コーエーテクモゲームスより2023年3月3日発売の"ダーク三國死にゲー”こと『Wo Long: Fallen Dynasty』(『ウォーロン フォールン ダイナスティ』、以下『ウォーロン』)。対応機種はプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、Xbox Game Pass、PC(Steam、Microsoft ストアとなっている。
本記事では、開発陣へのインタビューをお届けしよう。
※本インタビューは2023年2月14日に収録したものです。
安田文彦(やすだふみひこ)
Team NINJAブランド長。本作ではおもにゲーム部分でのプロデュースを担当。『仁王』シリーズではディレクターも兼任。
山際眞晃(やまぎわまさあき)
ソニー・インタラクティブエンタテインメント時代に『Bloodborne』をプロデュース。現在はTeam NINJAに所属。
平山正和(ひらやままさかず)
『ディシディア ファイナルファンタジー』シリーズなどに携わった後、本作で初めてディレクターを担当。
開発中止が生んだチャンス。当初は“西遊記”の予定も?
――本作は昨年6月に発表され、ついに発売を迎えます、いまの心境を教えてください。
安田私は今回プロデューサーの立場で参加しましたが、開発メンバーたちがしっかりとがんばってくれたんだなと、うれしい気持ちでいっぱいです。正直崖っぷちだったところもあったのですが、よくここまで来たなと。
平山開発期間は約3年ほどですが、長いようであっという間に感じます。ようやくユーザーの皆さんに遊んでいただけますが、どのような反応になるか期待も不安もあります。
山際Team NINJAに参画し、初のプロデュースタイトルになりました。最初のころは安田や平山と頻繁に話をして、本作の形作りをしたのをよく覚えています。試遊や体験版でユーザーさんからの反響があり、そういった声が開発への原動力となりました。
――体験版などでの意見は、具体的にはどういった内容が多かったのでしょうか?
平山きびしい意見が多いかも、と覚悟していたのですが、予想以上にポジティブな意見をいただき驚きました。その中で「化勁が難しい」という意見は多かったです。皆さんの意見を受け、全体的にもう少し手軽にチャレンジできるアクション性に改善しよう、という方針で調整を進めました。
――平山さんは本作で初めてディレクターを担当されたとのことですが、これまではどんなタイトルに関わっていたのでしょうか?
平山Team NINJAひと筋で、『NINJA GAIDEN』や『デッド オア アライブ』シリーズに関わっていました。その後は、長い期間スクウェア・エニックスさんの『ディシディア ファイナルファンタジー』に携わっていました。
――ディレクターに抜擢された、というところでプレッシャーもあったのでしょうか?
平山安田に任命されたときは率直にうれしかったです。新規タイトルのため、ちゃんとできるのかと不安もありましたが、どんなゲームにしようかと野望にも燃えていました。
――安田さんが平山さんをディレクターに指名されたのですか?
安田はい。じつは開発中止になったタイトルがありまして、そのディレクターを平山が担当していたのです。けっこう大きなチームだったのですが、仕事がなくなってしまって。ならばそのままのチームで『ウォーロン』を作ろうということで、平山がディレクターになりました。
私は最初のうちはそこそこ口を出していましたが、途中から合流した『仁王』チームのスタッフたちも平山がすぐにまとめてくれたりしまして、これなら安心だなと。
――なるほど。本作は三国志がモチーフですが、なぜ三国志を選んだのでしょうか?
