2018年12月6日にサービス開始した、スクウェア・エニックスとアカツキの共同開発によるスマートフォン向けRPG『ロマンシング サガ リ・ユニバース』(以下、『ロマサガRS』)。2023年6月にサービス開始から4.5周年を迎えたが、まだまだその人気は衰えず、数多くのユーザーがプレイを楽しんでいる。現在は4.5周年を記念したイベントや施策などを実施中だ。

 本記事では、開発・運営を手掛けるスクウェア・エニックスとアカツキのスタッフ陣へのインタビューをお届け。同作史上最大のアップデートVer.3.0.0の注目ポイントや、2024年2月・3月に上演が決定した舞台『SaGa THE STAGE~再生の絆~』などについてうかがった。

市川雅統氏(いちかわ まさのり)

スクウェア・エニックス所属。『ロマサガRS』プロデューサーであるとともに、『サガ』シリーズ全体のプロデューサーも務めている。(文中は市川)

とちぼり木氏(とちぼり もく)

スクウェア・エニックス所属。シナリオライター。(文中はとちぼり)

石原 光氏(いしはら ひかる)

アカツキ所属。『ロマサガRS』開発スタッフ。(文中は石原)

佐々木ジョシュア氏(ささき じょしゅあ)

アカツキ所属。『ロマサガRS』開発スタッフ。プロジェクトリーダーを務める。(文中は佐々木)

生放送の真っ最中、スタッフ全員が青ざめた……4.5周年記念放送の裏側

――まずは『ロマサガRS』4.5周年、おめでとうございます。

市川ありがとうございます。本当に、4年以上も続けられていることに驚いています。おかげさまで驚くことに、アクティブプレイヤー数は3.5周年のときとほとんど変わりません。少しゲームから離れた方もいれば、久しぶりに復帰してくださった方もいますが、全体的には維持できていると感じています。

――公式生放送“4.5周年記念スペシャル”では、まさかのトラブルが発生し、とてもたいへんだったように見えましたが……(※)。

※4.5周年記念スペシャル生放送は有観客で行われた。番組中にアップデートの完了をみんなで祝うはずだったが、トラブルが発生し、アップデートの延期を発表することとなった。

市川本当にご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。僕、生放送前に「今回何か悪いことが起きるのでは?」と、なぜか悪寒を感じていたんですよ。

石原生放送前に、何回も言っていましたね。

市川それでも、途中までは順調に進んでいたと思っていたんですよ。ですが今回、生放送の中に休憩時間を作ったじゃないですか。そのときに楽屋に戻ったら、スタッフたち全員の顔が青ざめていて。「市川さん、とんでもないことが起きました」と、休憩時間にじつは緊急会議をしていました。

――休憩するはずの時間なのに!

市川ただ、たった15分の会議で決められることも少なく……。生放送が続く中でも、いろいろと情報を精査して、「メンテナンスを0時まで延ばすか」など、いろいろな手を考えていました。生放送しながらも、内心ハラハラでしたね……。

とちぼりすごい、そんな風には見えなかった。

市川見直すと、たぶん顔がやばいと思います(苦笑)。最終的には“再度ストア申請を行い、メンテナンスをつぎの日まで延ばす”ことを決断しました。

佐々木4.5年の歴史の中で、『ロマサガRS』はメンテナンス時間が延期したことがなかったんですよ。いつも大体、予定時刻より早くメンテナンスが終わっているくらいだったんです。予定時刻になってしまうのも初でしたし、そこからさらにメンテナンス延期となってしまいました。これまでに経験がないことだったので、スタッフたちも混乱していましたし、それが有観客のイベントの最中に起きてしまったので、よりみんなバタバタしていたように思います。

市川しかもアップデート予定日のつぎの日は、じつは会社のビルが全館停電になる日だったので、つぎの日になると作業ができなくなってしまう状態だったんですよ。そうなったらマズいと、スタッフ全員ががんばってくれて、なんとかアップデートの準備を終えることができました。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

