『クライマキナ/CRYMACHINA』(以下、『クライマキナ』)は、フリューが手掛ける完全新作アクションRPG。2023年7月27日にNintendo Switch/PS5/PS4ソフトとして発売される予定だ。

本稿では、本作のメインキャラクターデザインを担当したろるあ氏、エネミーデザインを担当したYoshi.氏、主題歌・挿入歌・BGM のコンポーザーを担当した削除氏、シナリオ監修を務めた久弥直樹氏への一問一答形式のメールインタビューを掲載。各スタッフたちの作品への想いを感じ取ってほしい。
ろるあ氏
SNSを中心に活動するイラストレーター。『クライマキナ』ではメインキャラクターのデザインを務める。文中ではろるあ。
Yoshi.氏(よし)
キャラクターデザインやゲームのモデリング、フィギュアの造形などを手掛ける造形作家。『クライマキナ』では、エネミーのデザインを務める。文中ではYoshi.。
削除氏(さくじょ)
数々の楽曲を手掛ける作曲家。2018年10月18日に発売された『CRYSTAR -クライスタ-』(以下、『クライスタ』)ではBGMを手掛けた。『クライマキナ』の主題歌・挿入歌・BGM のコンポーザーを務める。文中では削除。
久弥直樹氏(ひさやなおき)
名作恋愛アドベンチャーゲーム『Kanon』の脚本などを手掛けたシナリオライター。『クライスタ』のシナリオも担当。『クライマキナ』ではシナリオ監修を務める。文中では久弥。
ろるあ氏
自分の“新たな好き”を織り交ぜて描くキャラクター
――『クライマキナ』制作のお話をいただいた際の率直な感想を教えてください。
ろるあもともとコンシューマーゲームのキャラクターデザインに興味があったので、お話をいただいたときは純粋にうれしかったです。林さんから詳しい内容を聞いた際は、本作であれば自分の得意とする部分と挑戦すべき部分があって楽しそうだなと感じたことを覚えています。
――『クライマキナ』の魅力・見どころは何でしょう?
ろるあキャラクターデザインを担当している身としては「キャラクターデザインこそが魅力です!」と言えるとよいのですが、個人的にはストーリーがいちばん魅力的だと思っています。どこまで詳しく話していいのかわからないので端的に言うと“俺の好きが詰まっている”でしょうか。
――キャラクターの設定を見たときの感想を教えてください。
ろるあ「こういうキャラ好き!」という感じでした。キャラクターを描く際、私がいただく情報は多すぎないほうが想像の余地が出てやりやすいと事前にお話していたため、大まかな概要とイメージのキーワードなどの比較的シンプルな情報だけをいただきました。あとは基本的に私の好きなようにさせていただけて、林さんには感謝です。
――メインキャラクターには通常形態と戦闘形態があります。どういった点にこだわってデザインされましたか?
ろるあ通常形態の私服に関してはファンタジー感とリアル感のあいだを狙って“現実にいそうでいないけどやっぱり居るかもしれない”くらいの塩梅でデザインしました。戦闘形態はメカっぽい部分と肉感や布のある部分が出来るように織り交ぜているのですが、そのどちらもがお互いの魅力を高められるようにイメージしてデザインしています。


――キャラクターデザインで難しかったことやたいへんだったことを教えてください。
ろるあこういったひとつの作品で何人ものキャラクターデザインをする際に毎回起こってしまうことがあって……。つねに“自分が好きであること”を条件のひとつとして入れているので、その中でデザインしていくと、やはりキャラ間でいろいろと被ってしまうことがあるのです。それを避けるために自分の新たな好きを見つけて織り交ぜていく、という作業がたいへんでした。あとは、ふだんメカを描き慣れていないのもあって、戦闘形態のメカ部分や武器デザインはかなり難航しました。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします!
ろるあどのキャラクターたちもデザインを通してより魅力的になったと思っています。ぜひ彼女たちの生きざまを直で見届けてもらえるとうれしいです。よろしくお願いします!
Yoshi.氏
機械の思想を取り込んだエネミーデザイン
――『クライマキナ』制作のお話をいただいた際の率直な感想を教えてください。
Yoshi.涙のシステムやシナリオがとてもよかった『クライスタ』の遺伝子の流れを汲む新作ということで、お話をいただけて光栄でした。ただ、企画書に敵がメカと書いてあり、自分のデザインライン的に生体メカのような有機的なデザインになりそうだったためそこが心配でしたが、林さんのイメージも同じだったので「やらせてください!!」と即答で返答しました。
――『クライマキナ』の魅力・見どころは何でしょう?
Yoshi.ろるあさんのキャラクターデザインももちろんですが、人間がいなくなった世界で、それぞれの人間ではない独自の思想を持った機械たちが自分たちこそ人であると大義を掲て、人と同じように争い合ってしまう悲しさは個人的にかなりおもしろいと思っているポイントです。人間には絶対なれない存在が、その定義すら変えてでも自分たちは人間と主張したいところにエモさを感じました。
――エネミーデザインについて林さんからどういったオーダーがあったのでしょうか?
Yoshi.いちばん弱い、いわゆるザコ敵でも「明らかにコアがあり、そこを狙うようなゲーム都合の弱そうなデザインではなく、しっかりと強そうに見える兵器にしてほしい」というオーダーを受けました。なので、最初に登場するザコ敵でも強そうに見えますし、話が進むにつれてより強そうな個体も出てきます。プレイしていてかなり楽しめるはずです。

