ハイドという開発会社がある。ここ数年でも、『デジモンサヴァイブ』(バンダイナムコエンターテインメント)や『ルーンファクトリー5』(マーベラス)などを手掛ける、ゲーム業界でもおなじみの開発会社だ。アクション、RPG、パズルなど多岐にわたるタイトルを開発しており、女性向けコンテンツなども手掛けている。これまでに携わったタイトルは150本を優に超える。

 一方で、ハイドは実力のある開発会社とアライアンスを組むなど、ゲーム開発の今後を考えた積極的な動きを見せている。国内だけに留まらず、海外パブリッシャーとも多数連携している。さらには、その高い開発力をゲーム業界以外の分野にも活かしたりと、“開発会社”という枠を越えた取り組みをしている会社でもある。ハイドグループ全体でのコンテンツ数は300本にもなるというから驚きだ。

 そんなハイドは、2023年に入ってオフィスを新宿の地に移転し、さらなる情熱を持ってゲーム開発に取り組むという。今回、ファミ通ドットコムではハイドの代表取締役社長、柳原健一氏にインタビューを実施。ハイドの開発会社としてのこだわりやこれからの展望などを聞いた。

(聞き手:ファミ通グループ代表・林克彦)

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る

柳原健一氏((文中は柳原))

ハイド 代表取締役社長
アストロールを経て、2007年にハイドに入社。2014年より代表取締役社長に。

※この記事はハイドの提供でお届けしています。

「“面白そう”から始めるモノ作り」をキーワードにワクワクすることに挑戦している

――まずはハイドがどのような会社なのか、簡単に教えてください。

柳原会社のHPでも書いていますが、「“面白そう”から始めるモノ作り」をキーワードに、ゲームを生業としながら、ワクワクすることに挑戦している会社です。近年の具体的な開発実績としては、『デジモンサヴァイブ』や『ルーンファクトリー5』などがあります。僕は創業タイミングでは関わっていなかったのですが、会社が立ち上げられたのは2002年なので、今年で22年目を迎えることになります。

――現在、ハイドには何人くらいのスタッフがいるのですか?

柳原今年の新入社員も含めると120人ほどですね。新卒採用をしていることもあって、若い方から上の方まで、年齢層のバランスもいいかなと思います。当社は女性社員が多くて、36名ほど在籍しているんですよ。一時期は7割くらいが女性だった時期もありました。アイデアファクトリーさんからお引き受けした仕事で乙女ゲームを作っていたこともあったので、それも影響しているかなと思います。

――やはり過去のタイトルを遊んで入社、という方が多いのですね。

柳原ご好評をいただいているタイトルが多いおかげで、当社を名指しして入りたいと言ってくださる方も多いですね。これも開発会社としては少し珍しいかなと思います。たまにファンレターで「作ってくださってありがとうございます。この作品で人生が変わりました」みたいに書いていただけることもあって、そういうのは本当にうれしいです。「続編を待っています!」と言われると、当社はパブリッシャーではないので困ってしまうんですけど(笑)。

――そこのゴーサインを出すのはパブリッシャー側ですからね(笑)。

柳原ぜひメーカーさんにその想いを伝えてほしいと思います。社員という意味では、海外から入ってきた社員もいて、ここもやはり乙女ゲームや『√Letter ルートレター』(Dragami Games)のようなアドベンチャーゲームをきっかけにしてくれていることが多いです。

 尖っているコンテンツはアジア圏でのファンがすごく多い印象ですね。そういった作品を通して開発会社である当社を認知してもらえるのは、すごくうれしいです。

――先ほど近年の作品として『デジモンサヴァイブ』や『ルーンファクトリー5』を挙げられていましたが、アドベンチャーゲームでは『ジャックジャンヌ』(ブロッコリー)なども好評を博したタイトルですね。

柳原そうですね。近年のタイトルは累計販売本数が50万本を超えるものが多いですし、『ディズニー マジックキャッスル』(バンダイナムコエンターテインメント)の移植作品なども大きな数字を出せているので、開発会社としてヒットタイトルをある程度出させていただいているかな、と思います。

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る
ハイドが開発を担当した『デジモンサヴァイブ』。バンダイナムコエンターテインメントから2022年7月28日に発売された1作。異世界に迷い込んだ少年少女たちが、モンスターとともに、もといた世界に帰るため冒険をくり広げるアドベンチャー。

