すごく興味が沸くんですよ。
亀山
興味をどう持ってもらえるのかというのは重要です。ただ、自分の場合は匂わせだけはしているんですけど、実際にちゃんと細かい設定を決めているかというと、全然そんなことないんです(苦笑)。いざ説明しろって言われると、雑に決めているため何も答えられなかったりして(笑)。
趙
実際はそんなもんですよね。世界設定や時代背景など含めて、観客にどう楽しんでいただけるのかという部分では……。たとえばNetflixに『サンクチュアリ -聖域-』という相撲ドラマがあります。自分は相撲にまったく興味がなかったのですが、相撲世界のことを学びながら、最後まで最高に楽しめたんです。ちなみにこの作品は『スラムダンク』の相撲版みたいに感じています。
亀山
テーマや設定が知られていなくても、エンタメとして完成されていたら観客が付いて来れると信じています。Netflixで言えば『イカゲーム』ってまず、エンタメとしておもしろいですよね。そのうえで、韓国の知らない手遊びとかが出てきて、説明はないけど知りたくなっちゃうというか。
ですから昨今の作品はまずエンタメとして楽しませたうえで、裏側にある知識を知りたくなる要素があるとよりいいかもしれません。
趙
作品が無理やり教えるんじゃなくて、観客が自分から知りたくなるような。
亀山
それがいいですよね。昨今、SNSなどでバズってるものって、単純におもしろい動画、笑える画像、何も知識なしで楽しめるものが多いと思います。ですがそればかりになると、きっと見ている人たちも次第に飽きるだろうなと考えていて。そういう知識の探求欲みたいなものを刺激される作品というのが、もしかしたらこれからの時代は求められるものかもしれません。
趙
それを『ミルサブ』はキャラクターで魅せているのがすばらしいです。チハルはおいしいと言うけど、マキナなどは不味い(ゲ●の味)という“液弁(えきべん)”がどんな食べ物なのかも興味がわいたりして。ちなみに個人的にはゲームクリエイターとして観てしまって、『ミルサブ』をもしゲーム化したらどうなるんだろう? とか妄想していました。
亀山
僕はゲームの専門的なことについては詳しくないので、ゲームならではのストーリーのおもしろさについて、解像度が高くありません。ゲームが映えるためのストーリー作りってどうしているんでしょうか?
趙
映像作品とゲームには大きな違いがあります。映像作品は第三者として観ることになりますが、『プラグマタ』のようなアクションアドベンチャーは、プレイヤーが主人公に入り込まなければなりません。体験型コンテンツに近いんです。
映像作品は見せたいシーンを自動的に見せるものです。ですがアクションアドベンチャーの場合はプレイヤーが操作しているため、見てもらえるものもあれば見てもらえないものもあって、さらにその順番も人によって変わります。ときには探さないと見つからないものもあるでしょう。それって、自分から見つけに行くことで得られる情報、つまり自分の行動なんです。
それを見せるための物語、という部分では、先に目指すべきゴールが提示されている、という先ほどお話したような王道的な作りになったりもします。
劇場版の新キャラ・ハガの元ネタは『ファイナルファイト』のハガー市長?
――ちなみに両作品ともにメカが登場しますが、3Dはメカと相性がよさそうですね。
亀山
ありますね。ただ、アニメ作品のロボットって3Dだとちょっと味気ないときありますよね? 手描きアニメのロボットのよさもあったはずなんですよ。メカだけ3DCG、みたいなのが主流でメカっぽさは増しましたが、それによって失われた魅力もあると思っているので、一概に3Dだから映えるとは思っていません。
ただ『ミルサブ』としては、アンドロイドやサイボーク系のキャラクターって質感が重要なのだと感じました。それを強く出せるのが3Dなんだと思っています。
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――マキナはほぼロボットに近いですが、カートとマックスは、サイボーグだってわかるような感じがありますよね。
亀山
うれしいことにカートとマックスという、イケメンサイボーグのふたりも人気キャラになってくれました。ファンアートや二次創作もよく見ていますが、皆さんかなりメカ部分の掘り下げをする二次創作が増えたと感じていまして。
皆さんがサイボーグの可能性に気づき始めたのではないかなと。設定的にはご都合主義で決めていますが話を広げられる余地はあると思うので、少なくとも興味を持っていただけたのはうれしいです。
趙
サイボーグの可能性ですか。SFの世界って、ある意味なんというかグロい世界ですよね。
亀山
そう、メチャクチャグロいです。
趙
見た目はかわいらしい、カッコいいってなって思ってもサイボーグなんですもんね。言ってしまうと、生物としてのパーツを捨てているわけで。
亀山
はい。倫理的にいろいろヤバイことは起きているわけですが、そこはなんか気にしないような空気感にしています。ただ、考察を深めてそこに気づき始めている人もいるので、見てる人の心のレイヤーは数段階あると思います。
趙
マキナも見た目こそカワイイですが、話を見ているとヤバいですよね。もしかしたら赤ちゃんのころから身体を機械にしているのかもって。
――『プラグマタ』では、少女型アンドロイド・ディアナが登場しますが、どういった部分でアンドロイド的な要素を強めていますか?
