2020年11月実施のマッチング負荷テスト以降、大きな発表もないまま鳴りを潜めていた『ブループロトコル』。バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオが共同開発するオンラインRPGは、突如として沈黙を破った。2022年11月4日のことだ。

 およそ2年間、ゲーム内容に関する公式発表はゼロ。このあいだに何があったのだろう。

 じつはファミ通.comでは2022年12月15日にインタビューを行っていた。公式番組“ブルプロ通信”出演のために開発・運営の主要メンバーが集まるということで、配信終了後に10分ほど時間をもらえることになったからだ。

 果たして、彼らには言いたいことが山のようにあった。たった10分で収まるはずがない。最終的にどれだけ喋ったのか、推して知るべしである。

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“ブルプロ通信”#6より。

 と、本来なら2023年1月上旬にこの記事を公開するつもりだったのだが、1月14日から実施されるはずのネットワークテストが延期した関係で、タイミングを逸していた。

 それでも、「結局、開発・運営チームは何をしていたのか」を知りたい人は大勢いるだろう。6月14日の正式サービス開始を間近に控えたいまだからこそ、公開しようと思う。

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“ブルプロ通信”#6より。

下岡聡吉(しもおか そうきち)

バンダイナムコオンライン『PROJECT SKY BLUE』エグゼクティブプロデューサー。文中では下岡。

鈴木貴宏(すずき たかひろ)

バンダイナムコオンライン『ブループロトコル』運営統括ディレクター兼プロデューサー。文中では鈴木。

福崎恵介(ふくざき けいすけ)

バンダイナムコスタジオ『ブループロトコル』開発統括ディレクター。文中では福崎(※崎はたつさき)。

クローズドβテスト(CBT)=ほぼ完成品というイメージとのずれ

――ネットワークテストの直前まで来ました。いまの感想や溜め込んでいたものを教えていただけますか。

下岡では、古い順に言っていきますか。僕は最初からこのプロジェクトに関わっていますので、えーっと何年だろう。

――週刊ファミ通に掲載された海外展開に関するインタビューでは8年前からとありましたね。

下岡それくらいですね。僕が入社して、最初の自分の企画が『ブループロトコル』ですから。まったく同じ時期に企画が始まった『アイドリッシュセブン』は開発期間1年で今年7周年を迎えていますが、『ブルプロ』は開発期間8年。配信でも言いましたけど、クローズドβテストの後がいちばんきつい時期でした。

――何がそんなにたいへんだったのでしょうか。

下岡作り直したんです。

――は?

下岡開発の過程は強い手応えの連続なんです。α(テストの実施)を発表してから期待値はすごく上がっていましたし、ワールドワイドも含めて着実に階段を上っていって。自分たちとしては、CBTでは本当に文字通りのクローズドでテストを行って、サービスインのためのサーバー挙動やユーザーさんの生の行動データをいただいて本番に活かすつもりでした。いろいろ仕込んでいたんですよ。こういうテストをやろう、あれも試そうって。

 何と言いますか、αってやっぱりαなんですよ、うん。もともと未完製品ですし、「えいや!」で決めたところがたくさんありました。後先考えてない部分も多かったんですよね。

福崎後先考えていないから「こうしておけばいいんじゃない? サーバー費とか置いといて、こうしておけばいい感じになるよね」って。

――なるほど。あくまでテストなわけですもんね。まずはやりたいことを試したかった、と。

福崎「サーバー費や現実的な側面も考慮するとこうなるよね」が、CBTなんですよ。そこがダメだった。

一同 笑

――つられて笑ってしまいましたが、笑えないことなのでは?

鈴木CBTはあまりいい評価を得られなかった、というのが正直なところです。ざっくり説明すると、αテストの段階では採算度外視で作った部分があって、そのままだと通信の負荷などが大きくなる。CBTでこの辺りに対応できる仕様に変更したら、ユーザーの皆さんのストレスが高い仕様になってしまった、みたいな感じです。

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下岡遊びの感覚に“ずれ”みたいなものがあって、このままだとよくないから「やり直しましょう」と舵を切ることにしたんです。やっぱりつらかったですよ。期待値は高い。チームもすごくいい状態。「よし行けるぞ」という手応えの中で、作り直す判断をしないといけない。ふたり(鈴木さんと福崎さん)も含めて、チームも全員がんばってくれたからいまがあるんですけど、あのときはやっぱり。

鈴木そうですよね……。チームのみんなに何て説明するかだけじゃなくて、外部の関係者もたくさんいらっしゃいますので。

下岡海外の方々にも応援していただきました。チームも「ファンのためにできることを全部やろう」とまとまって、そういう流れの中で、再始動を迎えているのはすごくうれしいです。

――5年かけて作ってきたものを作り直すわけですから、そうとうきついだろうと想像できます。そこまで何があったんですか?

鈴木我々はゲームを“継続事業”として考えなければいけません。オンラインゲームなので、事業を通して利益を得ないと、ユーザーの皆様にサービスを提供し続けることができないですから。そうならないために、収益とコストのバランスを考えるんですけど、さっきお話しした通り、αテストの時点ではそういうことを考えずに「楽しいことやろうぜ」が先行していたんですよ。

――αテストの評判はよかったという記憶はあります。

鈴木αテスト後にデータを確認したら「サーバー費やばくない?」と。この仕組みだと、いい作品はできるかもしれないけど事業として継続性はないのでは、という現実が見えてきました。何とかしよう、ちゃんと運用コストを考慮しようとなると、それがゲーム開発にとっての制限になってしまうんです。

 制限があるからおもしろさを生み出せることもあれば、 制限が強すぎてユーザビリティに影響を与えることもある。どちらかと言うと、CBTはユーザビリティを犠牲にしたものになっていました。僕らも“ユーザービリティを犠牲にしている”と自覚はありつつも、「コストあるしな~」みたいなところがあって、そこをこう……最終的には「仕方ないから(CBTは)これでやってみよう」となったのが実際のところなんですね。

