本作の開発を手掛けるRocketPunch GamesのCEOであり、プロデューサーのLouiky Mu氏(以下、Mu)に、本作の開発秘話や、ロボットアクションに懸ける思い、さらには、好きなロボットアニメについてなど、さまざまなお話を訊いたスペシャルインタビューをお届けしよう。
『スパロボ』をアクションに
——まずは『ハードコア・メカ』の開発がスタートした経緯を教えてください。
Mu 僕は中学2年生のころ、本格的にロボットものにハマりました。そこから大人に至るまで、ロボットゲームをたくさん遊び、たくさんのロボットアニメを見ていき、僕はガチガチのロボットオタクになりました。
ただ、ロボットゲームをたくさんやっていくうちに、自分の中でとある感情が湧いてきたんです。僕は『スーパーロボット大戦』のような、2Dグラフィックでデフォルメされたグラフィックが好きです。ですが、「スーパーロボット(※いわゆる『マジンガーZ』などを指す)と、リアルロボット系(※いわゆる『機動戦士ガンダム』などを指す)が、2Dかつデフォルメされたグラフィックで、自由に対戦できるようなゲームがないな」と思ったんです。だったら、自分で作ってしまおうじゃないかと。
——その思いが、『ハードコア・メカ』の開発につながったのですね。
Mu そうです。ただ、ゲームづくりの知識もない状況では、ゲームを作れるわけありません。まずはマンガを描くことから始め、その後、アニメーションのことも勉強し、一歩ずつ自分の技術の基礎を固め、夢が実現できるように努力しました。そして、2015年に起業し、自分の目指すロボットゲームを作り始めました。そして完成したのが、『ハードコア・メカ』なのです。
——『スーパーロボット大戦』シリーズを参考にされたそうですが、具体的にはどのようなポイントからインスピレーションを得たのでしょうか。
Mu 『スーパーロボット大戦』シリーズはロボットゲームの中で、いちばんカッコいい作品だと思っています! 『スーパーロボット大戦』シリーズで描かれるロボットは、2Dかつデフォルメされているのにも関わらず、力強い動きでかっこいいアクションをしますよね。それはもう、2Dアニメーションの極みだと思います。
僕がいちばんやりたかったのは、“『スーパーロボット大戦』シリーズのような戦闘アニメーションのまま、自分で操作して遊べるアクションゲームを作ること”でした。また、『スーパーロボット大戦』シリーズでは、武装のひとつになっているコンビネーションなども、すべて自分の操作でくり出せるようにしたかったのです。
——ゲームを遊ぶと、“ロボットをプレイしている感”にこだわって作られているのが伝わってきます。ほかにも参考にされた作品などはありますか?
Mu 画面の右下に、武器の弾数などが表示される、ボタンアイコンがあります。そこをデザインした際には、『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム』シリーズの、武器表示のユーザーインターフェースを参考にしました。
——PC(Setam)やプレイステーション4での発売後、日本以外の各国からの反響はいかがでしたか?
Mu 中国や欧米地域でも、かなりの好評をいただくことができました。中国や欧米のたくさんのゲーム配信者たちがプレイ動画を作ってくれましたし、多くの熱心なプレイヤーが僕たちにメールで好意を伝えてくれました。欧米のプレイヤーからは英語のローカライズについて、「もっとこうしたほうがいい」という提案をたくさん送っていただき、本当に幸せなことでした。
——では、日本ファンの反響はいかがでしたか?
Mu 最初は、日本のプレイヤーからたくさんの反響をいただけるとは、正直そこまで思っていませんでした。発売した直後のことなのですが、いざリリースとなった瞬間に、僕は開発続きで何日も休んでいなかったので、すぐに家に帰って寝てしまったんです。それから目を覚ますと、僕の友人が「Twitterでお前のゲームが日本のプレイヤーたちからたくさん褒められてるぞ!」と、教えてくれたんです。そこで初めて、Twitterで日本のプレイヤーからの大きな反響を知りました。また、クラウドファンディングのプレイヤーたちも、メールで「よくできたゲームだ」と言ってくれて、本当に感動しました。
入念にゲームの中に取り入れたネタも、プレイヤーたちがひとつひとつ気づいてくれたのもうれしかったです。おかげで、プレイステーション4の週間販売ランキングで週間1位になったんです。それから間もなくして、東京ゲームショウ2019で、大会を開催したんですよ。僕らのゲームの対戦モードで1000時間以上遊んだという数人の日本人プレイヤーにも会いました。自分の気持ちがプレイヤーの皆さんに伝わったと思いました。本当に夢のようです! この3年間は無駄ではありませんでした。
アクションでこだわった部分は?