趙
ゲーム制作を行ううえではさざまな規制があるので、表現にはある程度の壁が存在します。生身の人間ではないアンドロイドだからこそできる表現を多く盛り込みたかったのですが、ディアナの見た目などもふまえてとても苦労しました。
たとえば『Dr.スランプ アラレちゃん』みたいに、自身の頭を持つみたいなわかりやすい表現は難しいです。その代わり、彼女の細かい仕草でアンドロイド感を出したりしています。
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亀山
あぁ、頭はそうなんですね。そこがおもしろいところでもあるんですが。
趙
日本以外の国でも発売するので、そこの表現の問題や、あとは文化的な部分も考慮しなくてはならないので、尖ったことはなかなか実現しにくいのが正直なところです。
亀山
そういう点では映画も同じです。世界に向けて作るとなると配慮することが多すぎて、尖ったことができなくなります。とは言え仕方ないですね。
――『ミルサブ』には未来的な世界でありつつも昭和レトロみたいなテイストがあって、『プラグマタ』では現代に近いニューヨークの風景が見られたりしますよね。どちらの作品もSFとして時代のギャップみたいなものを意識して盛り込んでいる理由は何でしょうか。
亀山
自分がレトロな要素を入れるのは“とっつきやすさ”を出すためです。空想の世界でも、どこか見たことがあるようなものがないと、視聴者がその世界に入り込みにくいのではと。あとはノスタルジックなものって、それだけでカワイイと言いますか、説明不要の魅力なので意図的に入れています。
趙
『プラグマタ』も同じです。やはりSF的な世界だけですと興味を持ってもらいにくいです。人間はどうしても、自分の知っている・共感できるものからおもしろさを感じたりするので。月面の世界でメカメカしい世界って、よく見ると白黒で地味なんですよね。それだけだと物足りないのもあって、世界中のみんなが知っているニューヨークを出したりして、興味を持っていただこうとしています。
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亀山
要は、大衆向けに入り込める要素があったほうがいいってことですよね。
趙
そうです。ちなみに『ミルサブ』は昭和レトロというか、カセットフューチャリズムですよね?
亀山
ああ、そこに気づいてくださってありがたいです! じつは『ミルサブ』って昭和レトロと言われがちですが、別に昭和にはこだわってないんですよ。レトロの定義も難しいと思っていて。80年代カルチャーとか、いろいろ呼び方はあると思うんですが、何がどう80年代カルチャーなのか? みたいなところや、何を軸としてレトロと呼ぶのか難しいところがあります。
一方で、カセットフューチャリズムはわかりやすいです。磁気テープという技術が中心にあって、それをスタイルにしているのが合理的ですよね。VHS、ブラウン管が存在していた時代周辺と言いますか。レトロだけで括ってしまうとその時代が好きな人からしたら「何でこれとこれが共存してるの?」みたいなことにもなるので、なんでもかんでも古いものをぶち込めばいいものでもなくて。
――ちなみにゲームメディアとして気になってしまったのですが、映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』に新キャラクターのハガが出ますよね。これ、ゲームファンから見ると見た目的にも、『ファイナルファイト』のハガーに見えるんですが……偶然ですかね?
亀山
正解です。カプコンさんの前で言って大丈夫かと思いつつもぶっちゃけるとマイク・ハガーを意識しました。冒頭のほうで『メタルスラッグ』の話をしましたけど、その横の筐体に『ファイナルファイト』があって、当時よく友だちと遊んでたんですよ。思い入れがあるので、ハガーは意識して入れました。
『ファイナルファイト』、すごく好きなんですよ。自分の管轄してる街が荒れてるのは市長であるお前の責任なんじゃないのかとか、娘が人質になったからってみずから助けに行くとか、破天荒すぎてツッコミどころだらけで(笑)。でもそんなところが本当におもしろくて大好きなんです。
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ハガ署長
――まさかの驚きの情報でした(笑)。では最後に読者へメッセージをお願いします。
亀山
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』は再編集による総集編プラス新作パートで構成した劇場版です。映画としては短い作品ではありますが、劇場の音響で見るからこそ得られる魅力もあると思います。もしよろしければ、お楽しみいただけると幸いです。
趙
『プラグマタ』は2026年4月24日に発売予定ですが、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』と近い時期に披露することができて、いちファンとしてうれしい限りです。ぜひとも、『ミルサブ』と併せて『プラグマタ』もよろしくお願いいたします。Steam版に加えてPlaystation 5、Xbox SeriesX|S、Nintendo Switch 2での体験版も配信されましたので、ぜひ一度触れてみてください。
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