お互いに魅力がある関係でい続けられるように努力をする

――開発会社では珍しい点として、ハイドは東京本社だけでなく仙台、新潟、京都にスタジオを持っていますよね。

柳原そうですね。おもしろい人材って、地方のほうに埋もれているように思うんです。僕は経営者としてはアイデアを重視して自由にやっているタイプですが、同じノリの人はなかなか東京では見かけない気がしていて。地方でも事業を進めることで、次世代のリーダーが見つけられるのではないか、という期待も込めて、地方のスタジオは立ち上げています。

 もちろん地方でやればすぐに見つかるというものでもないのですが、東京だけでやっているよりは確率が高くなるかなと思います。いまはまだできていませんが、地方の人が徐々に育っていって、権限委譲をしていろいろなことを任せるようになってきたら、僕や井芹(井芹真一郎氏。ハイド・専務取締役)がつぎを任せる人材として育ててみたいと思う人が出てくるかな、と。

――本社も含めて4ヵ所もスタジオを持っている開発会社は珍しいと思いますが、今後もさらに増やしていくのですか?

柳原将来的には名古屋にも作りたいとは思っています。基本的にどこでスタジオを立ち上げるかについては、人との縁なんですよ。先に土地を決めるのではなくて、この人ならリーダーを任せられるなという人がいるからその土地に作る、というスタンスです。

 連携している子会社についても同じで、まず人です。人がいないとビジネスは始まりませんし、意味もないと思います。人どうしが惹かれ合ってお互いにビジネスをしてこそだと思うので、子会社から見たときにも、僕やハイドが価値のある存在でいないといけないんですよ。

――単純に子会社、親会社というのではなくて、互いに価値を示し続けるというのはいい意味で緊張感がありますね。

柳原恋人どうしの関係ではないですが、お互いに魅力がある関係でい続けられるように努力をする、というのが前提です。だからこそ人が大事で、そういう相手がいるからこそお互いがんばれるのかなと思います。子会社を立ち上げること自体、そこで得られる収益よりもその子会社があることでハイドにどんなメリットがあるかが大事ですからね。

――子会社も機能的な面を重視しているということですね。

柳原たとえばローカライズ事業を取り扱うコトバワードを作ったのも、翻訳が儲かるからではないんです。もちろん、それ自体もひとつの会社として大事なのですが、ハイドが子会社でローカライズを行うのには別の理由があります。

 ローカライズって、プロジェクトの最終段階で行いますよね。そこまで進んだプロジェクトがあるということは、つぎのプロジェクトを立ち上げようとしているということなんですよ。僕ら開発会社はその立ち上がりをいかに察知できるかが勝負なので、そのために会社を作った部分もあるんです。

――確かに、プロジェクトが立ち上がる段階からアプローチできれば有利ですね。

柳原ほかにも理由はあって、たとえばコンペになったときに、ほかの会社と同点で並ぶとしますよね。そのときに、別の会社がローカライズを行っていなければ、僕らが選ばれる確率が高くなります。そういう風に勝てる可能性を上げていくことが大事で、すぐに収益として数字は出ないかもしれないですが、その積み重ねが最終的に大きく影響してくると思うんです。

――では、協力する会社についても単純に資本があるから、といった理由では選ばないのですか?

柳原そうですね。それよりもゲームや人に対する想いが近しい人、というのが条件としては大きいです。そういう会社といっしょに戦いたいですし、いっしょに成長していきたいです。外注としてお仕事をお願いしたり引き受けたりするのは本当にビジネスの関係ですが、「同じブランドの旗を持っていっしょに上っていこう」という人たちを増やしていきたいです。

 小さな会社が単体で動いていると資金調達も含めてゆっくり進んでしまいますが、手を組んで大きな団体になっていけば交渉力や対応力が上がっていきますよね。だから、お互いの得意なところやそれぞれの色を活かしながらいっしょに戦っていこう、という風に考えています。

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る
マーベラスから2021年5月20日に発売された『ルーンファクトリー5』もハイドの開発タイトル。町の住人たちとの交流や恋愛、畑仕事、釣りなどを満喫しつつ、武器や魔法を使っての冒険も楽しめるファンタジーRPG。

アライアンスを組むのは、戦っていくには強い仲間を集めたほうがいいから

――ハイドはグループ内の子会社や外部の開発会社と提携を行い、アライアンスを組んでの開発が可能だと謳われていますよね。そもそも、そういったやりかたをしようと思ったのはなぜなのですか?

