レイニーフロッグから2024年2月27日にNintendo Switch、PC(Steam)向けに『ピクセルクロス 牧場物語エディション』が発売された。

 思わず、「うん?」と興味を惹きつけられてしまうタイトルを持つこの作品。タイトル名を見れば即座にわかる通り、パズルファンに人気の高いスコアスタジオズの『ピクセル』シリーズと、マーベラスの人気シリーズ『牧場物語』とのコラボタイトルとなる。本作には、『牧場物語』の最新作となる『牧場物語 Welcome!ワンダフルライフ』など、5タイトルのシリーズ作がピクセルの絵のお題として収録されている。全350問(!)あるパズルをクリアーしていくと作物が成長したり、農場が拡大していったりする。おなじみのロジックパズルを遊びながら、『牧場物語』気分も楽しめる1本なのだ。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム
全350個のパズルを収録。変わりゆく季節の中、パズルをクリアーすることで、農場の拡大や作物を成長させられる。『牧場物語』の世界観を堪能できるのがうれしい。

 なんとも相性よさげ! と思っていたところに開発を手掛けるスコアスタジオズ CEO ジェームス・ケイ氏とマーベラスの『牧場物語』シリーズ マネージャー中野魅氏にインタビューする機会が訪れた。そんなわけで、『ピクセルクロス 牧場物語エディション』の気になるあれこれについて聞いてみた。ちなみに、ジェームス・ケイ氏は20年前に『牧場物語』の開発チームに所属していたことがあるとのことで、何やら浅からぬ縁がありそうで……。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム

ジェームス・ケイ氏(写真右)

スコアスタジオズ CEO
2001年に日本に来日。2009年にスコアスタジオズを設立以降、数々のロジック・パズルゲームを手掛ける。

中野魅氏(なかのひかる・写真左)

マーベラス『牧場物語』シリーズ マネージャー

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』ニンテンドーeショップサイト 『ピクセルクロス 牧場物語エディション』Steamサイト

※本記事はレイニーフロッグの提供でお届けしています。

『牧場物語』の世界観とおなじみのキャラクターを忠実に再現していると感じてもらえるように心掛けた

――『牧場物語』をモチーフにしたピクセルクロスを作ろうと企画した経緯を教えてください。ジェームスさんは、20年前に『牧場物語』の開発チームのおひとりだったと聞きましたが、そういった背景でこのゲームを開発することになったのですか?

ジェームス販売元のレイニーフロッグと私で、ピクセルクロスとコラボするにはどんなゲームがよさそうか案を出し合っていたんです。そこで『牧場物語』はどうかと提案され、即決しました。

 ノノグラム(お絵かきパズル)の題材として最適だと思えたのと、私自身が『牧場物語』シリーズのファンでもあったからです。じつは、初めて日本に来た2001年にビクターエンタテインメントに応募したんですよ。同シリーズに携われればと思ったんです。ただ、私も当時は日本語を話せなかったので(CGデザイナーとしてもまだ半人前だったというのもあるかもしれません(笑))、残念ながら不採用に終わりました。

 それからしばらくして、同社がマーベラスインタラクティブに変わってから再挑戦しました。今度はみごと採用され、幸運にも『牧場物語 やすらぎの樹』(2007年/Wii)や『牧場物語 わくわくアニマルマーチ』(2008年/Wii)のCGデザイナーを担うことができました。『牧場物語』を愛してやまない私が、その思いを追求した結果が、今回の企画ですね。大好きな『ピクセル』シリーズとのコラボを実現してみたいという気持ちもありました。

――『牧場物語』と『ピクセル』シリーズのコラボにあたって、もっとも注力したポイントを教えてください。

ジェームス『牧場物語』シリーズには長い歴史があり、かわいいキャラクターとおなじみの動物たちのデザインが詰まっています。それらのデザインをもとにノノグラムのパズルを作ること、また、そのビジュアルを忠実に再現するのはもちろん、パズルとしてもおもしろくすることに力を入れました。メニューやほかのビジュアル要素は最近のタイトルのひとつである『牧場物語~ミネラルタウンのなかまたち』を参照し、『牧場物語』シリーズのビジュアルに合わせるようにしました。

 ロジックパズルのファンの皆さんが楽しめるようなおもしろいノノグラムのゲームを作ることが最終目標ではありましたが、『牧場物語』のファンの方々にも、本作が『牧場物語』の世界観とおなじみのキャラクターを忠実に再現していると感じてもらえるように心掛けました。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム

――コラボにあたって、マーベラスとどのようなやりとりをしながら開発したのでしょうか? マーベラスからの要望などはありましたか?