下岡ぎりぎりを見極めたかったんですよ。CBTでぎりぎりを狙いすぎたところもあって。やっぱりテストだから全部試したいじゃないですか。

――そのためのテストですもんね。

下岡テストだから全部試したい。その中でぎりぎりを見定めようとしたのがCBTだったんです。ですけど、ある種、そこでゲームとして評価されてしまった

――いまは“CBT=ほぼ完成品”というイメージが強いですからね。開発・運営側はあくまでテストとして考えているのに、ユーザーには完成品として受け取られてしまったと。

鈴木言い訳になってしまいますが、そういう面もあると思います。

下岡こちらの思いとしては「この瞬間の、ゲームの評価ではなく、おもしろさとコストのぎりぎりのバランスを皆さんの行動データで確認しておりまして……」という感じでした。とはいえ、後から言っても仕方ないですからね。あのときはあれがベストだったと思っています。CBTという言葉の使いかたも含めて。

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下岡そのときに福崎さんが「直すんだったらしっかり直したい。考えるんだったらここまでちゃんと考えたい」と言ってくださって。じゃあもう、気合を入れて全部やろうと。最終的にはこういう判断がゲームを長持ちさせることになりますから。

福崎ここまでの大改修は、そうそうあり得ない話なんですよ。CBTまでやったのにもう1回やり直しましょうって。ユーザーさんからの評価がやばいという危機感もありつつ、 開発スタッフの中でも「このままで大丈夫なのか。本当はこうした方がいいんじゃないか」という葛藤はありました。

 でも、トータルで考えると、コストの話もわかるし、当初目標としていた開発期間に猶予もない。いったん強引にでもサービスを始めて、徐々に直していくしかないんじゃないの? という空気感でした。

納得がいくまで開発を続ける。経営層も含めた関係者の本気

福崎正直、(評判が悪い仕様のままサービスインになっても)しょうがないよなという逃げの気持ちもありました。でも、下岡さんと鈴木さんが「しょうがなくないでしょ。ちゃんとやろうよ」と言ってくれたんです。

 いまから延ばすなんてありえないと思っていたところに、「えっ、ありえるの?」という話が来た。だから(再開発に入ることに対して)覚悟が決まりました。どれくらい延ばしていいかと聞いたら、「ちゃんといいものができる確証が出るまで締め切りは決めない」みたいなことを言うもんだから。

――そんなこと言ったんですか!?

鈴木これマジなんです。それをよしとしてくれた会社の経営層もすごいなと思います。ほんとに。

福崎予算は青天井(上限なし)みたいなこと言ってませんでしたっけ?

――えー! こわ!

鈴木いやいやいや! 現実的にはそんなことないですからね! ただ、近いことは言われました。経営層にもそれくらいの期待と覚悟があるから、開発側もしっかりやろうと。腹をくくりましたよ。

下岡1回殻を破らないといけないみたいな空気はチームの中でもあったんです。たとえばですけど、「CBTはお客様の評判があまりよくなかったよね、運営しながら直していこう」なんて考えはよくないですよ。Free to Play(基本無料)が多い昨今ですから、離れていくのも早い。言葉は悪いですけど“リリースしたら即死”みたいなことも容易に想像できてしまう。これをこのまま書くかどうかは別として(笑)。

――書きますけどね。

下岡書くの!? いいけども。当然、最悪のケースも頭をよぎりました。これまでの事業的な投資が3ヵ月くらいで終わって、その後にだいたい1年くらい運営して、じゃあサービス終了ですみたいなことが、本当に自分たちが目指していたことだったのか。『ブループロトコル』というフラッグシップのゲームを作り、IPを創出し、バンダイナムコの代表的なコンテンツにする。そう掲げていたものとは、あまりにも掛け離れていました。そうするわけにはいかないわけですよ、やっぱり。

 そのために、どこを直したいのか開発チームの考えを聞くところから始まって、そこに(プレイヤーからの)フィードバックも全部含まれていることを確認して、それを作るのにどれだけかかるか計算して……。

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福崎下岡さんの覚悟はすごく伝わってきました。だったらこっち(開発側)も覚悟を決めようと、最初にCBTのレポートを精査したんです。何がだめで何がどうなっているのか、ぶわーっと全部割り出す。

 で、これらをどういう方向にするべきか、1回考え直すから1ヵ月くれみたいな話をして、ひたすら考えました。その1ヵ月間は開発スタッフは何もできないので、つぎの方向性が決まるまでひたすらCBTバージョンをプレイしてもらいました。思うところがあったら忖度なしで全部上げてくれと。

下岡あそこで全員でユーザー行動レポートを読み上げながらプレイしたのもよかったです。基本に立ち返れた。俺、あれやったもん。CBT版レポートと称して7時間みんなにZoomで配信。ここが嫌、ここが嫌って。

福崎1ヵ月くらいでその辺をどうしていくかを全部まとめて、そこから実際の仕様に起こすのに2~3ヵ月くらいかかるんです。そこまでやって初めて残りの開発期間がどれくらい必要か割り出せるという。

鈴木グラフィック類とか、再利用できるものもあるんですけどね。ゲームのサイクル構造(※)はほぼ作り直しでした。

※サイクル構造:戦闘→アイテム収集→装備強化→戦闘……のような、基本的なゲームの流れのこと。

下岡お待ちいただいていた皆さんからすると「2年間も何やってたの?」みたいな疑問もあると思います。武器の強化を例に挙げると「融着からプラグに変わりました」だけに見えるかもしれないですけど、もともとのシステムを全部捨てて新システムに入れ替えています。

――構造はたいして変わっていないように見えるけど、利便性を高めるためにいちからシステムを作ったということですか。

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下岡ここまで作ってきたゲームバランスもありますしね。全体のバランス調整もやり直しになるんですよ。