柳原いまの時代、ゲーム開発も求められる技術は多岐にわたり、また人員も、昔とは比べものにならないくらいの数が必要です。そういった時代に柔軟に対応して戦っていくには、強い仲間を集めたほうがいいなと思うんです。ハイド単体でスキルを高めてもすべての案件に応えることはできませんが、複数の開発会社で補い合える関係、まさにアライアンスを組んでいれば、必然的に対応力が上がっていきます。それに、優秀な人といっしょに戦っていったほうが、おもしろいことができるし、楽しいですよね。僕らは資本主義の中に生きているので、きれいごとだけでは生き残れないというのも大きいです。

――そういった考えは以前から持っていたのですか?

柳原子どものころは身体が小さかったので、たとえば、学校でいじめられないようにするには……となったときに、お兄ちゃんの世代やその先輩と仲よくなるのがいちばん効果的だったんです。高校生の友だちがいたら、中学校の先輩も手を出してこないじゃないですか(笑)。自分を鍛えても年上の人を連れてこられると到底敵わないので、そこで強い人や仲間に頼ることを覚えたと思います。

――そういった“頼る”ということが、会社経営にも活きているということですね。

柳原最初のころは、自分に任された開発で人の力を借りてしまったら、自分の力も削がれてしまうと思っていたんです。でもそれだと会社も回らないし、身体にも限界がきてしまうんですよ。実際、過去に失敗したこともありました。ここがターニングポイント、みたいな明確なものはないのですが、経験の積み重ねで、「人に頼ってもいいんだ」ということ気づいたんだと思います。

 以前、人に言われてそうかもしれないと思ったのは、僕は創業メンバーではないので、アライアンスを組んだときに、ハイドが上に立つ必要はない、いわゆるマウントを取ろうとはまったく思わないんです。先輩方にも、「だから柳原さんとなら組んでもいいかなと思えた」と言っていただけたので、それは意外と大きいかもしれません。

――創業メンバーでないからこそ柔軟性、強みとも言えそうですね。

柳原ただ、僕は創業する人のことは尊敬しています。自分で理詰めして起業しようと思ったら、リスクが大きすぎて一歩を踏み出せないと思うんです。よく「ハイドさんは攻めていますよね」と言われるのですが、これも理詰めで考えた結果の、防御するための攻めなんです。

――攻撃が最大の防御、みたいなものですか。

柳原会社を生き残らせようとすると、攻めるしかないんです。攻めずにいる先にあるのは、緩やかな死なんですよね。日本経済もそうなりかけているかなと思うのですが、それは開発会社、ひいては日本のゲーム業界にも言えることだと思うんです。だからこそ、この先も楽しいことをやり続けるには攻めないとダメだな、と。

――アライアンスを組むのもその攻めのひとつということですね。

柳原そうですね。ゲームの開発だけでなくeスポーツに取り組むのもそうですし、ゲーム以外の事業を進めているのも守り続けるための攻めなんです。もちろん、攻めるのにもバランスが大事で、勝算を可能な限り高くすると同時に、うまくいかなくても会社が倒れない程度にしなければならない。そういう風に致命傷にならない範囲での投資をたくさん続けながら会社を成長させていく、というのが当社の経営コンセプトです。

――多角的な投資は大企業が行うものという印象がありますが、ハイドは以前からそういったことをしてきたのでしょうか。

柳原そうですね。当社は社員が3、40人のころから多角的な事業を展開していて、ゲームデベロッパーでは受けないようなお仕事も引き受けていました。もちろん理詰めでその戦略を考えてきたというのはありますが、それを実行してくれるメンバーに恵まれたおかげで実現できたことだと思います。

 先ほど話した井芹などが仕事を回してくれなければ、やりたいと思ってもこういった経営は実現できなかったと思います。そういう意味では本当に出会いに感謝しています。みんなは「楽しいから」と言ってやってくれるのですが、本当にそこの踏ん張りがあってこそですね。

――ほかの開発会社の動向を見ても、開発会社間の連携やアライアンスは活発になっているように感じます。ハイドはそのトップランナーでもあるんですね。

柳原ありがとうございます。そういう意味だと、いろいろな会社さんがアライアンスを組んでいって、ある意味お互いにそれぞれの国として切磋琢磨していくのはすごく楽しいと思います。僕が三国志を好きというのもありますけど(笑)。

