2023年5月15日、電撃的な発表がされたインディーゲーム『Black Finger JET(仮)』。Steam向けに開発中というこの発表とPVに、非常に多くの反響が寄せられた。
横スクロールシューティングの“御三家”のひとつとして、いまなおその世界観や生物然としたボスの衝撃的なデザインが色あせない『R-TYPE』(1987年/アイレム)。そのドット絵の緻密な表現が、もはや芸術や職人芸の域と評価されて現在もカリスマ的人気を誇る『メタルスラッグ』(1996年/開発・ナスカ/販売・SNK(旧社))とそのシリーズ作品。
これらの名作を始め、アイレム、ナスカ、SNKといった開発会社にてゲーム黎明期からさまざまなタイトルに携わってきたゴールデンメンバーが、本作で再集結。そして本作のプレイ画面の動画が、2023年9月21日(木)~24日(日)(※一般公開日は23日と24日)に開催される東京ゲームショウ2023のブース(09-E46)にて、世界初公開となる。
この展示発表を直前に控えた多忙な時期ながら、コアメンバーの何名かにインタビューに応じていただけたので、その模様をお伝えしていく。なぜこのメンバーがふたたび集まったのか、そもそも『Black Finger JET(仮)』はどんなゲームとなるのか。今回のコアメンバー各位のお話から、さらに想像を膨らませてほしい。
なお、記事内の画像の数点は既存PVからの切り抜きとなるが、今回はTGSでの発表映像の一幕となる、特別先行公開の画像もいただいている。TGS会場を訪れるまえに、より期待を高める材料にしていただきたい。
石黒しなの氏(Shinano)
インディーゲームスタジオ“KOHACHISTUDIO”代表で、『Black Finger JET(仮)』ではディレクターを担当。10数年前にはSNKプレイモア(現・SNK)に所属し、そのときから今回のメンバーに縁があったという。スタジオ代表作はダンジョン探索RPG『メルヘンフォーレスト』。
みいはあ氏(MEEHER)
『メタルスラッグ』や『アンダーカバーコップス』(1992年/アイレム)などからプランナーとして活躍し、『Black Finger JET(仮)』ではプロデューサーとして参加。しばらくゲーム開発現場を離れていたが、待望の復帰。
HIYA!氏
アイレム、ナスカ、SNKと所属を移し、『メタルスラッグ』や『ギャロップ』(1991年/アイレム)などを始め、さまざまなタイトルのサウンドを手掛けたサウンドプロデューサー。『Black Finger JET(仮)』でも、音作り全体を包括したプロデュースを担当。
Kuichin氏
akio氏とは『海底大戦争』(1993年/アイレム)から同じチームで、『メタルスラッグ』シリーズでは『2』から『X』、『3』から、近年の『メタルスラッグ アタック』でも制作に携わったドットグラフィッカー。『Black Finger JET(仮)』では主にドット製作、キャラクターの動作などを担当。
HAMACHAN氏
アイレムからナスカ、SNKと所属を移しつつ2015年からフリーランスとなったゲームプログラマー。『野球格闘リーグマン』(1993年/アイレム)や『メタルスラッグ』の『1』と『2』などに携わり、近年はVRコンテンツも制作。『Black Finger JET(仮)』でもプログラマーとして参加。
10数年来の情熱と、奇跡的な巡り合わせ
――まずは本作、『Black Finger JET(仮)』の企画が立ち上がった経緯について教えていただけますか。
しなの僕がSNKプレイモア(現SNK)出身で、当時はパチスロの部門に所属していました。その部署内にみいはあさんを始めとした『メタスラ』開発チームもいまして、とんでもないメンバーと同じ部署になったとずっと憧れのまなざしを向けていたんですが、なにぶんパチスロの部門でして。
――ゲーム制作とは、やや毛色が違う部門ですね。
しなの『メタスラ』チームがパチスロを作っていたんですよね。「ちょっと勘弁してよ」と当時思っていまして、皆さんにはゲームを作ってほしかったんです。僕は『メタスラ』初代からのファンで、アイレム時代に遡れば8歳のころに『R-TYPE』をプレイしていたファンでもあります。このチームの皆さんが作ったゲームで僕は育ってきたようなもので、憧れつつSNKプレイモアに入ったら、皆さんがもうゲームを作っていないという現実に直面したんです。
――それは相当ショックだったでしょうね……。
しなのそのあと退社する際に、仲よくさせていただいていたみいはあさんに連絡先をいただきました。当時僕には野望がありまして、皆さんにもう一度ゲームを作っていただけるような環境を、僕のほうで用意できればと思っていたんです。
みいはあさんの家に会社を辞めるときに遊びに行ったら、天井まで壁一面を埋め尽くすくらいの数のゲームの企画書があったんですよ。形になっていないゲームの企画書もたくさんありまして、それらを見たときに「やっぱりゲームを作ってほしい」と思ったんです。それが10数年前の出来事ですね。
――その時点でもう10年以上も昔のお話ですか。
しなのとは言え、皆さんレジェンドですし、僕のほうからいきなりゲームを作りましょうと誘えるような方々ではなかったので、どうやったら誘えるだろうと考えながら日々を過ごしているうちに、Unityでゲームが作れることを知り、これを使って一本ゲームを作って、ちゃんと売ってお金も得られると証明できれば先輩方を誘える立場になれるかな、と思いました。そうして作り始めたのが『メルヘンフォーレスト』(※)です。
※メルヘンフォーレスト:2015年にスマホアプリ版、2021年にプレイステーション4、Nintendo Switch、PC(Steam)向けにリメイク版がリリースされたダンジョン探索RPG。メルヘンチックでかわいらしい雰囲気の作品だが、ユーザーを驚かせる多数の仕掛けや変化が用意されている。
