人気格闘ゲーム『鉄拳』シリーズの最新作『鉄拳8』は、2023年3月31日から東京ビッグサイトにて開催される“EVO Japan 2023”で、クローズドαテストを実施する。それに先立って本作のメディア向け体験会が行われた。
体験会では、これまでに参戦が発表されている三島一八や風間仁ポール、ロウなどおなじみのキャラクターや、ナンバリングタイトルでは『鉄拳2』以来の参戦となる風間準など総勢10キャラクターが使用可能なαテスト版をプレイすることができた。
本稿では、これまでに情報が解禁されているバトルシステムなどの情報をおさらいしつつ、実際にプレイステーション5版をプレイすることで明らかになった仕様や各キャラクターのプレイインプレッションをお届けする。
最新技術を駆使したグラフィックやモーション、演出面のこだわりは『鉄拳8』でも健在
『鉄拳』シリーズと言えば、数ある格闘ゲームの中でもリアリティーのあるグラフィックやモーションといった表現へのこだわりが強い作品であり、その傾向は本作でも健在。リアルに筋肉が収縮する動きやさらに豊かになった表情は、前作『鉄拳7』と比較して飛躍的に進歩した部分だろう。
また実際にプレイして印象的だったのが、バトルへの没入感を促す“演出面”の進化。いままでも相手を叩きつけることでステージの床を破壊したり、お互いの体力が残りわずかな状態で技がぶつかり合った時にはスローモーションになるなど、『鉄拳』ならではの演出が数多くあった。
本作はそれらに加えて、特定のマッチアップで試合開始前に掛け合いを行ったり、ダウンすることで衣装や顔に汚れが付いて行ったりと、戦いが進んでいくことで状況が変化していくような演出が所々に見られ、それがプレイヤーに緊迫感や臨場感を味わわせるようになっている。
加えて、ステージを彩るオブジェクトやライティング、特定の技をくり出した際のエフェクトといった部分も前作以上にこだわりを感じさせる進化を遂げており、プレイヤーだけではなくリスナーも楽しめるような作りになっているのが印象的だった。
よりアグレッシブに進化したバトルはヒートシステムが鍵。刷新されたコントローラーシステムは初心者にも安心の設計
続いては、実際にプレイするうえで重要なバトルシステムについて説明する。
『鉄拳8』で主要となるバトルシステムは、
- レイジシステム
- 回復可能ゲージ
- ヒートシステム
- コントローラースタイル
の4つ。これらはすでに公式から出ている情報だが、ここでは各システムをおさらいしつつ、直に触ってみて明らかになった点も紹介しよう。
レイジシステム
レイジシステムは『鉄拳7』から継承されたシステムで、体力が一定以下になると“レイジ状態”に突入する仕組み。レイジ状態では“残り体力に応じた攻撃力の上昇”と、“レイジアーツが使用可能”といった特典があり、『鉄拳7』で使えた“レイジドライブ”は削除されている。
回復可能ゲージ
回復可能ゲージは、一部の攻撃を当てた際に表示される、体力ゲージ上にある白い部分のこと。このシステムは本作の戦略に大きく関わってくる新要素のひとつであり、
・特定の大技などをガードさせると、回復可能ゲージとしてダメージを与えることができる。
・空中コンボのダメージの一部が回復可能ゲージとして残る。
・体力を回復するには、“攻撃をヒットorガード”させることが必要。
・時間経過では体力が回復しない。
といった仕様になっている。
回復可能ゲージといえば『鉄拳タッグトーナメント2』の頃にも採用されていたシステムだが、時間経過で回復しないのが大きな変更点。相手から距離をとって時間を稼ぐのではなく、攻撃を仕掛けていくことで回復可能という仕様は、『鉄拳8』のバトルテーマである“アグレッシブ”な部分が色濃く反映されている部分である。
ヒートシステム