――ゲーム戦国時代ではないですが、そういった動きが出てきてもおもしろいですね。

柳原大きな団体として動けば交渉力が上がる、というお話は先ほどもしましたが、ほかにもメリットはあるんですよ。たとえば、大きなメーカーさんからのお仕事をお受けするとして、それで開発ラインを1本、1年間占有するとなると、経営的なリスクもそれなりにあって気軽には受けられないんですよ。

 でもアライアンスのグループとして対応するとなると、各社にメリットが生じて、当社もリスクヘッジをすることができる。メーカーさんとの交渉もやりやすくなります。これは国内よりも海外企業と交渉するときに重要になってくるので、今後はワールドワイドにもビジネスができる会社にしていきたいです。

――ハイドとしては仲間を増やしていきたいと思うのですが、具体的にどういった形で仲間を増やしていこうと思っていますか?

柳原そこについてはこだわっていなくて、たとえば子会社になってくださる会社さんがあったとして、そこの株を51%取るかという話がありますよね。でも、それって正直意味がないのではないかと思うんです。中小企業ですから、資産価値的にもそこまで大きくはないんです。

 それに、中小規模の開発会社だと、僕らが株を100%持った結果として、残ってほしいメンバーが全員抜けてしまうことも十分にあり得ます。それだと本末転倒になってしまいますし、そういった点からも、アライアンスの方法にこだわる必要はないと思っています。

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る
『ジャックジャンヌ』は、『東京喰種トーキョーグール』でおなじみのマンガ家である石田スイ氏が十和田シン氏とシナリオでタッグを組み、世界観設定やキャラクターデザイン、イラストを手掛ける少年歌劇シミュレーションゲーム。2021年3月18日にブロッコリーから発売され、歌劇学校青春物語が好評を博した。

ハイドという会社のブランドを作っていきたい

――開発会社と言うとパブリッシャーから仕事を請け負って、決められた通りに作っているような印象を持っている人もいるかもしれませんが、実際は開発会社の皆さんがアイデアを出し合って作っているんですよね。

柳原そうですね。それを広く伝えていくためには、ハイドという会社のブランドを作っていかないといけないんです。自社でもプロデューサーなどを育てていって、たとえば出資だけをしていただいて、僕らの責任と管理で作品を作っていくというのもアリだと思います。そういうことをしていくには、やはりもっと大きくなっていかないといけないし、仲間も必要なんです。

――自社だけでなく、別の会社と協力していくことが大事だということですね。

柳原もちろんハイド自体の能力も上げていこうと思っていますが、僕らよりも優秀な会社や人が当然いるわけです。ハイドにもすごく優秀な人はいますが、どんな会社でも、たとえば10名くらいの規模でも、エースとなるようなクリエイターがいるんです。そういった人を1ヵ所に集めるのではなく、その状態を維持したまま連携していくことが大事だと思うんです。

――ピラミッド論ではありませんが、ひとつの組織にまとめてしまうと突き抜けた人は減ってしまう気がしますね。

柳原そうなんですよ。横並びのチームだからと言っても、屋号をハイドにしてしまったら自分たちのアイデンティティが消えてしまいますよ。だから、屋号を残しながらいっしょにアライアンスを組んでいきたいんです。

――今回のインタビューを読んで興味を持たれた会社さんは、柳原さんに連絡をしてみてほしいですね。

柳原お待ちしています。最初からアライアンスの話でなくても、「ちょっと会って話してみたい」とか、「相談したい」みたいなことからでも何かが起きるかなと。人の貴重な時間をいただくからには、たとえば特別な人に会える場を提供する交流会みたいなものもしていきたいですね。

 まったく違う業界の社長さんに会ってお話ができたら、また何か広がるかもしれないですよね。そういう機会があればその場に来たいということにもなるし、僕に会いたいとも思ってもらえるのではないかと。それがビジネスチャンスにもつながっていくので、そのチャンスをみんなで活かしていければと思います。

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いっしょにこの会社を成長させていきたいという人を求めている

――ハイドが求める人材像はどのようなものでしょうか。

柳原いっしょにこの会社を成長させていきたいという人です。振られた仕事をただ処理するのではなく、自分事にしてくれる人に来てほしいです。地方で会社を立ち上げるベンチャー的なおもしろさもありますし、そこで幹部になれる可能性もあるので、野心のある人は向いているかなと思います。