――そこで『メルヘンフォーレスト』につながっていたとは、意外ですね。
しなの『メルヘンフォーレスト』は多くの方々のお力を借り、リリースまでこぎつけてちゃんと売れまして、その実績をもってみいはあさんに連絡させていただきました。こういう形でインディーゲーム制作をやらせていただいているので、もう一度やりませんか、と。そこでみいはあさんからご快諾をいただき、それならばほかのメンバーにもコンタクトが取れないかと、みいはあさんのツテをたどってお声がけし、いまに至ります。
――そうなるとこの10数年間は、みいはあさんはゲームは作っておられなかったのでしょうか。
みいはあパチスロをずっと作っていて、しなのさんが退社してからもしばらくパチスロの企画をやっていましたかね。それからはいったん大阪を離れて別の開発会社に移り、2年くらいで家の事情もありまして退職となりました。実家に戻るとゲームの仕事は当然ありませんし、最近のようにZoomなどを使うということもなかったですから、これはもうゲームの仕事は一区切りだなぁと。
――ゲームを作りたいという想いは健在だったのでしょうか。
みいはあ半々というか、3割4割くらいですかね。正直、ゲームを作るのにも疲れたと思っていたところもあります。それでも、大阪を離れてしばらくはやっていましたし、そのときにも手応えや新しい時代のゲーム作りの知識なども得られましたので、いつか自分が思っているものがまた作れればいいなと、ぼんやりと考えていたところはあります。
――そこにしなのさんからお話が来たときには、どう感じられましたか。
みいはあしなのさんとは気が合うといいますか、彼はすごくこちらを持ち上げていい気分にしてくれるもので。
しなのそりゃ持ち上げますよ(笑)。
みいはあそういった部分も含めて、もしいっしょに仕事ができれば、僕の頭の中を具現化するようなゲームを作らせてくれるかもしれないと思いました。ただ、実際は本当にやろうということになるまでは、ブランクが長く、いまやすっかりプレイヤー側になっていたこともあって逡巡もありましが、粘り強く説得していただきまして。
――10数年来の想いもありますし、それはもう粘り強かったでしょうね。
みいはあゲームづくりをするとなれば、また大きな夢が見られるんじゃないかと、話に乗ってみようということになりました。あとはしなのさんと比べると、少しだけゲームの開発現場に長くいましたので、相談役としてはお役に立てるかとも考えました。
しなの実際、かなり助けていただいております。
みいはあプロデューサーという肩書で参加させていただいておりますが、誰に聞いたらいいかわからないといったことは、とりあえず相談してもらえばなんらかの対処を提案させていただくという立ち回りがいまのところ大きいですね。
――スーパーバイザー的な立ち位置ですね。
みいはあ昔からこういう立場で仕事してみたいとも思っていたんですよね。ずっと現場にばかりいましたもので。
――では続いて、ほかのメンバーの皆さんにはどのようにお話が来たのでしょうか。また、お声がけをいただいたり参加表明をされた際の、皆さんの率直なご感想を教えていただけますか。
HIYA!さきほどお話に出ていましたが、みいはあさんはゲームの現場からしばらく離れておられたんですよね。私もみいはあさんともう一度ゲーム制作をやりたいという気持ちがありまして、何年かごとに口説きには行っていたんです。温泉とかに誘い出しては、「戻ってこいよー、戻ってこいよー」と。
――こちらからも引く手があったとは。
HIYA!数年前から正式な話ではないですが、若い人がいっしょにゲームを作りたがっているという話はそこで聞いていました。それが今年の4月くらいに具体的な話を伺ったときに、みいはあという男、さらにあのakioさんもゲーム業界に戻ってくるということ、またしなのさんが30代という一番バイタリティーがあるときに、この企画実現のためにいかに年月とパワーをかけたのか、『メルヘンフォーレスト』制作もそのためだったというお話を伺ったこともあって、これはもうこの心臓を捧げますわと。
――命を預ける勢いですね。
HIYA!以降はしなのさんにはうるさいと思われるかも知れないくらい、ああさせろ、こうさせろと言いながら参加させていただいています。
――いままでのお話だけでも、みいはあさんがまさに引く手あまたといったところですが、いっしょにお仕事をされたいと思わせるのはどういった部分なのでしょうか。
HIYA!彼と3作くらいいっしょにやらせていただきましたが、最初にやった『アンダーカバーコップス』の当時から、独特な企画力と言いますか、レベルデザインと言いますか、彼の力でゲームがおもしろくなっていくというのをいっしょの現場で体感していたんです。『メタルスラッグ』においてもそうでしたし、ゲーム作りの天性の能力を持っている人なんだと思います。なのに、なぜいまはやっていないの、と。
しなの同感です(笑)。
――続いてHAMACHANさんからも、お願いします。
HAMACHAN"前提として僕だけ関東のほうでゲームやVRの仕事をしていたのですが、ファンの皆さんの『メタスラ』に対するリスペクトのエネルギーが非常に強いとはずっと感じていて、それが関西の皆にはそんなに届いていなさそうなことをずっともったいないと思っていました。また、このシリーズ由来のおもしろいものを作る技術やセンスについては、後年にあまり継承されていないとも感じていました。
――たしかに。ただ、あの独特のセンスを継承するのはさすがに難しすぎるでしょうし。