市川Pらが緊急の打ち合わせを行っているあいだ、MCのノブオさん(ペンギンズ)と、『サガ フロンティア リマスター』や『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』を手掛けた三浦宏之Pが新作Tシャツを紹介して場をつなぐなど、『サガ』チームの絆と連携が見られた4.5周年記念生放送。裏話を聞いてから再び見直すと、表情の変化などに気づけるかもしれない……。

挑戦を続けてきた『サガ』シリーズだからこそ……非常にチャレンジングな4.5周年アップデート

――そんな困難を乗り越えて、4.5周年のアップデートが行われました。今回、かなり大胆にゲーム全体の内容が変えたと思いますが、これだけ仕様を変更した狙いやきっかけを教えてください。

佐々木2022年の1月あたりから、仕様を変更しようという話をしていました。

とちぼりシナリオの面からも、そういう話をしていましたね。“フリーシナリオをどう『ロマサガRS』で具現化するのか”という課題があったので。

佐々木フリーシナリオって、スマートフォン向けゲームの反対にいる要素だと思うんです。それをどう表現するのか、スマートフォン向けゲームのシステムにどう組み込むのかが難しいところで。それを市川さんやとちぼりさんと話し合いながら決めていって、現在のようなシステムになりました。

市川『ロマサガRS』の長期間運営を目指す中で、「どこかで一度、ゲームの土台を大型に変えないと、運用ができなくなるかもしれない」と考えたのが、今回の大型アップデートのきっかけです。

 運営型のスマートフォン向けゲームを長く続けていると、アップデートを重ねていくうちにコンテンツが複雑になったり、遊びにくい要素やプレイされない要素が出てきたりします。それをいつ改善するのか、タイミングを図っていました。

佐々木もっと前から「土台を変えよう」という話はありました。4周年のタイミングで改革することも目指していましたが、一部のコンテンツを削除するのであれば、物語やイベントとの関係を考えると、(4周年時点では)どうしてもできなくて。「4.5周年ならばピッタリ合うだろう」ということで今回のタイミングで改革させていただきました。

とちぼりリアム編の途中でコンテンツが変わってしまうと、変なことになってしまいますからね。

市川これまでに、スマートフォン向けゲーム業界の人たちから「3年目が山ですよ」というアドバイスをいただいていたんですよ。ですので、3周年を迎えるまではとにかく必死に目の前のことに取り組んできました。長期的な運営のことは、それまでは正直なところ、あまり考えることができていなくて。

 “長期的に安定した運営を目指す”というのは、“安定して売れるコンテンツを作り続ける”ということだとも取れます。もちろん、それがふつうのスマートフォンゲームだと思います。運営もプレイヤーも安定して楽しめたほうがいいと思いますから。

 ですが『サガ』シリーズは、つねに“挑戦”を続けてきたタイトルですから、安定を求めるのは『サガ』らしくない。とはいえ、長期的に続けなくてはなりません。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

――そのために、ゲームの構造を見直しつつ、挑戦的なコンテンツを取り入れたのですね。ここまでやるタイトルは、なかなかないと思いました。

市川長期化する中で、たとえば“アップデート内容をある程度ルーティーン化する”というように、開発をラクにしていく方法もあると思います。ただ、それってプレイヤーの皆さんにもしっかり伝わっちゃうんですよ。開発はラクになって、ミスが起こりにくい構造になって、たしかに運営の“安定”は叶うのですが、それをプレイヤーが望んでいるのかは別です。

 開発側の都合が大きくなってしまう瞬間は、運営型タイトルですと必ず発生してしまいます。ですが、それが多々起きるのは絶対に嫌ですから。と、カッコつけて言っていますが、僕は正直今回のアップデート内容を見たとき「これマジでやるのか……!?」と、ビックリしていました(笑)。

佐々木「これ本当にやるの?」ってずっと言っていましたね(笑)。本当にギリギリまで、本当に形になるのかは不安もありながら設計していました。リリース後、なんとかプレイヤーの皆さんには喜んでいただけたようなので、素直にうれしいです。

――“フリーシナリオを実現すること”、“長期的な運営を目指す中で、安定を目指すのではなく挑戦がしたい”、とさまざまな理由があったのですね。今回、大胆にも削除されたコンテンツが多いですが……とくに、これまでのメインシナリオのクエストが遊べなくなることには、驚きました。

