ベセスダ・ソフトワークスよりXbox Series X|S(Xbox Game Pass対応)、Windows(PC Game Pass対応)、Steam向けに、2023年9月6日に発売された『Starfield』(スターフィールド)。

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 『The Elder Scrolls』(エルダー・スクロールズ)や『Fallout』(フォールアウト)シリーズを手掛けるBethesda Game Studios(以下、BGS)が25年ぶりに放つ新規IPとして、世界中で話題となっていた本作。

 2023年9月6日に正式リリースを迎え、数多のプレイヤーが銀河を駆け巡り、惑星に降り立ち、宇宙の謎を追い求めている。

 アーリーアクセスで冒険を始めた人でもまだそのすべてを体験していないであろう、未曽有のボリュームと濃度を誇る『Starfield』。

 このゲームを語るうえで絶対に外せないキーパーソンがいる。そう、BGSのゲームディレクター/エグゼクティブプロデューサーとして本作の開発をけん引した、トッド・ハワード氏だ。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

 本誌はトッド氏にインタビューする機会を得た。開発エピソードはもちろん、本作に込めた想い、今後の展開など、ユーザーへの“メッセージ”をたっぷりお届けする。

トッド・ハワード

Bethesda Game Studiosのゲームディレクター/エグゼクティブプロデューサーとして、『エルダー・スクロールズ』シリーズや『フォールアウト』シリーズの開発に携わる。

――ついに発売を迎えました。

トッドゲームをリリースする際はつねにワクワクしますが、同時に少し緊張もします。多くの時間を費やして作ったものが皆さんに気に入ってもらえることを願います。

――25年ぶりの新規IPであり、過去作のすばらしさもあって、開発を発表して以来、世界中から「どのようなゲームになるんだ?」というプレッシャーをたくさん感じてきたのではありませんか?

トッド私たちがプレイしたいと思うゲームを遊んでみたいという人たちが、世界にたくさんいることがわかりました。そして彼らは、宇宙を飛び回りながら好きな場所へ行けるようなゲームをプレイしたいという夢を持っていました。

 私たちには、プレッシャーよりも正しいことをやりたいという想い、そしてゲームを待っていてくれる人たちに「待っていてよかった」と感じてもらいたいという気持ちがありました。

――BGSは作品ごとにゲームの可能性を広げてきましたが、宇宙というとてつもない世界を表現するというアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか。2013年に最初のコンセプトがまとまったとき、「これは無理」という声は上がりませんでしたか?

トッド宇宙を舞台としたゲームを作るためには、まずは惑星を作らなくてはなりません。ここをどう進めるかが課題であり、技術的な面だけでなく、それができたとしてもどうやって楽しくするか。解決すべき点はたくさんありました。

 多くの人が「無理だ」と言いましたが、私は希望を持っていましたし、私たちは多くのゲーム……『Fallout 4』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』を作ってきました。チームとしていくつかのプロジェクトを完成させて経験を積み、ゲームを構築するためのベースに対して理解を深めてきました。ゼロからスタートするわけではありません。

 無理と言う人たちには、私たちはこのようなタイプのゲームの作りかたを知っており、宇宙空間の構築をどのように解決するかがカギであると説明しました。結果的には、より複雑なゲームになりましたが、チームは十分な経験を積んできたという自信があったのでやり遂げることができたと思います。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

――2015年から本格的な開発がスタートしたそうですが、そのときから本作の内容が変わった、もしくは進化した部分はありますか?

トッド開発を始める際は、フィーチャーするもののリスト作成から始めるのではなく、どのような体験をもたらしたいのか、いろいろと考えて試していきました。

 その体験とは、宇宙船で宇宙を飛び回ることができて、宇宙でいろいろなことを経てから惑星に上陸し、冒険を楽しむことです。いろいろと試しましたが、ひとつ言えるのは、私たちが考えていたことは、すべてゲームに取り込まれています

 開発が進む中で大きく変化したのは宇宙船です。宇宙船を作ったことはなかったので、どのように飛ぶのか、どうやって戦うのか、アビリティーをどのように構築するのか、年々変化しました。