HAMACHANそれをずっともったいないと思っていたところで『Black Finger JET(仮)』の発表をX(Twitter)で見て、まずは嬉しいと拍手ですよね。そこで私もなんでもいいから手伝えればとは思いましたが、声はかけられていないからなぁと逡巡していたところ、仲のよい知人から「声をかけないと一生後悔するかも」とアドバイスをもらいまして、しなのさんとHIYA!さんに連絡させていただきました。
――逆オファーという形ですね。
HAMACHANそこからエンジニアがプロジェクト内にまだひとりもいない、というお話になりまして、思ったより大きなボールが来たなぁとも思いました。昔はNEO GEOでアセンブラ(ハードウェアに直接命令する形のプログラム言語)を書いていましたが、今回はUnityでC#言語ということで、まるで環境は違うのですが、今回の企画でエンジニアに求められるのは昔と同じ雰囲気と言うか操作感、触ったときの味といった、仕様に残っていないものだと考えました。
おもしろさやアイデアの面では、みいはあさんやしなのさんの熱意があれば大丈夫だと思っていますが、技術的にそこへどうアプローチするのかについては、ひとりは昔の現場を知っている人間がいると、かなり違ってくるということは経験上知っていましたので。
――この逆オファーは、チームにとっては渡りに船だったわけですね。懐かしいメンバーとも再会できたわけですし。
HAMACHAN『メタスラ』メンバーとは本当に久しぶりに会うことになりましたね。人によってはもう約25年ぶりになりますから(笑)。そういった現実離れした側面がある企画だからこそ、もう一度魂を燃やしてみる価値はあるのではないかと感じております。
――では最後に、Kuichinさんからもオファー時の感想などをいただけますか。
Kuichin私は昨年SNKを退職しましたが、これは『Black Finger JET(仮)』のお話があったからというわけではなく、私事でのことで、故郷の広島に帰ってきました。そこで再就職しようかと考えていたら、今年2023年の1月くらいにしなのさんから連絡をいただきました。
――すでに連絡先を知っていたということは、以前ごいっしょに仕事もされていたのでしょうか。
KuichinしなのさんとはSNKプレイモア時代にパチスロを2本くらい作らせてもらいました。そんな知り合いからの連絡でしたのですぐ折り返してみると、これこれこういう感じで動いていますとお話をいただきました。たまたま非常にタイミングがよかったんですよね。
――ご退職されていなかったら、参加は難しかっでしょうね。ちなみにお仕事を探しておられたということですが、ゲーム関連のお仕事を探されていたのでしょうか。
Kuichin広島にも制作会社もあるでしょうけれど、ゲームに絞った就職は難しいだろうと考え、CAD(※)の学校で勉強したりもしていました。ちょうどご連絡があったのが、そろそろこの学校を卒業できて資格も取れるというタイミングで、これから就職活動どうするかなぁと考えていたときだったんです。
※CAD:Computer Aided Designの略。デザインや製図といった手作業で行なっていた設計工程を、コンピューターで行なうための技術全般やソフトウェアのこと。
――それはもう、いまどきのゲーム制作現場のことを考えると完全に渡りに船ですね。
Kuichinそうした経緯で、前年までは『メタルスラッグ アタック』でドットも打っていましたし、ドット絵についてならお助けできますとお返事させていただきました。昔みたいに、短い期間で大量に描くのは難しいかもしれませんが。
――ここまで各位のお話を伺うと、本当にタイミングが奇跡的に重なっているというか、運命的なものを感じます。
しなのそうですね、とにかく「ラッキー!」と思いましたね。
Kuichinこちらがもし就職に成功したあとだったら、渋っていた可能性も十分ありますね。ほかの皆さんが熱く語っておられるなかで、私だけ話が来たらちょうどよかった、みたいな形で恐縮ですが(笑)。
HAMACHAN十分ドラマチックですよ(笑)。
しなのKuichinさんはメインデザイナーのakioさんと一番近い位置でお仕事をされていた方で、Kuichinさんがakioさんの横で働いていたこともあり、信頼が厚いんですよね。akioさんからはドットはひとりでは描けないということで「Kuichin君がいたらなー」とおっしゃっているのを聞いていましたので、本当にご参加いただけてなによりでした。
Kuichinいまもakioさんにチェックを入れてもらいつつ描いていますが、やはり的確なチェックを入れて返してくれるのでさすがだなぁと思うばかりです。
なぜ『メタスラ』の精神的続編なのか、“原点”とは
――このメンバーが集結するなかで、どのようなゲームを作るかはさまざまな候補が考えられたかと思いますが、そこで『メタルスラッグ』の精神的続編を作ることに決まった経緯を教えていただけますか。
しなのこのプロジェクトが始まったのが今年2023年の1月なのですが、みいはあさんと「やりましょう!」とお話したのはさらに約1年前でした。そのときはみいはあさんとふたりで作ると考えていましたので、『メタルスラッグ』については考えていませんでした。
その1年後、今年の1月にakioさんにご参加いただけることになったときに、みいはあさんとakioさんが揃ったならもう『メタルスラッグ』しかないだろう、と考えました。僕自身も『メタルスラッグ』のファンですし、このおふたりが揃ってほかの作品を作るのは、ファンの期待を裏切ることになってしまうのではと思ったんです。
――たしかに、このおふたりの名前が並ぶと往年のファンはまずそこを想起しますね。ちなみに、akioさんにご参加いただくまでにはどういった経緯が?