福崎「コアなプレイヤーだったら1日にこれくらい、1週間にこれくらい遊ぶだろう」みたいなセグメントを決めて調整するんです。それが、たとえば融着の話で言うと、バトルイマジンを作るにはこれくらいかかります、だから武器を理想の強さにするにはこれくらい時間がかかるよねっていう計算が全部吹っ飛びました。

――もはや笑うしかない。

下岡まー、テストプレイめちゃくちゃしたよね。

鈴木しましたねー。計算もいっぱいしました。

福崎プレイ時間の計算、それに基づいた難易度計算、その辺はゼロからですね。いちばん大きかったのはゲームサイクルのところのやり直し。それは前回と今回のブルプロ通信(#5と#6)でも簡単に説明しましたけど。

――アイテムやバッグの構造に関連してプレイする時間が変化するから(※)、それに関連して調整していると。

※バッグの構造:多くのオンラインRPGでは、戦闘フィールドと街を行き来する。バッグ容量に制限があると“一定のタイミングで街に戻って預り所を利用する”という行為が発生するため、キャラクターの居場所が分散される傾向にある。

下岡CBTをやったことで、「思ったよりもこうだね」みたいな気づきはたくさんあったんですよ。いただいたフィードバックの裏側も見えてきた。たとえば……そうですね、サーバーの負荷が変われば費用も変わるわけです。そういった契約の交渉も含めて、見えてきたとこがある。これを書くかどうかは別として。

鈴木サーバー費の調整とかですね。生々しすぎるな、この話!

――書きますけどね。

下岡書くの!?

どこを作り直したのか。全部。

下岡CBTだけでは見えてこなかったものもたくさんあります。運営していけばコストはかかり続けていきますよね。それが、たとえば工数がたくさんかかる仕組みだったり、サーバーにお金がかかり続けるのであれば、できるだけコストダウンさせる仕組みを入れることも含めて企画(や仕様)を考える。

 やってなかったわけじゃないんですけど、CBTでその辺がひと皮むけたような気がします。本来的なCBTの意義以上になりました。本当に当時ご協力いただいたプレイヤーの皆様、レポートをいただいた皆様には大きな感謝をしております。

鈴木実際のデータが見えたことでより深く考えられるようになった、というのはあります。サーバー費用の計算には、フィールドやID、街といったエリアに、何人が何時間どれくらいいるのかみたいな情報が必要なんです。じゃないと正確に割り出せない。

下岡ただの大型テストだと、どうしても机上の空論になりやすいんですね。

鈴木机上の空論はあってもリアルなデータがない。「本当にこの数字は正しいのか」という疑問はあって、実際にCBTをやってみたら、想定とは異なる部分もありました。

 CBTはサーバー費を抑えるために遊びやすさを犠牲にしたところがあったので、プレイフィールがよくなかったという意見が多く見られました。やり直すんだったら、まずこのコストを何とかする方法を考えて、解決できてからユーザビリティが高い仕様を作ろう。最初はサーバーチームと福崎さんとほぼその話。ずっと。

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福崎最初の1週間はひたすら合宿でした。何がどうだめでこうできないの? って問い詰めるところから、みたいな。

鈴木思い出して盛り上がっちゃうな、この話(笑)。

福崎ゲームサイクルはわかりやすいので目立ってると思いますけど、ほかは何を直したのか見えにくいですよね。バトルとか。たぶんネットワークテストをされた方も明確にはわからないと思います。何やってたかというと、全スキルとエネミーの全行動の見直しです。

――全部!

福崎これは絶対言っとかなきゃいけないと思ってました(笑)。バランス調整のし直し、キャンセルフレームの見直し。エネミーは行動が全部バラバラ。エネミーごとにだいぶユニークで動いてたんですよ。モーションの起こりを見て、これくらいで避けたら大丈夫だよねっていうルールがなかった。 動きに合わせて何となく避けられるくらいの幅に収まるように、すべて調整し直しました。

鈴木攻撃の予兆を見て回避できないとか、プレイヤーにとってストレスにつながりますからね。

福崎それと、エフェクトや背景班もすごいんですよ。サービス開始が1~2年延びるとなると、いまのままだとそのときの最先端に追いつけないからということで、全部の描画を見直しました。Amazon GamesさんのPV(※)が出た後に「絵がきれいになってない?」って声があったんですけど、合ってます。きれいになってます。

※Amazon GamesのPV:The Game Awards 2022にて、Amazon Gamesが欧米地域のパブリッシングを担当することが発表。新たなPVが公開された。

Blue Protocol - World Premiere Trailer | The Game Awards 2022

――修正点、もうほんとに全部じゃん!

福崎そうなんですよねえ。びっくりしたのが、これだけ延びちゃいますよって話したときに、あのー……。

――どうしました?

福崎本音で言うとですね。メンバーはここまで5年とか開発を続けているじゃないですか。「あとどんだけあんだよ」ってうんざりしてプロジェクトを抜けたがる人も出るんじゃないかなと心配だったんです。だから俺、最初に(リリースを)延ばせるって話を聞いたときに、1回噛みついたんですよね。「もちませんよ」って。

――そうか。体力的にも、精神的にも。

福崎ずっとものが出ないままやってますから。それなのに、延びることを伝えたら「じゃあ、ここ直しますね」。みんなすごいですよ。

鈴木実際はやりたいことがあったけど、リリース目標があったから言い出せなかったんでしょうね。

福崎ものによってはパッと見てわかる修正ではないと思います。ちょっとした手触りだったり、何かやりやすくなっている、みたいな。そういう見えないところまで開発メンバーが単念にやってくれたことは本当に感謝しています。本当にすごい。俺だったらキレてたかもしれない。

