2023年3月2日、IHIステージアラウンド東京にて『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』の初日前会見と、公開フォトコールが催された。
この演目は不朽のRPG『ファイナルファンタジーX』(『FFX』)を歌舞伎化したもので、歌舞伎役者の尾上菊之助さん自ら企画・演出をしたという肝いりの作品だ。
※菊之助さんの『FFX』にかける熱い思いが語られたインタビューはファミ通.com関連記事をチェック!
今回、ひと足早く報道陣に向けてお披露目された場面は、
- オープニング
- シーモアとの戦い
- ユウナによる“異界送り”
の3シーン。
本稿ではこれらの場面の見どころや、生で観て感じたことをお届けするが、結論から言ってしまうと『新作歌舞伎 FFX』は大当たり。3シーンだけでも観られてよかった、ほかの場面も早く観たいと思えた。
これから観に行こうか、どうしようかと思っている方の背中を全力で押したい。
また、リポートの後には、キャスト陣の和気あいあいとした雰囲気が垣間見えた記者会見の様子もお届けする。

オープニング:ティーダのたったひと言が心をわしづかみ! 超巨大スクリーンにあの名場面

まずは舞台のオープニングが公開。
ゲーム冒頭と同じく、ザナルカンドの荒涼とした風景が目の前に広がっている。
IHIステージアラウンド東京の舞台には高さ8メートルの巨大なスクリーンがあり、そこにゲーム画面(舞台のために特別に用意・編集されたもの?)が映し出されるのだ。
スクリーンは湾曲していて実際の視界に近い見えかたのせいか、自分がそこにいるかのような、まるでパーティーメンバーのひとりとしてあの場に座って焚火を囲んでいるような気さえしてくる。
そこへ、ティーダの名ゼリフ「最後かもしれないだろ? だから全部話しておきたいんだ」という声が入る。
えっ? ティーダだ。ティーダじゃん。予想以上にティーダだった。彼を演じる尾上菊之助さんの声なのだが、ティーダの声としてスッと心に入ってきた。
ゲームでティーダ役を演じられた声優の森田成一さんの声に寄せたトーンなのだが、これが単なる声真似ではなくて、菊之助さんのティーダになっている。菊之助さんのなかでティーダが息づいているのが、このひと声だけで感じ取れた。
そしてバックには、テレビ番組『全ファイナルファンタジー大投票』でも1位に選ばれた名曲『ザナルカンドにて』の和楽器アレンジバージョンが流れている。原曲も和楽器だったんじゃないかと錯覚するくらいで、柔らかな調べが一層、胸に沁みる……ここまで開始1分。すでに涙腺がゆるんできた。
シーモアバトルでは歌舞伎らしい殺陣がたっぷり! ワッカはブリッツボールで戦う

シーモア役の尾上松也さんの存在感!
続いて公開されたのは“シーモアバトル”。
彼と初めて対決するマカラーニャ寺院でのシーン。シーモアが、ユウナとそのガードたちに「その命 捨てていただこう!」と、言い放つところでは、シーモア(尾上松也さん)の衣装が“ぶっ返り”という仕掛けで一瞬にして変化する。

ぶっ返りとは、歌舞伎の衣装チェンジの技法のひとつで、着物に留めてある糸を引き抜くことで内側の生地が表に出るというもの。その人物が本性を現すときに使われる演出なので、ティーダたちと敵対することになるシーモアの状況にもマッチしている。
そしてバトルシーンに突入。戦闘開始早々にリュックがシーモアに「ポイー」といった具合にちぎって投げられてしまう。シーモア、強し。
「ゲームでも最初は苦戦したなあ」なんて思い出がよぎる。
ワッカのブリッツボール、そう来たか~!