しなのakioさんがゲーム業界を離れてフリーのイラストレーターとして活動されていたところに、話だけでも聞いてもらえないかと連絡したものの、滅多に人前に出ることのないakioさんですのでなかなか直接話す機会をいただけず。一年かけてようやく話ができて、ゲームをいっしょに作りませんかって、自分の熱意を伝えお願いしたところ、「一旦首を縦に振りましょう」と言ってもらえました。
――そうして『メタルスラッグ』の精神的続編を作ると決めたところで、『Black Finger JET(仮)』の企画を立ち上げるのにはご苦労もあったのでしょうか。
しなの自然な流れで立ち上がった感じですね。akioさんとみいはあさんのおふたりが揃えば、そうもなるかなといった感じです。
――そうして立ち上げられた本企画について、今回はインタビューに先立ち、コンセプトについての資料をいただいております。そのなかでも下記のセールスポイントについて伺っていきます。
- レジェンド級クリエイター陣+現代の技術
- メタルスラッグライクなドット絵・演出+3D表現
- アクションシューティングの原点回帰
- 旧アイレム・ナスカの思想を軸にゲームを設計する
――“アクションシューティングの原点回帰”という点ですが、この原点やアクションシューティングのおもしろさといった部分については、どうお考えですか。
しなの近年ゲームは複雑化していますが、『メタスラ』はそれらと比べてめちゃめちゃシンプルだと思っています。そのシンプルさと爽快感の二本立てが突き抜けているので、そこが原点だと考えています。また、akioさんを始めとする1987年の『R-TYPE』という、ゲームが生まれた黎明期時代からの制作者の皆さんの思想を立てつつ企画を進めていますが、そこに当時の制作者ならではの独特なものがあることを実感しています。それらもまた、“原点”という表現をさせていただいています。
――アイレムやナスカといった会社の思想を軸に、とも記述がありましたが、そういうことだったんですね。
みいはあ僕がテレビゲームに一番欲しいと思うものは、“ストレスを発散できる”ことです。そこで『メタスラ』で目指したのは、しなのさんも触れていましたが、“複雑ではない”ことでした。例としては、『スーパーマリオブラザーズ』(1985/任天堂)は操作でやれること自体はとてもシンプルですよね。
――端的に言えば、歩いて走ってジャンプするのが基本ですね。
みいはあ『メタスラ』でもできるだけシンプルに……という点は、注意したところです。もともとアーケードゲームですから、マニュアルを読んでからやってねとは言えませんし。
また、『メタスラ』は当時にしてもひとつ前の世代のスタイルのゲームで、あのころのゲームセンターではサイドビューアクションというのはほぼ絶滅状態だったかと思います。アクションゲームはシンプルなほうが快感を覚えてもらいやすいと思っておりますので、誰にでもそういった快感やおもしろさ、ストレス発散や精神的な高まりを味わってもらえればと、ずっと考えています。
HAMACHANこの年になると技術だけでなく企画も仕事で受ける場合もありまして、そのときの精神的指標として作る側の視点から“見える工夫”と“見えない工夫”を分け、見える工夫はひとつでいいと考えています。そこにプレイヤーの皆さんが気付かない工夫をたくさん盛り込むことが、シンプルさにプレイヤーさんを誘導する作りかただと思っています。
――『メタルスラッグ』の場合、その見える工夫というのはどの部分にあたるのでしょうか。
HAMACHAN完全にグラフィックですね。持論として、ビデオゲームは“触れる絵”であり、プレイヤーが介入することでアニメーションとして動いていくもの、美しい画面をインタラクティブに遊ぶものだと考えています。プレイヤー視点では見ているものはそのグラフィックなのですが、そこに操作が複雑、地形に引っかかるなどの雑味が出てくると、気持ちがそちらに行ってしまってテンションが下がってしまうわけです。
ですので、『メタルスラッグ』などのアーケードタイトル時代は、そこはプレイヤーの皆さんをシンプルさに誘導しつつも歯応えを感じられるようにしたり、くり返し遊んだり、そこで飽きてきたりしたら目が行くように2回目、3回目のプレイで気付かせる余地を残したりもしますが、まずはゲームセンターでマニュアルを見なくても100円を入れて座るだけで気持ちよさが味わえるという点に、プレイヤーの皆さんを誘導することに注力しました。
――ゲームセンターでは新作でも説明やチュートリアルがほぼなくてもいきなり遊べたというあの感覚は、いまのゲームにはあまりない要素ですね。
HAMACHAN当時の開発陣は感覚でそれらをやっていたのですが、約20年経ったいまですと、改めてやってみるとロジック化もできるかもしれませんね。今回の『Black Finger JET(仮)』にそれが注入できるとしたら、とても挑戦しがいがありそうです。
HIYA!個人的な考えではありますが、ゲームは子どもがすぐに楽しめるものであれと考えています。ゲームは大人のためというよりは、もともとは子どものためにあるものじゃないですか。アクションシューティングというジャンルは昔からあって、子どもがややこしいことを考えずに、AボタンとBボタンくらいで遊べていたものかと思います。
――子どもが無心に遊ぶ、微笑ましい光景が多く見られましたね。
HIYA!私たちの作品をプレイしてくれた皆さんはいまやお父さん世代で、だからこそ見てみたいのが、そうした世代が「これ昔のゲームっぽいけど、おもしろいぞ」とお子さんにプレイしてもらって、むしろお子さんのほうが熱中してお父さんよりもうまくなるといった光景です。今回もそんなゲームを作れればと考えています。
――子どもたちのそういった部分は、いまも昔も変わらないところですよね。
HIYA!子どもの世代というのはすごく正直で、おもしろいと思わないものは「もっとおもしろいものがほかにある」と言って、やってくれないんです。みいはあさんがおっしゃっていたような、熱中できるかという点については子どもが答えを出してくれると思います。とくに近年は数多くのゲームタイトルが飽和していますので、そんななかで私たちが作ってきたものがいまでも通用するのか挑戦してみたいと、今回のお話を聞いて最初に思いました。