市川メチャクチャ反応が怖かったです。そもそも、僕はメインシナリオクエストの削除は嫌でした。いろいろ変えて、わかりやすく、遊びやすくなるのは全然いいんですよ。でも、「ポルカ編、リアム編のクエストを削除する必要があるのか?」と、すごく複雑で。やはりポルカたちにはすごく思い入れがあるので、思い出として、そしてメインシナリオクエストとしてしっかり残っていてもいいと思ってたんですよ。

とちぼり何を取るか捨てるか、その取捨選択は必ず話し合いはしていました。ただやはりコンテンツがゴチャゴチャしてしまっているので、精査しないといけないというのが、最終的にクエストの削除に至った理由でしたね。

佐々木もちろん、これまでのメインシナリオはゲーム内で閲覧できる(※)ので、物語が楽しめなくなったわけではありません。また、メインシナリオを通じてゲットできた分のジュエルは、ほかのクエストを遊ぶことで手に入るようになっています。

※ホーム画面から“ファーゴ”を選択し、ファーゴ内メニューで“シネマ”を選択すると、各メインストーリーを読むことができる

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市川こういう変化を導入すると、嫌だと思う人も絶対いるだろうと思い、生放送を通してユーザーの皆さんと対話していきました。スマートフォン向けゲームの大型アップデートって、ゲームを引退するいいタイミングになってしまうんですよ。「自分の好きなゲームではなくなった」と思って、辞めてしまう。ですので、ユーザーの声はとにかく聞いていました。

石原メインシナリオクエストを削ることに関しては、ユーザーの皆さんには、比較的受け入れられていたように思います。もちろん「寂しい」というご意見もいただいていましたが、「ストーリーが読めるのであればいいのでは」、「ジュエルがもらえるなら問題ない」と受け入れてもらった印象です。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

――“深奥の密林調査”(※ヒドラ装備を手に入れるためのクエスト)や“ツヴァイクバトルフェス”などといった、いまとなっては懐かしいコンテンツも一気に削除されました。

佐々木それらのコンテンツは、プレイヤーにとって、選択肢のひとつとして挙がる(画面に表示される)ことすらストレスになってしまうのではないかと思い、削除することにしました。選択肢が片手で数えられるほどならいいと思いますが、10個も20個もコンテンツがあると、どれを遊べばいいのかわからず、すごく遊びにくくなってしまいます。

 そのために、育成に必要な素材の種類を統合するなど、プレイヤーの選択肢をギュッと絞って、いろいろなコンテンツを削除させていただきました。

――長期運営をしていく中で、「昔は遊んだけれども、いまは遊ぶ意味がないからやらない」というようなコンテンツが、そのままずっと残っているゲームのほうが、圧倒的に多いと思います。影響が広範囲に渡るので、手を加えるのは恐ろしくもあると思いますし、削除するにもコストが掛かるでしょうし……。そこに手をあえて入れたことに、開発陣の努力と気合を感じました。

佐々木取捨選択をする項目について洗い出しをするだけでも、2ヵ月近くの労力が掛かりました。そこからどんな影響があるのか、消したコンテンツで得られたアイテムが、どういう仕組みで今後入手できるようにするのか。そういった整理だけでも、ものすごく時間を掛けています。

 たとえば、強化素材の統合など、「こんなにゲーム内のコスパをよくしていいのか」とスタッフ内でも議論を重ねていました。逆にいままでの方法のほうが「育成のしがいがある」という人もいるかもしれないですし。ですが、いざリリースしてみると「すごくゲームが快適になった」と評判で、よかったです。

 遊びやすくなったおかげで「面倒だったから裏能力値を解放していなかったけど、快適になったのでまた育成をがんばれるようになった」といった意見などもいただいています。プレイヤーの育成へ意欲も促進できたので、やってよかったと思っています。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