鈴木最後のひと言がなかったらすごくいい話で終わったのに。

福崎(自分は)ディレクターとしてチェックする立場だけど、プランナーだったらやばかったですよ、きっと。

下岡エフェクトだったら視認性が大事ですよね。システム的に切る切らないみたいな判断もあるんですけど、画作り的にどうすればエフェクトが重なったとしても見やすくなるかとか、そういうことを考えてやってくれた。

 (敵との交戦時の)リアクションの幅も広がりました。敵を踏み台にして強襲攻撃したり敵から吹っ飛ばされたら受け身を取ったり、オンラインゲームという範囲内でできる限りのことを、いわゆる“アクションRPG”として期待されるレベルまで持ち上げていこうと。

――ひとつ直すとほかに調整することが出てくるのが当たり前ですよね。そこにバンダイナムコスタジオさんのチームは真正面から立ち向かって行った。

下岡これはもう勇者です。だって膨大だったもん。1ヵ月かけて方向性を決めて2ヵ月かそれ以上かけて仕様に落とし込む。資料をたくさん書かなきゃいけないものもありますし、細かいものもまとめて全リストを作る。最初にそのリストをもとに入れる/入れないの判定会も実施して、入れないものを除いたところで、もうそのリスト見たら「うっ……!」ですよ。

福崎上に報告したときにドン引きされましたからね。

鈴木……!

――鈴木さん、めちゃくちゃ笑うじゃん。

下岡下敷きはあるけど、作り直しじゃんっていうね。

福崎ほぼ作り直しになると開発の現場側でも話していて、でもその覚悟でやるしかない。スケジュールはいったん気にするなと言われたから、どこまでやるべきか。

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鈴木もちろん、若干ブレーキはかけましたけど。

福崎ここまでやらないと満足できないというラインと現実的なラインを見定めしながら取捨選択して詰めていきました。

下岡つぎに浮上するべき時期をいつにするか、とかね。わりと早い段階で、どうしてもネットワーク関連で試したいことがあったから、そのテストをして。そこからは自分たちが自信が持てるようになるまで浮上しないでおこう。

俺が信じるお前を信じろ

福崎前回のブルプロ通信で、2年近く沈黙してた理由として「半端なところで見せたくなかった」というのは話しましたよね。もっと踏み込むと、半端なところで見せたくなかったというより見せられるものがなかったんですよ。

――どういうことですか?

鈴木作り直してるから、ちょいちょい出していけるものもなかったんです。出せたとしてもテキストです。説明文くらい。

下岡こうするつもりでいますと言ったところで、CBTのフィードバックテキストと何が違うんだって話で。

鈴木ゲームはパーツ単位で開発していくんですよ。最後にパーツをガチャンと集めて、急激に進んだように見える。ですので、そこまでの開発途中のものでお見せできるものと言っても「何があるの? 」ってなっちゃって、これは沈黙するしかないなって。

福崎中途半端なものをお見せして変な憶測が広まるのも嫌だったんですよ。申し訳ないけど、黙るしかない。

下岡本当に英断だったと思います。

鈴木「今日の昼飯なんだった、みたいな配信やる?」という話をしてましたからね。雑談でSNSを運用するかどうか、みたいな。

下岡生きてるってことをどう伝えようかって。

――ファンの皆さんは待っていてくれましたよね。

下岡それは本当にありがたいです。今日の配信はとくに感じました。

――新しいゲームが出てすぐにサービス終了することもあるご時世ですから。1年、2年と待ってくれる人は温かいと感じます。

鈴木こちらが情報を出せていないのに、ずっとイラストを描いてくださる人もいらっしゃいますね。CBTのときに撮りためた画像や映像を出してくださったりとか。

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下岡やっぱりお礼を言いたいですよ。自分たちは情報を発信できていないけど、「生きてるんだよな、お前はまだがんばれるんだよな」と期待を抱いてくださっている感触はあって。後押しと言いますか、一種のそのー……共犯者?

一同 「いやそれは違うでしょ」と総ツッコミ

鈴木遊軍的な感じですよね。

下岡「いろいろ言われてるけど『ブルプロ』っておもしろいんだぜ、始まったらやろうぜ」みたいなことをアピールしてくださる方がいる。本当に励みになりました。

 海外チームからのエールも響きましたよ。Amazon Gamesのマイクさんは「ふつう、“やり直すならキャンセル”となるゲームが多い。だけど、やり直して立ち上がるチャンスが与えられるということは、それだけですばらしいこと。おめでとう。泣いたらまた立ち上がろう」みたいに言ってくださって。最後までうち(バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオ)のクリエイティブを信じます、という言葉が本当にうれしい。

福崎マイクさんは最初から『ブルプロ』のポテンシャルを信じてくれているんですよ。「これは絶対にいいから、ぜひいっしょにやりたいんだ」って。CBTで、言いかたは悪いですけどコケた後も、ずっと応援してくれている。(情報出しを止めているから)ユーザーさんの反応はこの1年半のあいだはもらえないわけじゃないですか。マイクさんがまた熱いことを言うんですよ。「Amazon Gamesが信じるタイトルなんだから自分たちも信じようよ」って。

下岡「俺が信じるお前を信じろ」状態です。

――完全に『天元突破グレンラガン』。

下岡「開発としてはサービスインに向けたフェーズに入っている」と前回の放送(ブルプロ通信#5)で言いましたけど、そこは終わっていまはバグフィックスと調整段階。その調整が大事なのですごく時間をかけてやってるんですけど。いよいよファンの皆さんに見ていただける、わくわく感はあります。

※編注:このインタビューはネットワークテスト実施前の2022年12月15日に実施している。その後にテスト延期の発表があり、実際の開催は3月31日~4月2日。テストの結果を経て、6月14日よりサービス開始となることが発表された。