――子ども向けとしても制作において意識を向ける、ということでしょうか。
HIYA!いえ、子ども向けに作るということではありません。彼らはシビアですから、子どもっぽく作ったものはすぐに見抜かれるんです。それに子ども時代というのは、大人が使っているものに興味を持つものですし、大人が納得できてなおかつ子どもが憧れて遊びたくなる、というゲームがいいゲームなのではと思っています。
ドット絵と音楽について訊く。当時といまの違いとは
――経緯やテーマなどに続いて、ゲームの具体的なところについても伺っていきます。まずドットグラフィックについてですが、この手法が持つ魅力をどのようにお考えでしょうか。
しなの解像度が低くて細部まで見えないからこそ、想像の余地がある点だと思います。僕も子どものころにゲームをしていて、ドット絵の女の子に恋をしていたものです。
――一定世代のゲーマーにとっては通過儀礼のようなものですね。
しなのただ、奇麗な3Dのキャラクターについてはとくにそういったことは感じないんです。ドット絵というのは、見る側から想像できる部分が多く、プレイしながらそうした想像とともに楽しめるというのが魅力かと。
――実際にドットグラフィック作業に従事しておられる、Kuichinさんとしてはいかがでしょうか。
Kuichinしなのさんがおっしゃられた通り、ドット絵はどうしても解像度低くなりますが、そこが逆に魅力だと思います。人間の脳には補完していく機能がありますので、自分のいいように内容を取っていっているんです。つい最近akioさんとも話したんですが、私は典型的な絵と言うものが描けず、ドット絵しか描けないんです。
――いや、それはふつう逆なのでは…?
KuichinSNKのパチスロのお仕事などでは、こういう絵にするというラフ画は描けたのですが、本格的な人にお見せできるようなイラストは描けないんですよ。でも、ドット絵なら描けるという人間なんです。これはさきほども出ていたように、解像度が低いからこそ描けるんですよ。
――昔のゲームですと、データ容量の問題で解像度を下げざるを得なかったからこそのドット絵でしたよね。
Kuichinそうですね、どこの会社に行こうが、あの手法で絵を描くしかなかったですね。その優劣でグラフィックのよさが決まっていた時代です。各社で観てきましたが、カプコンならカプコン、SNKならSNKなど、各社ごとの“見せかた”があるとも感じました。同じドット絵に見えるということは、どの会社に行ってもなかったかと思います。
――たしかに、解像度やドットの数がほぼ同じでも、プレイヤー側からも違いを感じましたね。不思議。
Kuichin枠組みが決まったなかでも個性が出るというこの点も、ドット絵のグラフィックとしてすごい点だと思います。そういうところが個人的にも好きですね。
――現代の技術なら解像度はいくらでも上げられるかと思いますが、ドットの数を増やせばいいというものでもないのですかね。『Black Finger JET(仮)』の主人公・ジェットの描写に使うドット絵は、昔の『メタルスラッグ』のプレイアブルキャラクターなどとドット数は同じくらいなのでしょうか。
Kuichinまったく同じ身長にはなっていませんので、すべて新たに描き起こしているところですね。ただ、昔のアーケード基板は16色ボードだったので、1キャラクターに対して使用できる色は16色まででした。それに対していまのゲームでは、1キャラクターに対して256色以上使っても問題ないわけです。この点においては、昔のアーケード基板などと比べて表現力が上がっています。
――むしろ『メタルスラッグ』などの作品が16色で描かれていたという点が、改めて驚きです。
Kuichin16色ならではの描きかたというのも、当時はありましたね。akioさんのキャラクターや背景担当の方のイラストをじっくり見て、これを16色をパレット分けしてやっているのかと勉強になったものです。逆に当時のドットグラフィッカーの皆さんでも、いまの環境ではまた違ったドット表現ができるようになる人もいるかも知れません。
――ゲーム全体のコンセプトについてお聞きしたいのですが、“悪魔”や“秘密結社”などのオカルティックなテーマがあり、『R-TYPE』の生物面のような不気味さも想起されますが、これらの世界観についてはどのように決まったのでしょうか。
しなの世界観は、メインデザイナーのakioさんがバンと出してくださったものを、我々が「いいね!」となって決まったものですね。『R-TYPE』の世界観を作ったakioさんが出されたものですので、お察しいただいた通り、その系譜の血が流れているのだと思います。
――なるほど、しなのさん側からオファーしたのではなく、akioさん側から「これ!」と出てきたものなわけですね。
しなのオファーという目線からですと、「akioさんが作りたいものってなんですか?」という問いに対して、この世界観を出していただいたという形になりますね。
――それと、PVを拝見すると音楽なども含めて、自分が古い人間ということもあって『ガンスミスキャッツ』(1995年)や『カウボーイビバップ』(1998年)といったアニメのオープニングを思い出しました。これらの作品のガンアクションやハードボイルドのイメージも、世界観に取り入れているということなのでしょうか。
しなのあの動画を作ったのは僕で、音楽はHIYA!さんがあててくださいました。さきに僕が映像を作るにあたり、『カウボーイビバップ』というタイトル名も出ていましたが、さらにそこから遡った『ウルトラマン』(1966年)のイメージがあったんです。
――ああー、なるほど! 原点中の原点ですね。
しなの『ウルトラマン』のモノクロの影の表現などなつかしいと思って映像は作りましたが、全体のコンセプトについては、またakioさんのなかにあるものですので、別だと考えています。発表のために取り急ぎ、こちらで作らせていただいた映像だったということもありますので。