――強化・育成のアイテムはすべて新しいアイテムに変換されたうえ、これまでもらえていた報酬が、ほかのコンテンツで必ず手に入ることには驚きました。

市川ゲームバランスのことなどを考えると、一度リセットしてしまったほうがラクだと思うんです。ですがチーム全体で、「それは絶対にやろう」と決めていて。思い出の部分は仕方のないこととして、そのほかの部分で絶対にユーザーの不利益にならないようにしようと、チーム全体が団結していたと思います。

佐々木ゲームの売上などに響く部分ですので、議論があるのが普通かと思います。ですが、チームからそういった声が挙がることはなく、「絶対にプレイヤーに損をさせない」と全員が考えていました。

とちぼり断捨離というのは本当に難しいもので。そういうところで、市川さんは旧コンテンツの削除に最後まで抗っていた人だと思います。

市川ポルカ編リアム編もそうだけど、本当に嫌だったもん(笑)。「たまには昔に戻ってヒドラと戦いたい!」とか、思い出に浸りたくなるときってあるじゃないですか。

とちぼりそこで出たのが、「昔付き合っていた人との思い出の品を捨てられるか?」という議論でしたね(笑)。

市川そうそう。そして、僕はそれを捨てられないタイプなんですよ(笑)。ただ、実際に考えてみると「ヒドラとまた戦いたい!」と思っても、思うだけで実際は戦わないわけなんですよ。気持ちとしてはやりたいけど、行動にするかはまた別で。ですので、途中から「仕方ないか」と納得できるようになりました。

石原市川さんがそう思うってことは、ユーザーからもそういった声が出てきて当然だと思うんです。それもあって、プレイヤーの皆さんの意見は、本当に大事に聞いていました。もしユーザーから猛反発があれば、この施策はナシになっていた可能性が大いにあります。生放送などで事前に、今回のアップデート項目や方針をお伝えしたのにはそういった目的がありました。

佐々木ちなみに個人的には、自分たちが作ってきたコンテンツを削除していくというのは辛いことでした。たとえば“裏道場”や“最果ての決戦島”は、僕が作った企画です。あのとき努力して作ったコンテンツを、自分で不必要だと判断して捨てるのは、相当苦しかったですね。

――まさに断腸の思いだったと思いますが、その断捨離のおかげで、いまの『ロマサガRS』は新規プレイヤーも入りやすくなっているように感じました。これまではコンテンツが豊富すぎて、遊びきれないような印象もありましたから。

石原遊びやすくなりましたし、新規または復帰プレイヤーの皆さんへのプレゼントが、たくさんあります。いろいろあって超オトクにゲーム内アイテムがたくさんもらえるので、まさに遊びどきかと思っています。この4.5周年期間に絶対ログインしてほしいです。

――セレクトチケットなどもありがたかったです! さて、ここまではおもに削除した要素についてうかがいましたが、新要素……とくに“フリークエスト”についての手ごたえはいかがでしょうか?

佐々木手ごたえとしては、喜びと反省が半々です。うまくいっている部分は狙い通りだなと思うところもあれば、なかなか仕掛けがうまくいかなかったなと思う部分もあります。そこは改善していくべきポイントだと思っていて、いい意味で言うとまだまだ伸びしろがあるシステムだと思っています。

石原いただいたご意見には基本的にすべて目を通していますし、Twitterのツイートで“#ロマサガRS”などのハッシュタグを付けていただいたものも、すべて見ています。ぜひ今後もたくさんご意見をいただきたいです。

佐々木新しいシステムになったので、戸惑っているという声も届いています。ただ、それはある意味“未知なる世界を切り拓くワクワク感”にもつながっていると思います。自分で触って攻略していく楽しみや、ユーザーのあいだで「こんなのあったよ!」と会話もしてほしくて。

――マップの中には“行動回数5回以下で敵を倒す”など、かなりやり込みがいのあるお題もありますよね。

石原そこは正直、いろいろな賛否の意見をいただいています。やはり“ロマンシング”な『サガ』らしいプレッシャーのある戦いを楽しんでほしいのですが、尖りすぎている部分もありまして。そこは少し反省をしつつ、そのときの環境に沿って、やりがいのあるものにしていきたいです。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く
技覚醒に必要な素材が1個にまとまるなど、グッと遊びやすくなった。
『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く
フリークエストはこれまでにはない、『サガ』シリーズらしさにあふれた新たなコンテンツだ。

