2023年5月2日にXbox Series X|S(Xbox Game Pass対応)、PCで発売されたベセスダ・ソフトワークスのオープンワールドアクション『Redfall』(レッドフォール)。
開発は『Prey』や『Dishonored』、『DEATHLOOP』を手掛けたArkane StudiosのArkane Austinが担当している。
本記事では製品版を遊んでのプレイレビューをお届けする。なお、すでに先行試遊のプレイリポートが公開されているので、主人公の能力などゲームの詳細についてはそちらをチェックしてほしい。
『Redfall』はRPG要素もあるハクスラ系FPS!
本作は、一人称視点で進めていくシューティングゲーム(FPS)だ。舞台となるのは、海がひるがえって孤島となってしまった“レッドフォール”。島は吸血鬼たちが占拠しており、太陽も隠されてつねに日食状態に。
プレイヤーは吸血鬼を退治しながら島に隠された謎を解き明かしつつ、レッドフォールの奪還を目指して戦っていくことになる。基本はFPSだがRPG要素も強く、装備の変更やスキルポイントによる成長、レベルの概念などが存在。いわゆるハックアンドスラッシュ系のFPSになっている。
吸血鬼が敵ということでホラー寄りのゲームを想像するかもしれないが、どちらかというとオカルトのテイストがメインで、ポップで明るいトーンの作品だ。突然近づいてくる敵の吸血鬼に驚いたりすることがあるかもしれないが、ホラー的な演出はほとんどない。
音声も日本語でローカライズされており、全体の印象としてローカライズは比較的良好。英語音声のテンポに合わせてなのか、音声の再生タイミングに違和感があったり、表示されるテキストとボイスの内容が違うといった点はあるが、ゲームプレイが理解できないようなことはなかった。
ストーリーテリングはシンプルに展開
プレイヤーは4人の主人公の中からひとりを選び、ゲームを進めていく。4人にそれぞれ特殊能力が備わっており、スキルを駆使しながら戦うことになる。選んだ主人公の視点でストーリーは展開するが、メインストーリーは共通のものとなっている。
物語の序盤は島に降り立ち、セーフハウスとなる消防署の奪還から始まる。取り戻した消防署をメインの拠点にして、島の奪還を目指しながら、さまざまな任務をこなしていく。これがゲーム進行の基本となる。
メインミッションのシステムはユニークで、ルートが枝分かれした選択式となっている。そのルートを辿ってもいいし、途中で別のメインミッションに挑んでもいい。自分の好きなようにミッションを進められるのはいいポイントだ。
なぜ吸血鬼が現れたのか? その理由を解き明かすことが物語の主軸であり、そこに人間たちのドラマが絡んでいく。
オープンワールドではあるが、メインミッションを進めていけば物語は理解できるので、物語を読み解くためにあちこちを探し回ったりする必要はない(世界観の理解を深める要素は各所に存在する)。「何をしていいのかわからない」という人も、導線がしっかり張られているので迷うことはないだろう。逆に、「もっと自由にいろいろこなしたい」という人は窮屈に感じるかもしれない。
島を開放していく感覚が気持ちいい!
もちろん多数のサイドミッションが存在するが、プレイするかどうかはプレイヤーの自由。
レッドフォールはいくつかのエリアに分かれており、各地域にセーフハウスがある。このセーフハウスではセーフハウスミッションが受注可能で、ミッションを達成すると、そのエリアの安全性を確保できる。物語としてもゲーム的にも、エリアが安全になることで島を奪還している気分がしっかりと味わえるのだが、これがなんとも気持ちいい。
また、島の中にはさまざまな収集要素があるほか、見つけることで受注できるサイドミッションもある。レッドフォールはそれなりに広いが、ただ広大というわけではない。中に入れる建物も多く、建物には数々のアイテムや“秘密”が隠されている。深い探索が楽しめるので、フィールドが狭いと感じることはなかった。
そう、本作はアイテムを探索できる場所が非常に多い。そこらに落ちている小物を拾うだけでも、ゲーム内のお金に変換されるのでムダになることはない。車のトランクやツールボックス、カバンなども調べることが可能なので、ついいろいろな場所を探したくなるだろう。
吸血鬼相手のユニークなバトル
本作の敵となるのは吸血鬼。その吸血鬼を信仰しているカルト信者たちも、敵として立ちはだかる。
カルト信者は拳銃のような銃火器だけでなく、吸血鬼から授かったであろう武器なども使用してくる。試遊版では弱く感じたが、製品版ではそれなりに強くなっており、とくに射撃攻撃はシンプルに痛い。とはいえ耐久力は高くないので、撃たれる前に倒し切ることもできる。彼らとの戦いは、基本的には銃を使ってヘッドショットを狙うのがメインとなるので、FPSプレイヤーなら対処しやすいだろう。
また、カルト信者以外にも、どこかの企業から派遣されたと思しき兵士たちが登場する。彼らはカルト信者や吸血鬼と戦う存在なので、プレイヤーにとっては敵どうしで戦う様を横から見ている、なんてシーンも見られた。