 企業の発展を考えるうえで、リーダー気質を持っていたり化ける子がいたりというのは重要ですし、僕の年齢を考えても人材育成にかけられる時間ってそんなに残っていないんです。次世代を育てるには5年から7年はかかりますからね。そういう意味でも、ちょっと尖った部分があったり自分事にできたり、いろいろなことを楽しめる人が来てくれるとうれしいです。国籍などにももちろんこだわっていません。

――日本だけでなくというお話でいくと、海外に支社を構えるようなことは考えていますか?

柳原具体的な話はありませんが、東欧には若くて頭のいい人もたくさんいますし、日本のゲームが好きという人が多いです。ですので、機会があれば進出してみたいと思っていますが、それも向こうに子会社を出すかもしれないし、現地の企業や開発者とアライアンスを組んで、必要に応じて出資するようなことになるかもしれません。いずれにせよ、M&Aがしたいわけではないんです。

――血の通った関係を築きたいというか。

柳原そうですね。東欧でもアジアでも、その土地の開発力やノウハウを得たいのであれば、現地の会社と手を組んだほうが早いと思います。その国にビジネスのチャンネルを作りたいのですが、それを独占したいわけではないんです。そのチャンネルを作ってくれる優秀な人と組んでいきたいと思っていて、実際にアジアの国ではそういう話を進めているところもあります。

――求めている人材像のお話に戻るのですが、前職でこんなことをしていたら積極的に採用したい、といったことはありますか?

柳原それで言うと、当社は専門学校の先生や講師の方を採用することが多いんです。学校とのパイプができるという意味でも大きいですし、やはりそういう仕事をしていた方は、人にものを教えるのが上手なんですよ。いわゆる現場の人って、あまり人に教えることはしたがらないんです。でも、学校の先生はそういうのも好きですよね。そのマインドがハイドの文化に入ってくることで、いい影響があるのではないかと思っています。

 そういった人材が増えると、今後さらに同じような仕事に就いていた人に声をかけるときも、相手の気持ちに寄り添いやすくなると思うんです。僕も若いころにプロデューサーとしての仕事をひと通り把握していたので、外のプロデューサーさんとやり取りをするときも、相手の求めているものが多少理解できました。そういう風に、いろいろな人の気持ちがわかる人を積極的に採っていきたいというのはあります。

――学校の先生を積極的に、というのはおもしろいですね。

柳原やはり学校には独特の文化がありますし、独自の人脈が形成されています。将来的には教育事業もやりたいと考えているので、そこにもつながっていけばと思っています。

――教育事業まで考えているのですか。

柳原それが学校を作るのか、それとも会社として人を育てていくのか、人材派遣のなかで教えていくのか、どういう形になるかはわからないんですけどね。これは別に高尚な話ではないのですが、やはり人に教える力も上げていかないと、日本全体の競争力が落ちてしまって、日本にいる僕らの力も落ちていってしまうと思っているんです。ですので、そのあたりでも何かをしていきたいです。

――ハイドがグループとして大きくなれば、ほかの会社にハイドグループから人を派遣する、といったこともできるようになりそうですね。

柳原たとえば一般のお仕事をしていた優秀な方が中途採用で当社に来たとして、いきなりゲーム開発で活躍するのは難しいかもしれません。そういうときは少し違う仕事をしてもらいながらゲームのことを勉強してもらえば、会社としての利益も確保しつつ、その人の教育コストも捻出できるので、そういうやりかたもアリだと思うんです。

 みんなが諦めてしまった夢を追いかけるようなこともできると思うので、そういった部分を発展させるためにも学校などのノウハウが必要なんです。

ワクワクできる場所を増やしたい

――少し話題が変わりますが、3月末に高田馬場から新宿にオフィスを移転されましたね。社内を見させていただきましたが、すばらしい環境でした。

柳原コロナ禍になる前から計画していたのですが、なかなかいい場所がなくて、時間がかかってしまいました。たまたまご紹介いただいたこのビルは新築で、共用スペースにはなりますが屋上もあって、駅からもわりと近いんです。正直なところ、予算の上限はだいぶ超えてしまったのですが、社員のモチベーションも上がるだろうと判断して、思い切って決めました。何より、私のテンションも上がります(笑)。まだ移ったばかりですが、投資としてはよかったんじゃないかなと思います。(金額的に)超えてしまった分は稼ぐしかないですね(笑)。

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る
JR新宿駅から徒歩7分という好立地の東京の新オフィス。120人が開発に取り組んでいる。
気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る
落ち着いた雰囲気の打ち合わせスペースなども用意されている。ここからゲームの新しいアイデアが生まれる!