下岡作る側の努力って(プレイヤーには)関係ないじゃないですか。見捨てようと思えばいつでも見捨てられるわけだから、やっぱりコミュニケーションはちゃんと取っていきたい。ただコミュニケーションを取るだけじゃなくて、ゲームで信頼に応えるのが、いまのチーム一丸の目標です。

福崎勇気をもらえるんですよ。1年半とか2年も待ってくれる人がいる。俺たちが時間をかけて用意したものを見せたらすごく喜んでくれた。ああ、間違ってなかったなと。

 サービスが始まったら、アップデートがバチッとハマり続けるかと言われたら、たぶんそんなことはないと思います。そうなったときに「こういう意図があったから、つぎはこう直します」と説明したら信じてもらえるだろうと思えるし、だからこそ攻めたこともできる。いまの『ブルプロ』とユーザーさんの関係はすごくいい。信じてくれるから裏切りたくないと思えるのはすごく大きいですね。

下岡自分たちが大事にしなきゃいけないのは、 サービスが始まったらこの気持ちをより強くするということ。この言いかたが正しいかどうかはわからないですけど、いまは好意的な人が集まっているターンだと思います。そういった方の盛り上がりが広まれば(ユーザーの)人口が増えていく。同じ気持ちで、同じコミュニケーションで、でも違う属性を持った方にも伝えていくというのは今後の課題になっていきます。

――しかも、グローバル展開するゲームですもんね。

下岡緊張感は高まっていますね。ディズニーランドの開業前もこんな感じだったのかな。

鈴木そこと比べます!?

下岡どきどきしたと思うよー。毎日来て遊んでもらいたいし、やっぱり楽しいから行きたいねって思ってもらいたい。自分たちもゲーム業界に恩があって集まっているから、ゲーム業界そのものへの恩返しみたいな気持ちもあります。

福崎いろいろしゃべっておいて何ですけど、この辺の話ほぼカットなんじゃないですか?

鈴木まだ質問ひとつ目なのに!

福崎おかしいな。もっと楽しい話をして、ドラマチックな話は後にするはずだったんですけど。

課金の話をしっかりして、真摯な姿勢を見せる

下岡ブルプロ通信で、課金のことを言う言わないはそうとう迷ったんです。ふつうこのタイミングで言わないですよね。わたくし、いままで数多の生放送を見てきましたが、課金形態はこうですっていきなり言うやつ見たことない。

鈴木サービス開始前の、さらにテスト前に、急に課金の話する!? って(※)

※ネットワークテスト実施前の12月15日に話しているわけだから、この反応も当然である。

――サービス開始直前ならわかるんですけど。

下岡真摯に(ユーザーと)対峙したい気持ちはすごくあって。できないものはできないし、やるものは蓋を開けちゃえばやってるし。それを言わない意味もないよねっていうのは、ブルプロ通信の打ち合わせで何回も話をしました。ま、そのー、ポロリ云々はちょっと置いといて(※)。

※ポロリ:たまに明かす予定のなかった情報が出てしまうことがある。みんな、見なかったことにしような。

鈴木番組の演出だと思っておいてください。

福崎ネットワークテスト近辺では課金回りの話は触れないように、課金系のUIを必死に外したのに、その前に言うって何なんだ。隠さなくてよかったじゃん!

鈴木「ほんとごめん!」って謝りました。(課金関連の)画面が配信に乗らないように隠してねと映像スタッフさんにお願いしたのに、「いや……言うわ」って。

下岡自分たちのお客さんとのコミュニケーションのスタイルはずっとこうだろうと思っているんです。変に隠してもしょうがないし、ブルプロ通信は自分たちの考えを伝えていく場であるべきだと思ってるから。

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鈴木不都合なことも含めて、できる説明をちゃんとしようと。変な憶測を生むことになるよりそっちのほうがいいですからね。

下岡もしかしたら少し荒れるかもしれませんけど、きちんと説明する自分たちがいることのほうが大事なのかなと。どこまで説明するか悩みはありました。細かい話になっちゃうし、遊ばないとわからない仕組みもありますからね。

鈴木プロモーションの都合もあるしなーと悩みつつ、最初はいったんフルで(台本を)書いたんですよ。で、情報量が多すぎる部分を少し削って。隠してるとかじゃなくて、単純にこれをいま言われてもわからないと思って。

福崎サービス日程も発表してないのに、詳細に説明するのはやっぱりおかしいと思うんだよなー(※)。

※再三にわたって書いていますが、このインタビューはネットワークテスト実施前の2022年12月15日に行っています。正式サービス日程を発表するのは5ヵ月以上先の5月23日。

一同 笑

鈴木ふつうは「後日、公式サイトに出すので見てください」くらいですよ。あとはまあ、プロモーションの事前放送だったら「こんな衣装が出ますよ」とか。

――課金周りの説明は、やるとしてもつぎですよね。ネットワークテストが終わって正式サービスの直前……

鈴木そう!

――食い気味じゃないですか。

下岡何と言いますか、ブルプロ通信って素直に喋る場として今後も回り続けると思うんですよ。もう本当に好きな方々が見に来てくださって。チャット欄を開けてるのはそういう理由もあります。変に(視聴者からのコメントを)止めたりもしてないよね。

鈴木明らかなスパムコメントは弾きますけど。エッチなサイトのリンクを貼られたら困るのでそういうのは消します。

下岡コミュニケーションの場ですから。ゲームの中でもそうですね。プレイ中にもし出会って質問されたら答えられる範囲で答えます。でもさすがに全員に対しては無理じゃないですか。やっぱりこういう(配信のような)場が必要。ユーザーのみなさんとのつながりができる場は大事ですよ。

鈴木無邪気にやってますよ。「これおもしろ!」って。

下岡今日の配信で言えばね、やっぱハイライトは、僕がぼっちでソロなのに「そういう人を救済したい」みたいなことを言ったら鈴木くんが固まったことですよね。これパーティーで遊ぶゲームやろって。言いたいことはわかる。あのタイミングじゃなかった。“今すぐパーティ”(※)のときに言えばよかったね。ごめんごめん。

