2025年7月7日に25周年を迎えた、スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーIX』(以下、『FFIX』)。本作は、2000年7月7日にプレイステーション用ソフトとして発売。“命”をテーマにキャラクターたちが懸命に生きるさまが描かれ、25年が経ったいまでも多くのファンから支持される一作となっている。
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週刊ファミ通2025年7月24日発売号(2025年8月7日号 No.1908)では、そんな『FFIX』25周年を記念した18ページの特集を掲載。特集内では、『FFIX』の開発に携わったクリエイターからイベントデザイン 青木和彦氏、キャラクターデザイン 板鼻利幸氏、作曲 植松伸夫氏の3名にインタビューを行った。
今回、ファミ通.comでは御三方のインタビューをWebで再掲載。一部のインタビューでは増補改訂版となっているので、週刊ファミ通本誌を読んだ方もチェックしてほしい。
なお、週刊ファミ通の特集内では『FFIX』のイベントやグッズ情報をまとめて掲載。すでにイベントなどは終了してしまっているが、『FFIX』25周年を記念して新たに制作されたキービジュアルが表紙を飾った特集もあるので、こちらもどうぞ。
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「25周年ビジュアルのキャラクターの表情は、皆さんに託したいという思いがありました」
『FFIX』25周年クリエイターインタビューで今回登場するのは、複数のビジュアルを描き下ろした板鼻利幸氏にインタビュー。青木氏とともに手掛けた新作絵本についても、見どころや制作時のエピソードなどをうかがった。
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板鼻利幸氏(いたはな としゆき)
スクウェア・エニックス所属。『FFIX』ではキャラクターやクアッドミストのデザインを担当。代表作は『チョコボの不思議なダンジョン』や『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』など。(文中は板鼻)
イーファの樹の外と内側を描いた対になるビジュアルへの思い
――『FFIX』25周年のために、新規のキャラクターイラストと3種類のキービジュアルを描かれていますが、それぞれどのようなコンセプトで描かれたのでしょうか。
板鼻
新規のキャラクターイラストは、メインキャラクターデザイナーの村瀬修功氏が描いたフォルムを極力忠実に再現しようと当時の設定画ベースで描いています。キービジュアルに関しては1、2枚目はイーファの樹の外と内側をセットとして描き起こしていて、3枚目は今回の『FFIX』25周年用にモデルから起こされたビジュアルになります。
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――1枚目と2枚目は対になるビジュアルなのですね。
板鼻
1枚目にはイーファの樹や、青と赤い月、最終決戦に臨む8人といった『FFIX』の大切な要素をまとめています。構図については、『FFIX』の開発初期、まだジタンもイーファの樹も生まれていないころにアートディレクターの皆葉英夫氏が描いたコンセプトアートと同様の構図で起こしました。そのコンセプトアートは、初代『FF』のタイトル画面をオマージュした鉛筆画でした。イーファの樹の中で銀竜と物思うクジャの絵は、同じ出自でありながらジタンとは違う道を歩んだ彼の心情を思いながら描きました。
――キービジュアルはいずれも、キャラクターの顔を目立たせるというよりも、あえて後ろ姿を描くなどしてキャラクターがいる風景を切り取っているようですが、このような方向性にした理由は?
板鼻
『FFIX』はこれまで世界中の多くの方に楽しんでいただいたタイトルです。きっとプレイされた方々、それぞれが思い描くジタンやビビ、ガーネットたちとの思い出があると思うので、25周年のキービジュアルとしては、彼らがどのような表情をしているのかはプレイヤーの皆さんに託したいという思いがありました。
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――25周年を迎え、さまざまな新グッズが登場しています。とくにお気に入りのグッズは?
板鼻
時間をかけてグッズの企画者と話し合いながら監修にあたったのでどれも思い入れは強いのですが、メインキャラクターをデフォルメしたぬいぐるみは特徴をよく捉えていてかわいいですよね。ベアトリクスもありますし、貴重なアイテムだと思います。あとは白鳥英美子氏の『Melodies Of Life』を新録したレコードでしょうか。オリジナル版が、冒険を終えたガーネットが旅を振り返り歌った歌だとすると、新録版はアレクサンドリアを取りまとめたガーネット女王が年月を重ねた先で歌っているように聴こえて、胸に響きました。
――青木さんとのタッグで手掛けた絵本『ビビとおじいちゃんと旅立ちの日に』が発売されました。板鼻さんが絵本を手掛けるのは2冊目となりますが、前作の経験は、本作にどのように活かされていますか?
板鼻
前作の『チョコボと空飛ぶ船』では、絵本の絵とはどのようなものかと考えるところから始めたので、ふだんの土俵とは違うところで筆を握っている感じがありました。それはそれで試行錯誤が楽しく新鮮だったのですが、今回は『FFIX』という皆さんがすでにご存じの世界が舞台なので、『FFIX』のデザインをしていたときと同様の、描き慣れた設定画風に描こうと決めました。結果としてキャラクターがのびのび動いてくれた感じがしました。
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――今回の絵本の中で、とくに気に入っているシーンや、苦労したシーンなどがあれば教えてください。
板鼻
旧スクウェアのプランナーやディレクターは文章とともに絵も描いてアイデアを伝えてくれる方が多かったのですが、青木さんもそのひとりで、たくさんの絵を送っていただきました。今作は青木さんのアイデアイラストがどれもおもしろく、そのまま絵に起こしたカットもたくさんあります。お気に入りのシーンはクワンがビビにたくさんご飯を食べさせているところでしょうか。ビビはおじいちゃんが自分の身長が伸びないことを心配していると思っていますが、冒頭のクワンは単にビビを肥えさせて食べようとしていると思うとおもしろいですよね。作画に苦労したシーンとしては、“食即是空”のように青木さんの溢れるアイデアを絵に起こしきれずに、わかりやすい絵に落ち着いたものもありました。もし3作目があった青木さんのアイデアを漏らすことなく絵に起こせる力をつけておきたいと思います。
――今回の絵本が“スクウェア・エニックスの青木さん”とは最後のお仕事になりましたが、長年の青木さんとのお仕事の中で、思い出深いエピソードを教えてください。
板鼻
青木さんは今回の絵本のおじいちゃんをもう少しスマートにした“仙人”のような人で、いつもカフェで優雅に過ごしているイメージが強いです。ホノルルでの開発でも気づくと席にいなくて、どこにいるのかなと思うと「近くでアイスラテ飲んでいるから、板鼻くんもおいでよ」とよくアラモアナビーチに近いカフェに誘われました。どこにいてもつねにアイデアを練っている人なので、いったん席に戻ると猛烈にデータができあがっていく感じでしたが、開発最後の数ヵ月は昼夜問わず開発機と向き合って「ゲームの魂は最後の3ヵ月に宿る」と言っていたのも心に残っています。
青木氏による絵本のアイデアイラスト
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クワンがビビのために作ったジオラマ弁当。デザインはほぼこのまま、絵本に掲載されている。
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クワンが理想とする食の道“食即是空”のイメージ。クワンの壮大な空想は、イーファの樹も成層圏をも超えて宇宙へと届き、その口もとに虹の橋がかかる……!?
『ファイナルファンタジーIX』20周年&25周年記念インタビュー一覧