コーエーテクモゲームスのガストブランドが贈る『アトリエ』シリーズ 。2023年7月13日発売予定の新作タイトル『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』(以下、『マリーリメイク』)は、1997年に発売されたシリーズの原点『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』を、現行ハードに向けて“フルリメイク”した作品だ。
オリジナル版の発売当時、RPGといえば“世界を救うために奔走する”という物語がオーソドックスだったが、本作は大胆にも“世界を救うのはもうやめた”というキャッチコピーを採用。落ちこぼれの錬金術士である主人公マルローネ(通称マリー)を中心に、キャラクターたちとの交流をハートフル&コミカルに描く展開が人気を博した。
また、“錬金術”をテーマに、スケジュールを管理しながらモノづくりや探索を楽しむという、シミュレーションとRPGが融合した骨太なゲーム性が、ゲーマーの心をしっかりとキャッチ。この『マリーのアトリエ』を原点として、『アトリエ』シリーズは、25年以上も続くシリーズへと成長した。
そして、『アトリエ』シリーズが周年を迎えるたびに、『マリーのアトリエ』には必ずスポットが当たってきた。ライザが主人公の“秘密”シリーズなどから『アトリエ』を始めた人の中には、「原点である『マリーのアトリエ』をプレイしてみたいな」と思っていた人も多いはずだ。
『マリーのアトリエ Plus ~ザールブルグの錬金術士』はスマートフォン向けに配信中なので、そちらをいまプレイしても十分楽しめるが、やはりシステムやUIなどの面で、最新ゲームほど洗練されていない部分があるのも事実。そんな人にまさにピッタリなのが、今回の『マリーリメイク』というわけだ。
本レビューでは、『マリーのアトリエ』の基本となる要素と、リメイクされても不変の魅力を語りつつ、リメイクによって向上したプレイアビリティにも注目して解説する。
5年間で、何に力を入れて楽しむかは自由
まず、『マリーのアトリエ』の基本をザックリ解説しよう。本作は、マリーが移動、採取、調合、戦闘と、何かしら行動することで日数が経過する仕様だ。そして5年という卒業試験までの制限時間(5年目8月30日まで)の中で、どんな活動をしてきたのか、その成果によってマリーの今後が決まるマルチエンディング方式を採用している。
そして、5年のあいだはどのように行動してもいいという、自由度の高さが本作の魅力だ。エンディングまで、あらかじめ敷かれたレールを進むということはない。最終的な着地点を見極めて、ガチガチにスケジュール管理して効率プレイを極めるのもよし、思うがまま調合や戦闘を楽しむのもよしだ。
なお、本作は何かと物入り。武器や防具をそろえて冒険の準備をするにも、仲間と冒険に出かけるにも、妖精さん(毎月、定額を払うとマリーの仕事を手伝ってくれる)を雇うにもお金がかかるので、まずは依頼をこなして、お金を稼ぐことを目標にしよう。そうするうちに、自然とやれることが増えていくバランスが絶妙だ。
エンディングの条件はさまざまで、特定の敵を倒す、錬金術の最高峰アイテムである“賢者の石”を作成するなど、遊びかた次第でマリーの未来が変わるため、何周も楽しむことが可能だ。なお、期限までになにかしらの成果を残せないといわゆる“バッドエンド”になるのだが、その場合も専用のエピローグとエンディングが用意されているので、一度は見てみることをオススメする。
ちなみに、バットエンドを見るための簡単な方法は、ひたすら寝続けること(笑)。ちなみに、“ひたすら寝ることでバッドエンド”を見るという手法は、シリーズのほかのマルチエンディング作品にも引き継がれている。
飛翔亭(酒場)の依頼達成を第一目標として調合に励もう
錬金術による調合を行う方法はシンプル。レシピが書かれた参考書を手に入れて、必要な材料を揃えるだけだ。
ザールブルグの街にある飛翔亭(酒場)では、アイテム調達の依頼を受けられるので、頼まれたものを調合・納品しよう。すると、報酬としてお金や名声(※)が得られる。
※特定のイベントを発生させるには、一定の名声値が必要
依頼は期限があるので、採取地(調合に必要な材料は、街の外にある採取地で集めるのが基本)との往復に必要な日数、採取地での探索に使う日数、調合にかかる日数すべてを考慮しながら、どの依頼を受けるか選ぶ必要がある。この日数計算がバッチリはまり、うまく納品できてガッポリ稼げたときは爽快!
