PLAYISMより、2023年4月12日に『ラスティッド・モス』(Rusted Moss)がSteam向けに発売される(※配信は2023年4月12日午後4時を予定)。

 本作は、グラップル(フックショット)を活用した移動が特徴的なメトロイドヴァニアだ。癖のある操作感だが上達するほどに楽しくなるグラップルを駆使した戦闘や、エンディング分岐にもつながる豊富な探索要素と、見どころの多いタイトルとなっている。

 本記事では、そんな『ラスティッド・モス』のプレイレビューをお届けしていこう。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア
※本記事はPLAYISMの提供でお届けしています。
『ラスティッド・モス』Steamサイト

グラップルの精密操作が必須のプレイヤースキル重視なゲームスタイル

 『ラスティッド・モス』は、明確な目的地が示されないまま探索をして敵と戦っていく、ジャンルで言えばメトロイドヴァニアのゲームだ。主人公ファーンが使う武器はライフルやピストルなどの銃火器で、遠距離攻撃をメインに戦闘をすることになる。

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敵も遠距離攻撃を使用してくることが多く、距離が重要なバトルスタイル。

 メトロイドヴァニアということで、マップは非常に入り組んだ作り。進行状況に応じてどんどんマップが広がっていき、プレイするほどに探索要素が増えていく定番のおもしろさは本作でも充実している。

 目標であるボスの位置なども細かくは伝えられないため、自分で探しながら、その道中でアップグレードアイテムなどをゲットしていくというのが基本の流れ。進めていくとマップどうしで思わぬところで繋がっていたり、進めなかった場所に行けるようになるメトロイドヴァニアの醍醐味は十分に味わえた。

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序盤の時点のマップ状況。終盤になると数倍のエリアがマップに表示される。

 ベースの操作方法はシンプルで、ジャンプと横移動がメイン。ジャンプして届く範囲であれば、段差のヘリなどに掴まることも可能だ。後述するグラップルを除くとダッシュなどの回避方法はないため、戦闘では反射神経より立ち回りや知識が攻略のカギになることが多い。

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 攻撃はキーボード+マウスならカーソルを動かして照準を合わせて、クリックで射撃、長押しでチャージショットをくり出せる。照準を合わせるのはパッドのスティックでもできなくはないが、マウス操作のほうが個人的には楽だった。

 本作はゲーム起動時にキーボード+マウス推奨と表示されるほど、的確に照準を合わせることが重要になるので、どちらか選べるならマウスを選択するのがオススメだ。

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 ジャンプを駆使した移動と銃を使って序盤は進んでいくが、ボスなどを撃破することで新たな能力を入手していくのがポイント。早い段階で本作の特徴でもあるグラップルが解放されて、移動の手段が大きく変化する。

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ボスを倒したり、探索することで新たな能力や武器がゲットできる。

 グラップルは天井や崖に苔が生えていると、そこにフック(ロープ)を刺して移動できるという能力。これを活用するとジャンプでは届かないエリアや、地面がない場所も進んでいけるようになる。

 非常に便利な能力なのだが、癖のある操作性ということは正直に伝えておきたい。当初、グラップルでの移動と聞いてテンポよくハイスピードで移動できるのかと思っていたが、どちらかと言えば精密さが求められる側面が強かった。

 もちろん、操作性が悪いといったネガティブな要素ではない。無茶苦茶な挙動で吹っ飛んでいくのではなく、落下速度などを精密に計算してゴールを目指すゲーム性なのだと早々に気づかされた。

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 グラップルは刺した場所、タイミングがその後の挙動に大きく影響していく。具体的にどういった仕組みかと言うと、グラップルはゴムのような性質を持つ。刺した場所とキャラの距離によってフックの長さが変わり、落下中で速度が出ているとゴムが伸びて反発が強くなり、遠くまで跳べるようになる。

 逆に近い距離でグラップルを刺してもフックは短くなりほとんど動かず、その後の飛距離も稼げなくなってしまう。つまりより遠く、高くに跳びたいなら落下中最適なタイミングでグラップルを刺さないといけないのだ。これが予想以上に難しく、最初は何度も失敗しながらプレイすることになった。

 ちなみに一度使用した後は、地面などに触れないと再使用も不可。何度もグラップルを使って飛ぶように移動していくという手法は取れない。

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近い距離でグラップルを刺すと、フックが短くなり遠くまで飛べない。
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かと言って使うのが遅すぎると、落下速度でフックが伸びすぎて失敗してしまう。

