『Cuphead』のNintendo Switch、プレイステーション4向けのパッケージ版が2023年4月20日にSUPERDELUXE GAMESより発売された。『Cuphead』は、1930年代のカートゥーンをモチーフにした、横スクロールアクションゲーム。2017年にリリースされるや大好評を博し、マルチプラットフォーム展開され、世界中で絶大な支持を集めた一作だ。アニメ化などもされており、すっかりおなじみとなったタイトルだ。
SUPERDELUXE GAMESの、「クリエイターの皆様によって作られた特別なゲームをユーザーの皆様に最大限に楽しんでいただけるよう大切にパッケージ化して販売いたします」という理念のもと、今回満を持してのパッケージ版のリリースとなった『Cuphead』だが、注目ポイントは、初回生産限定特典として収録される、『The Delicious Last Course』オリジナルサウンドトラックCDのジャケットに、あの天野喜孝氏による特別描き下ろしイラストが使用されていること。
どのような経緯でこのコラボが実現したのか。天野喜孝氏と、『Cuphead』を開発するStudio MDHRのチャド・モルデンハウアー氏からコメントをいただいた。
なお、パッケージ版『Cuphead』の発売に合わせて、立ち上げられたばかりのSUPERDELUXE GAMESの公式YouTubeチャンネルにて、天野喜孝氏によるイラストの制作過程を追いかけた動画が公開されている。まずはこちらをチェックされたし!
天野喜孝氏
画家、キャラクターデザイナー、イラストレーター、本の装幀家
『Cuphead』限定版オリジナルサウンドトラックCDジャケットのイラストを担当
チャド・モルデンハウアー氏
Studio MDHR共同設立者兼アートディレクター
天野喜孝氏「いままであまりなかったやりかただったので刺激的だった」
――『Cuphead』に対する印象を教えてください。とくに心惹かれたところはありますか?
天野『Cuphead』の50-60年代のアメリカのアニメーション的な世界観は個人的にも凄く好きなスタイルなんです。僕は元々アニメーションから入っているし、たぶん『Cuphead』を作った人たちが生まれるよりもっと古い時代からこういうキャラクターとか世界観に触れていたので。「これがそのままゲームになるんだ、凄いなぁ。こういうの大好きだなぁ」というのが第一印象でした。
――描き下ろしジャケットは、「Cupheadの着想の元となった様々な名作ファンタジーRPGへのオマージュ」になっているとのことですが、このコンセプトで描き下ろしイラストを描くにあたっての指針、こだわったポイントがありましたら教えてください。
天野ラフの段階ではもう少しゲームに忠実なプロポーションで描いていたのですが、それは開発チームの思惑と違っていたみたいで「もう少しファンタジーRPGのパッケージ風に寄せてほしい」というリクエストをもらいました。
とはいえ、元が昔のディズニー、ミッキーマウスとかフライシャー兄弟のベティ・ブープのようなスタイルなのでどうやってファンタジー系に寄せようか悩みました。なので無理やり剣をスプーンに変えたり、カップだから髪の毛もないので代わりに刺さっているストローから液体が飛び散っているようなイメージの髪型にしてみたり。でも描いているうちに理解が深まってきて、そういう発想の転換がおもしろくなって、楽しく描かせてもらいました。いままであまりなかったやりかただったので刺激的でしたね。
――描き下ろしジャケットを楽しみにしているゲームファンの方も多いかと思います。手に取ったファンの方に「とくにここに注目してほしい」という点がありましたら、教えてください。
天野純粋に見て驚いてほしい、それしかないですね。じつは遊びでほかのファンタジーRPGのキャラクターへのオマージュ的要素も入れてあったりするので、共通点を見つけておもしろがってくれるとうれしいです。すぐにわかるものもあるかな? 両方への愛があるとさらに理解が深まると思います。
チャド・モルデンハウアー氏「まだコラボレーションができたことが信じられないです!」
――どのような経緯で天野喜孝さんとのコラボが実現したのか、教えてください。
チャド正直、まだコラボレーションができたことが信じられないです! 日本向けパッケージ版にどんな特典を入れるか、パートナーである SUPERDELUXE GAMESと検討していく中で『The Delicious Last Course』のサウンドトラックCDを付けようというアイデアが生まれ、いままでやったことがなかったので私たちも盛り上がりました。そして、CDのジャケットでコラボレーションしたいアーティスト、『Cuphead』にインスピレーションを与えてくれた著名人たちをゲーム、マンガ、アニメなどさまざまな分野からリストアップしていきました(「目標は星よりも高く」がStudio MDHR のモットーです!)
そして、そのリストの一番上が天野喜孝さんだったのです。天野さんは偉大な方ですし、その作風は唯一無二である一方、我々とはまったく異なるものです。日本のファンの皆様に一瞬で伝わり、そして我々のキャラクターや世界観をいままでとはまったく違うスタイルで見せてくれる、そんなジャケットにするというアイデアに夢中になりました。天野さんにコンタクトした際、コラボレーションに興味を持っていただいたこと、しかもとてもお忙しい中で時間を取っていただけたことは本当に幸運だったと思います。
――天野喜孝さんによる描き下ろしジャケットに対するご感想を教えてください。
チャド「ブッ飛んだ」という言葉でもぜんぜん足りないくらいの衝撃でした! 私たちの「『Cuphead』の主人公たちを素敵なファンタジーRPGの世界に連れていってほしい」という希望が、天野さんの完成版の絵で完璧に実現されていると感じました。カップの中の液体を髪の毛にするという発想、獣のように凶悪なデビル、食器を武器にするという天才的なアイデア、そして背景に散りばめられた、天野さんが選んで描いた『Cuphead』世界のキャラクターや敵の数々。そのすべてがまるで“究極のファンタジー”のようです!
我々の業界を代表するような偉大なアーティストが、私たちのキャラクターのために時間を費やし想いを巡らせてくださったんです。いまでも、そしてこれからもずっと「信じられない」という気持ちのまま過ごすと思います!
――『Cuphead』パッケージ版の発売を楽しみにしているゲームファンにメッセージをお願いします。
チャド『Cuphead』のリリースからしばらく経ちますが、日本のファンの皆様に温かく受け入れられ続けていることはとてもうれしい驚きです。そもそも『Cuphead』は日本のさまざまな素晴らしいゲームからインスパイアされていることもありますし、私たちのかわいいアニメーションアドベンチャーを愛してくださっているファンの皆様とは特別な絆があるようにすら感じます。
なので、日本でリリースされるパッケージ版は本当に特別なものにしたかったのです。新しい手描きのロゴはアーティストちばけいすけさんの手によるもの、箱にかぶせる透明なスリーブは1930年代のセルアニメの制作手法を再現しています。同梱されているCDのジャケットアートを手掛けられたのはあの天野喜孝さん、そしてレトロスタイルシールセットなどなど、ファンの皆様に向けたさまざまな特典でいっぱいです! 世界中どこにもない、特別な製品に仕上げてくれた SUPERDELUXE GAMES といっしょに仕事ができたのは本当に幸運でした。
日本のプレイヤーの皆様には本当に感謝しております。この特別なパッケージ版を気に入っていただけるとうれしいです!