ヒートシステムは『鉄拳8』におけるバトルの中核をなすシステム。ひと言で表すと、“みずから試合の展開を作り出す”システムである。レイジシステムがラウンド終盤で機能する“逆転要素”の強いシステムであるのに対し、ヒートシステムは試合の状況に応じて、プレイヤーの戦略によって使いどころを選べるのが大きな違いとなっている。
ヒートシステム自体はその仕組みが多岐にわたるため、順を追って説明していこう。まず、本作では体力ゲージの下に“ヒートタイマー”と呼ばれるゲージがあり、1ラウンドに1回、ヒートシステムを発動することで、このゲージが10秒間にわたって減少していく。
ヒート状態となるには2種類の手段があり、
のどちらかが必要となる。
ヒートバーストは全キャラクター共通で“右パンチ+左キック”で使うことのできる固有技。打ち下ろしのモーションとなっており、動作終了後に自動的にヒート状態となる。
ヒート発動技は各キャラクターに複数設定されており、地上の相手にヒットさせることで、自動的に吹き飛んだ相手にダッシュで近づく演出が発生する。ヒット後はそのままヒート発動状態になり、ヒートバーストと同等かかそれ以上に有利な状況で攻めが継続できる。
続いてヒート発動状態になると、ヒートタイマーの減少のほか、すぐ横の“8”のアイコンが点灯。これは“ヒートエナジー”と呼ばれ、後述する“ヒートスマッシュ”や“ヒートダッシュ”といったヒート状態固有のアクションを行うことで消費する。
ヒートエナジーは最大でふたつ獲得でき、これはヒート発動の方法によって変化する。手軽に発動できるヒートバーストではひとつ獲得し、相手にヒットさせることが必要なヒート発動技ではふたつ獲得できる。
ヒートエナジーを使ってできる行動のひとつ目は、ヒートエナジーをすべて消費する“ヒートスマッシュ”。使用後にヒート状態は終了してしまうが、技自体のダメージや性能が優れているため、積極的に使っていきたい。
ヒートエナジーのもうひとつの使い道がヒートエナジーをひとつ消費して行える“ヒートダッシュ”。こちらはヒート発動中にさらにヒート発動技をくり出した際、レバーを前方向入れることで、攻撃後に即座にダッシュしてそのまま攻めを継続できるようになる。またヒット時にヒートダッシュをすると、相手のやられ状態が変化しそのままコンボがつなげられるようになるため、こちらもヒートスマッシュと同様に“とにかく使ってみて強い行動”となっている。
最後にヒート発動中は特有の行動以外にも変化があり、
- 攻撃をガードさせると回復可能ゲージとしてダメージを与えられる(削りダメージ)
- キャラクターごとに、個性や特徴が強化される
といった特典もある。とくにおもしろいのはふたつ目の“個性や特徴の強化”で、たとえばポールであれば一撃の重さがさらに強調され、一部のホールド技をガードさせた際に相手のガードを崩して無防備にさせられるようになる。一方でロウやニーナであれば、その特徴的な武器を使用した技が強化されるなど、各キャラクターでまったく違う部分に変化があるのは、これから新しくキャラクターを選ぶプレイヤーにとっても大事な指標となるだろう。
コントローラーシステム
最後にご紹介するシステム部分が、“スペシャルスタイル”と呼ばれる入力システムだ。『鉄拳7』では、“アシスト機能”という形で初心者がすぐに一連のコンボをつなげられる仕組みがあった。このスペシャルスタイルはそれをさらにブラッシュアップした機能となっており、全キャラクター共通で、
- □ボタン:得意技(ヒート発動技)
- △ボタン:コンボ始動技〜各種空中コンボ
- ×ボタン:パワークラッシュ技
- ○ボタン:下段技
- R1ボタン:ヒートバーストやレイジアーツなど