なお、アイテムを調合する際、マリーのレベルや、必要な器材を所持しているかなどによって成功率が変わる。疲労が蓄積していたりすると成功率が下がってしまうので、ときにはベッドで休むようにしよう。
お財布と相談しながら仲間を雇い、探索をスムーズに進める
戦闘はコマンド入力型のターン制バトルで、こちらはオリジナル版と遊びの感覚は変わらない印象。『マリーリメイク』では戦闘中の早送り機能やオート設定が用意されたこともあり、1戦闘のテンポ感がかなりアップしていた。レベル上げをする際は、この機能がとても重宝するはず。
戦闘に参加できるのはマリーを含めた3人というのも、オリジナル版を踏襲している部分。基本的に、誰を雇うのも自由だが、もともと腕っぷしが強いキャラクターは、雇用費が高いのが難点。懐具合と相談しながら仲間を選ぶことも、ある意味『マリーのアトリエ』の醍醐味だ。
細かい調整によって遊びやすくなり、周回プレイもラクラク
さて、ここまでは、『マリーのアトリエ』がもともと持っていた魅力をおもにお伝えしたが、ここからは、リメイク版ならではのポイントで、心に刺さった要素をお届けしよう。
オリジナル版からのおもな変更点
- グラフィックを刷新
- 2Dアニメーションを実装
- 移動や戦闘をミニキャラクターで演出
- チュートリアルの拡充
- 操作性の改善(UIの利便性向上等)
- ミニゲームの操作性・ゲーム性の改善
- 調合の快適性、演出の強化
- バトルの快適性、演出の強化
- バランス調整
- 図鑑機能の拡充
- BGM 、SEのリメイク&追加
- クリア後の“おまけ(EXTRA)”の拡充
まず注目したいのは操作性の改善(UIの利便性向上等)。オリジナル版は、画面に表示されている情報が少なく、プレイヤーが知りたいことがすぐ確認できなかった。それが、リメイク版では調整され、状況が理解しやすく、サクサクとプレイを進めることができるように。そのため、複数のエンディングを見るための周回プレイもやりやすくなっている。
それ以外にも、依頼や実績の確認、妖精さんを一括管理できる“予定表”も見逃せない。本作で追加された実績は、たとえば“採取をした回数(30回)”を達成すれば、マリーのHPが+1されるというもので、積み重ねればマリーや仲間が強くなるため、積極的に達成していきたい要素だ。それがパッと確認できるのはありがたかった。
そして細かい点になるが、本作は街の住人と会話すると、“知識(図書館で参考書を読むために必要になるポイント)”を得られることがある。知識アップにつながる会話ができる場合、タウンマップのショートカットメニューに赤色の「!」が表示されるので、回収しそこねる心配がないのもうれしい。
また、図鑑の充実も見逃せない要素のひとつ。収集率が表示されるし、図鑑の項目にはそれぞれマリーの視点でのテキストが書かれているので、集めるだけでなく、読み込む楽しさもある。
最後に、グラフィックとサウンドについて。本作の発表当初、静止画でミニキャラの3Dモデルを見たときは、「等身大のキャラクターモデルではないのか~」とちょっと残念に思ったのは事実。でも、いざプレイしてみると、想像以上に世界観とキャラクターの持ち味がマッチ。このミニキャラモデルだからこそオリジナル版の雰囲気を踏襲できたのだと、“思い出が美しくなった”と感じられてよかった。
また、BGMもアレンジされているけど、これがまた原曲に厚みを持たせるアレンジで、オリジナルの旋律をそこなうことなくエンドレスで聴き続けられる魅力は変わらない印象だ。オプションでオリジナル版のBGMと切り換えられる点も、心憎い配慮かなと。
もちろん、ここまで解説したもの以外にも、チュートリアルの充実、攻略の道しるべとなる“イングリド先生の課題”、戦闘難易度の選択、5年間の時間制限をなしにする“無期限モード”の用意など、本作から始める新規プレイヤーへの配慮も充実。ぜひ『アトリエ』入門編として、未体験の人は手に取ってほしい。オリジナル版をやり込んだゲーマーは、クリアー後に追加される難易度“VERY HARD”での手応えある遊びにレッツトライ!