賛否両論あると思うが、人間の敵のAIがそこまでうまく動いていないのか、自分の目の前を素通りしていったり、変なところに隠れたりと、挙動が少し変に感じることも。そのおかげもあってか、かなり倒しやすい敵になってしまっている。リアリティに欠けると言えばそうなのだが、あくまでゲームでいうところの“ザコ敵”に位置する存在と見れば「許容範囲かな」と感じた。
吸血鬼とのバトルは、非常にユニーク。吸血鬼にHPはあるが、削り切っても完全に命を奪うことはできない。心臓に杭を打つ、属性攻撃を当てる、石化させて砕くなど、トドメを刺す必要がある。
一般的(?)な吸血鬼は対処しやすく、こちらに近づいて近接攻撃を仕掛けてくるタイミングを見計らって、攻撃を避けながら武器を撃ちまくるのが基本となる。ただし、吸血鬼はワープができるため、瞬時に自分の背後に移動してきたり、高台に登っていても自分の元までワープしてきたりするので、動き自体はなかなか厄介。
また、中ボスクラスの耐久力を持ちつつ、厄介な攻撃を仕掛けてくる特殊な吸血鬼も登場する。彼らとの戦いは骨太で歯応えがあり、手に汗握るバトルが楽しめた。
本作のバトルにおいてポイントとなるのが、多彩なバリエーションが用意されている吸血鬼用の対抗手段だ。そのひとつであるUV照射装置は、紫外線を当てて吸血鬼を石化させる効果がある。フレアガンは、吸血鬼を炎上させる属性を持つ攻撃銃だ。
ステークランチャーは、杭そのもの撃ち出せる銃。威力が非常に高く、必殺技的な攻撃をくり出せる銃となっている(そのぶん、所持できる弾丸数が少ない)。
ゲームの難度はやや高めかも
ゲームの難易度は選択可能で、今回はノーマルに相当する“ダスク”でプレイしたが、本作の難度はそれなりに高い。
人間兵たちの銃撃をちょっと食らっただけでも体力はガンガン減るし、特殊な吸血鬼の攻撃はメチャクチャに痛い。それでいて回復手段が限られているため、ジリ貧になって死亡してしまうことも多々あった。
そのため、しっかり身を隠しながらステルスで立ち回ったり、吸血鬼との距離をなるべく取りながら戦ったりと、状況に合わせて臨機応変に戦略を考えることが重要となるだろう。
とはいえ、死亡してもセーフハウスから復活することができ、ペナルティも少々のお金を失うだけなので、死亡自体のリスクはほとんどない。序盤は「カンタンすぎるな」と思うかもしれないが、途中から歯応えのある戦闘が楽しめるようになるので、そこを期待している人はご安心を。
また、ゲームの途中で難易度を変えられるので、難しいと感じたら難易度を“デイライト”(エリートクラスの敵や特別な敵の出現率が低くなる)にするのもいい。
作り込まれた作品だが粗削りな部分も
細部まで作り込まれていることがわかるゲームだが、遊びにくいと感じる場面も少なくなかった。UI(ユーザーインターフェース)回りの操作やミッションのわかりにくさ、キーアイテムをノーヒントで探す必要があるデザインなど、粗削りな部分も目立つ。
プレイヤーの装備枠が3つしかない点も、気になるところ。吸血鬼には杭を打ち込まないといけないので、杭付きの武器を必ず1本装備することになる。残りふたつの装備枠だが、UV照射装置は武器としてだけではなく、フィールドに設置された赤い霧を晴らすためにも使うゆえに、基本的には装備しておきたい武器だ。となると、残りの装備枠がひとつしかない。装備をその都度変更すればいいのだが、4つ装備できればさらに臨機応変な対応が可能となり、よりスムーズなゲーム体験が楽しめると思う。
また、どれが取得できるアイテムなのかがわかりにくい。対象に近づいて照準を合わせると白くハイライトされるのだが、近づくまでそれが取得できるアイテムなのかがわからない。ビンやカンでも取得できないものが存在する。周囲の取得できるアイテムをハイライトできるような、サーチ機能があればよかったかも。
マルチプレイは要改善
本作は最大4人のマルチプレイに対応しており、ホストのゲーム進行に合わせて協力プレイが可能だ。キャラクターは重なっても問題なく、全員同じキャラクターでも遊べる。
異なるキャラクターふたりで協力プレイをすると、登場人物の背景をより深く感じられる軽妙な会話などを楽しむことができる。また、キャラクターの個性が強いため、お互いのウィークポイントを補い合いながらの共闘をシンプルに楽しめるだろう。
ただ、マッチングは現状フレンドのみとなっており、知り合いといっしょに遊ぶか、もしくは外部サイトやSNSなどを通じて誰かとフレンドになって遊ぶしか方法がない。つまり、誰とでもマッチングできる、いわゆる“野良プレイ”ができないのだ。気軽にマルチプレイを楽しむことができないのはもったいゲーム性なので、対応を期待したい。
吸血鬼×オカルト×FPSの組み合わせは正解!
粗削りな部分がありながらも、全体的にはシンプルにハクスラRPGとして楽しめた『Redfall』。吸血鬼とのバトルはほかのゲームでは味わえないし、オカルト好きにはたまらない要素も満載だ。
4人マルチプレイFPSという部分から某ゾンビ協力FPS系を想起する人もいると思うが、装備漁りやスキルツルー、メインミッションで物語進行と、個人的には“ヒャッハー”な某FPSに近いと言えよう(スライディングもある)。
ネタバレになるので詳細は明かせないが、“レッドフォール”以外のエリアが登場するなど、想像を超える展開も用意されている。FPS、吸血鬼、オカルトなど、少しでも引っかかる要素がある人にはたまらない作品なので、気になった人はぜひ遊んでみてほしい。