 実際にプレイするとわかると思うが、グラップル操作は癖が強く、その仕組みを感覚的に理解できるまでは苦戦を強いられる。この挙動の難解さには、主人公であるファーンみずから「このスキル、なんでこんな使いづらいの?」と愚痴をこぼすほど。プレイヤーが何度も失敗して落下するのは、ある程度想定通りということだろう。

 難しいからこそやり込む楽しさになり、うまく操作できると達成感もあるが、ゲームとしては高難度の部類だ。ちなみに、この難解な操作に挑むためのエリアもいくつか用意されており、失敗したらやり直しの崖登りや、タイムアタックなどもプレイできた。

 崖登りはグラップルを刺して一段ずつ上に登り、一度でも失敗したら最初の地点まで落下不可避と、某壺のおじさんを想起させるほどのステージ構成だ。寄り道なのでスルーしてもよかったのだが、筆者は諦めきれずに挑戦して踏破まで30分頭を抱え続けた。

 悲鳴を上げたくなるエリアはいくつもあるが、誤解のないよう伝えておくとひたすら負荷を与えてくるゲームではないのでご安心を。ストーリーを進めるだけなら崖登りほど難しくなく、リトライもしやすい構成になっている。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア
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上に上がるためにはやや右に向かって飛び、落下速度がついてからグラップルを刺さないといけない。失敗して落ちたら最初からやり直しだ。

 グラップルはステージ移動での利用はもちろんのこと、ボス戦でも活用する機会が多い。ボス戦はわずかな隙間や安全地帯を見つけながら攻撃するのがセオリーで、相手によってはジャンプでは逃げられないアクションをしてくることもある。

 相手の攻撃パターンを把握して、早めにグラップルで空中に待機する立ち回りや、ポジションキープをするのが攻略のカギ。相手の攻撃を回避できるポジションの確保、敵の攻撃範囲などは覚えて対策するのが重要で、初見で倒すのは難しいボスがほとんどだった。

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『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア

 グラップル以外に序盤で手に入る能力や、そのほかの強化要素についても紹介しておこう。早い段階でゲットできるのが、苔の生えた場所でのみ使える大ジャンプ。これを使うとこれまで登れなかった場所に行けるようになり、グラップルの挙動にも影響を与える。

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 こういった新能力が手に入るのもメトロイドヴァニアの醍醐味で、移動方法が増えるたびに行けなかった場所を再探索する楽しみが増えていくのだ。マップを見れば未探索の場所は把握できるため、ひとつ能力が手に入るたび隅々までチェックして新たなルートを開拓していくのがまたおもしろい。

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以前は行けなかった場所や、難解なグラップル操作が求められた部分もある程度楽に進める。

 こうして探索をすることで手に入るのは、新たな武器やHP・MPなどのアップグレード、トリンケット(装備)など攻略が楽になるアイテム。武器はピストル、ショットガン、ロケットランチャーなど全6種類が使用可能で、近・中・遠距離すべてで戦えるようになっていく。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア

 トリンケットはカスタマイズ要素となり、コスト上限以内で好きなものを装備できる追加のアクション・能力。一部は敵を倒すと手に入る通貨を使ってショップで購入できるが、ほとんどはマップを探索することで手に入る。

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 効果はシンプルに銃の射程を伸ばす、移動速度アップといったステータス強化系から、敵の弾を遅くする、MPを消費して爆発を起こすといった追加アクションも存在。トリンケットはそれぞれコストが設定されており、より強力な効果ほどコストが重め。

 最初は1~2個しか装備できないが、上限アップのアイテムを手に入れることで、より多く装備できるようになっていく仕組みだ。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア
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敵のHPを表示するアシスト効果を持つトリンケットもある。

 グラップルを駆使した移動でマップを探索してストーリーを進めつつ、新たなトリンケットや装備をゲットするのが、本作をプレイする基本的な流れとなる。操作は難しいがやり応えがあり、探索の幅も広く最後まで楽しく遊ぶことができた。

 ただ、個人的にやや不便だと感じたのがファストトラベルの少なさ。一部のセーブポイントでのみファストトラベルで移動できるのだが、この数が少なく探索時は同じエリアを何度も通ることになる。アイテム入手後、セーブせずに死亡した場合再度やり直しになるため、帰路が億劫になってしまうこともあった。

 これがさっと通り抜けられるエリアならいいのだが、場所によっては精密なグラップル操作での移動が必須になるので、未探索のエリアを巡るのも一苦労だ。あくまで好みの問題の範疇だが、もう少しファストトラベルが多いと気楽だなぁと感じる。

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すべてのセーブポイントを移動できるのではなく、ファストトラベルは一部エリアのみ使用可能。