といった振り分けがされている。通常時(アーケードスタイル)とスペシャルスタイルは“L1ボタン”を押すことで試合中いつでも切り替えが可能となっており、初心者はもちろんそれ以外のプレイヤーにとっても、“新しいキャラクターで遊ぶ際、事前に多くを学ぶことなく、手軽に始められる”仕組みになっている。
直に触った上での各キャラクターのプレイインプレッションをご紹介
風間仁
仁はストーリーの中核をなすキャラクターで、三島一八と風間準の息子である。格闘スタイルは空手をベースとしているが、本作ではモーションが一新されたものが多く、ところどころでデビル化を活用した攻撃を行う。
ヒートシステムによる強化では、デビルの力を使った新技が追加されるのに加え、“最速右回し突き”と“最速左突き上げ”が最速入力以外でも使えるようになるところがおもしろい。仁や一八は見た目や動きがカッコいい反面、操作面がハードになりやすいキャラクターだが、操作難度が下がるのは初心者にもおすすめできるポイントだろう。
三島一八
一八は初代『鉄拳』で主人公を務めたキャラクター。シリーズを通して最重要人物のひとり。三島流喧嘩空手をベースとしつつ、デビルの力を自在に操るバトルスタイルである。
ヒートシステム発動時はデビル化による新技の追加のほか、仁と同様に“最速風神拳”が最速入力以外でも使用可能に。またヒートスマッシュの“オメガディザスター”は下段始動の連撃となっており、もともとの強みである近距離での二択のプレッシャーがさらに強化されているようだ。
ポール・フェニックス
ポールも初代『鉄拳』から皆勤賞のキャラクターであり、マーシャル・ロウとは修行仲間の間柄である。手数に優れるロウに対しポールは一撃に重きをおいた性能となっており、代名詞である“崩拳”のクリーンヒットは、劣勢から一気に逆転できる可能性を秘めている。
ポールのヒートシステムはその“崩拳”が強化されるほか、一部のホールド技の性能が変わり、ガードされても相手を無防備にできる。無防備な状態には発生の早い攻撃で追撃可能となっており、崩拳のプレッシャーで相手に接近し、相手のガードの上から無理やり攻め立てるという戦いかたができる。
マーシャル・ロウ
ポールの相棒であるロウも初代『鉄拳』から参戦しているキャラクター。マーシャルアーツを格闘スタイルとしており、遠距離戦はやや苦手な一方で、圧倒的な手数による近距離戦の爆発力が魅力のキャラクターである。
本作のマーシャル・ロウはその立ち姿からわかる通り、ヌンチャクを使った技が追加されているのが大きな特徴。ヒートシステム発動時はそのヌンチャク技が強化され、ヒット時にさらにコンボがつなげられるようになっている。ヒートスマッシュやレイジアーツでもヌンチャクをふんだんに使った連撃をくり出しており、今回プレイできたキャラクターの中でも、とくにひとつひとつのモーションを確認していくのがおもしろいキャラクターだった。
ニーナ・ウィリアムズ
ニーナも初代『鉄拳』から皆勤賞のキャラクターで、素早い打撃のコンビネーションと関節技を得意とする暗殺格闘術を扱う。本作では髪型が変わった上にサングラスをかけており、その見た目はさながら映画俳優のようである。
ニーナもロウと同様に本作では武器を用い、打撃コンビネーションのあいだに二丁拳銃を使った攻撃を行う。『鉄拳7』でもキャラクターカスタマイズで武器として扱えるアクセサリを装備できたが、実戦ではなかなか使いにくいおまけ要素として採用されていた。しかし本作のニーナの拳銃はしっかりと実戦的な性能に調整されているため、ガンガン拳銃を使った攻撃を仕掛けられる。華麗に銃撃を行うさまは、アクション映画のワンシーンのようで、見ている側もおもしろいキャラクターといった印象だ。
キング
キングはその見た目通りに数々のプロレス技を駆使して戦うキャラクターであり、初代『鉄拳』から参戦している。数多くの投げ技を持ち、投げ技から投げ技へつぎつぎと連係する“投げコンボ”を持っているのが特徴。