新主人公・シィレイには“ギミック”がある

――メインストーリーにおいては、新章となるシィレイ編が始まりました。これは、いつから構想があったお話なのでしょうか。

とちぼり構想自体は、リアム編がスタートしてから、わりとすぐに始まりました。リアムやアーニャの人気が高まったこともあり、現在メインシナリオを担当しているアカツキの凪ちよこさんと、「このまま予定通りにリアム編を終えるのは、少し寂しいね」という話をしていました。そこで、新章については「主人公は変わるけれども、その続きとなる話にしよう」という計画を進めていましたね。

佐々木シィレイ編は“リアム編から少しだけ時間の経ったところが舞台”というのは、最初から決まっていましたね。

とちぼり明言はしていませんが、人々がリアム編での事件を忘れたころ、を舞台にしています。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く
新主人公・シィレイ

――シィレイは現状、ゲーム中ではまだまだ掴めない人物ですが、なぜ琵琶を使う詩人という設定になったのでしょうか。

とちぼり詩人という存在は『サガ』シリーズの中で、特徴のひとつでもありますよね。また、ギミックを持つ存在でもあります。たとえば『ロマンシング サガ』の詩人だったり。シィレイにどんな“ギミック”があるのかは、今後の展開を楽しみにしていてください。個人的には、凪さんの好きなものがたくさん詰め込まれているキャラクター性ではないかと思っています。

佐々木琵琶を使う詩人になったのは、凪さんとの話し合いで生まれた要素です。『サガ』シリーズには多数の詩人が存在していますが、和風の詩人はいないですし、音楽を担当する伊藤賢治さんの和風BGMも多くはないので、「これまでの『サガ』シリーズにないものを、『ロマサガRS』でやりたい」と凪さんと話し合って決まったことです。

 正直、キャラクターデザインを担当された倉持諭さんのイラストを見るまでは、「琵琶の詩人のキャラクターってどうなるんだろう……?」と思っていましたが、イラストを見た瞬間、もう、「バッチリカッコイイ主人公になった!」と確信しました。

石原アカツキとしては、『サガ』シリーズの主人公制作に関われる、というのがすごくうれしかったです。ほかのゲームで主人公を作るなら、きっとスクウェア・エニックスさんのスタッフを中心に作ると思うんですよ。それをアカツキのスタッフを中心に作らせていただけたのが、うれしかったですし、感慨深いです。

――ネタバレにならない範囲で、今後のシィレイ編は、どのような展開になっていくのかを教えてください。

とちぼりこれまではカットシーンや会話シーンが中心でしたが、フリークエストが導入されて遊びの幅が広がったことにより、より演出的にも新たな見せかたをできると思いますので、楽しみにしていてください。

佐々木いままでよりも、ライトな物語になっているかと思います。更新の方法も変わって、更新頻度が上がります。さすがに毎週更新というわけにはいきませんが、隔週更新くらいの頻度になると思っていただければと。

とちぼりこれまでは、「次回をお楽しみに」と物語が区切られた後、大型イベントなどが挟まると、つぎのメインストーリーを読めるのが1ヵ月先とかになってしまい、「前回どんな物語だっけ?」となりがちでした。そこは大きな課題だったので、今回は頻度を上げています。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

ポルカ編のその後を描く、舞台『SaGa THE STAGE~再生の絆~』

――新たな舞台『SaGa THE STAGE~再生の絆~』も発表となりました。2020年に発表された舞台『SaGa THE STAGE ~約束のマルディアス~』は、残念ながらコロナ禍により制作中止となってしまいましたが、その後どのように『SaGa THE STAGE~再生の絆~』へつながったのでしょうか。

市川世界的にコロナ禍にみまわれ、その影響で舞台『SaGa THE STAGE ~約束のマルディアス』は中止となりました。ですが、『サガ』を舞台化したことで作った種火はどうしても消したくなくて。いろいろなタイミングで「やっぱり、またやりたいよね」という話はしていました。