——では、ロボットについてお聞かせください。本作に登場するおもなロボットは、クリムゾンフレイムなどを除くと、いわゆるリアルロボットものかと思います。『機動戦士ガンダム』の要素もあり、『アーマード・コア』や『超時空要塞マクロス』的な要素も感じられるメカ群ですが、影響を受けているゲームやアニメのロボット作品などはあるのでしょうか。
Mu 質問に出てきたゲームはどれも僕の好きな作品ですね! それらのほかにも、僕はほかのロボットアニメをたくさん見てきました。ただ、やはり『スーパーロボット大戦』シリーズから受けた影響がいちばん強いですね。さまざまなロボットが同じ世界の中で戦うというのは、それはある種の究極のロマンですよね。
僕は小さいころから、ああいう風に「異なる作品の、スタイルも大きく違うロボットが、もしいっしょに戦ったらどんな感じなんだろう」といつも想像していて、すごく試してみたかったんです。それが『ハードコア・メカ』で実現できました。
——さまざまなタイプのロボットを取り入れたのは、そのためだったんですね。
Mu それに加えて、日本アニメのロボットが、アメリカ的なリアリティーがあってマシン要素の強いロボと戦うと、リアリティーのあるロボットはおそらく勝てないでしょう。スーパー系のロボットとなると、もう無双状態になってしまうでしょうね(笑)。ですので、『ハードコア・メカ』を設計する際には、それぞれのタイプのロボットの強さを一定にして、それから各スタイルのロボットにそれぞれに個性を付けました。誰でも自分の好きなロボットを使って勝てるように、バランスを整えたわけです。
——アクション要素についてお聞きします。横スクロールアクションとしては一見シンプルに見えますが、機体のブースト管理や、多種多様なボタン操作といったアクション性の高さもポイントだと思います。どのようなことを意識して作られたのでしょうか?
Mu 『ハードコア・メカ』は設計当初から、アニメの主人公がメカを操作する時の感覚を、プレイヤーに味わってもらうというのが狙いでした。アニメでロボットがくり出すアクションは、すべてパイロットが手動で操作しているものですよね。ふつうに操作するだけでも比較的簡単にアクションを楽しめますが、細かい操作を駆使することで、まるでアニメのエースパイロットのようにフェイント、フェイクショットなどのアクションをくり出せるようにしました。
——なるほど。それを2Dアクションに落とし込んだ際の工夫はありますか?
Mu 現在リリースされているロボットアクションゲームは、3D作品が多いです。もしプレイヤーに手動でカメラと照準をコントロールさせたら、操作が忙しくてアクションが非常に難しくなります。ですので、たいていのタイトルでは、カメラは照準にロックされていて、必殺技もすべてワンボタン、ということが多いです。もちろんそのほうが遊びやすいのですが、そうするとプレイヤーの操作の自由度が下がってしまいます。
『ハードコア・メカ』はできるだけ簡略化したボタン機能と、自由な照準という特徴でこの問題を解決するよう心掛けていました。上級者は多彩な戦術とコンボを自分の手でくり出せますし、コマンドを覚える必要はありません。プレイヤーはチュートリアルステージをクリアすると、実際には使うボタンがそれほど多くなく、操作方法が『Cuphead』などの横スクロールシューティングに似ていて、残りのスキルはカッコイイアクションをくり出すものだと気づくと思います。基本操作はかんたんですが、上達すればより多彩なアクションが楽しめるわけです。
——ロボットアクションはもちろんですが、機体を降りてパイロットとしてアクションできますよね。こういったシステムを採用したタイトルは過去にもいくつかありますが、なぜそうしたのでしょうか。
Mu じつは、高校生のときに『スーパーロボット大戦α外伝』をプレイしていたのですが、ゲーム内でティターンズ兵が撃墜されるたびに「脱出するしかない!」って叫んでいたんですよ。僕は急に撃墜されたときにはパイロットが「脱出するしかない!!」と叫んで、爆発寸前のロボットから飛び出すのが、一種のロマンだと感じたんです(笑)。
——(笑)。わかります。
Mu だから、爆発しそうになったら、脱出するしかない要素を『ハードコア・メカ』にも入れようと(笑)。
——ティターンズ兵のやられボイスが発端なんですか!?(笑)。
Mu そこからインスピレーションを得たのは事実です。あとロボットアニメでたまにありますが、生身で巨大なロボットをやっつけるのも、すごく好きなシーンなんです。『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』、『機動戦士ガンダムUC』、『機動武闘伝Gガンダム』にはいずれもそんなシーンがありますよね。そういった無茶をする、小よく大を制すみたいな感じは、見るたびにすごく感動したんです。ですから、機体から降りられる要素を入れたのです。最初に全体的にロボットのサイズを設計した時も、とにかく“できるだけ小さくして、パイロットが生身状態でロボットと戦えるように”って考えてたくらいですからね。
——それほどまでに、生身アクションにもこだわりがあったんですね。ところで、ダウンロードコンテンツのひとつに、サンダーボルトOtomeがありますよね。説明文には“開発者の好みによって生まれた”とのことですが、いわゆるMS少女ですとか、『フレームアームズ・ガール』などもお好きということでしょうか?
