2023年8月23日~27日の5日間、ヨーロッパ最大級のゲームイベントgamescom 2023がドイツ・ケルンにて開催。

 会期初日にあたる8月23日に、Remedy Entertainment開発によるプレイステーション5、Xbox Series X|S、PC用ソフト『Alan Wake 2』(アランウェイク2)のスペシャルイベントが開催された(パブリッシングを担当するのは、Epic Games)。gamescom開催前夜に行われたgamescom Opening Night Liveでトリを飾ったことからもわかる通り、注目度も極めて高い『Alan Wake 2』は、2010年に発売された『Alan Wake』の続編。本作では、作家であるアラン・ウェイクと、FBI捜査官のサーガ・アンダーソンのふたりの視点から、異なるストーリーを体験することになる。

 アラン・ウェイクの物語が、異世界の悪夢の檻にとらわれたアランが、そこから逃げ出そうとするのに対して、サーガ・アンダーソンの物語は、太平洋岸北西部の小さな町であるブライトフォールズで起きた殺人事件を追いかけることになり……と、それぞれ関わる出来事は異なるが、いずれはふたつの出来事が錯綜し合うことになる。

 6月にアメリカ・ロサンゼルスで開催された“Summer Game Fest Play Days”では、サーガの視点からのストーリーが紹介されたのに対して、今回のgamescomでは、アランの視点での物語の冒頭部分が紹介された。

 メディアや関係者を対象としたスペシャルイベントが行われたのは、gamescomの会場となるケルンメッセからクルマで10分弱のところにあるミニシアター。プレゼンは、アラン視点による40分のデモプレイの映像紹介+Q&Aという構成になっており、『Alan Wake 2』の迫力の映像を、映画館で楽しんでほしいというRemedyサイドの思いがあったように思われる。実際のところ、NVIDIA 3.5 enhancing rayなども駆使しての映像はとても美麗で、シアターならではの迫力の映像が堪能できた。

 紹介された章“Casey”は、実写とゲームプレイで構成。実写パートは、トークショウに出演しているアラン・ウェイクが、書いてもいない小説を「書いた」と司会者に言われとまどうさまなどが描かれる。続くゲームパートでは、日常に見える世界と、悪夢がたゆたう世界を漂いながら、アランが悪戦苦闘することになる。

『Alan Wake 2』アラン視点のストーリーの一端が紹介。アランの自意識が産んだ“The Dark Place”を舞台に“光と闇”を巡る戦いが【gamescom 2023】

 前作から13年、困難な状態から抜け出せずにいるアランは、生まれた場所であるニューヨークに住んでいる。物語が展開されるのは、アランの自意識が産んだ場所である“The Dark Place(ダークプレイス)”。いわば、このアラン想像の産物である“ダークプレイス”を、アランは冒険していくことになる。

 闇に満ちた“ダークプレイス”だが、光(エンジェルランプ)を当てるとそれまでいけなかった場所に行けるようになる。そこで見つけたピースにより、アランは新たなプロットを見つけ、“ダークプレイス”でのストーリーにも変化が生まれる……といった具合だ。Remedyの担当者が何度か言及していたが、まさに“メタフィクション”の構造で、極めて興味深い。

 このプロットボードを駆使することで、プレイヤーは物語を進めていくことになるようだが、「正しい選択肢はひとつしかありませんが、すべてを試して戻ることができます。そうすることでストーリーがより理解できるのです」とは、Remedyの担当者の言葉。

『Alan Wake 2』アラン視点のストーリーの一端が紹介。アランの自意識が産んだ“The Dark Place”を舞台に“光と闇”を巡る戦いが【gamescom 2023】

 ちなみに、章のタイトル名となっている“Casey”とは、FBI捜査官のサーガ・アンダーソンのパートナーであるアレックス・ケイシーのことを指すと思われる。ケイシーはRemedyの顔とも言うべきサム・レイク氏の表情をキャプチャーしており(ゲーム中のケイシーはサム・レイク氏そっくり! 当然ですが……)、本作でも重要な役を担うと思われる。サーガやアランとどのように関わっていくのか……。

 『Alan Wake 2』にて、ディレクターと脚本を担当するサム・レイク氏とクリエイティブディレクターを務めるカイル・ローリー氏が登壇してのQ&Aでは、いくつかの質問が飛び出した。

 「サーガとアランの切り替わりはストーリーで決まっているのか、それともプレイヤーがどちらかを選べるのか?」との質問には、“スペシャルブレイクルーム”があってそこで選択できるとのこと。最初は両サイドのストーリーをある程度まで進めると、あとはプレイヤー次第で切り替えられるようだ。「“スペシャルブレイクルーム”を通してスイッチして、ずっと最後までサーガ、またはアランでプレイしてもいいですし、切り替えながら進めても大丈夫です。最後にもう一度変更するので、サーガで最後までプレイしたら、最初に戻ってアランでプレイできます。両サイドをプレイしたら、それでフィナーレとなります」(サム・レイク氏)とのこと。

『Alan Wake 2』アラン視点のストーリーの一端が紹介。アランの自意識が産んだ“The Dark Place”を舞台に“光と闇”を巡る戦いが【gamescom 2023】

 また、「ストーリーは何層にもなっていて枝分かれしていきますが、最初に中心となるストーリーを書いて枝分かれさせていったのですか? ストーリー構築はどのようにアプローチしたのですか?」との質問には、「本当にたいへんな作業でした」とのサム・レイク氏の言葉には実感がこもる。「本作は何層にもなっていて、要素もたくさんありますが、ストーリー全体ができてから何度も書き直し追加しました。私たちにとって重要なのは、プレイヤーが理解でき、単独でプレイできる体験を作ることです。Remedyのゲームは前作にしても『CONTROL』にしても宿題は出しません。つながりや関わりがきちんと用意されていて、探索でわかることがたくさんあります。新しいプレイヤーでもアプローチしやすいゲームにしたかったんです」とのこと。

 個人的に興味深かったのが、『Alan Wake 2』に影響を与えた映画やドラマ。サム・レイク氏がよどみなく以下のタイトルを挙げていった。これらのタイトルを見ていると、『Alan Wake 2』の目指す方向性の一端も、少しは見えるような気がする。いったい『Alan Wake 2』ではいったいどのような物語が紡ぎだされるのか……。

■『Alan Wake 2』に影響を与えた作品群

  • さまざまな形のポップカルチャー
    -『ツイン・ピークス
  • スティーブン・キング
  • デビット・リンチの作品全般
  • TRUE DETECTIVE』シーズン1
  • 羊たちの沈黙
  • ハンニバル
  • 災厄の家
  • ヘレディタリー 継承
  • ミッドサマー
  • コーエン兄弟の作品 (風変わりでクレージーなユーモアとのこと)
  • タクシードライバー
  • インセプション
  • メメント
  • セブン
  • フィルム・ノワール全体
『Alan Wake 2』アラン視点のストーリーの一端が紹介。アランの自意識が産んだ“The Dark Place”を舞台に“光と闇”を巡る戦いが【gamescom 2023】
サム・レイク氏(左)とカイル・ローリー氏(右)。
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