とちぼりそこから、だんだんと舞台ができるような情勢になってきて、「ようやく現実的に舞台化できそうだぞ」となりました。とはいえ、実際に「じゃあやりましょう」となったのは、本当に今年の頭くらいの話です。

市川本当にそこは情勢を見て、というところでした。

とちぼり本当にやれるのか? というのをジワリジワリと見て。『SaGa THE STAGE ~約束のマルディアス』が中止になってしまったショックから立ち直る時間も、正直必要でした。

市川約束のマルディアス』は、『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』と絡めた展開も考えていた舞台なんですよ。僕たちとしても「こんな終わり方があるんだ」とショックで。舞台は、正直1公演がなくなるだけでも赤字になっちゃうような世界なので、あの辛さは本当に身に染みました。

とちぼり舞台は本当に生モノなので、座組や主演の座長が決まるか決まらないかで、内容も大きく変わります。たとえ過去に一度決まっていたとしても、改めてその役者さんに受けてもらえるかどうかは、わからないです。とくに主役を張れる方を押さえられるかどうかは、この世界では本当に難しいんです。

市川そんな中で、なんとかつぎの舞台化が実現できて、本当にうれしいです。

――ポルカ編を描く舞台とのことですが、具体的にどの部分を描いていくのでしょうか?

とちぼり『ロマサガRS』を遊んでいない人でも楽しめる舞台にするつもりです。包み隠さず言うと、第一幕はイゴマール戦までを描きます。第二幕は、現在配信中のイベント“再生の絆ZERO-後編-”で描いているように、ポルカたちがジョーを探しに、別世界へ行きます。

市川つまり舞台では、ポルカ編と、ポルカたちのその後を描きます。もちろん、ポルカ編を遊んでいたほうがより楽しめるはずです。いま『ロマサガRS』は、ダウンロードするだけで、誰でもポルカ編の物語を全編見ることができますので、ぜひ見ておいてほしいですね。

『SaGa THE STAGE~再生の絆~』公式サイト
『SaGa THE STAGE~再生の絆~』チケット1次先行抽選販売受付ページ

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

――舞台化が決まったのが2023年の1月ということは、この6月に実装されたイベント“再生の絆ZERO”は、かなり急ぎで用意されたイベントなのでは……?

とちぼりはい。超急ぎで作りました(笑)。

佐々木とちぼりさんの制作スピードもそうですし、こんな速さでイベントができるんだなと、僕たちも驚いてました(笑)。4.5周年×舞台化の発表でゲームを盛り上げることは決まっていましたが、実際の作業は、かなりの急ピッチでしたね。

石原いやもう「こんな締め切り、とちぼりさんに本当に発注していいのか?」みたいな、無茶なスケジュールでしたね(苦笑)。

とちぼり“再生の絆ZERO-後編-”を見た方は、「こんないいところで終わるのかよ!?」と思われるかもしれませんが、その続きが舞台で見れますので、ぜひお待ちください。

市川ポルカ編の続きを描くというところで、「舞台じゃないと見れないの? ゲームには実装してくれないの?」と思われる人もいると思います。ただ、もしゲームにも実装した場合、舞台を見に来てくだった人が「せっかく見に行ったのに……」と不満に思われるかもしれません。これはとても難しいところですので、今後も皆さんと対話しながら決めていきたいと思います。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く
イベント“再生の絆ZERO”を通して、舞台のシナリオがどのようになるのかわかるようになっている。常設イベントなので、いつでもプレイ可能だ。

『サガ』の今後の展開は……!?

――今後の『サガ』シリーズ全体についてお聞きします。来年にはシリーズ35周年を迎えますが、そちらに向けて新情報はありますか?