ジェームス制作にあたっては、マーベラスさんは見守り役に徹してくれました。開発に使用する素材の提供をお願いしたときも、私が必要としていたものを出し惜しみすることなく送ってくれました。

 ゲームがプレイできる段階になると、いくつかフィードバックもくださいましたよ。ほとんどはパズルとキャラクターの再現度に関することでしたが、ゲームそのものについても少しばかりご意見をいただきました。非常にありがたいことでしたし、おかげさまでゲームがさらにいいものに仕上がりましたね。

――マーベラスは、ジェームスさんに任せてくれたのですね。

ジェームス『牧場物語』シリーズに対する私の思いが通じ、本作を私の望むように開発させても問題ないと感じてくれたのではないかと思っています。『牧場物語』のゲームとキャラクターを再現するにあたり当然プレッシャーは感じましたが、ファンの皆さんとマーベラスさんをがっかりさせたくなかった。でも、マーベラスさん側からプレッシャーをかけられるようなことはありませんでした。

――年鑑やパズルに登場するタイトルはどのように選定したのでしょうか。

ジェームス『ピクセルクロス 牧場物語エディション』は日本だけでなく、全世界でのリリースになります。このため『Story of Seasons』(『牧場物語』の英語版タイトル)として欧米などでリリースされたタイトルのみを取り入れました。ゲーム内の年鑑には、その選定した5作品が連なっています。それと、パズルの数を私がコントロールできる量まで減らすのに、すでに苦労していましたから……。

 それでも、結婚相手の候補はすべてパズルに含めました。「推しのキャラクターが入っていない」と誰にもがっかりしてほしくなかったので……。でも、村人は何人か外さなければなりませんでした。ゲームに含める『牧場物語』シリーズのタイトルをあれ以上増やすのは、私のようにひとりでやっている開発者には到底無理だっただろうと思います。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム
本作には、100ページにおよぶ“年鑑”やシリーズのBGMも収録。“年鑑”では『牧場物語』シリーズに登場するキャラクターや生き物たちを見ることができる。“年鑑”は、パズルをクリアーすることでアンロックしていく。

――ピクセルクロスは10×10、15×15、などの正方形パズルがセオリーですが、本作には10×15といった長方形のパズルも多くありました。このような形にしたのは、よりゲーム内アイテムのイラストを原作へ寄せるためでしょうか?

ジェームス数えやすい5の倍数のマス目が保たれていれば、ノノグラムはどのようなサイズでも大丈夫だとは思います。ただ、そうですね。最初は題材によってパズルの形を決めました。その後、テストプレイを多く重ねていく過程で、おもしろく、やりがいがあるような形のパズルに変えることもありました。一方で、もとの絵柄によっては空白が多くできてしまうので、そうならないようにパズルを長方形や縦長の形に収めたりもしました。

――「このパズルを作るのがたいへんだった」とか「キャラクターの顔を表現するのがたいへんだった」など、苦労した点はありますか?

ジェームス技術的には、パズル作りはいたって簡単です。パズルの解きかたを簡単にテストできるエディターも自作しています。本作において困難を極めたのは、パズルとして解く楽しさを保ちながら、数少ないピクセル数でキャラクターの特徴をいかに表すかという点でした。これについても、マーベラスさんからのフィードバックが非常に有益でした。

 ピクセル化したパズルのイメージ図をお見せしてフィードバックをいただいた際は、シリーズ原作のデザインにより近づくべく、パズルのキャラクターデザインに磨きをかけることができました。マーベラスさんは、キャラクターらしさと表情をデザインするにあたっての下地も築いてくれました。

――このパズルは気に入っている、というものがあれば教えてください。

ジェームス好きなキャラクターパズルはいくつかありますよ。とくにハリスやガリ、フローラなどは、とても少ないピクセル数の中で原作のデザインに寄せることができたと思います。しかし中でも私のお気に入りなのは、最後に登場するもっと大きなパズルです。最終ページに出てくるパズルの数種は、相当な難易度。ツールをすべてオフにした場合、解くのにかなりの時間がかかるでしょう。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム

――マス目の描画や取り消し、ヒントに牧場主たちが使うピッケルなどの道具が使われているのが印象的でした。このアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか。

ジェームス『牧場物語』シリーズを通して知られているおなじみの農具を、何かしらの形で生かしたかったんです。『牧場物語』では、クワで地面を耕して作物を育てられる状態にしたり、その耕した土地をハンマーで整地したりしますよね。ですから、パズルの中でマス目を描画したり、元に戻したりといったことが、あたかも農場を開拓しているかのようで道具を使うのが自然に思えたんです。