つぎはワッカが自身の武器であるブリッツボールで、杖をかまえるシーモアに立ち向かう。ボールを片手に剣戟というのも珍しいが、さらにボールが2個に増えてビックリ。「そうだ、ワッカのオーバードライブ技は複数の敵にヒットしてたな」と、ハッと思い出した。
「実際にブリッツボールで戦うってどうするの? 投げるの?」
と、不思議に思うかもしれないけど、実際的にはワッカ役の中村橋之助さんは両端にボールがついた棒をクルリクルリと回しながら攻防をくり広げていく。その様子はさながら棒術の演舞のよう。
これで、ブリッツボールで戦うという表現と、体術的かつ歌舞伎的なかっこよさを両立しているというわけ。なるほど! とうならされた演出だ。

さらに、ワッカがブリッツボールをシーモアに投げつけると、ボールはワッカの手を離れ、空中で激しい回転をしながらシーモアを攻め立てる!
……という部分は、ブリッツボール棒(?)を黒衣(くろご)さんが操るという、歌舞伎ならではの表現なのだが、黒衣さんが暗闇に溶け込んでいるのでボールが浮いて見える。黒衣さんの華麗な動きもひとつの見どころだ。

フィニッシュでは、ワッカがボールを蹴るモーションも。ほかの歌舞伎の演目では高く足を上げて蹴るといったアクションがあまりないので新鮮だった……が、そのシュートもシーモアに打ち返され、ワッカも退場。
ルールーの魔法攻撃は舞踊に

そこへルールーが飛び出し、魔法対決が始まる。
まずルールーがウォーターの魔法を仕掛ける。ルールー役の中村梅枝さんは水色のリボンを連ねた扇子のようなものを手にして舞っているのだが、これが本当に美しく、激しい水の流れがよく表現されている。対するシーモアはファイラを発動。松也さんは炎が描かれた大きな旗を振りながら応戦する。
「そういえば、シーモアは魔法も得意なんだよなあ」と、当時プレイしていた記憶が蘇ってきた。観ているとシーモアについて数10年ぶりに思い出すね。
ルールーもしだいに劣勢となってしまうのだが、ここでは背中を大きく反る、女形さんならではの見せ場も。歌舞伎で女性が斬られてしまうときなどに見られる動きなのだが、「ええー!? 人間って座りながらここまで背中反れるものなの?」と驚かされること請け合いだ。観劇される方はお見逃しなく!

キマリは通さない。衣装すごい。マジでキマリ!
ピンチのルールーに助太刀をしたのはキマリ。槍で豪快に戦うキマリに合わせて、「バタ、バタ」とツケの音がたくさん入って迫力がある。
ツケは演技を強調する効果音で、専門の方が木を板に打ちつけて出しているもの。歌舞伎をご覧になったことがない方のためにあえてザックリとした説明を入れると、拍子木ではないのだけど拍子木みたいな形の木のブロック(棒?)を叩きつける木の音がするやつ。
それにしても、キマリの衣装の再現度がすごい。完全にキマリ。

装飾も多いうえに、手足を見ると肉襦袢になっていて動きづらいであろうに、坂東彦三郎さんのキマリはそんなことを微塵も感じさせない。写真で見ると、シーモアの身長(髪の毛含む)とそこまで変わらないのに、舞台上のキマリが大きく見えたのは動きと見せかたが巧みだからだろう。
そんなキマリも、シーモアの放つサンダラを食らってしまう。サンダラは雷の模様が描かれた、じゃばら折の紙をブワッと広げることで表現されているのだが、ここは和の雰囲気でカッコイイ。


さらにシーモアの攻撃は続き、キマリが状態異常の混乱に陥ってしまったらしく、ルールーに斬りかかる。
後から気づいたのだがこれは、グアドガードが“ぼんのうやく”使うところのアレンジ! まさかそんな細かいところまで舞台に盛り込んでくるなんて……。これは実際にゲームをプレイしていなければ思いいたらない演出だろう。
アーロンの酒しぶき! かっこいいいいえええおおお!!
キマリもルールーもシーモアの策に敗れてしまうが、ここでアーロンが立つ。
口に含んだ酒を刀に吹きかける酒しぶきの演出が、めちゃくちゃカッコイイ。これ、オーバードライブ技の“征伐”じゃないですか……! 中村獅童さん演じるアーロンならシーモアを倒してくれるに違いない、そう思える頼もしさがある。
アーロンが持つ大刀での立ち回りはじつにダイナミック。だが、己の拳や、剣の柄での攻撃を織り交ぜているのがまた歴戦の戦士らしい。そのところどころに、歌舞伎の見得や所作が挟まれるのもイイ。歌舞伎『勧進帳』の弁慶の動きも入っていた気がする。
デザインからして“和”の要素が強いアーロンなればこそ、歌舞伎化された際にもっともしっくりくるキャラクターと言ってもいいだろう。もともとかっこいいアーロンが歌舞伎になってさらに渋くなった。かっけえ……。