――ケルビムなどのザコ敵とボスエネミーをどのように描き分けたのでしょうか?
Yoshi.ケルビムは素体が無個性だったのに対して、派閥を体現した仮面を付けることで個性が出るようにしました。空っぽな器が思想を得ることで自身の存在を主張する、ということを仮面で表現できたので、世界観とうまくリンクしたと思っています。ボスについては、その派閥の思想を具現化したかのようなシルエット、ディテールにしました。ケルビムと違って骨の制約がないので、さまざまなデザインにできたと思います。

――エネミーの設定を見たときの感想を教えてください。
Yoshi.派閥ごとに主義・思想が独立しているのはおもしろいと思いました。思想の違いで争うというのは明確な悪役とはまた違った魅力があるので、プレイヤーたちとどう敵対し、倒されていくのかがとても興味深かったです。
――本作のエネミーは機械的だったり、生物的だったりと、かなり特徴的です。エネミーをデザインする際にこだわった点はありますか?
Yoshi.機械が人体を再現しようとした結果、表面的には人の形を再現できていてもその形になった理由までは理解できなかった、ということが伝えられるように意識しました。たとえば、背骨は首から腰までまっすぐつながることなく胸は空洞になっていたり、手足の関節も軸位置がズレて外側についていたりなど、兵器ががんばって人を理解しようとした結果の姿というイメージでデザインしました。



――エネミーデザインで難しかったことやたいへんだったことを教えてください。
Yoshi.ほぼすべての敵モデルやその武器、装甲などをデザインしながらZBrush(3Dソフトウェア)でハイモデルも担当するというかなり特殊な進めかただったため、開発後半は物量の多さからたいへんでした。ただ、ディレクターの林さんと好きなデザインラインの好みが限りなく近かったので、本当に最後まで楽しく作業ができて、すべて納品し終わった後は達成感と同時に寂しさも残りました(笑)。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします!
Yoshi.ここまで自由に自分の好きなテイストでほぼすべてのエネミーデザインをさせていただいたのは初めてでしたが、どれもこだわりを持ってデザインしました。自分がやりたいことをすべて詰め込んだので、私が手掛けたフィギュア“紡ギ箱”が好きなかたにはとくに刺さると思います。儚げな物語とクセの強い敵デザインを楽しんでいただけたら幸いです!
削除氏
楽曲作りは難航して挑戦の連続だった!
――『クライマキナ』制作のお話をいただいた際の率直な感想を教えてください。
削除ついに来たなと思いました。『クライスタ』の発売から5年も経っていますからね。『クライスタ』ではいち作品の音楽をほぼすべて担当するという貴重な経験をさせていただいて、林プロデューサーともう一度仕事をしてみたかったので、とてもうれしかったです。『クライスタ』のさまざまな反省を踏まえて、本作ではまた違った多くの試みをしてみたいなと、声が掛かった段階からすでに考えていました。関われて非常に光栄です。
――『クライマキナ』の魅力・見どころは何でしょう?
削除ここは私の音楽と言いたいところですが、ゲームとしては、登場キャラクターの掛け合いやストーリーの展開、キャラクターの個性、世界観が見どころです。音楽でそれらを引き立てることができていたらいいなと思っています。
――どういった手順で楽曲を作ったのでしょうか?
削除日本の音楽の現場では曲先のことのほうが多いのですが、自分の音楽制作の技術的に詞先のほうが圧倒的に得意で、そして詞が先の場合、ほとんど自由に楽曲を書けることが制作の序盤で気が付きました。まず林さんが歌詞として伝えたいことを書き、それをASPRGuS君(※)がプログラムとしての形であり詞的である文に落とし込み、それを私が歌としてメロディの形にして、作編曲していくというスタイルに落ち着きました。このとき、外国語的な歌詞の譜割の研究をするにあたって、ほかに自主制作の楽曲を何曲も作り、練習する必要があったところも苦労しましたね。
曲数自体がかなり多く、録音ができる状態に持っていくまでにものすごい作業量でたいへんでしたが、ある程度全体の雰囲気が見えてやりかたが定まっていくうちに作業に慣れていき、音楽が安定して形になっていくのを感じました。
※同人音楽をベースに活動しているクリエイター。削除氏の楽曲『Destr0yer』では歌詞を共作。
――楽曲について林さんからどういったオーダーがあったのでしょうか?
削除「BGMにキャラクターが歌う歌を入れたい!」という力強い要望がありまして。『クライスタ』のときに私も「次作を作ることになったら歌を入れたいね」と話していたので、そのステージを用意していただけて本当にうれしかったです。とはいえ、お互いに未知の領域でして、ひたすらに手探りで、つねに勉強をして試行錯誤をして作っていくという形になりました。
もともとのオーダーとしては、世界観の説明と“歌”ということと、エノアというキャラクターが歌っているということの意味を表現できれば、というくらいだったと思います。ですが、途中で「日本語の歌詞やめない?」という話が挙がり、プログラム風の歌のクオリティーについてもさらに考えるようになったことで、未知の領域での途方もない制作に変化しました。創作とは冒険だなと感じましたね(笑)。