Mu うーん、僕自身は純粋にロボットが好きなんですよ。ですが、ゲームを作り終わった後、急にある考えが浮かんだんです。「『ハードコア・メカ』のような真面目な世界観に、メカ少女が混じったらきっとおもしろいだろう」って。デフォルメされていて気づきにくいところですが、サンダーボルトOtomeは『フレームアームズ・ガール』などの小さなAI少女ではなく、10mの巨大な少女型ロボットが、リアル系の世界観にいて、ふつうサイズの人類と戦うんです(笑)。刺さる人には、ものすごく強烈なギャップ萌えになるかもしれません。ものは試しに、とサンダーボルトOtomeを作ったわけですが、予想外にファンにすごく喜んでもらえました。ですから、開発者の好みによって生まれたというのは、“自分が好きなように考えた内容をコンテンツを制作した”という意味合いです。
グレンラガンとのコラボ!
——ダウンロードコンテンツ(DLC)といえば、新たにDLC参戦することになったグレンラガンは、どのような経緯で参戦が決定されたのでしょうか。
Mu 『天元突破グレンラガン』とコラボしたいちばんの理由は、僕がとにかく大好きなロボットアニメだからです。『天元突破グレンラガン』はスーパーロボット系アニメのひとつで、開発チームの多くのメンバーのお気に入りでもあります。あるとき、偶然にも僕らはAniplexさんと知り合うことができました。コラボの話をしたら、すぐに合意していただいて、今回のコラボが決まりました。もうこのコラボが、開発内でもすごくみんなで喜びましたし、早く完成させて、自分たちで対戦したくて、毎日残業したんです(笑)。
——開発陣のモチベーションの高さが見えるようです(笑)。グレンラガンをアクションを再現した、こだわりを教えててください。
Mu グレンラガンとシモンの各種スキルと特徴も、『ハードコア・メカ』の遊びかたとマッチしていたので、楽しく作ることができました。攻撃はグレンブーメラン、スカルブレイク、男の怒り炸裂斬り、フルドリライズ、燃える男の火の車キック、ギガドリルブレイクなどなど……。技術とゲームバランスの許す範囲内で、僕らはゲームの中でグレンラガンの大半の技を再現しました。
グレンラガンで遊ぶときも、プレイヤーにグレンラガンのパイロットとしてロボットを操作している感覚が味わえるような仕上がりを目指しました。たとえば、超必殺技であるギガドリルブレイクを発動する時、原作では先にサングラス型のグレンブーメランを投げて敵を拘束し、それから巨大なドリルを構えて攻撃していました。通常のアクションゲームだったら、グレンブーメランを投げたらギガドリルブレイクまで、そのまま自動で繋がったアクションにすると思います。ですが、僕たちはあえてそれを避け、グレンブーメランとギガドリルブレイクを別個の技として分けました。
——なぜ、アクションを分けたのでしょうか。
Mu プレイヤーは、ギガドリルブレイクは予備動作が長く、そのまま敵に命中させるのは難しいと気づくでしょう。ですが、グレンブーメランをヒットさせたらすぐにギガドリルブレイクを発動することで、ヒットさせやすくなります。つまり、アニメの一連の操作を、自分の手でアクションとしてくり出せるようにしたのです。
敵をギガドリルブレイクで貫いたとき、きっと皆さんはカミナ兄貴が命がけで生み出したこの必殺技をより深く理解してくれると信じています。もし皆さんがシモンがこの技を継承した時の気持ちと覚悟をすこしだけでも体験できたら、僕らは本当にすごくうれしいですね。
——なるほど。また、グレンラガンだけでなくラガンも操作できますよね。
Mu ええ、切り札として使えます。さらに、本作はパイロットの生身状態でも戦えます。おかげで、シモンのアクションにもこだわることができました。シモンはパイロットのアクションとしては、屈指の威力を誇る“コアドリル”が使えます。原作でシモンがこの技を使って最後の正念場で、ロージェノムに勝ったように、皆さんもゲームでこの技を使って敵のロボットを破壊し、逆転するチャンスがあるわけですよ!