そんなアーロンもシーモアにやり込められてしまうのだが……ここでリュックがポーションでみんなを回復。
ステージアラウンド東京がすごい
リュック役の上村吉太朗さんがかわいらしくポーションを振りかけるときに、背景のスクリーンにキラキラのエフェクトが投影されるのも芸が細かい。

「ポーションで大丈夫なの? フェニックスの尾が必要なレベルでは……?」と思うくらいの熾烈なバトルだったが、パーティーメンバーはこれで持ち直し、揃って見得を切る。絵になる。見ていて気持ちがいい。
と、ここまで、ガードのひとりひとりの見せ場が設けられていたわけだが、舞台セットがどんどん切り替わっていくのも初めて見る演出で楽しかった。IHIステージアラウンド東京は自分たちが座っている客席が360度回転するのだが、振動や音はほとんど感じないため、観客からは舞台のほうが回転しているように見える。
とくに回転速度が遅めのときは「え、いま動いているの?」とぜんぜんわからないくらい静か。何度か天井を見上げて、模様が回転しているのを確認してしまった。これなら揺れに酔ったりする心配もなさそうだ。というか、上演中は没入感のせいでそんなことを気にする時間もなかった。
シーモア VS ティーダ! 勢ぞろいする召喚獣

さて、舞台は場面転換し、シーモアとティーダの戦いに。
刃とともに、相容れないふたりの会話が交わされる。ティーダのセリフはほぼ現代語で、私たちが日常で使う言葉と変わらない。
対照的にシーモアの言い回しは少し古風で歌舞伎感があるが、問題なく聞き取れる。「歌舞伎って台詞が難しいんじゃないの?」と不安な方もいらっしゃるかもしれないが、その心配はご無用だ。

そしてついに「私の闇を知るがいい……」と、シーモアが“アニマ”を召喚する。背景のスクリーンにはアニマの映像が映し出されるのだが、スクリーンの大きさも相まって、すごい迫力だ。そしてウネウネ動いている……これ、原寸大アニマ? ちょっと怖いくらいだ。
対するユウナも「祈り子様、力を貸して!」と召喚獣たちを呼び出すのだが、シヴァやイフリートたちが背景スクリーンに勢ぞろいする様は圧巻。

召喚獣のモデルはおそらくゲームのデータそのまま(『ファイナルファンタジーX HDリマスター』のもの?)なのだが、立ち姿や配置が今回の歌舞伎用に特別に調整され作られた映像のようで、この演目でしか見られない特別感がある。アニマと複数体の召喚獣が対峙する画面が映るのは短い時間なのだけど、とにかく映像が大きいので大迫力だ。
そうしてユウナたちに敗れたシーモアは、舞台後ろに倒れ込み姿を消す。これは客席からは見えない穴“奈落”に落ちるという歌舞伎ではおなじみの仕組みなのだが、たぶん下で受け止められるとはいえ、まったく自身の背後を見ずに背中から落ちるってすごく怖いのではないか。度胸どんだけ……?
Twitterでも話題になった“異界送り”。生で観るとさらに感動……

最後はユウナの“異界送り”。中村米吉さんが杖を手に、可憐に神秘的に舞う。BGMは「いーえーゆーいー」の『祈りの歌』なのだが、やさしい女性の歌声は長唄のような和の雰囲気がある。もうこれだけで鳥肌が立っていた。
米吉さんは舞台上に設置されたリフトに乗りながら、さらに舞い続ける。照明やミストスクリーンの演出により、浮遊しているというか、本当にユウナが“舞い上がっている”ように見える。あまりの光景に取材のメモを取るのも忘れてボーッとしてしまった。自分も異界に送られそうになったのでは……?



