『ノナプルナイン』は濃密すぎる横スクロール探索型・科学アドベンチャーゲーム。開発期間は10年を越え、2025年のSteam版発売に向けて開発が進められている。
そんな本作が、2023年9月21日~24日に幕張メッセにて開催された“東京ゲームショウ2023(TGS2023)に出展。インディーゲームコーナーの講談社ゲームクリエイターズラボでデモ版を体験できた。画面を横から見ているだけでも引き込まれてしまうビジュアルと、独特な世界観で展開する本作をプレイした!
ノナプルナイン 15秒PV Nonuple Nine : Asymptote 15sec PV
推定プレイ時間は30時間オーバーの濃密アドベンチャー
プレイヤーの立場は“観測者”。“被検体”となった少女を見守るドローン視点で彼女を導き、監禁されているビルから彼女を脱出させることが目的だ。
突如として目覚めた被検体の少女には、記憶がない。
世界観をはじめとするあらゆる設定が開示されることなくゲームはスタート。探索で知りえた情報や、彼女が思い出していく記憶の中で、いっしょに本作の背景にある物語を体験していく。
軽くプレイをしてみると、探索で見つかるひとつひとつの要素が非常に濃密。にもかかわらず、開発者の方によれば総プレイ時間は30時間以上を想定しているらしい。クオリティーと体験の濃さを考えると、かなりのボリュームである。
容赦なく吹っ飛ぶ少女の頭
出展されたデモ版では、最初からストーリーを追う通常版と、ゲームの魅力をかいつまむダイジェスト版の2種を用意。ゲームの性質上、数十分しか遊べない試遊では“おもしろいいところ”まで遊べないことへの措置だという。
筆者はダイジェスト版をほかの方がプレイしているのを横で確認しつつ、本作の世界観を探るべく通常版を遊ぶことにした。
ちなみに、通常版の案内には“ホラー要素が含まれます”との注意書き。ホラー好きなので「そうなんだ。楽しみだな」くらいで始めたら、ゲーム開始から約3分後。被検体の少女の頭部が内部から弾け飛び死んだ。ひ、ひぇ……。試遊を横で見ていた人が悲鳴を上げたぞ。
そして、新たに目覚める“被検体”の少女。こちらが本作のメインヒロインらしい。安心した。いや、人ひとりもう死んでるけど。
※少し下に頭が破裂した画像を置いています。要注意。
記憶がなく、自身のことすら何ひとつわかっていない様子の彼女。目覚めた部屋には診察台とモニター。人がたくさんコールドスリープされていそうな壁面。あと、さっき頭が吹き飛んだ亡骸と、血だまりだけがある狭い部屋。パッと見で得られる情報は少ない。
そこで、彼女とともに探索を進めながら、声だけが聞こえる案内人のような存在から説明を聞く形で現状を把握していくこととなる。せっかくなので、死体を調べてみると……。
※注意! グロ画像!
少女「あの……頭がないみたいですけど、大丈夫ですか? 痛くないですか?」
案内人「頭部を喪失した者にかける第一声としてこれほど的確な言葉もありませんわね。」
こんなやりとりがくり広げられた。なるほど。彼女もだいぶ変わり者だな?
といった感じで、探索中に少女と案内人の会話が始まり、そこでさまざまな情報を得られていく。観測者(プレイヤー)は少女からは認識されていないこともあり、彼女の選択肢に口を挟むなどの行為は基本的にできない。
すべてが手作りの超ボリューム
ノナプルナイン:アシンプトート フッテージ映像(NONUPLE NINE:Asymptote game play footage)
科学アドベンチャーというジャンルを標榜していることもあり、ひとつひとつの言葉の意味が持つボリュームはとても大きい。付随して表示されるイメージ画像に加えて、アニメーション演出がこれでもかというほど詰め込まれている。
ビジュアルがアニメっぽいと“ライトな作品”と勘違いするというか、油断する人は少なくないと思う。そんな感覚とは裏腹に、科学ものとしてのガチさとホラー&グロ要素が盛り込まれたシリアス描写はてんこ盛り。その深みに引き込まれる感覚が背中をなでる。
被検体の少女をはじめ、探索画面の2Dイラストもよく動く。胸の揺れとかめちゃくちゃ細かい。やわらかそう。「見てるのそこかよ!」と言われそうではあるが、いやらしさというよりも、生きてるな、という印象がすごいのだ。生命を感じる。
試遊時間は約30分。部屋から脱出するところまで遊ばせてもらった。1時間以上の情報量を、体感5分で味わった気分だ。おもしろいマンガや本にのめり込んだときの不思議な感覚といっしょである。続きはどうなるんだ……。気になりすぎる。
驚きはこれだけではない。ダイジェスト版を見てみると、1冊のマンガ雑誌を調べるとその内容が細かく描写されたり、“バージェス大陸~ガイアの流儀~”というパロディ要素のあるテレビ番組ががっつり作り込まれていたり、さまざまな要素が盛り込まれていた。絵柄の変化もあってすごいボリュームである。
たった30分のプレイでは広がった風呂敷をたためるはずもなく「まだ何もわからん」状態の『ノナプルナイン』。会場でもらったフライヤーには、
- ビルは上に昇っても、下に下がっても32階だけがループする
- 建物が機動隊に包囲されている
- 古すぎるミイラ死体が転がってる
など、いろいろキャッチーな言葉が書いてあるのだが、その鱗片にすら触れていない状態である。どれだけボリュームがあるのだろうか?
現在は鋭意製作中で、2025年にSteamで発売予定。ごくごく少数のメンバーがひとつひとつの要素を作り始めて、はや10年。スクリプトエンジンは自作、膨大なアニメもすべて手作りという気合いの入った1本になっている。
新海誠氏の劇場アニメ『秒速5センチメートル』で音楽を担当した天門さんも参加されているとのこと。試遊のチャンスがあればぜひ体験してほしい1本だ。