ヒートシステム発動中のキングは、特定の投げ技を決めることでヒートタイマーが回復する仕様となっているのがポイント。うまく投げを決められれば、より長いあいだヒート状態を維持できるうえ、相手に投げを意識させて対の選択肢を通しやすくなる。今回のキングはいままでとは違った読み合いを仕掛けられるはずだ。
ジャック8
ジャック8はロボットであり、初代『鉄拳』から参戦している“ジャックシリーズ”の最新型。本作では“アルティメットマシーン”の異名を持ち、その名の通りにより機械的なフォルムとなっている。
本作のジャック8は“ガンマハウリング”というパワークラッシュ技が注目のポイント。“ガンマハウリング”自体は相手の攻撃を受け止める動作のみで、そこからいろいろな派生技を出せる。派生技にはヒート発動技もあるうえ、ヒートシステム状態では、よりパワーアップした“ガンマハウリング”が使用可能になるため、これらの技の扱いかたがジャック8における重要なポイントになりそうだ。
ラース・アレクサンダーソン
今回のアルファテスト版では古参のキャラクターが多い中で、ラースは比較的新しい『鉄拳6』から参戦しているキャラクター。平八の隠し子であり、一八とは異母兄弟で仁の叔父にあたるなど、ストーリーにもさまざまな形で絡むポジションである。
ラースは各種攻撃から“ダイナミックエントリー”や“サイレントエントリー”といった、特殊構えに移行しつつ立ち回ることで自分からペースを作っていくキャラクターで、本作はさらに“リミテッドエントリー”という新しい構えを確認。ヒート状態ではその“リミテッドエントリー”が強化されるほか、“サイレントエントリー”への移行技が増えているなど、より連係のバリエーションが広がっているようである。
風間準
準は『鉄拳2』で初参戦を果たしたキャラクターであり、直近では『鉄拳タッグトーナメント2』にも参戦。一八の妻かつ仁の母親という非常に重要なポジションだが、『鉄拳3』のストーリーではラスボスのオーガに襲われ、以降詳細不明となっていたキャラクターである。
『鉄拳7』などに参戦していた風間飛鳥と同じ風間流古武術を使うが、準は“出雲”などの構え技とそこからの派生技を持つのが特徴。一発のパワーはそれほどではないものの、中段と下段の細かい連携で相手の体力を削っていく戦いかたが得意である。
本作の準は“風間の力”と呼ばれる“自身の体力を消費してくり出す強力な技”を持っているのが大きな特徴。体力を消費した部分は回復可能ゲージとなっているため、攻めを継続することによって回復可能。また、専用のモーションを取ることで回復する手段もある。
最初は“自身の体力を管理しながら戦う”という点に敷居を高く感じたが、ヒート発動時にはその“風間の力”を体力消費のリスクなしに使用できるため、使い始めはとにかくヒート発動を狙い、その後はガンガン強力な技をくり出していく戦いかたがわかりやすく有効だった。
凌暁雨(リン・シャオユウ)
シャオユウは劈掛拳をベースとした各種中国拳法で戦うキャラクターで、初出場は『鉄拳3』である。攻撃のリーチは短いものの、“背向け”や“鳳凰の構え”といった複数の特殊な構えを駆使して翻弄するような戦いかたが得意。
本作のシャオユウは、比較的スムーズにこれまで通りの感覚で使えるものの、パワークラッシュ技の“燕旋腿”を筆頭に細かい部分で新作らしい変化を発見。“燕旋腿”は相手の攻撃を受け止めたときのみ性能が変わり、削りダメージが追加されているなど、新作ならではの使い勝手となっている。またヒート状態になると、特殊構えのひとつである“擺歩”(はいほ)がパワーアップするようになり、特殊構えを駆使した戦いかたも従来以上に重要そうだ。
取材を終えて
by 編集部とよまん