異界送りはYouTube公式動画でも見られるが、この魂が体からフワーッと抜け出そうな感覚は、やはり舞台の生の空気によるところが大きいかもしれない。
「異界送り」新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX スペシャル映像
フォトコールまとめ

……と、あまりの幻想的光景に異界へ送られていた記者の魂が現実へ戻ってきたところでフォトコールは終了。
今回のフォトコールはここまでだったが、この3場面だけでも見どころは満載。『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』への期待は確かなものになっていった。
キャラクターやテーマをていねいに描いているし、バトルシーンの細かなセリフや演出を拾っていたりして、原作ファンに寄り添っているのがビシバシ伝わってくる。「ああ、これはまさに私たちの『FFX』だ」と思えた。
回転する客席や最新の映像技術による新しい体験、それらと古典歌舞伎との融合。観劇ファンも楽しいひとときになること間違いなしだ。
この“舞台での体験”はゲームのなかでも、ほかの演目でも味わえない特別なもの。
今後再演があるかは未知数で、もし再演されるとなってもIHIステージアラウンド東京で上演されるとは限らないし、今回のキャスティングとはまた異なるかもしれない。現に、菊之助さんが以前手がけた『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』は、2度目の上演の際は会場とキャストの一部が変わっている。舞台は生モノ、行ける好機を見逃さずに足を運んだが吉だ。
「おもしろそうだけど前後編観ると丸1日がかりなのがなあ~」、という方もいらっしゃるかもしれないが、一部を観てみた実感からすると、今回の3場面はあっという間だった。シートの座り心地もよかったし、客席はかなり傾斜がついていたので見やすい印象。環境としては申しぶんない。
何と言っても歌舞伎は生で観て初めておもしろさが体感できるもの。もし迷っているなら、思い切って飛び込んでみては。
観劇にかかる時間はたった1日、その思い出は一生もの。きっとそんな体験になるはずだ。
キャストのお茶目な一面がのぞいた記者会見

ここからは同日に行われた記者会見をお届け。


ティーダ役の尾上菊之助さんから「ザナルカンド・エイブスのエース、ティーダっス」と挨拶が。これにはほかの出演者の皆さんもニッコリ。
そして、菊之助さんは原作の『ファイナルファンタジーX』 の世界を尊重しつつ、歌舞伎の世界と融合し、ダイナミックで美しく心に届くメッセージがお届けできると思っていますと続ける。
また、「世界中のファンに向けて、互いを思い合い、愛し、諦めない心、前向きな姿勢、亡くなられた方への鎮魂、そして未来への元気をお届けしたい」と語った。


続いてはアーロン役の中村獅童さんが、アーロンらしくビシッと決めた後、「劇場で待ってるね(ハート)」と、かわいらしく呼びかけて場を盛り上げる。


シーモア役の尾上松也さんは「エボンの老師となりました。シーモアです」と、これまたシーモアらしいお声で自己紹介……からの「絶対おもしろいよ! 見に来てね」と、ホンワカなメッセージ。


出演者の中で最年長であるシド役の中村歌六さん(72歳)は「迷路のような舞台裏、迷子にならないようにがんばります」と意気込む。


ジェクト役の坂東彌十郎さんは「よう、泣き虫ティーダの父親、ジェクトだぜ」と、ジェクト風に挨拶したものの、出演者の皆さんからは「(コメントが)フツーじゃない?」というような反応をされてしまう。なんだか楽屋でのワンシーンを見るかのようでほっこり。
そしてブラスカ役の中村錦之助さん、キマリ役の坂東彦三郎さん、ルールー役の中村梅枝さんがご挨拶。








ルッツ兼23代目オオアカ屋の中村萬太郎さんは「オオアカ屋、よろしく!」とゲームを思い起こさせてくれた。


ユウナ役の中村米吉さんが、かわいらしくご挨拶。ワッカ役の中村橋之助さんは、本番がとても楽しみ、『FFX』と歌舞伎の融合を楽しんでいただきたいと語る。




リュック役の上村吉太朗さんは『FFX』と“同い年”ということで出演できることをうれしく思っているとのこと。
ユウナレスカ役の中村芝のぶさんは「すばらしいシーンがたくさんあります。ザナルカンドにて皆様の起こしをお待ち申し上げております」と、ユウナレスカ然とした魅力的なご招待。


