Obisidian EntertainmentのアクションRPG『アウター・ワールド』(原題The Outer Worlds)をプレイステーション5/Xbox Series X|S世代向けにアップグレードした新版『アウター・ワールド: スペーサーズチョイス・エディション』(以下、SCE)が発売開始された。またPC向けのSCE版も各プラットフォームで配信開始されている。
今回本誌では発売を記念して開発陣へメールでミニインタビューを行ったので、その内容をお届けしよう。
エリック・デミルト
『Fallout 2』のプロデューサーの1人。『アウター・ワールド』オリジナル版ではプロダクションディレクター、スペーサーズチョイス・エディションではリードプロデューサーとして関わる。
ティム・ケイン
初代『Fallout』をプロデュースするなど、90年代から活躍する洋RPG界の名クリエイター。『アウター・ワールド』では共同ゲームディレクターを務めた。
前世代機版からのセーブデータ移行はできず。PS5ではアダプティブトリガーに対応
――PS4/Xbox One版のゲームからセーブファイルを移行することはできますか?
エリックいいえ、セーブファイルの移行はできません。
――プラットフォーム固有の機能アップグレードなどはありますか? 例えばPS5でアダプティブトリガー機能でエナジーガンをチャージできたら楽しそうですが。
エリックプレイステーション5版ではDualSenseコントローラーのトリガーフィードバック機能を使っていて、遠距離武器を使用する際にプレイヤーが武器のタイプに沿ったトリガーの反撥を感じられるようになっています。
たとえば火炎放射器のような武器なら一定の圧力を感じるのに対し、オートマチック銃なら弾が発射されるたびにトリガーの反撥を感じるはずです。スナイパーライフルやショットガンなどの単発で撃つタイプの銃では、発砲されて衝撃が抜けるまでのトリガーを絞り込むような感覚が得られます。ビジュアルがいいだけじゃなくてプレイ感もいいですよ。
PS5/XSXでは4K60fps、XSSでは1080p60fps動作
――SCEでの技術面の進化について教えてください。レイトレーシングなどはいかがですか? 各プラットフォームでの最大解像度やフレームレートはどうでしょう?
エリック今世代のハードウェアの優れた性能を活かすべく、ゲーム全体を通じて非常に沢山の強化を施しました。レイトレーシングのような技術的な変更を入れるよりも、もっと直接的にコンテンツの強化に繋げられるようなことをやっています。
たとえばテクスチャーや(物質の素材感を与える)マテリアルの解像度を上げましたし、武器のマテリアルの調整などもやっていますね。
エリックストーリーテリングのビジュアル面を強化するためにもいろいろやっています。NPCのモーションも追加しましたし、略奪者固有のモーション、コンパニオンキャラの戦闘終わりの感情表現モーションなども足しています。固有ネームを持つNPCにはビジュアル処理を加えて、会話時の顔のアニメーションも改善しています。
時間帯表現にも手を入れて、サチュレーションや影のクオリティ、建物の外観などをよりダイナミックなものにしました。環境のVFXや武器のVFXも改善しています。ビザンチウムのタウンセンターにある天体観測儀のためにカスタムアニメーションを追加したのが我々のアプローチを示す好例だと思います。クールなものをもっとかっこよくする方法を見つけられました。
最大解像度とフレームレートについては、Xbox Series Sのみ1080pで60FPS動作で、それ以外は4K解像度で60FPSになります(いずれも動的解像度有効)。
レベルキャップ上昇は新版限定
――レベルキャップの上昇はSCE固有なのでしょうか、それともPS4/Xbox One版にも適用されるのでしょうか。
エリックこれはSCE限定のものとなります。
――レベルキャップの上昇によってこれまで不可能だった面白いビルドを何か見つけましたか?
エリックテスト班はレベルキャップによって可能になったさまざまな要素を最小/最大化する方法を見つけているでしょう。これらの変更は予期しない結果をもたらしたりもするものですが、我々がSCEで最も重要視しているのは本編と2つのDLCの体験を強化することであって(別のものに)変えてしまうことではないので、その点については注意しました。
フィニアスが防弾ガラスの向こう側にいる理由?
――このバージョンに限ったことではないですが、あなたの好きなプレイスタイルや本作の好きな部分はなんですか?
エリック自分が好きなのはまず撃って、話は後でするって感じですね。コンパニオンもなしで、長距離武器と高いステルス時クリティカルステータスを活かしていきます。
基本的にステルスで開幕から大体勝てるようなベストポジションを取って、戦いで問題を解決する傾向がありますね。これが(そうしないと同氏が暗殺してしまうので)フィニアスが防弾ガラスの向こう側にいる理由ですし、ティムが初代『Fallout』時代から「エリックだったら何をしでかす?」という問いをゲームデザインの方法として持ってる理由でもあります。
『フォールアウト』の生みの親ティム・ケインの記憶に残るカオスな縛りプレイ
ティム私は『アウター・ワールド』の発売前に16回は最初から最後までクリアーしたんですが、ちゃんとさまざまなスタイルのバランスが取れているか、可能なあらゆる組み合わせを試そうとしましたね。遠距離ビルドも近接ビルドもやりましたし、ソロでもコンパニオン重視でもやりました。ステルスも会話重視のもね。
ティムそれらのビルドのスタイルの間の好みはないんですけども、代わりに好きなプレイの回はありました。その時は“信じらんないぐらいステルス寄りのリーダー”(Unimaginatively Stealthy Leader)という名前のキャラを作ったんです。(名前の通り)ステルスとリーダーシップのスキルを重点的に伸ばすキャラでね。
それでQAリードのテイラー・スウォープの作った、ランダムにどうプレイするか決めるジェネレーターを使って方針を決めたんです。それは以下のようなものでした。
- 科学者と評議会のルートを追って、最終的に評議会側につく
- ステルスとリーダーシップ重視。Dex(器用度)は平均以下
- 難度はミディアム
- コンパニオンクエストをできる限りやる
- エメラルド・ヴェールでは脱走者側(植物実験場)に電気を送る
- モナークへの行き方はステラーベイへのナビキーを入手する
- モナークではMSIに管理させる
- あらゆるドラッグを入手したその場で摂取する
最後の選択肢が忘れられないものにしてくれましたね。その効果がなんであれ、あらゆる消耗品を拾った瞬間に使っていました。つまり常時なんらかのバフ・デバフがついているかあらゆる消耗品の後遺症に襲われていたかのどっちかで、そしてそれらは大抵その場の状況に対して役に立たないものでした。
言ってみれば、自分で縛ったスーパーノバ難度でプレイするようなものです。デバフで会話の選択肢にはつまづくし、武器の揺れや着弾はひどいしという中をプレイし通しました。チャレンジでしたが楽しくて記憶に残る回でしたよ。
ティム開発は私にとっての本作の最高の部分でした。スタッフのみんなも自分と同じように楽しんでくれたことを願いますね。作っていてとても楽しいゲームでしたし、いいチームで作れました。
開発が完了した時にプロデューサーのライアン・ルシンスキとトニー・ブラックウェルと一緒に開発を振り返る10分のメイキング映像をチームのために作ったんですよ。そこには開発中のあらゆる瞬間が詰まっていました。シリアスなことも馬鹿なことも、ゲームが形になった所も。自分たちが手掛けたものに誇りを持っているでしょう。