どうも、格ゲー好き編集者のとよまんです。メインは2D格闘ゲームをプレイしていて、『鉄拳』シリーズは初代から家庭用中心にカジュアルに遊んでいます。前作『鉄拳7』は2D格ゲー勢らしくギースをメインに、初代から使い続けている平八も並行している感じ。そんなわけで、今回メディア向け体験会に招待いただいたので、個人的に感じた部分をさらっと書いておこうと思います。
体験会では、冒頭にスライドを用いてヒートシステムを中心に説明いただいたのですが、そのときに感じたことは“システムがメチャ多い”でした。今回の記事で紹介しているように、ヒートシステムだけでも複数の発動方法があったり、ヒート中のアクションも豊富だったり、ヒートエナジーの獲得本数が違ったり……と、正直複雑そうだなというのが第一印象。
そんな中、実際にプレイしてみると、『鉄拳7』がベースになっているので、前作をプレイしていた僕としてはすんなり入れました。レスポンスのいい操作性と技を当てたときの爽快感は『鉄拳』そのもので、とても安心感を覚えました。
そして肝心のヒートシステムはというと、とりあえずヒートバーストを出して有利な状況を作ってからヒートスマッシュをぶっぱなす。これだけ覚えれば形になるので、難しいことはなく、むしろ簡単に試合展開を作れたのでわかりやすい印象を受けました。
『鉄拳』シリーズは技の数が多く、初心者にはどれを使っていいのかわからない部分もあるかと思います。実際にぼくは新しいキャラを触るときにどの技を使っていいかわからないということが高いハードルとなり、なかなか新しいキャラにチャレンジできませんでした。
ですが、ヒートシステムがその長年の悩みを解決してくれそうです。というのは、ヒート発動技は、リーチの長い技、横移動に強い技、使いやすい中段攻撃など、そのキャラの主力となる5つくらいの技に割り振られているので、とりあえずこの技を使って戦えばいいよという指標になっているのです。しかも、前述の通りヒート発動技をヒットさせれば、自動的にヒート状態になって一気に相手を畳みかけるチャンスが生まれるので、これは初心者にも理解しやすいのではないでしょうか。
その一方で、ヒート発動技を当てると自動的に発動してしまうので、終盤までヒートを温存しておくことは難しいのかなと。ヒートとレイジを併せて発動すると爆発力がものすごいので、できれば終盤に使いたいと思ったのですが、そのためには終盤まで主力技を封印して戦う必要があり……という感じ。個人的には戦略の幅を持たせるために発動するかどうかを選べてもいいのかなと思ったけど、そうするとシステムが複雑なりそうですね(笑)。
もうひとつプレイしていて感じたのは派手さ。記事中でも紹介してありますが、とにかくエフェクトがすごい。最速風神拳なんかはメチャクチャ派手なエフェクトがついています(笑)。ただ、慣れないと画面が派手過ぎて視認性が下がるのでは?という懸念も。見栄えを考えると派手なほうがいいですし、競技シーンを考えると少し抑えたほうがいいかも? と、このへんは今後の反響を見ながら調整していくようです。
今回はαテストということで、まだまだ方向性を模索している段階です。より完成度の高い状態で発売してもらうためにも。αテストをプレイした人は忖度なく正直な意見を開発にぶつけてみるといいのではないでしょうか? 僕もメーカーさんには正直な感想を伝えていこうと思っています。
by ライターベックス
筆者は『鉄拳』シリーズを『鉄拳3』のころから続けているが、ガツガツ対戦するというよりは、ストーリーなどを楽しみつつ、友だちと遊ぶ程度のカジュアルプレイヤーである。
今回の体験会を通してうれしかったのは、いろいろなところがこれまでの作品と大きく変わりながらも、それらが一貫してきた“鉄拳らしさ”をしっかりと感じられたこと。とくに前作『鉄拳7』は、eスポーツが隆盛となった時代背景もあり、もともとの持ち味であるリアリティーのある表現と、競技としての高いバランスを兼ね備えた、真面目さやクラシカルな印象が強かったように思う。