――主題歌『NotToNotice();』のイメージ・コンセプトを教えてください。
削除“サイバーなSFファンタジー”を音から表現するため、カラーベースやトランスステップといった近未来的な音色を使うジャンルの要素を踏襲しつつ、それでいて主題歌としてある程度ポピュラーな歌の枠に収まる曲になるように構成しました。制作には難航し、この曲を作るまでにいくつか没を生みましたね。とくにエノアのキャラクター性をつかむことに非常に苦労し、林さんに夜な夜な作詞のアイデアを出していただいたり、解説をしてもらったり、そして最終的に作詞をASPRGuS君にまかせ、一体どうなることやらと震えながらレコーディングを行い、皆の力を合わせて何とか何とか生み落としました。
苦労の甲斐もあってとてもいい曲になったと思います。この曲が完成したおかげでそれ以降に作る音楽の方向性が一気に定まりましたが、この難しい方向性で全体を統一することになったゆえに見た地獄もありました(笑)。無茶ぶりまみれの曲が結構な数あったかと思いますが、全曲バッチリ歌い上げてくださった遠野さんに本当に感謝です。
――挿入歌やBGMはどういったイメージ・コンセプトで作り上げたのでしょうか?
削除本作の音楽全体の雰囲気作りについてですが、3Dの空間性とSFのサイバー感を表現することを心がけています。そのため、メカニカルで空間的な楽曲をとても多く制作しました。ふだんの楽曲制作に比べて生楽器をあまり使わない意識を持ち、聴覚的に気持ちよい音の情報量を持たせつつも生体性を感じさせ過ぎないように作り上げていくことにしました。
BGMに関しては、歌ありの曲もなしの曲も、あくまでもBGMということを今回はより意識しています。ただのいい曲になりすぎないように、あえて少しボーカルの音量を下げてみたり、歌のある曲にしてはあまりにも複雑なメロディやコード進行や拍子であったり、それにともなって引き起こされるさまざまな表現に挑戦しています。
――機械少女のエノアが歌う英語&プログラミング言語風の楽曲の特徴を教えてください。
削除歌詞に関しては構造上、実際にプログラムとして成立する形になっています。音響面では、エノアというキャラクター、そしてその声のかわいらしさと、私の楽曲のパワフルさが融合した、“かわいくて強い”曲たちになっているのがポイントです。