※今すぐパーティ:周囲にいる“今すぐパーティ”をONにしている人とすぐにパーティーを組める機能。

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福崎今日はそこそこしっかりした台本があって、ちゃんとリハーサルやったんですけど、前回は大概ひどかったですよ。

鈴木ひどかったですねー。

福崎だって、台本に「福崎さんのキューで画面が変わるので説明お願いします」くらいでしたから。前回のゲーム内の要素の説明は、ほぼほぼアドリブ。

下岡よく喋れたよね。僕らほんとによく『ブルプロ』やってるので、それですらすら出てくるんでしょうけど。

福崎楽しいですよ。週に何日かこの辺のメンバーとディレクター陣で「今日は何しましょう? 次回はあれやるから準備ここまでね」ってテストプレイして。

鈴木あと何が強化できるんだ。何が足りないんだって仕様書という名の最強の攻略本を確認して。

――仲よしじゃん。

福崎鈴木さん、プライベートでやるゲームがないからって、休みの日に『ブルプロ』やってたって言ってましたよね。

下岡あるある。

鈴木テストおもしれーって、夜中までやってました。

下岡バトルディレクターとサブディレクターがスパルタなんですよ。「下岡さん、このミッションをブラストアーチャーでやってください」とか「スペルキャスターでクリアしてください」とか言ってくる。

――番組でもさんざん“ソロよりパーティープレイ向き”と言ってきたクラスなのに。

下岡で、自分なりの攻略法をめちゃくちゃ考えるわけですよ。そうやって自分で攻略する時間が楽しい。僕は仕様を網羅的に見てはいますけど、ここでは何が効果的かみたいな細部は知らされてないから、ほんと初心者みたいに遊んでます。「へー、ふざけんなよー!」とか言いながら。

福崎ちょいちょい苦情を送ってきますよね。「これクリアできないんだけどー。調整ミスってない?」って。

鈴木「耐性装備、持ってないっしょ」って返してます。

――扱いが雑。

下岡最近、冷たいんですよ。それはともかく、僕が見落としていただけで、ヒントはちゃんと散りばめられてますからね。いわゆるRPG的な。

 昔のゲームみたいにいきなり荒野に放り出すようなことはなくて、きちんとヒントがある。それが攻略につながって、友だちと遊ぶことで発展していくものもあるし、ひとりで遊ぶのが楽しい瞬間もある。そういうバランスをみんなで調整できているというのはすごくいいことだと思ってます。

「やることがたくさんありますよ」と見せかけだけ増やしても意味がない

――今回はもうこういう裏話だけでいいような気がします。

鈴木それもいいですね、なかなか話す機会もないですし。

下岡ファンの皆さんにとっては、空白の2年間ですからね。しっかり言っておきたいのは、スタッフの中でがんばってない人はひとりもいなかった、ということ。

福崎CBTの後、うまく落とし込めた仕様もあれば、サーバー費とかいろいろな問題に引っかかってぬるくなることもある。そういうのを見つけるたびに「これはやらないとだめ。日和っちゃだめ」と鼓舞してきました。

 何か方法はないか、どこかを諦めたら実現できるんじゃないかと話し合って。どうしても捨てざるをえない部分もあって、そこを詰めるのに時間がかかったと思います。

鈴木取捨選択は難しいですよね。ゲーム開発にはものすごく大勢が関わるので、この3人が全部のところに立ち会えるわけじゃない。ほかの人に任せてオーケーな部分もあれば、見続けないといけない部分もある。

下岡理論的には問題なさそうなんだけど、遊んでみないとわからないこともありますね。何か思ったのと違うなーと引っかかるんです。問題点を解決するためにある仕様を入れたら、そこは解決されてるけども、別のめんどくささが出てきちゃったり。そのめんどくささのレベルが同じだったら何のために調整したの? ということも多少は出てきますね。

福崎狙って入れているめんどうさはあります。後々に出てくる機能で解決したりコミュニケーションで何とかする部分とか。時間をかければ越えられるところもありますね。調整しながら慣れが出てきて想定していないめんどうさやストレスがかかるということもあると思うのでそこはずっと調整ですね。

――ゲーム=何らかのルール(縛り)ですもんね。適度なめんどくささ。

下岡ただめんどくさいと思うのか、成長して超えたいと思わせるのか。“プレイヤーが成長したと思えるような見せかた”をベースにして、そこに見合った仕様にしています。あそこ(番組のスライド)で見せていない仕様もいろいろあります。

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――ほかに、ユーザーの皆さんの声を受けて思うことはありますか?

福崎「2年近くかかってこのボリューム?」と言われるのは、ごめんなさいとしか言いようがない。そこじゃないんです……。

鈴木コンテンツを箇条書きにしたものを見ると、そう感じられる方もいるだろうなとは思います。

福崎新機能をこれだけ入れられたのはすごいことだと思ってるんです。あれだけやり直したうえでこれだけ詰めたっていうのは。単純なコンテンツ量だけで見ると、1年半かけたにしては少ないと言われるのも致し方ないかなとは思います。

下岡コンテンツ量だけを積み重ねるものでもないですしね。この先も運営していくために、準備として作るものもたくさんあります。そういう意味では、むだなく過ごした2年間だと思います。

福崎まずは無事にサービスインを迎えて、ベースを安定させたいですね。そうなったら最初に概要だけ書いて放置せざるをえなかったコンテンツを作れるようになるので。

鈴木とは言ってもですね、「いまダンジョンはいくつあってボスが何体いて」なんて話は1回もしてないですから。じつはそれなりにあるんですけど。

――何かよくわからないけど、コンテンツが少ないということになっている。。

下岡そうそう(遊ぶことは)終わらないですよ。まだ僕が(すべての攻略は)終わってないんだから。僕ら、ある意味チートもしてますからね。全部いちから遊ぶキャラクターと特定のところだけを詰めて遊ぶキャラクターがいて、後者のほうは装備をいじってテストしてます。それでもやることがなくならないんですから。