――そうして映像を作ってから、HIYA!さんにお渡ししたと。
HIYA!そこで細かなオファーはなかったんですよ。そもそもこのPVには、音楽が付く予定はなかったんです。このお仕事自体のオファーが来て「何かイメージのために観られるものはないの?」という話になって、この映像を観させてもらったんです。そうしたら5日後にはこの映像を公開するとか言われまして、「何言ってんの? 音ないじゃん!」と。
――そこでさすがに音楽をつけよう、となったわけですか。
しなの最初はあとからフリー音源の音楽をつけようかと考えていたんです。今回は急ぎでしたし、それでも仕方ないかと思っていたのですが、HIYA!さんから曲をいただけまして、驚きました。
HIYA!あの映像の場面転換の仕方などを見るに、イメージとしてはこれしかないでしょうと、こちらが勝手に音楽をつけて送らせてもらいました。イメージとしてはやはり『カウボーイビバップ』が浮かんできまして、約20年前くらいのあの世代のテイストが本作でも間違いはないだろうと思いましたが、好評もいただけましたし、振り返ってみると本当に発表時に音がついていてよかったなぁと(笑)。
――そうなると現在も作業中かと思いますが、音楽についてはこの方向性でゴーサインが出ている感じなんでしょうか。
HIYA!ないしょです。
――あー、なるほど。ステージごとに変わったりもしそうですし……。
HIYA!そこはもう、TGSとそれ以降も観ていただけるんでしょう、と(笑)。ひとつ私が現段階でも思うところとしては、『メタスラ』からまた違うイメージにしたいとは考えています。テーマが違うタイトルですので、そこはご理解いただきつつ観て、聴いていただければと。私は『メタスラ』の精神的続編とは、外観ではなく、“作り手の精神的続編”と思っています。『メタスラ』が世に出て25年以上経ちます、『Black Finger JET(仮)』も25年後に振り返れる作品になるといいですね。
――『メタスラ』のような音楽を期待する層もいるかと思いますが、たしかに世界観なども大きく異なりますしね。
HIYA!『メタスラ』だと思われるよりは、『メタスラ』ではないブランドなんだ、と思えるような仕掛けを企んでいるところです。
しなの開発陣側が、すでに「そう来るんだ」とびっくりしているくらいですからね(笑)。ぜひご期待ください。
昔といまの技術の融合という、新たな課題
――続けてプログラミングのほうのお話も伺いたいのですが、ドット絵のゲームを作るとなると、開発環境も昔とは比較にならないほど進化しているかと思います。ドット絵のゲームはよりスムーズに作れるようになっているものなのでしょうか。
HAMACHAN昔とはまた違った難しさがあります。昔と比べて、いまのほうが表現の選択肢が非常に多いので、僕らが求める仕様のためにどれを選べばいいのかが新たな悩みですね。
――ドット絵ならこれ、という定番手法があるわけではないんですね。
HAMACHAN本作でも、アセット(地形などのゲーム内のさまざまなオブジェクト)は背景などを含め、3Dのものが多いんです。2Dのスプライト(複数の2D画像を合成して動きを表現する手法)で描写されるキャラクターが出てくるけど、周りは3Dという、2.5Dゲームと言えばおわかりでしょうか。
――2Dドット絵のキャラと背景のハイレゾグラフィック、という組み合わせは近年よく見ますね。
HAMACHANこの手法に挑戦しているタイトルはすでにいくつもあるかと思いますが、まだメジャーな作りかたとは言えない段階だと思います。ゲームエンジンのガイドを利用しつつ挑戦していくのと同時に、本作の場合は「ドット、いいね!」と思えるようにしないといけない、というテーマも考えています。
――ドットだからこその魅力、ということでしょうか。
HAMACHAN単に美しいグラフィックにするならすべて3Dやハイレゾにするのが現代のスタンダードですが、今回のプロジェクトはakioさんやKuichinさんという、ドットグラフィッカーのレジェンドが戻ってきてゲームを出すということで、作り手がかつてのあのテイストをくれるというところに大きな比重があると考えます。
――そうなると、すべてドット絵の当時再現型、レトロ調というのも考えられますね。
HAMACHANただ、ゲームとしてはいまどきの美しいグラフィックもまた必要です。3Dレンダリング表現や、2Dと3Dのシェーダーの違いから光の当てかたをどう表現するかなど、いまどきのプレイヤーの皆さんをシンプルさに誘導するためのグラフィック表現というのは、必ず取り入れないといけないと思っています。しかし、そこで気が付くと昔の2Dスプライト表現が遊んでいる、というところに気づいて注目したことによりプレイヤーが得られる快感もある、というのが作り手側のお題だと考えています。
――なるほど。両立がかなり難しそうな課題ですね……。
HAMACHAN今回の『Black Finger JET(仮)』では、感覚的なところだとは思いますが、しなのさんがこのあたりをやってくださっていまして。Unityのオペレーティングもやっていただいていて、どんどんとアセットを作ってくれているのですが、それらが僕の視点からも「いい!」と思えるものばかりなんですよね。
――昔といまの、両方の感性をしっかりとお持ちなんですね。
HAMACHAN昔世代の我々がいちからくっついていなくても、案外なんとかやれているという点もありますが、その逆ももちろんあります。昔のテイストをいまに実現するためにチャレンジしていくというのも、今回のプロジェクトの根幹なのかと思います。
ストーリーとゲーム内容について、気になるところを訊く
――まだゲームの具体的な内容には踏み込んでお聞きできないかとは思いますが、ファン目線で気になった点はぜひこの場で伺えればと。まず、『メタスラ』と言えばいろいろな乗り物が魅力で、PVでも敵か乗り物か、というイラストが観られましたが、今作では…?