 ちなみに、操作が難しすぎると感じた場合は、難易度オプションで自由に調整できる機能も用意されていた。こちらは救済措置になっており、無限MP、無敵や飛行状態などゲーム性を大きく変えてしまう機能まで使用可能。

 なお、敵の強さを落とす難易度調整はまだいいが、無敵と飛行に関しては本作の楽しみを大きく奪ってしまうので、一度クリアーするまでは使用はオススメしない。どうしてもクリアーできないがストーリーが気になるという場合にのみ、活用を考えよう。

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妖精と人間の価値観の違いがぶつかる独特な世界観

 ストーリーについても、ネタバレにならない範囲でレビューしていきたい。

 本作の主人公は、人間として育てられた妖精のファーン。ファーンは人間の赤子と妖精を入れ換える替わり子、いわゆるチェンジリングによって人間のフリをしていた存在だ。冒頭ではファーンが自分が過ごしていた施設を爆破して、相棒のパックとともに予見者を訪ねる場面からスタートする。

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 ファーンの目的は、人間の魔女たちが持つティターニアの欠片を集めて王を復活させ、人類を滅ぼして妖精の時代を始めること。一方の人類はティターニアのかけらを保持して復活を阻止することで、滅亡を避けようとしている。

 序盤から敵との戦闘でぎょっとさせられるのだが、主人公はアンチ人類な考えかたをするキャラクターで、人間を滅ぼすことに躊躇いを持っていないという癖の強い性格だ。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア

 世界観についてはゲーム内で発見できる資料などで推察していくことになるが、背景に倒壊したビルが映っており、終末間近な世界であるのが読み取れる。人間の時代、妖精の時代は交互に訪れるようで、ファーン目線だとつぎは妖精の時代だから人間は滅びてくれといった感じ。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア

 こういった世界観やキャラクターの設定は非常に個性的で、尖った描写になっているのが特徴。妖精と言ってもファンタジーでかわいらしい感じではなく、伝承に残っている残酷な仕打ちをしてくるタイプのキャラクターが多い。妖精との価値観の違いによる軋轢はゲーム内でもたびたび描写されており、人間目線で見るとえげつない行為を悪意のない悪戯くらいの気持ちでやらかす、質の悪い存在であるとも言える。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア
『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア
エリアにある文書や、遭遇するキャラから妖精の残酷さが垣間見えてしまう。

 設定の作り込みや描写はユニークだが、プレイヤーが操作するファーンが妖精寄りの性格をしていて感情移入が難しいのがやや気になるところだ。後々明かされはするのだが、ファーンが人間を滅ぼす理由などがどこまでも妖精目線で、最後までプレイした上で戦う理由にいまいち気乗りしにくかった。

 妖精に苦しめられている人間は冷たくあしらい、顔見知りであっても一切の躊躇いなく殺そうとする。主人公としては珍しいタイプの性格なのでこれはこれでおもしろいのだが、好みは分かれる部分だろう。唯一、妹であるマヤには特別な感情を見せるので、それがマルチエンディングでどのように影響するかは注目してほしいポイントだ。

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 個人的な所感としては、登場する敵との関係性や背景などもう少しキャラの描写をストーリーに盛り込んでほしかったが、人間と妖精が相容れない存在であると深く作り込んでいるのは見事だった。

 ファーンに感情移入しにくいので詳しい説明描写がほしいと思う一方で、妖精の考えを人間は理解できないと突きつけられている気分にも浸れる。ある意味では、徹底した妖精目線として描写されている証左なのかもしれない。古い伝承に出てくる妖精の設定などを知っていると、本作をより楽しめるだろう。

『ラスティッド・モス』プレイレビュー。人間と妖精の戦いを描く尖った世界観や癖のある操作性が味わい深い骨太メトロイドヴァニア

 難解ゆえに上達する喜びを味わえるグラップルや、それを十分に試させてくれるエリアの数々。エンディング分岐にもつながる探索要素も豊富で、メトロイドヴァニアとしての楽しさが詰まった『ラスティッド・モス』。

 RTAモードがゲーム内に用意されており、プレイヤースキルが大きく影響する設計になっているので、手応えのあるゲームを遊びたいという人にはとくにオススメしたい。

ラスティッド・モス

  • プラットフォーム:PC
  • 発売日:2023年4月12日発売
  • 発売元:PLAYISM
  • 開発元:faxdoc、happysquared、sunnydaze
  • 価格:1980円[税込]
  • ジャンル:アクション
  • 対象年齢:――
  • 備考:ダウンロード専売
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