――社屋移転に際して、会社のロゴも新調されていますね。

柳原引っ越しのタイミングでいろいろなことを変えれば気持ちも一新できるなという思いからですね。ロゴを変えたいという話自体も以前からあったので、数多くのロゴを手掛けている鬼丸トシヒロさんにお願いしました。

 たまたま人脈がつながっていてお願いしたのですが、じつは当初はそんな有名な方とは知らなかったんです。世界的にも高く評価されている方というのを後から聞いて驚きました。

――新しいロゴにはどんな想いが込められているのでしょうか。

柳原ハイドにはいろいろなワクワクがあって、いろいろな会社が集まったグループでもあるので、多くの色が合わさっているデザインにしたいという風にお伝えしていました。社長や社員、クライアントさん、ひとりひとりの夢が実現することを願って、という想いを込めています。点が広がっているのは可能性が広がるように、という意味を表現してもらっています。

気鋭の開発会社ハイド・ゲーム戦国時代を生き抜く組織戦略。ワクワクすることに挑戦する開発術に迫る

――最後に、ハイドが将来どのようになっていきたいのか、展望を聞かせてください。

柳原会社として大きくなるだけでなく、やはりワクワクする仲間を増やしていきたいです。そうしたら、幸せになる人も増えると思うんです。こう言うときれいごとに聞こえるかもしれませんが、ワクワクや幸せを共有できる人が増えれば、幸せ自体が大きくなっていくと思っていて、そこは大事かなと。

 国内外を問わずゲームを生業にしていくことは変わらないのですが、たとえば「ハイドのグループが開校している学校って楽しいよね」みたいなことでもいいんです。それこそ、社内ベンチャーで家具を作りたいという人がいて、すごくパッションがあっておもしろそうなら、それをやってみるのもぜんぜんアリだと思うんです。

――ゲームに限らずおもしろそうなチャレンジは積極的に行っていくということですね。

柳原リスクヘッジをしながらそこにチャレンジできる状況を作っていくのは、たぶん僕が得意としていることなんです。でも、それを実行して回すのは言い出した本人なんです。そこで僕の手を離れないと、発展しなくてそのまま終わってしまう。これは実際によくあるパターンだと思うんですよ。

 当社の新しいロゴのように、いろいろなインクが飛び散って、ワクワクの可能性が広がっていけばいいなと思っています。それはスタッフたちやその先にいるユーザーさんたちも含めて、です。大風呂敷を広げていると思われるかもしれませんが、日本全体がワクワクするようにしていきたいんです。

――大きな話になりますね。

柳原日本全体が活気づくには、東京が元気なだけじゃなくて、地方のレベルも上げていかないといけないと思うんです。もちろん地方にも世界と取引しているようなレベルの高い会社はありますが、それよりも、現状に満足してしまっている会社のほうが多いように思います。そういったところのレベルを上げていくことで、地方にもプライドが戻ってくるし、日本全体としてのレベルも上がっていくと思うんです。

 日本はさまざまな兼ね合いがあり、“この地方は文学に”、“この地方は理数系に投資する”といった、振り切ったことがしにくい国だと思っています。でもそこを民間から主導して人を集めていけば、その分野が好きな人は自然と集まってきます。それで文化圏ができれば産業の成長にもつながると思うので、全体的に強くなっていますよね。

 いまって、働くのがとにかくつらいとか、嫌だっていうイメージが全体的に強くなっていますよね。働くことに対してワクワクがないというか……。そういったイメージを変えていくのも我々のやるべき責任だと思っています。未来に対してワクワクできることで経済も上向いていくので、たくさんの仲間とともに会社を成長させ、拠点も増やしていきたいですね。

 ハイドに興味を持った方は下記サイトでお問い合わせください! ぜひお待ちしています!

ハイドに対するお問い合わせはこちらまで
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新宿の新オフィスの屋上にある共用スペースでスタッフの皆さんと撮影。