――宇宙船のデザインは個性的で、とてもすばらしいと思います。

トッド宇宙船には多くの時間を費やしましたが、なかなかうまくいきませんでした。本物らしくなかったり、ファンタジー的になったり……。そこで“NASAパンク”というデザインのコンセプトを構築しました。

 NASAをベースにした、しっかりとしたスタイルを持っている。未来的すぎず、いまの私たちでも作れると思えるものにする。このコンセプトから、地に足が着いた、より信憑性の高いデザインが生まれました。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

トッド私たちの宇宙船は流線型ではなく不恰好なところもありますが、外観のコンセプトが決まってからは、ほかの部分についても明確なアイデアを持つことができました。

――完成に至るまでの道のりで、もっとも時間がかかった部分はどこでしょうか?

トッド惑星ですね。惑星を作って、プレイを楽しくすることです。

――惑星は基本的に自動生成で構築されますが、探索が平坦にならないよう、気をつけたことは?

トッド惑星をおもしろい場所にするということは大きな課題でした。視覚的に魅力があるだけでなく、コンテンツを追加するシステムを作りました。

 そこには放棄された基地があるかもしれません。銃を強化するために必要なアルミニウムが採取できる惑星を見つける必要もあります。スキャンを活用して探検するのも楽しいと思います。

――Modで惑星に新たな生物などを配置できたりするのでしょうか?

トッドModができるようになれば、これまでの作品同様にほとんど何でもできるようになります。Modの対応は来年になりますが、私たちも大好きなので大々的に行います。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

――宇宙を舞台にしたゲームはたくさんありますが、些細なアイテムにも歴史を感じさせるようなデザインを施すほど、ディテールにこだわったゲームはありません。

トッドディテールにこだわったために時間がかかりました。私たちはすべてのディテールに夢中になってしまうのだと思います。コンピュータのボタンひとつに書かれていることにも、プレイヤーの皆さんが興味を持つようにしたかったのです。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

トッドキャラクターが発するすべての言葉も同じです。当初はゲームがこれほどのボリュームになるとは思っていませんでしたが、作っていく中でゲームが進化し、「ここにはもっとディテールが必要だ」と気づくわけです。そこから、どんどん量が増えていきました。

 しかし、最終的にはすべてがゲームのフィーリングに貢献しています。それがなければ人工的に感じてしまいますし、本当に宇宙にいるという感覚にはなりません。

――これだけ複雑なストーリーテリングを、破綻することなく維持することはとても難しいことだと思うのですが、どのようにしてシナリオをコントロールしたのでしょうか?

トッドBGSには、デザイン・ディレクターを務めるエミル(Emil Pagliarulo氏)が率いるすばらしいデザイナーとライターのグループがいます。エミルとは約20年も仕事をしてきましたが、ワールドからレイアウトまでしっかりと構成するので、筋が通ったストーリーが展開できました。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

――ゲーム序盤から相当な数の武器や宇宙服が用意されていることが伺えますが、本作ではどれくらいの装備品が登場するのでしょうか? 

トッド膨大な数の装備品を入手できます。私のお気に入りのクエストは“マンティス”がキーワードです。ネタバレになるので説明はしませんが、このクエストを受けたらぜひ挑戦してみてください。

――キャラクターメイキングで選択する所属や宗教の違いで、1回のプレイでは体験できないクエストは発生するのでしょうか?

トッドそれほど多いわけではありませんが、存在します。

――主人公の出自はプレイヤーの選択で変わりますが、主人公はスーパーマンでも超能力者でもありません。これは冒険で成長していくことをプレイヤーに実感させたいからでしょうか?

トッドその通りです。プレイヤーは自分のバックグラウンドを選ぶことができますが、私たちはその時点で、主人公がどうやっていまに至ったのかは明かしません。

 兵士、メディック、教授、シェフなど、プレイヤーにはゲームの中で自分が創作したキャラクターを演じていただきたいです。

――自分のスキルでは足りない部分はクルー(仲間)がフォローしてくれますが、1回のプレイで20人以上はいるというクルーの全員と会えますか?