しなの乗り物はすでにいろいろと出てきていますね。
――なるほど、安心しました! 続いて、資料にあったストーリープロローグについても触れさせていただきます。
- あらすじ
ジェットは幼いころ、悪魔に憑りつかれた5本の指を切り落とされた。
危険な力を持つ“悪魔の指”は、超国家・超法規的保安組織によって各地に封じられたが、その力をもって世界征服を企む悪の秘密結社によってその封印が解かれようとしていた。
組織は、悪魔の指を取り戻し、悪の野望を阻止するためにエージェントを派遣する。
世界の、そして自身の命運をかけた戦いが、今始まる。“ブラックフィンガー”のコードネームで呼ばれるその男…その名は、ジェット。
ブラックフィンガージェット!"
――こちらでは、主人公・ジェットの指が切り落とされたという話なのですが、なにやら指先からマシンガンなどが撃てそうな指が健在に見えるのですが。
しなのこれは義手、義指という設定ですね。弾が出そうなデザインですけど、弾じゃないなにかすごいものが出てきます。「そんなの出てくるんだ!?」と僕も思いました(笑)。僕が想像していたものとはまったく異なるものが出ていますね。
――それはプレイヤー各位の想像も軽く上回りそうですね…。あとはakioさんのX(Twitter)などで、『メタスラ』の捕虜のようにアイテムをくれるキャラが描かれていましたが、『メタスラ』のようにアイテムを取ることで随時武器が変わるシステムを想定されているのでしょうか。
しなの基本的にはそれをベースに作っています。ただ、これから開発を進めていって、それだけだとおもしろくないとなれば、足していくことも考えられますし、まだ完全には固まっていません。
――プラットフォームはPC(Steam)を予定されているとのことですが、ふたり同時プレイなどは仕様としてお考えでしょうか。
しなの現段階ですと多くのスタッフが「あったほうがいい」と言っていますので、採用の可能性がありますが、たしかみいはあさんは別意見でしたよね。
みいはあえ、反対したっけな?(笑)いやそれは冗談として、企画者らしいことを言いますと、ゲームが雑になりがちという点がありまして。
――たしかに、私も『メタスラ』では学友とふたり同時プレイで暴れていた記憶があります。
みいはあ派手になったり、ハチャメチャが楽しかったりという側面もあるのですが、敵の配置やボスの攻撃など、ふたりがかりで来られるとお膳立てが関係なくなってしまうんです。悩ましいところですが、それこそがふたりで協力する醍醐味だろうというところはあると思います。
しなの現段階の結論としては、要るということになったんですね。
みいはあいやいや、まだわかりませんよ? ゲームセンターのゲームの場合、商品の性能として「1ゲームプレイする時間内に1クレジット以上入る可能性がある」というのが望ましい。しかし、今回は家庭用のプラットフォームであり、先に一定金額をいただいているので、必ずしもそこを満たす必要はない。ひとりプレイのほうがおもしろいと確信できればそれもアリなのではないかと。
ただ、商品の仕様として「ない」というのはいまどき通らないかもしれませんし、むしろ4人同時で遊べないの? なんて話も出てくるかもですし。
――シューティングでも、技術的にはできるんですよね。『ダライアスバースト アナザークロニクル』(2010年/タイトー)などでもやっていましたし。
みいはあオンラインのアクションゲームなら、全員でボスを討伐するのは当然の醍醐味としてありますからね。『メタルスラッグ』などの昔のゲームセンターの時代だと、大勢で行ってお金を同時に入れてプレイするというのは、友人どうしならまだしもそこまで多いケースではなかったですから。
――ふたり同時プレイの実現よりも、開発上で優先すべき点も、これから当然出てくるでしょうしね。まずは土台部分の完成度と、その上でのさまざまな仕様に期待させていただきます。
TGSでついにプレイ映像を展示。発表前に画像を特別公開!
――続いてこの記事がTGS 2023直前の掲載になるということで、TGSでのご出展についてもお話を伺えればと思うのですが。
しなの映像出展で、プレイ画面が確認できる動画をご覧いただけます。
みいはあこちらが世の中に初めて出る、『Black Finger JET(仮)』のゲームプレイ画面の動画です。TGS会場の展示が初公開で、ネット上でも事前に上映されない形となります。
――そう聞くと、ますます期待が高まりますね。
みいはあこれまでの『Black Finger JET(仮)』の映像資料はPVのみでしたが、「こういうゲームなんだ」ともうちょっと踏み込んでわかる新PVとなります。気になる方はぜひ、会場でいち早くご覧ください。
――会場は幕張メッセですし、足を運べないファンも地方には多いじゃないですか。そんな皆さんに、ちょっとでもそのPVの一幕を公開できたりは……。
しなの静止画で3点ほどでしたらお見せできます。こちらで想像を膨らませていただきつつ、実際に動いている画面については、ぜひ会場でのお楽しみにしていただければ幸いです。
――これは……!? いや、考察は映像を観に行くまでとっておきます。それでは最後に、『Black Finger JET(仮)』の情報を心待ちにし続けている皆さんへ、各位からメッセージをいただけますか。
しなの僕が子どものころから大好きだったゲームを作ってきた開発者の皆さんが、やっと帰ってきてくださいました。『Black Finger JET(仮)』はそんな僕自身が一番楽しみにしているゲームです。よろしくお願いします!