そこからすると『鉄拳8』は、ロウやニーナなどの武器を使った攻撃や、過去にないレベルで手軽に“最速風神拳”が使えるなど、「ホントにいいの!?」と思わせるようなヤンチャぶりを感じさせる点が多い。しかしよくよく過去作品を振り返ってみれば、リアルな表現の中にもチャレンジ精神に溢れた試みがあるのが多々あるのが『鉄拳』であり、その点からすれば本作は原点回帰している作品とも取れるだろう。
“アグレッシブ”という本作のテーマ設定は、なにもプレイヤーにのみに限った話ではなく、メーカーにとっての決意の表れでもある。その熱意を感じるべく、“EVO Japan 2023”のクローズドαテストをプレイすることによってSNSで出回る情報や、公式からの続報に期待を膨らませていこう。
by ライター西川くん
あえてPS5コントローラ“Dual Sense”、いわゆるパッド操作で遊んでみた西川くんです。僕からは、パッドでの操作感だけに的を絞って、お伝えします。
対戦格闘ゲームといえばレバーとボタンのアーケードライクな操作が主流! という人も少なくないと思います。最近は、レバーレスコントローラもありますね。僕も最近はそっちで遊んでいます。
とはいえ、パッドで遊んでいる人のほうが、いまでも圧倒的に多いのではないでしょうか。3D対戦格闘ゲームないし『鉄拳』シリーズは、基本的に難しいコマンド入力もないので(“最風”やら“青ライ”やら“挑発ジェッパ”などは別として)、もともとパッドで遊びやすい印象です。
アーケードスタイルは、これまでと変わらない操作感。唯一違うのは、デフォルト設定ではL1ボタンがスペシャルスタイル切り換えボタンになっているため、同時入力系に割り当てたいL1ボタンの扱いに困りそうな点です。ボタン設定で変更はできるので、別のボタンにスペシャルスタイルを割り当てたり、人によっては“スペシャルスタイルを封印する”、またはこれまでのL1ボタンの使いかたをやめる、という必要あるかもしれません。
パッドで操作するにあたり、LP、RP同時押し(WP)、LK、RK同時押し(WK)が難しいのでL2、R2ボタンに割り振ったのですが、スペシャルスタイルで問題が発生。アーケードスタイルでの操作は問題ないのですが、スペシャルスタイルのR2ボタンはレイジアーツボタンとなっています。しかし設定でR2ボタンをWKボタンへ変更したことにより、スペシャルスタイルでのワンボタンレイジアーツが発動できなくなってしまいました。
もしかしたらオプション設定で改善できるのかもしれませんが(体験会の時間内に確認できればよかったのですが)、そのあたりの操作設定は気になるところです。
スペシャルスタイルは、まさにパッド向けというか、アーケードスティック操作のほうが難しいように感じました。ゲーム画面左にスペシャルスタイル専用のボタンガイドが表示されますが、〇ボタン、×ボタンなどと表示されるため、アーケードスティックですと「え、どれがそのボタン?」となりがちなところ、パッドならすぐに理解できるはずです。
ワンボタンで多彩な技をくり出せるのは非常にお手軽で、コンボボタンを押せばコンボ始動技→空中コンボを叩き込んでくれるのが非常に気持ちいいところ。これはこれで慣れが必要になってくる部分ではありますが、パッドのボタン操作だけで『鉄拳』らしい駆け引きが楽しめました。
『鉄拳7』にあった“ストーリーアシスト”や“簡単コンボ”は、単に代表的な技やコンボがひとり用モード限定でくり出せるものでしたが、スペシャルスタイルはしっかりと中段、下段などの駆け引きが取り入れられているので、ゲームの入門にはもってこい。「別に対戦をやり込みたいわけじゃない!」というプレイヤーも、手軽に『鉄拳』の醍醐味を味わえる、とてもいい操作だと感じています。