市川すでに発表しているものとしては、2023年10月~11月に東京・福岡・大阪の3都市で開催される“ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023”(7月1日10時よりチケット一般販売開始)があります。そして2024年2月~3月に舞台『SaGa THE STAGE~再生の絆~』を公演します。それ以外にも、『サガ』シリーズ35周年に向けていろいろと仕込んでいる最中なので、ぜひ続報をお待ちいただければと。

 もちろんその間にも、『ロマサガRS』もどんどん盛り上げていきますので、ぜひそこも、お楽しみにお待ちください……(とても疲れた表情)。

佐々木ですね……(とても疲れた表情)。

石原はい……(とても疲れた表情)。

とちぼり全員結局、忙しいんですよね(笑)。

一同 (笑)。

市川いやもう、不思議ですよね。いや僕たちって、幸せなんですよ。安定して長期的運営を続けられるスマートフォン向けゲームが多くない中で、『ロマサガRS』はユーザーの皆さんのおかげでこうやって4.5周年を迎えることができました。すごく幸せなのに、なぜかみんな飲み会に行っても「今日だけは……今日だけは楽しもう!」みたいな雰囲気を持っていて。ヒットしているゲームのチームの雰囲気じゃないんですよ(苦笑)。

佐々木やはり毎回チャレンジしているからだと思います。今回の改革もドキドキでしたし、毎回こうです。また、喜ぶヒマもなくつぎの施策をみんな考えているからこそ、そうなっているんだと思います。もちろん、幸せですよ(笑)。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く

――では最後に、皆さんからファンへ向けての、メッセージをお願いいたします。

とちぼり今回の舞台は、副題に“~再生の絆~”と付けました。この言葉から、コロナ禍で舞台が途切れたことを連想するかもしれませんが、“再生の絆”という言葉は、それよりも前、『ロマサガRS』立ち上げ時から存在していたものです。それがさまざまな出来事を経て舞台になるということで、“~再生の絆~”という言葉が持つ意味を、みんなで感じていきたいですね。ぜひご期待ください。

佐々木『ロマサガRS』は今後もどんどんアップデートを予定しています。皆さんが「こういうのがあったらな」、「ああいうのが欲しい」という要素も、追加していけるようにがんばります! バージョンアップをワクワクしながらお待ちください。

石原今回のアップデートをフラットに見ると、よくなった要素もありますが、変わりすぎて戸惑いを生んでいる部分もあると感じています。喜びながらも反省点もありますので、今後もプレイヤーの皆さんが損をしないゲーム作りを心掛けていきます。もし今後、「プレイがうまくいかない」、「問題があった」、「こう思っていたのになんだか裏切られた」と感じたら、ぜひそういったお声を寄せていただけるとうれしいです!!

市川『ロマサガRS』は、本当にプレイヤーの皆さんのおかげでヒットしているゲームだと思っています。よく「なんでヒットしているの!?」とほかのゲームクリエイターから聞かれたりするのですが、特別なことはとくにしていなくて。たとえば「コラボします」と言っても、自分たちで舞台やゲームを作って、それと絡めることで「コラボします!」と言い張ってるだけですし(笑)。

 主人公も変えてきていますが、正直、変えなくてもいいじゃないですか。人気のあるキャラクターがいるなら、それを出し続ければいい。自分たちでも「何をやっているんだ」と思ってはいるのですが、新しい楽しさや驚きを『サガ』らしく、突き詰めていった結果がいまなんです。

 また、プレイヤーの皆さんと対話できる環境が作れたのも大きいと思っています。生放送もそうですし、僕自身がTwitterで意見を募ったこともあります。これからも、何か問題があったら僕へ直接リプライを送っていただいてもかまいません。アカツキさんの中には、Twitterの意見をずっとチェックしているチームもあります。そういったことに、真摯にチャレンジしていったからこそ、きっとプレイヤーの皆さんがついてきてくださったんだと思います。

 舞台もオーケストラもゲームも、どうすれば皆さんに喜んでいただけるのか、驚いていただけるのか、チャレンジを続けていきます。ぜひ今後も『ロマサガRS』ならびに、『サガ』シリーズをよろしくお願いいたします。

『ロマサガRS』4.5周年記念インタビュー。プレイヤーに損をさせなたくない運営方針と、『サガ』らしい挑戦の両立。舞台ではポルカ編のその後を描く
「ぜひ幸せそうな笑顔で!」という掛け声とともに撮らせていただいた1枚。