台湾の独立系開発スタジオSIGONOが手掛ける新作アドベンチャーゲーム『OPUS: Prism Peak』。感動的なストーリーが高く評価されている『OPUS』シリーズの4作目となる本作だが、そのグローバルパブリッシングを集英社ゲームズが手掛けることとなった。
ファミ通では、台北ゲームショウ2024の開催期間中に、SIGONO代表であるブライアン・リー氏と、集英社ゲームズで本作のプロデューサーを務める小林正和氏へのインタビューの機会を得た。
通訳を介しての取材、かつストーリーが重視されるアドベンチャーゲームということで、具体的な答えを引き出せていない部分もあるが、逆に言えばそれだけブライアン氏が本作を楽しみにしているファンを大事にしているということ。インタビューに合わせて新たに2点のビジュアルを用意してもらったので、これまでSIGONOタイトルを楽しんできたファンはゲームの世界観に想像の翼を広げてみてほしい。
ブライアン・リー氏(写真・右)
SIGONO
副創業者・クリエイティブディレクター
小林正和氏(写真・左)
集英社ゲームズ
開発プロデュース部 プロデューサー
心を揺さぶる作品になる予感があった
――本作の開発に至った経緯を聞かせてください。
ブライアン前作『OPUS 星歌の響き』の開発が終わってから半年後、社内で新しいプロジェクトの企画が複数提案されるなかで最終的に『OPUS: Prism Peak』を進めるということが決まり、プロジェクトに取り掛かることになりました。本作の開発の中で大きく重点を置いているのは、映画的な要素です。私たちのゲームはストーリーに比重を置いて開発してきましたが、今回はそれに加え映画を見ているような没入感にも力を入れています。
――集英社ゲームズがグローバルパブリッシングを手掛けることになった経緯は?
小林最初のきっかけは、BitSummitで弊社のスタッフがSIGONOさんと出会ったことです。僕が最初に目にしたのは現在公開されているPVなのですが、どこか懐かしくて温かいモノを感じて涙が出そうになったんですね。自分は泣き上戸ではないのに。ほんの短い映像なのに心を揺さぶる作品ってなかなかないだろうと。
そこからブライアンさんを始めチームの皆さんとお話させていただく中で、非常にいい作品になるという確信を得て、ぜひいっしょにやらせていただきたいと申し出ました。
――改めて、『OPUS: Prism Peak』がどのような作品なのかを教えてください。
ブライアンこの作品はマルチエンディングのストーリードリブン的なゲームです。プレイヤーは撮影という行為を通していろいろな謎を解き、そして自分のいた世界に戻ることを目的とします。
撮影はプレイとしての手段なだけではなく、ひとつの世界を見る方法となります。自分の内面にあるものを見つけ出すんです。
――ゲームとして『OPUS: Prism Peak』でとくに力を注いでいる部分はどこでしょうか?
ブライアン何点かありますが、やはり私たちのシリーズはストーリーに重点を置いています。本作のストーリーはとても複雑なもので、まるでプリズム(Prism)を通った光が分散するようにひとつのメッセージには多層の意味があり、それらを最終的に山頂(Peak)にどう集約させるか、について社内でも何度も議論を重ねています。この山頂(Peak)への道はかなり大変ではありますが、必ずよいものにしてお届けしますので、楽しみにしていてください。
ふたつめは、3D表現の強化です。製作過程に映画の技法を導入し、キャラクターの演技やカメラの動きを強化してゲームへの没入感を高められるような作りかたをしています。これにより、よりゲームへの没入感を高められるようにしています
3つめは、ただ写真を撮るだけではなく、撮影の内在的な精神を強調することです。古くからアートとしての役割もある写真は、現実を記録するというのはもちろんのこと、撮影者の内面を映し出す行為でもあると思っています。
――ブライアンさんが集英社ゲームズからパブリッシングの誘いを受けたときはどんな気持ちでしたか?