質疑応答
おすすめの見どころシーンは?
質疑応答のコーナーでは、おすすめのシーンとして菊之助さんはブリッツボールの試合(水中で戦う架空のスポーツ、歌舞伎ではどうなるの!?)やマカラーニャの森のシーン、そしてジェクトとの場面を挙げる。どの場面も歌舞伎ならではの立ち回りを工夫しているとのことだ。
また獅童さんも、歌舞伎上級者の方にも楽しんでいただけるのではないかという。このステージアラウンドで出演経験のある松也さんは、没入感もポイントとして挙げられていた。客席が回ることにより、通常なら時間がかかる場面転換もすぐに行われるうえ、出演者と一緒に移動しているような感覚になれるとのこと。
父親を演じる出演者、それぞれの心境は?

物語には3組の親子が登場することから、父親を演じる出演者の方々の心境をたずねる質問も。
シド役の歌六さんとしては、娘のリュック、姪のユウナがただひたすらにかわいく、心配でしょうがないというごくふつうの親子関係を築いていきたいとのこと。
ジェクト役の彌十郎さんからは「不器用なジェクトパパ」という、大河ドラマを彷彿とさせるキーワードも飛び出した。
そしてブラスカ役の錦之助さんは、「ブラスカは聖人君子のような人物、まさに錦之助そのものでございます」と、また場を盛り上げる。実際、錦之助さんはとても品があり、そういった役柄を得意とされているが、お茶目心も持ち合わせていることが伝わってくる。
ユウナレスカの衣装は第1~第3形態をまとめて!

衣装についての質問では、キマリ役の彦三郎さんは「キマリだけでなく衣装全体がテレビゲームの中から3次元に具現化されたような出来栄え」だと太鼓判。
ルールー役の梅枝さんは、ルールーの衣装は少し紫色になっていたり、原作ではベルトになっている裾の部分がキレイに光る裏地になっていて気に入っているとのこと。
そして、原作ではかなり薄着のユウナレスカについて、芝のぶさんは(そのままでは)女形の衣装として無理かなという形だったのでデザイナーさんが第2形態、第3形態を混ぜたようにアレンジし、よく見るとユウナレスカのすべてが詰まっているので、ぜひご覧いただきたいと語った。
異界送り
Twitterなどでも話題となった異界送りの公式動画再現について尋ねられたユウナ役の米吉さんは、ユウナは“最終的には舞台の上には立っていない”ので、どうなっているかをぜひ劇場で見ていただきたいとのこと(先述のフォトコールでその仕掛けについて触れたが、あの不思議な感覚はぜひ生で体験してほしい)。
ブリッツボール in KABUKI
みんなが気になっているブリッツボールの試合については、橋之助さんは「歌舞伎ってかなりぶっ飛んでることが多いのですが、歌舞伎のぶっ飛びらしさが出た演出になっています」と語った(歌舞伎はかなりぶっ飛んでいるのは本当に同意するところだ)。
ブリッツボールの選手たちそれぞれに見せ場があったり、その中にも歌舞伎作品のオマージュ演出もあるとのこと。
歌舞伎講座があるので歌舞伎初心者も安心
そして公演中にはオオアカ屋による歌舞伎講座もあるとのこと。萬太郎さんは演出家の金谷かほりさんから「オオアカ屋には最初に、お客様とお友だちになってほしい」というオーダーがあったそう。
吉太朗さんは今回の出演するにあたり、『FFX』を初めてプレイされたそうだが、経験者の方もまたもう1度プレイしていただけたら、おもしろさを再発見することがあるかもしれないのでプレイしてみてはというご提案も。
出演者をパーティーにたとえると?
ちなみに、出演者を旅のパーティーにたとえると、盛り上げるアタッカー役や癒してくれる回復役などを考えると誰が思い浮かぶかを菊之助さんに聞いてみると、アーロンのセリフの中でも「諦めずに自分の道を進んでみろという」一節があり、アタッカーとしてはそのイメージが強い獅童さんを挙げられていた。
舞台を構成していくにあたり、困難なこともたくさんあったそうだが、「こうしたほうがいいんじゃないか」とアーロン的なアドバイスで支えてくれたのが獅童さんだったそうだ。また、それも獅童さんだけではなく、パーティーの皆さんも力を貸してくれて、いつも皆さんの“ポーション”で元気をいただいたとのこと。本当にいいパーティー、いい関係性を築かれて舞台に臨まれているのが伝わってくる。
最後は出演者の皆さんで「劇場でお待ちしております」とのコールで記者会見は結びとなった。