 また、道具のアイコンを用いて、どのツールをプレイヤーが使ったかがわかるようにしました。ヒントを使えばじょうろ、“ミスのチェック”オプションを使えばカマが表示されるといった具合です。本編おなじみの道具を本作にも取り入れたことで、『牧場物語』をより感じられる仕掛けにしました。

――パズルを解いていくと本編のように牧場がにぎやかになっていくのが、見ていて楽しかったのです。どの作物を植えるか、どの動物を登場させるかなど、どうやって牧場発展の流れを決めていったのでしょうか。また、本当は入れたかったけど入らなかった要素などあれば教えてください。

ジェームス拡大する農場の要素を取り入れることができたのは、マーベラスさんがもともと『牧場物語~ミネラルタウンのなかまたち』で用いたアセットやオブジェクトを、寛大にも提供してくれたおかげです。これにより、時間とともに変化する農場の背景を3Dで作ることができました。

 ただ、その“流れ”というのがデザイン上の悩みの種でした。当初、パズルの順番は簡単なものから難しいものにしたんです。しかし、驚き要素とお楽しみ要素をゲームの進捗に合わせて仕掛けておくという観点からすると、パズルに作物や動物、建物やキャラクターをうまく散りばめる必要がありました。

 パズルを解いていくとゲーム内の時間が進んで季節が変わります。これに合わせて、作物のパズルに関してはおおよそ正しい季節に出てくるような順番に配置しなければなりませんでした(もっとも、どのパズルをいつプレイするかはプレイヤーが自由に選べます。順番通りにパズルを解いた場合のみ、季節に合った作物が出てきます)。

 パズルをクリアーすると時間が経過し農場が拡大していく感覚をプレイヤーが味わえるようになっていれば、結果としてうまくいったのではと思います。とりあえず作物は正しい季節に出てきますし、冬は寒く畑は不毛の地と化すので、プレイヤーは『牧場物語』をプレイしているかのような気分に浸れるでしょう。

 『牧場物語』でもあるような農場のカスタマイズ要素やキャラクターとの触れ合い要素などを加えてもよかったのですが、そうすると開発規模が大きくなり過ぎますし、ノノグラムのゲームという点がぼやける恐れもありました。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム

――今後、他社IP(知的財産)とコラボしての新たなゲーム企画の可能性などはありますか?

ジェームスそうなればいいですね。『ピクセル』シリーズとのコラボがうまくいくと考えられる、私の大好きなゲームはたくさんあるんです。レイニーフロッグさんと私たちはコラボの可能性に向けて現在取り組んでいますので、何かそうした企画が実現できればいいなと思っています。

――本作を気にしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

ジェームス『ピクセルクロス 牧場物語エディション』は、私が手塩にかけて作りました。『牧場物語』は大好きですし、この制作に携われたことをたいへんうれしく光栄に思います。私がこのゲームの制作を楽しんだのと同じくらい、プレイヤーの皆さんも本作を楽しんでいただければと思います。

 また、お絵かきパズルでは遊ぶけれど『牧場物語』はよく知らないという方も、ぜひチェックしてみてください。反対に『牧場物語』ファンで本作を通じてお絵かきパズルを知ったという方も、ぜひ私と同じくらい、このゲームを楽しんでください!

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム
『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム

『牧場物語』に愛のあるクリエイターとコラボできて感謝している

――『ピクセル』シリーズとのコラボが実現した経緯を理由を教えてください。ジェームスさんが『牧場物語』の開発チームのメンバーの一員だったことも要因として大きいですか?

中野それは大きかったと思います。

 私たちとしても、いままで『牧場物語』を知らなかったユーザーの皆様に、知っていただける機会が得られるわけですから、今回のようなコラボは大歓迎でした。

 しかしながら、私たちの大切なキャラクターたちをお預けするわけですから、愛のあるクリエイターとごいっしょしたいわけです。その点ジェームスさんは、信頼してお仕事のできるパートナーであったと思います。開発にご尽力いただき、本当に感謝しています。

 そのほか、『牧場物語』が大事にしているほのぼのとした雰囲気が、ピクセルクロスのゲーム性とマッチしていたことも、今回のお話がスムーズに進んだ要因ではないかと思います。

――『ピクセル』シリーズとのコラボは初めてだと思いますが、将来的に、ほかのコラボ案件が実現する可能性はありますか?

中野タイミングなどの要因もあるとは思いますが、もちろん、あると思います。しかしまずは、本作『ピクセルクロス 牧場物語エディション』をお楽しみいただければ幸いです。

『ピクセルクロス 牧場物語エディション』インタビュー。『牧場物語』を愛してやまないアメリカ人クリエイターの想いが結実したパズルゲーム