みいはあ全世界の『Black Finger JET(仮)』ファンの皆様に向けて、TGSではプレイ動画を出展いたします。こちらが世界初公開となることは前述の通りで、当日ブース(09-E46)ではコアメンバーが立ちまして、超豪華記念粗品、akio氏によるメインビジュアルを用いたクリアファイルをお配りすべくお待ちしています。ぜひお立ち寄りください。
――皆さんレジェンド級の方々なのに、みずからブースに立たれるのですか……。嬉しいのと同時に、昔のJAMMAショー(アーケードゲームの一大展示ショー)の会場のノリを思い出しますね。
HIYA!これまでのお話でもおわかりいただけます通り、私たちは前世紀、20世紀の古い開発者です。私たちにとっても今回のプロジェクトはいまの世界への挑戦であり、ユーザーの皆さんには、この私たちの挑戦を受けていただきたいと思っております。一言で言えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですよね。挑戦者をお待ちしています!
Kuichin『メタルスラッグ アタック』のムック本のインタビューでも締めの言葉で言わせていただいたのですが、私としては終わったはずの仕事を、なぜか続きでやらせていただいているという感覚ですごい嬉しさがあります。あのころ楽しくゲームを遊んでくださった皆さんには「またやります」とお伝えしたいところですので、よかったら完成したら遊んでいただければと思っています。がんばります!
HAMACHAN言いかたはあれとして、爺なメンバーが多いチームなのですが、帰って参りました。昔のゲームが好きだった皆さんには、ぜひ覗いてみていただければと思います。僕らはTGSのブースにも立ちますが、それぞれ名前入りのTシャツも着ていますので、どんなTシャツかも楽しみにしていただければと。
――それはズルいですよ。皆さん、ご自身のレジェンドっぷりをご自覚なさってください。
しなの皆さん、そこまでメディアに顔が出ているわけではありませんから、名前を書いておこうということになったんです。SNSで拡散されることも覚悟ということで、ぜひレジェンドな皆さんの帰還をご実感ください。
本作の中心人物、akio氏からのコメントも到着!
・akio氏
『R-TYPE』や『メタルスラッグ』をメインデザイナーとして起案し、以降も多くの作品に携わってきたゲームドットグラフィックの第一人者。SNKプレイモアを退社後は療養を経て、フリーイラストレーターとして復帰。『Black Finger JET(仮)』ではメインデザイナー、プランナー、ピクセルアニメーターと幅広く担当。
ジェットは子どものころ、道端に捨てられていた魔犬に指を噛まれてしまう。
噛まれた指は魔力を帯び始め、ジェットの意に介さず暴走を始め手に負えなくなってきた。
徐々に大きくなる指の魔力を危惧した〇〇財団は、ジェットの両手から魔犬の魔力を切り離すためジェットの10本指を切断する判断を下す。
切断された10本の指は世界各地に秘密裏に封印され事なきを得た。
時が流れ、再び暴走し始めた10本の指。
その魔力は甚大で結界を消し去りその姿をあらわにする。
ジェットの指を探し続けていた悪の結社〇〇は10本の指を持ち去り魔力の制御に成功する。
奪われた10本の指は10体の怪物の強化パーツとして実装。
特殊諜報部員となったジェットは奪われた指を取り戻すため立ち上ががる。
ジェットの両手には〇〇財団が開発したゴ-ストトラップ機能を持つガントレット。
捕獲した怪物を使役する力で世界征服を目論む悪の結社に挑む。
ジェットのガントレットにはフィンガーレーダーが内蔵されているので、ジェットの指が接近すると「サム(親指)が近くにいる…」とジェットがつぶやく。
ジェットは10本の指にあだ名をつけている。
そんなストーリーのタイトルを考えていたとき、頭の中に浮かんできました。
そのタイトル名は漆黒の指、JET BLACK FINGER。
語呂が気に入りJET BLACKの意味も中二病っぽくてよい感じです。
タイトルからイメージしたストーリーですが、ゲーム中の目的やプレイヤーキャラの特徴もすんなり決まり、『メタスラ』とは一味違うテイストで、作り手側もワクワクしながら鋭意制作中です。
何処かで見たようなストーリーだなと思ったら、尊敬する手塚先生の『どろろ』という作品をオマージュしているようですね。
(※諸事情により現在はJET BLACK FINGERからBLACK FINGER JET に変更となりました)
オモチャ箱を引っくり返したようなゲーム、作るならそんなゲームを作るのが好きだってことをよく口にしているように思います。
『ブラックフィンガージェット』もまたそんなゲームで、火薬の香りがする硬派な戦争ゲームなだけではなく、バラエティーに富んだ 敵たちが襲いかかる先の読めない絶叫マシンのようなゲームになればいいなと思っています。
目まぐるしい戦闘を掻い潜り、つぎのコーナーを回ればガラリと世界が変わる驚きが刺激的で、「先が見たい! もっとこの先が見たい」と期待が高まるゲームになったら最高ですね。
長いあいだゲーム開発から遠のいていましたが、現在、全力でゲーム開発を楽しんでおります!
皆さんに応援してもらえるようがんばりますので、何卒よろしくお願いいたします!
東京ゲームショウにお越しの際は、インディーゲームコーナー09-E46ブースまでぜひ、お立ち寄りください。