――楽曲の制作でこだわった点はありますか?
削除ふだんの音楽制作でもよく意識していることなのですが、つねにワクワクして続きが聴きたくなる音楽になるように意識しています。今回はゲームの曲なので制約はもちろん数多くありますが、その中でもできる限りのことを尽くしています。そして、全体のバランスを見て、完全に同じような曲ができる限り続かないように、リズム、テンポ、調性のどれかが、それぞれの曲で違う物になるように意識して作りました。
――楽曲の制作で難しかったことやたいへんだったことを教えてください。
削除それはもう、どれも難しいことだらけでした。まず、歌曲の制作の経験は過去にいくらかあったのですが、歌がある楽曲をメインに活動しているわけではなく、ましてやゲームの何かを表現した歌を制作するというのは初めてだったので、何をどう伝えるのかをつかまないといけないという想定外の壁にぶつかりました。インストでの表現とは言語的な表現力が当然のようにまったく違うので、慣れている人であれば当たり前かもしれませんが、全体の雰囲気をつかむだけではなく、詳細に状況を理解するということを深く求められることに自分は驚嘆してしまいました。
『クライスタ』の経験もあってまったくの手探りというわけではなかったものの、おもに、歌詞とその譜割をどうするのかということが制作を圧倒的に困難にさせまして……。こればかりは林さんと私のふたりの手では負いきれず、最終的にASPRGuS君の多大な協力によってなんとか形になりました。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします!
削除私を始め、制作関係者のさまざまな挑戦が詰まった作品です。ぜひプレイしてその意志を浴びていただけたらと思います。
久弥直樹氏
自然に楽しむために必要な会話や物語の流れを重要視した
――『クライマキナ』制作のお話をいただいた際の率直な感想を教えてください。
久弥フリューさんから以前発売された『クライスタ』にシナリオで参加させていただいたときから、またいつか林さんとお仕事をごいっしょしたいと考えていましたので、お話があったときは素直にうれしかったです。こうして新作を発表できる日をずっと楽しみにしていました。本作ではシナリオ監修としての参加になりますが、作品への思い入れはより強くなっています。
――『クライマキナ』の魅力・見どころは何でしょう?
久弥『クライスタ』とは設定や世界観は異なるのですが、登場人物たちの葛藤や怒りといった人間味のある感情や、そこから溢れ出る涙が物語の根底にあるという部分は前作から受け継がれています。個性的なヒロインやキャラクターたちの心の有り様を楽しんでいただけますと幸いです。
――林さんの企画・シナリオを読んだ際の感想を教えてください。
久弥最初にお話をうかがって企画を拝見させていただいたときは、『クライスタ』を強く意識しながらも設定やキャラクターをそのまま引き継ぐのではなく、ゼロから新たな世界観を構築したおもしろい企画だと感じました。
――林さんとのやり取りで印象に残っているエピソードはありますか?
久弥『クライスタ』のとき以上にお互いのスケジュールに余裕がなく、作業中はずっと慌ただしかった印象が残っています。定期的にリモートで打ち合わせをしながら進めていたのですが、気のせいかも知れませんが、そのたびに画面越しの林さんがやつれていっているように見えて少し心配しながら進行していました……。
――どういった点にこだわってシナリオを監修していますか?
久弥今回、キャラクターの設定や性格付けの部分は林さんのこだわりの箇所ですので、そういったキャラクター像の部分ではなく、お話全体の動きやキャラクターの心情の移り変わりのような、作品に没入しながら自然に楽しむために必要になってくる、会話や物語の流れをとくに重視して監修させていただきました。

――本作のシナリオの監修で難しかったことやたいへんだったことを教えてください。
久弥気になった箇所やキャラクターの感情の流れのような部分を、林さんにどう伝えてどう調整していくのかを試行錯誤しながら進めることがたいへんでした。シナリオ会議の中では、ときには物語全体にわたる調整が必要になる場合もあり、自分だけでなく対応された林さんもたいへんだったと思います。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーにメッセージをお願いします!
久弥『クライマキナ』は『クライスタ』の流れを色濃く受け継いだ完全新作になります。『クライスタ』を楽しんでくださったユーザーの皆さまはもちろんですが、ストーリー上のつながりはありませんので、『クライスタ』を未プレイの方も楽しめる作品になっていると思います。発売までぜひ楽しみにお待ちください。
林風肖氏と平八重諭氏へのスペシャルインタビューも公開中
企画、プロデュース、シナリオを務めるフリューの林風肖氏と開発を担当したアクリアの平八重諭氏へのインタビューも公開。作品の誕生経緯や林氏が過去に手掛けた『クライスタ』との関係性などをうかがっているので、こちらもチェック!