 あんまり言いすぎると無限にあるように思われちゃうので、これ以上は言いませんけど。(コンテンツ量が少ないイメージは)やっぱりCBTの見せかたが原因だったかなと思います。かなり制限をかけていたので全体が見えない。あの範疇の中だとそういう話になるだろうなあ。

――テストは制限をかけて行うものなので、仕方ないとは思いますが。

福崎注意深くやっているから、というのはあります。単純に新しいコンテンツをバーンと追加することもできるんでしょうけど、ゲームサイクル的に意味がないコンテンツを増やすだけだと、すぐに遊ばれなくなってしまう。廃墟を増やしても仕方ないんですよ。

鈴木「やることがたくさんありますよ」と見せかけだけ増やしてもムダになってしまいますからね。

福崎おもしろさを考えてコンテンツを作るのは大事です。でも、それ以上に大事なのが“ゲームサイクルの中でどういう価値を持たせるか”ということ。“強い装備が手に入る”だけじゃなくて、新しい強さがある、ですとか。そのコンテンツを作るとサイクルがこうなるよねとか、構造を変化させながら作らないといけないので、どうしても時間かかるんです。想定はするんですけど、実装してみたら「あれ?」みたいなこともありますし。

――いろいろな準備をしながら開発をしていく、と。

下岡僕、まだ全部のボスを倒してないんですよね……。最高難度の手前で負けちゃってるから。もちろん、きちんと装備を設定したキャラでも試してクリアーはしているので、バランスが取れてないとか、そういうわけじゃないですからね。

鈴木ちゃんと専門の調整班がいますから。

下岡それとは別の、遊びとしてやってる範囲で遊び尽くせてないということですからね。

――信じてないわけじゃないので大丈夫です。CBTをプレイしてコンテンツが少ないと感じている人もいるかもしれないけど、あくまでテストだし、ほかにもいろいろありますよ、ということですよね。

福崎そうですね。何年も前から運営されているほかのタイトルと同じ量を期待されるのは辛いなーというのは正直なところ。

鈴木これから運営していく中で充実させていきますので、その辺は安心してほしいですね。あまりハードルは上げたくない(笑)。

下岡今日、発表しちゃったからなあ。ロードマップを出しますよって。

鈴木いやー、ロードマップを出す分には大丈夫ですよ。計画を組んでやってますから(5月23日にブルプロ通信#7で公開された)。

福崎間に合わなかったら土下座しますか。

下岡真摯に説明していきましょう(※)。

※公式番組“ブルプロ通信”には、#6.3のように小数点をつけた回がある。このときは大きな発表よりは何らかの説明がメイン。今後も折を見て実施していくという。

いまの時代に合わせたパーティープレイゲームを

――ゲームの中身についても聞かせてください。ソロでも遊べるゲームとして舵を切るゲームが多い中、“パーティーで遊ぶゲーム”としてリリースする。どういう勝算があるのか、意図をお聞きしたくて。

鈴木とりあえず(コンテンツややれることを)全部入れたかったというのはありました。

福崎「2年近くある!」と思った弊害ですよね。よっしゃ、全部入れても間に合うぞみたいな。

――弊害って言わないで。

鈴木開発陣には若い世代も僕らくらいの年齢(30~40代)もいて、層の幅が広いんです。それぞれ遊んできたゲームが違って、「いまはパーティー向けゲームはウケないよね」、「こういうフレンドの形式は合わないかもね」という話は出ていて、やっぱり僕らの感覚とは違ったりする。

 そういう意見も正しいと思いますし、「パーティー募集リストがないとだめだよ」みたいな声とぶつかって、じゃあ両方必要じゃんってなるんですよ、最終的には。

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下岡“嫌を減らしたい”はすごくあります。感覚的な「何か嫌だな」を減らさないと、ゲームを遊んでいるのにストレスが積み重なっていく。うれしいと嫌はけっこう同居しますよね。1000個うれしいことがあっても、5個嫌だったら、もう嫌。嫌の貯金はでかいから、少しでも減らすのは大事。“うれしいを増やす”だけでいいのかというと、そんなことないですから。

福崎この辺のバランスはやっぱり難しくて、けっこうみなさん“何々をしないといけない”に囚われちゃうんですよね。難しいことを考えずにゲラゲラ笑いながら遊んでほしい気持ちもありますけど、みんながみんなそういう感覚ではないわけですし。

下岡もちろん個々人の特性もあります。ソロで遊びたい人もいるし、ふだんはパーティープレイ派な人だってソロで遊びたいタイミングもあるわけで。

福崎プレイスタイルを否定したくないんですよ。プレイスタイルの裏側にはライフスタイルがあります。夜勤の人は遊ぶ時間が人と合わない(からパーティープレイをしにくい)とか。そこはできる限り否定したくないというのは最初の段階から思い描いています。

 パーティーにはパーティーとしての楽しみかた、ソロにはソロとしての楽しみかたがあります。もちろん状況に応じてパーティを組むでもいいし、固定でパーティーを組んでもいい。パーティーを組んだ方が得なことが多いけれど、ソロでできないわけではない。ただ、「オンラインゲームだから長い時間ログインして遊ぶよね」って、コアなユーザーさんほど想起しやすい。

下岡オンラインRPG、MMORPGのイメージね。NM(※)のポップ待ちで24時間張ったり、朝8時に集合なって待ち合わせすることもあるわけです。

※NM:ノートリアスモンスター。一般的なモンスターより強く、特殊なアイテムをドロップする傾向にある。

福崎ノスタルジーを追っている側面はあるんですよ。昔楽しかった経験がベースにはあるので。ただ、いまの時代にそのままやっても自分自身はついていけなくてやめちゃうかもしれないと思っていて。(長時間のプレイを要求し過ぎることなく)追いつけるようにするとか、差を感じさせないようにするのはすごく重要ですよね。

下岡いまは遊ぶものがたくさんありますから。何本もゲームを同時進行してYouTubeも見てTwitchの配信を追いかけるという時代にあって、(プレイヤー内の)『ブルプロ』の順位を上げていかないといけない。

福崎順位は上げたいですけど、平行して遊ぶのも全然かまわないですよね。

鈴木そうそうそうそう。

福崎何と言いますか……。ネタ混じりだとは思うんですが、ユーザーさんに覇権覇権言ってもらうのは、ほんとは少し困るなーと。

――「『ブルプロ』は覇権ゲーム」と言われたくないと?