ブライアン小さいころから集英社のマンガを読んで育ってきたので、とても嬉しかったです。私の本棚は集英社のマンガでビッシリなんです! どの作品も好きなので、一番は決められませんね。
じつはBitSummitに参加した際に、会社のパートナー(※スコット・チェン氏)から「いろいろな会社からオファーを受けた中に集英社ゲームズがあったよ」と言われてビックリしました。チームのメンバーも興奮しています。
私たちはゲームのクリエイティブな部分に基づいた会社です。ですので、集英社グループのような戦略、コミュニケーション能力を持つ会社と出会うことで、私たちのゲームをグローバルに拡大できることにとても期待しています。
もうひとつ興奮したことがあって、集英社ゲームズの開発チームに、私たちが大好きな『勇者のくせになまいきだ』をプロデュースした山本正美さんがいらっしゃったことです。彼と会ったときは思わずハグをしてしまいました(照れながら)。
――いろいろな国のクリエイターたちがフレンドシップを繋いでいくのは素敵な話ですね。
新たに公開された2点のビジュアルからゲームに迫る
――このインタビューに際して、新たに2点のビジュアルを提供いただきました。これらについての解説をお願いします。
ブライアン青年と少女がやり取りしている様子ですね。画像にあるように、彼らの交流はゲームにおいて重要な意味をもたらします。見ての通りかなりの身長差があるふたりなので、ゲーム内の画面で彼らを同じ画角にきれいにおさめることにはとてもこだわっています。というのも、青年をメインにすると少女が見切れてしまうし、逆も同様になってしまうためです。うまく画角におさめることは、僕たちにとってとても楽しいチャレンジになっています。
――このふたりの関係性というのは?
ブライアンそこはストーリーのポイントなので言えないです。
――身長だけではなく年齢差もありそうな様子ですが……?
ブライアンごめんなさい、それも言えないです。
――わかりました。では続いて、こちらの風景画についての解説をお願いします。
ブライアンこちらは初期コンセプト画像になります。画面の中にある鉄道の線路とソファーは、いずれも主人公と関連があるアイテムです。具体的には言えないのですが、ノスタルジックさを感じてくれたらと思います。
――とても不思議な1枚絵ですね。線路の傍らにソファーがあり、その背後にはガラクタが。さらには桜まで咲いているという。
ブライアン(何も言えないよと微笑むばかり)。
――異世界の風景ということで間違いはないんですよね。
ブライアンそうですね。本作は異世界に迷い込んだプレイヤーが元いた世界への帰り道を探し出すというストーリーですから。そのための方法として撮影がありまして、撮影を通して手がかりを見つけていくことになります。もちろん、風景が物語の鍵になってくるのは間違いないです。
――なるほど……。ちなみに小林さんは開発中のゲームはプレイされているのでしょうか。
小林はい。一番最初の初期ビルドみたいなものは。その段階でも“カメラを通して世界を見ることで話が進んでいく”という表現がしっかりできていると感じました。
今回集英社ゲームズとしては、開発に関してはクリエイターさんにお任せをして、我々はそれを世界に広げるお手伝いをするという役割分担でやっています。我々としても、今後新しくできあがってくるバージョンをプレイさせていただけるのを楽しみにしています。
――現状はSteam版がリリース予定とのことですが、それ以外に家庭用ゲーム機などでのリリース予定はありますか?
ブライアンまだ言えないです(笑)。
小林まずはゲームを完成させて、その後に両社で考えていければいいなと。
――本作のどのようなところを楽しみにしてほしいですか?
ブライアン『OPUS』はストーリー性に重きを置いたシリーズです。日常生活で何か不愉快なことがあったとき、この旅を通じて“癒やし”を感じてもらえればと思います。また、今回は集英社ゲームズさんとの協力関係をもって、一層ゲームの質を上げたいと思っています。
小林やはりストーリーを楽しみにしていただきたいところが大きいですし、3Dになったことで、いろいろとできることがあると思うんですね。
あとは、前作『OPUS 星歌の響き』では音がテーマとなっていましたが、今回はカメラで撮影する“絵”がテーマとなっています。その違いも楽しんでいただければと思います。
――最後に、リリースを待ち望んでいるファンへのメッセージをお願いします。
小林オリジナルである中国語(繁体字)からのローカライズと、マーケティングといった部分を我々が引き受けさせていただきます。日本のユーザーの皆様には、日本語での物語をよりスムーズに楽しんでいただけるようがんばります。詳しい情報をお届けできるのはもう少し先になりますが、期待していてください。
ブライアン作品に関して現状で言えることはすべてお話ししました。発売を楽しみにしていてください。ご期待を!