このほかにもこだわりの要素が盛りだくさんなのですが、そこはあえて語りません。皆さんの手で触って「おおっ!」と驚いていただけたら。
——ちなみに、実現するかどうかは別として、今後コラボしてみたいロボット作品などはありますか?
Mu 『天元突破グレンラガン』とコラボできたので、これはチャンスだと思っています。今後も機会があれば、ぜひもっとたくさんロボット作品とコラボしたいです。すでにいろいろなロボットのスキルとアクションは、もう僕の脳内ではできあがっているんです(笑)。
具体的にタイトルをあげると、やはり『機動戦士ガンダム』シリーズがいいですね。あと大本命は『ゲッターロボ』や、『マジンガーZ』! 僕たちの社名は、“RocketPunch Games”です。ロケットパンチはマジンガーZをリスペクトして名付けた会社ですから、大本命ですよ!(笑)。
日本のファンたちに楽しんでほしい
——ゲームとはあまり関係ありませんが、Muさんの“ロボット愛”についてもお聞きしたます。どのような経緯でロボットを愛するようになったのでしょうか。
Mu じつは小さいころは、僕はロボットが大嫌いだったんですよ(笑)。
——ええ!?
Mu まわりの男の子は、毎日のようにさまざまなロボットアニメの話をしていたのですが、でも僕は彼らとは相まみえることはないな、という感じで。ロボットは硬くて、俗っぽくて、よくない存在だと思ってたんです。「僕は一生ああいうものに触れることはない」と思っていました。
——それはまた。
Mu ところが、ですよ(笑)。中学2年生のころ、僕は同級生とゲームボーイのゲームをよく交換して遊んでいたのですが、いくつかゲームを借りて遊んでいるうち、飽きてしまいました。そのいくつかの中にあったのが、借りたソフトの中でいちばん最後に遊んだ『第2次スーパーロボット大戦G』でした。第1章をプレイしたら……もうドハマりしちゃって!
——(笑)。
Mu それからは収拾がつかなくなって、“成長率Aのロボットマニア”に僕は生まれ変わりました。毎日のようにロボットアニメを見て、ロボットのゲームを遊びましたね。ロボット嫌いだった自分が、まさか将来ロボット関連の仕事をするなんて、まったく想像していませんでした。
——では、とくにお気に入りのロボットアニメを挙げるなら?
Mu いちばん好きなのは『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』です。これはガンダム作品の中で、ロボットをいちばんしっかりと“戦争の乗り物”として描いた作品なんです。アニメでは戦場の前線にいる兵士の生活状態を細かく描き、ロボットとの戦い、整備、改装、補修などを大量に細かく描写しています。これこそリアルな戦争にあるべき姿なんです
——ああ、『ハードコア・メカ』を遊ぶと、なんだか腑に落ちるお答えです。最後に、日本のファンたちにメッセージをお願いいたします。
Mu 僕たちは本作で初めて、家庭用ゲームを制作をしました。初めてこの分野に足を踏み入れて、開発チームは全員が、緊張していました。ですが、皆さんのアドバイスとフィードバックが、僕たちにとても大きな温もりと原動力を与えてくれました。僕たちは、自分の好きなゲームを遊びたくて、『ハードコア・メカ』という作品を作ったのです。この作品のおかげで、こんなに多くの共通の趣味を持つファンの皆さんと出会えて本当にうれしいです。今後も機会があれば続編を制作し、もっとおもしろい内容にして、皆さんに恩返ししたいです。