劇場限定スペシャルメニューも販売! マリンブルーのスイーツとドリンクでHPチャージ

ここからは会場のロビーで提供されるスペシャルメニューを紹介。ドーナツにブルーのチョコがかけられたブルーマーブルリングは、ビビットな青に驚くが、やさしいお味。
ドリンクの“MOON-月-”は、ユウナのようなかわいらしいカラー。甘くて口当たりマイルド。“SUN-太陽-”はマンゴーベースで、さまざまなフルーツの味わいが感じられる。“LAGOON-ラグーン-”はライチ風味のスポーツドリンクミックスで、さっぱりとして飲みやすい。3種のなかでは一番気に入った。
限定メニューはコラボアイテムも手に入るので、開演前や休憩時間にチェックしてみよう。
会場では座席でお弁当も食べられるとあって、スペシャルなお弁当を注文するのも断然アリ。どれも歌舞伎観劇気分を盛り上げる、名店の味が揃っている。






会場ではグッズ販売も!
劇場では、『ファイナルファンタジーX』グッズや本作『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』グッズも販売。観劇の思い出に買ってみるのもあり。お出掛け前にグッズ情報をチェックしてみては。
歌舞伎観劇歴9年のライター・本間ウララがおすすめする歌舞伎観劇する際のワンポイントアドバイス(強火)
もし観劇を決めている方で、歌舞伎は不慣れという方に知っておくとちょっと役立つ情報を箇条書きでお届け。
- 会場にはクロークはないので、エコバッグなどを持参し、上着を入れて座席の下に置くとゆったり座れる
- ハンカチは持っていこう。思わず泣いてしまうかもしれない
- 衣装の細部などをよく見たい方は、オペラグラスや双眼鏡を持参してみては
- 座席についたら、靴紐やファスナーをゆるめると、足のむくみが軽減される
- くしゃみ、ノドのイガイガ。もし我慢できそうなら、拍手が起こるタイミングを狙うと目立ちにくい
- ファスナーで開け閉めできる袋の飴は、ノドのイガイガにすぐ対応できて便利
- 盛った髪型や、大きな帽子は後ろの人が見えづらくなってしまう。スッキリまとめたコーデがおすすめ
- 前傾姿勢も後ろの人の視界を塞ぎがち。背中をシートにつけたほうが姿勢としても楽なのでおすすめ
- 尾上菊之助さんや尾上松也さん、坂東彦三郎さんの“屋号”は音羽屋(おとわや)。チャンスがあれば「音羽屋!」と声をかけてみては(※)。「音に菊(きく)」と覚えてね。ほかの出演者の皆さんも屋号をお持ちなので、調べてみては
※2023年3月6日追記:本公演では観客からの声出しはまだNGとのこと。かけ声はキャストの方々に任せて心の中で叫ぼう。
- 中村歌六さんと、中村米吉さんは実の親子。歌六さんと中村錦之助さん、中村獅童さんは従兄弟どうし。米吉さんと中村梅枝さんは、はとこどうし、というように歌舞伎界は血縁関係が多い。親子や兄弟で恋人役を演じることも珍しくありません。役者さんのルーツを知ると、より歌舞伎が身近に感じられるかも
- 歌舞伎は昔から流行りモノやセンセーショナルな出来事を演目に取り入れてきた背景があります。世界で人気を博した『FFX』とのコラボも必然だったわけですね
- 公式動画にもある、ティーダが“「待っていた」たぁありがてえ”と答える場面は、歌舞伎の演目『お祭り』が元ネタで、観客のかけ声に役者が答えるコール&レスポンス的な場面。ほかにも印象的な動きや、やり取りは古典歌舞伎のオマージュだったりするので興味がわいたら調べてみてね
- 歌舞伎の舞台を観てみたくなったら、サイト歌舞伎美人で、毎月の演目をチェックしてみよう。3000円~4000円台のリーズナブルなお席もあるよ