エピックゲームズが、ゲーム開発者向けの国際カンファレンスGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)に合わせた恒例の基調講演“State of Unreal”を行った。

 この講演では例年通り、同社が開発するゲームエンジンのUnreal Engine(UE)を中心に、PCゲーム販売プラットフォームのEpic Gamesストア、そして『フォートナイト』のユーザー作成コンテンツ(UGC)プラットフォームであるUEFNの最新情報が発表された。多岐にわたった発表内容から、注目のトピックをまとめてご紹介しよう。

アンチャーテッドシリーズのディレクターが手掛ける『Marvel 1943: Rise of Hydra』

 今回大きくフィーチャーされたのが、ノーティードッグで『アンチャーテッド』シリーズのクリエイティブディレクターを長年勤めたエイミー・へニグ氏がSkydance New Mediaで手掛ける新作アクションアドベンチャーゲーム『Marvel 1943: Rise of Hydra』。

 同氏がマーベルのスーパーヒーローたちが登場する新作を手掛けていることはすでに発表されていた。今回、2025年のリリースに向けて開発中の本作のディテールが、使用しているUE5.4の新機能紹介とともに明かされた形だ。

キャプテン・アメリカとブラックパンサーがヒドラに挑む

 本作の舞台となるのは1943年、第二次世界大戦期。ヒドラの陰謀に対し、この時代のブラックパンサーであるアズーリ(映画などに登場したティ・チャラの祖父)、キャプテン・アメリカ、ハウリング・コマンドーズのメンバーのガブリエル・ジョーンズ、そしてパリに潜入したワカンダのスパイであるナナリの4人が挑むこととなる。

 ちなみにこの発表のパートでは、ヘニグ氏をはじめとする開発側メンバーだけでなく、本作でキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースを演じるDrew Moerlein、アズーリを演じるKhary Payton(ドラマ『ウォーキング・デッド』のエゼキエル)も姿を見せていた。

UE 5.4によって実現する新たなリアリティ

 今回公開されたストーリートレイラーは実際のゲーム中の素材を使ったリアルタイム映像をもとに作られたそうで、壇上ではエンジンの機能であるバーチャルカメラやエディター画面などを交えつつ、UE5.4の新機能が紹介された。

 デモで主に披露された機能は、UE5のNaniteのテッセレーション機能や、映画のようにリアルなフォグ表現などを可能にするボリューメトリックなレンダリング機能、そしてメタヒューマンの採用について。

 前者では泥がかった地面を例に、車の轍(わだち)やそこに溜まった水、残雪などが重なった複雑な路面が構成されている様子を披露。新たなダイナミックテッセレーション機能により、このような複雑なディテールをメモリー消費を抑えながら実現しているという。

 また後者では、ドラム缶から立ち昇る黒煙をサンプルに紹介。サーチライトに煙が照らされて複雑な陰影を生み出し、さらに地面などにその影がかかるという様子を見せていた。

 メタヒューマンについては、エピック傘下の3Lateralのチームが協力し、俳優の4Dスキャンを実施したそう。本作でキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースを演じるDrew Moerlein、アズーリを演じるKhary Payton(ドラマ『ウォーキング・デッド』のエゼキエル)が壇上から紹介され、拍手を受けていた。

『Marvel 1943: Rise of Hydra』

UE5.4のプレビュー版が公開開始。モーション関連も大きなトピックに

 UE5.4は本日よりプレビュー版が公開開始されており、正式リリースは4月下旬を予定しているとのこと。

 上記で紹介された機能以外ではアニメーションの進化を大きな軸としており、ステージでは特にモーションマッチングを大きく紹介。これは簡単に説明すると、キャラクターの動きに合わせて沢山のモーションデータから合致するものを呼び出し、うまくブレンドしてくれるという機能だ。今年後半には壇上でのデモで使用された移動アクションのデータセットを使った学習用のサンプルプロジェクトをリリースする予定だという。

 そのほかモーション周りでは、『レゴ フォートナイト』の開発を通じてシステムが改良され、UEのエディター内のコントロールリグとシーケンサー機能だけで作業を行うことも可能になったとしている。

 それ以外では、地形に合わせて植生の配置などを自動で行ってくれるプロシージャルコンテンツ生成のフレームワークの改善や、マルチプロセスクックの高速化とクック中にコンパイルするシェーダーの削減、サウンド機能の強化などがトピックとして挙げられている。なお5.4プレビューの内容や既知の問題等についてはフォーラムに投稿されているので、気になる人はそちらを確認するといいだろう。

UEFNにメタヒューマン、一人称視点モード、レゴなどが登場。2025年にはフォトナのシーズンをUEFNの仕組みで作ることを目指す

 一般のゲーム開発者向けのUEに対して、『フォートナイト』のクリエイターコミュニティ向けとして提供されているUEFNの強化も面白い部分だ。

 昨年のGDCでのUEFNの発表以来、80000を超える島(コンテンツ)が公開され、制作者への1年目の配当としては合計で3億2000万ドル以上が支払われたという。そしてなんと2025年末までには『フォートナイト』の新シーズンそのものをUEFNの仕組みを通じて開発できるようにすることを目指すそう。

 そういった中で今回の発表では、UEFNでの制作に利用可能なコンテンツや機能の追加がいろいろと発表に。

 たとえばメタヒューマン機能の導入や一人称視点モードの対応では、リアルなNPCを登場させるストーリー重視のコンテンツなどもより開発しやすくなるだろう。

 エピックゲームズが傘下で開発したゲームの素材なども大幅に投入されており、『ロケットリーグ』の開発が手掛けた『ロケットレーシング』の乗り物の仕掛けやコース制作のためのテンプレートなどが公開開始。そして対戦アクションゲーム『Fall Guys』の素材も5月に登場予定だ。

 さらに『レゴ フォートナイト』関連で、レゴ要素を『フォートナイト』クリエイティブとUEFNで利用可能に。収益を得た場合に15%がレゴグループに行くとか独自のレーティング基準を遵守しなければいけないといった独自の規約が適用されるものの(詳細は公開されている実際の規約を確認のこと)、個別契約しなくともレゴを使った収益コンテンツを作れるのに魅力を感じる人は少なくないんじゃないだろうか。

Epic Gamesストアがモバイルにも進出へ

 またEpic Gamesストア関連では、同ストアがiOS/Android向けに2024年内に進出予定であることが発表された。モバイル向けの開発者も、現行のPC版ストアを利用する開発者と同様の利益分配率や各種施策を利用できるとのこと。