鈴木もちろん、そう言っていただけるのはすごくうれしいですよ。ただ、複雑な気持ちも少し。いちばんおもしろいゲームを目指してますし、もちろん自信作ですけど、ずっとひとつのタイトルだけを長時間遊んでいただく時代でもないですから。

下岡ほかのゲームと並行して遊ぶことを否定する要素を作らないというのは、おそらくいまの時代性なんだと思います、

――なるほどなあ。

下岡ゲームソフトの入れ替えもなくなってきてますよね。ダウンロードで買う人が増えているから。ですので、タッチポイントが多いことが重要だと思います。ひとつのゲームを2試合分やって、別のゲームも少し遊んで、1日にトータル5時間遊ぶとします。その中に1時間『ブルプロ』を遊ぶ時間があるとか、『ブルプロ』にアクセスするライフタイムが長いことがやっぱり大事ですから。

 集中的に遊ぶゲームシステムにするのは、ちょっとなぁと思うわけです。1日24時間を10回くり返して240時間遊びますみたいなことを否定するわけではないけど、そうしてほしいということでもないです。ゲームはいっぱい出ますから。だって小島監督の新作やりたいでしょ。

――お、ここに正直者がいるな。

福崎そうそう。『ホグワーツ・レガシー』やりたい人も多いでしょ。

鈴木やっぱやりたいですよね。『ブレワイ2』(『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のこと)やりたいでしょ!(※)

※インタビューを2022年12月15日に実施したからこそのラインアップ。いまだったら『ファイナルファンタジーXVI』や『アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン』あたりの名前が出てくると思われる。

福崎もう下手するとほんとにブルプロ通信で「あのゲームのどこがどう楽しかった」とか喋り出しそう。

鈴木今日はゲームレビューをしようぜ、みたいな。やべえ、あれ超おもしろかった。みんなはやった? って。

下岡やっぱりそれは、重ね合わせのこの時代そのもの。自分たちのイメージの中にもあります。たとえばスマホゲームだったら、マッチングの時間で別のゲームを遊ぶのもふつうじゃないですか。そういう遊びかたも含めて、『ブルプロ』の目指すべき姿が受け入れられるといいなと思っています。

――ひとつのゲームに集中する時代ではなくなっています。“ユーザーのライフスタイルの中に受け入れられるゲーム”といった感じでしょうか。

福崎この3人で話し合ったんですよ。どっちだと思います? って。できる限り『ブルプロ』の中にいてほしいと考えて、ずっと遊び続けるように作るのか。ただ、それだとついていけなくなったらやめてしまう。

――拘束されているように、心理的な負担に感じる人も出るかもしれませんね。

福崎逆に、ある程度あっさりエンドコンテンツまでたどり着いたとします。最後まで行ったからと、やることがなくてやめる。どっちの人が戻って来やすいかと言ったら後者のタイプだと思うんですよ。なぜかと言うと、嫌になってやめたわけじゃないから戻って来やすい。

下岡続編を遊びに戻って来るイメージですかね。

鈴木もちろんずっと『ブルプロ』にいてくれるのが理想ではあるんですけどね、サービスとしては。いてほしいけど縛り付けたいわけじゃないんですよ。

下岡好きでいてほしいんです。「好きでいてほしいのでずっといてください」ではなく、「好きでいてほしいから毎日会いに来てほしい」。 毎日は会いに来れなくても区切りのいいときに来てほしい。お客さんの生活スタイルもあるわけですから、その中に自分たちのゲームが入るといいな、と思ってますね。

――恋愛みたいなことを言い出したなと思って黙って聞いてましたけど、めちゃくちゃいい話じゃないですか……。

福崎っていう机上の空論。

――オチをつけなくてもいいですから。

鈴木“報酬プラス”のチケットが毎日3枚配られることについて、きっちり説明したつもりではいますけど、「スタミナ制と同じだな」と感じる人はいるんですよね。追加購入もできるけど購入枚数に制限をかけているわけで、その意図もわかってほしいという気持ちもあります。

――長時間遊べない人向けのフォローでもあると。

福崎“重課金向けの仕様か”みたいなコメントもありましたけど、購入制限をかけているから、むしろいい意味でのノルマなんですよという話をしたら、コメントもポジティブになってましたね。

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福崎報酬プラスについては絶対ここで説明しないといけないと思ってました。最初は台本に入ってなかったですよね、たしか。1歩間違ったら重課金への誘いに見えるから、そうじゃないんだと伝えておきたかったんです。

鈴木1ヵ月、いや1週間くらいプレイしたらそうじゃないこともわかることが、ネットワークテストみたいに2~3日だと誤解されることもあるかと思います。UIだけ見て判断されたり。

下岡わかっていただく努力をしなかったのに、「わかってくれない」と嘆くのはよくないですよ。嘆く前に説明しないといけませんから、やっぱり。

――さあ、10分のミニインタビューの予定だったのに、70分を超えました。

福崎今回話した内容、どこまで使えるんですかね。

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