安田『仁王』に並ぶようなタイトルにしたい、舞台は中国にしたい、というのは考えていました。ただ、題材のモチーフとしてはほかに“西遊記”という案もあったのです。ファンタジー要素のある三国志がうまくいくかが未知数だったからですが、当社のファンの方は三国志を望まれるだろうと思い、いまの形になりました。
平山Team NINJAにはいま、中国出身のスタッフが多くいますので、中国らしさをしっかり追及できました。その国の人でないとわからないようなニュアンスだったり描写、デザインなどを彼らが指摘してくれたり形にしてくれたりするのがありがたかったです。
山際そのおかげもあってか、本作はアジア圏からの反響がものすごく多いですね。
骨太さは残しつつも選択の幅で遊びやすく
――本作は“ダーク三國死にゲー”と銘打たれています。私が遊ばせていただいたところ、骨太な難度ではありながら、万人に遊びやすく調整されているように感じました。
平山軸となるアクションとして化勁がありますが、ほかにも仙術や士気ランクなどの要素もあります。アクション性だけではない、攻略の幅は意図的に用意しています。調整の方針としては単に難度を上げ下げするのではなく、いろいろなアクションを駆使して攻略してほしい、ということを念頭に置きました。
安田『仁王』シリーズはRPG要素が強かったため、敵から受ける一撃が重めでした。準備をしっかりすることで、攻略しやすくなるような感じですね。一方、本作にもRPG要素はありますが、アクションをうまく使うことで活路を開きやすいゲーム性になっています。
山際『仁王』とは目指しているところは共通していて、強敵を倒したときの達成感という部分は変わりません。“死にゲー”と銘打たれているからといって、やられること自体が楽しいわけではなくて、その中で試行錯誤して勝つから楽しいですよね。
そこで受けるダメージが多すぎると、「化勁をもっと狙ってみようかな」とか「あの仙術を試してみよう」といったリスクのある行動が取りづらくなるので、そこは少しだけマイルドになっています。とはいえ、死ぬときは死にますが(笑)。
――ですよね(笑)。また、氣勢システムは一見ややこしいのですが、慣れると非常にシンプルでなじみやすいと感じました。
平山化勁は構想の初期からあった要素です。攻撃や化勁のアクションはユーザーがシンプルに扱えるものにするため、試行錯誤しながらいまの形に落ち着きました。ゲージが複数あるので、これ以上に複雑だとアクション部分に集中しづらいのです。
たとえば仙術は当初、個別リキャスト式だったのです。ただそれをやると、また見なくてはならない項目が増えてしまって。ですので、発動自体は氣勢ゲージを見るだけで済む形にしました。
安田途中、ものすごく複雑なシステムになっていたこともありました(苦笑)。『仁王』は武器の構えや特徴的なアクションの“残心”、さらには妖怪の技など、要素がものすごく多くなっていました。それはそれで喜んでいただけたのですが、今回はそうではなく、よりシンプルでかつ深みがあるような方向性でアプローチしようと、平山にお願いしていたのです。
平山目指したアクションの方向性の違いもあります。『仁王』は侍のような、わびさびを感じるアクションでした。本作は中国武術のように美しく流れるアクションにしたかったので、それを表現するために、近距離で攻撃的に戦うシステムを目指しました。
――バトルのほかに、探索も本作の魅力だと感じました。つい探したくなるような場所に必ずご褒美があるのが印象的でしたが、どのような狙いで取り入れたのでしょうか?
平山ジャンプの導入にあたって、より立体的に探索ができるようにしました。安田などがテストプレイしているのを見ると、アイテムがないかを探していることが多かったので、そういった行きたくなる場所にはアイテムを置いています。標旗もご褒美のひとつとして、そういった場所に配置するようにしました。
――発表当初は「RPGらしさは薄い」とお聞きしていましたが、結果的にはRPG要素もそれなりに強いように感じたのですが……?
安田結果的には、そこそこあります(笑)。やられたときに装備を見直したり、新たなアイテムを活用してみたり、といった攻略の糸口を見つける楽しさは、絶対的に変わらない価値なのかなと思いますね。とはいえ、装備をじっくり吟味する必要はなくて、適当にざっくり強そうなものを装備するだけでも強くなれるようにしてます。
――有名な武将といっしょに戦えるのも魅力だと思います。かなり頼りになる印象ですが、初心者向けの救済要素なのでしょうか?
山際それもありますが、有名な武将が弱かったら、ガッカリしますよね(笑)。初期のころは、じつはもっと弱くて。「こんなの関羽じゃない!」といった意見が多かったこともあって、いまのバランスになりました。
Team NINJAの今後の展望
――2024年には『Rise of the Ronin』の発売も予定されていますが、進捗はいかがですか?
安田本作のアップデートやダウンロードコンテンツの制作がありつつも、その横で開発を進めていきます。現在は佳境ですね。
――ほかにも新タイトルは動いていますか?
安田『Rise of the Ronin』は約7年前から開発していて、2024年発売予定です。本作が2023年発売で、やはり2025年には新タイトルを出したい、という感じですね。それは今後、お伝えできるタイミングでお話できればと。
――毎年新作を出す、という気持ちであると。
安田やはり何年も掛けて1本出す、をくり返すだけではチームの成長も遅いです。しっかりと培ったノウハウをつぎのタイトルに活かすという意味でも、今後を見据えて毎年何かお出しできるようなプランを立てています。
――ちなみに、海外ゲームイベントで『NINJA GAIDEN』と、『デッド オア アライブ』のリブート企画が進行中、というような発言があったと、ファンのあいだで話題になりましたが……。
安田いやいや、誤解だったのです(苦笑)。あくまで、シリーズ作品として大事に考えていますというお話をしただけだったのですが。ですので具体的なお話はできませんが、もしその時が来たら、いち早くお伝えしたいですね。