トッド1回のプレイですべてのクルーに会えるとは思いますが、ストーリーがどのように展開するかは、プレイヤーがどの仲間ともっとも近い関係にあるかによって異なります。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

――2大勢力であるコロニー連合と自由恒星同盟以外にも、リュージン・インダストリーズや紅の艦隊、ヴァルーン家など、さまざまな勢力が登場します。その中で、海賊という立場で異なる勢力の仕事を受けるといったロールプレイも可能ですか?

トッド海賊だったとしても、コロニー連合と自由恒星同盟の両方から仕事を受けることは可能です。自分が信じる勢力の一部と関係を深めることができますが、コロニー連合と紅の艦隊など、それぞれの勢力は興味深くつながっています。

 コロニー連合は最初に移住した人間たちで、惑星の中で平和を維持したいと考えています。自由恒星同盟は開拓者的な精神を持っています。紅の艦隊は、彼ら独自の法律や規則を持っています。リュージン・インダストリーズはハイテクノロジーを持つグループで、企業スパイのような立ち回りを求められます。ヴァルーン家はカルトのようなものであまり出会うことはありませんが、何かを探しているようです。

 それぞれの詳細は実際にプレイして確かめてください。

――誰もキルしない"完全なる善人”を貫き通すのは難しそうですが、逆に犯罪を重ね続けることでどのようなデメリットが生じるのでしょうか?

トッド犯罪を続けるときびしい状況になります。さまざまな都市が敵対的になり、ガードが攻撃してきます。罰金も課せられ、刑務所に送られることもあります。また、犯罪を重ねるには、ステルスに秀でたキャラクターを構築する必要があります。

――好きなキャラクターやクエストラインをお聞かせください。

トッドメインストーリーがとても気に入っていて、多くの人を驚かせると思います。つねに私たちが関心を持っている、科学や宗教、自然、人間性、創造性に至るテーマがメインストーリーには込められているからです。

 ビデオゲームによるアドベンチャーであることに変わりはありませんし、アクションもたくさんありますが、私は皆さんがメインストーリーにどのような反応を見せてくれるのか、そこからどう進むのか、そして最後にどう思うのかに関心があります。

――トッド氏が30年にわたってゲームを作ってきた中で、本作がいままで手掛けてきた作品と違うと思うところはありますか?

トッド規模だけでもこれまでとは違いますね。ほかのゲームでも見たことのない規模だと思います。

 プレイの一瞬一瞬では慣れ親しんだプレイフィールや環境を感じるかもしれませんが、2~3時間プレイしてみるとまったく異なるフィーリングを覚えます。惑星に降り立つたびに非常にユニークな瞬間を感じ取れるでしょう。

 宇宙船から降り立って地平線を見たとき、「ここに降り立った者はいない。何があるのかを見に行こう」と思えるのはとてもユニークです。惑星にはさまざまなバイオームのエリアがあり、重力も感じるので、ひとつの陸塊を探索するのとは異なります。

――ちなみに、実際に行ってみたい惑星はありますか?

トッド現実の宇宙では、太陽系にいちばん近いケンタウルス座アルファ星ですね。ゲームにもケンタウルス座アルファ星は存在するので、注目してください。

『Starfield』トッド・ハワード氏インタビュー。「考えていたことすべてがゲームに取り込まれている」と語るほど濃密な本作が実現した宇宙の“旅”

――発売後にDLCの配信などは計画されていますか?

トッドDLCはリリースしますが、いつ出すのかは秘密です(笑)。

――最後に、トッド氏がゲームを作り続ける理由、そして自身が作るゲームでプレイヤーにどのような体験をもたらすことが目標なのかをお聞かせください。

トッドゲームをプレイすることが好きだからこそ、私はゲームを作っているのだと思います。

 子どものときに『Ultima(ウルティマ)』シリーズなどのRPGをプレイしたことが、いちばんお気に入りの思い出です。こうしたゲームをプレイした時間は私にとって非常に特別なもので、そこからゲームを作りたいと考えるようになりました。

 いまは仲間たちとゲームを作ることで、皆さんにもこのような思い出を提供したい、時を忘れて長時間没頭する機会を与えたいと思います。

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