いま、将棋が熱い。
将棋が熱いんですよ。
2023年1月8日から始まった藤井聡太王将と羽生善治九段による王将戦。2月25日から行われた第5局では藤井王将が勝利し戦績を3勝2敗として、白熱した戦いが続いています。
近年では将棋の人気も右肩上がりで、藤井聡太王将と羽生善治九段の名前をニュースなどで見る機会が増えてきました。それほど将棋を知らない筆者でも、ひりつくような王将戦のニュースをチェックしています。
その藤井聡太王将は現在五冠。五冠って強いですよね。
現8つあるタイトルのうち5つも持つほどの実力があるということは、2020年3月5日に発売された将棋ゲーム『棋士 藤井聡太の将棋トレーニング』のCPUもめちゃくちゃ強いことでしょう。
それでも同タイトルが歴代将棋ゲームのなかでいちばん強いかどうかはわかりません。これまで発売されたさまざまな将棋ゲームどうしで対戦させてみたらおもしろそう!
というわけで、実際に試してみました。
本記事では、“最新作や昔のタイトル、歴代将棋ゲーム全16作品の中から最強のCPUを持つ将棋ゲームはどれだ!”を試してみます。近年では自分では将棋を指さずにプロ棋士の対局を観るファン、“見る将”が増えているということで、読者も見る将の気分で対局を観てみていただければと。
やりかたとしては、各ソフトとハードを用意してプレイヤー VS CPU戦を選択。先手・後手を調整し、AのソフトではCPUを先手にしたならBのソフトでは後手に。先手(A)のCPUが一手指したらBのソフトにプレイヤーの手としてその手を入力。つぎに後手(B)のCPUが手を指したらAのソフトにプレイヤーの手として入力……という作業をくり返します。
これでハードの垣根も発売年代も飛び越えて、ソフトAのCPUとソフトBのCPUが(人の手を介して)対戦できるというわけです。
登場選手(将棋ゲーム)は、比較的新しいソフトを中心にしつつさまざまなハードから幅広くチョイスしました。もちろん新しいソフトの方がハード性能も高く将棋AIアルゴリズムも進化しているので有利になるでしょうが、勝負は時の運。各棋士の奮闘に期待します。
そして、本企画の対局はすべて一発勝負。
対局を複数回行えば勝敗が変わることもあるでしょうが、運や先手後手、ルール設定による結末など、それもまた真剣勝負なればこその“勝負の綾”とお受け取りください。
細かなレギュレーションとしてはこんな感じです↓。
- CPUの強さは“ゲーム開始時に選択できる最強レベル”どうしで行う
- 決勝戦以外は持ち時間10分切れ負け、決勝戦は20分
- トーナメント表の左上→右下の順で先手優先権を持つ
- 古いソフトで先手後手が選べなかったり制限時間が選べなかったりする場合は、できる限り両者の設定を揃える形で行う
※条件は完璧に対等ではないことを頭の片隅に置きながらごゆるりとご覧ください。
- 対戦形式は勝ち抜きトーナメント
-
第1回戦(8試合)を一気に!
- 『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(Switch)VS『田中寅彦のウル寅流将棋 居飛車穴熊編』(PS)
- 『最強 羽生将棋』(N64)VS『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』(PS)
- 『香川愛生とふたりで将棋』(Switch)VS『米長邦雄の将棋セミナー』(Xbox)
- 『加藤一二三九段監修 ひふみんの将棋道場』(Switch)VS『ハチワンダイバー』(PS2)
- 『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(PS2)VS『超高速将棋』(PS2)
- 『Shotest Shogi』(Xbox360)VS『高速思考将棋皇』(SFC)
- 『新・東大将棋』(PS3)VS『森田将棋あどばんす』(GBA)
- 『本将棋 内藤九段将棋秘伝』(FC)VS『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』(Switch)
- 一回戦の対局結果
- 2回戦 『羽生』VS『藤井聡太』が実現!
- トーナメントは終盤に! 将棋ゲーム最強の称号はどのタイトルに輝く!?
- いよいよ決勝! 栄冠は誰の手に?
- 優勝コメントが到着!
- 決勝棋譜と星野五段による解説
- 観戦記者の感想戦
対戦形式は勝ち抜きトーナメント
対局はすべて編集者とライターのふたりが手打ちで行います。
目論見通り行くものか、まずは1局試しでプレイ。
サクサクと20分ほどで対局が終わったので、
「1局20~30分なら全15対局のトーナメントは7.5時間、長く見積もっても8時間。1日の作業で終わるな!」
と、このときは思っていたんです。その結果……。
これが想像以上に過酷! 約24時間掛かりました。
いやまあ、24時間ですから1日の作業といえば1日ですが。1日と“丸一日”という言葉は似ているようでまるで違います。厳密には作業日を2日に分けて行いました。
作業時間の見通しが甘すぎるのです。盤面の先の先まで読む藤井聡太王将の駒の垢を煎じていただきたいくらいです。
テストプレイと異なったのは、持ち時間ギリギリまで使って長考する作品が出てきたり疲れによる人間の指しミスがあったり、そうなると“待った”機能がないソフトは一手目からやり直すしかなかったりで、脳疲労は蓄積しミスは連鎖し最終的にはけっこう地獄を見ました。まさに地獄突きの夜。
大会の試行作業は深夜に及び気付けば夜空に美しい月。「棋士には月下の光がよく似合う」という将棋マンガの名台詞がありますが、編集者にも月の光がよく似合うのです。何言ってんだ俺は。
そんな大会では名勝負が続出! それぞれのソフトが死力を尽くし、編集者の視力は衰え(疲れ目)、おのおの魂を削った“最強の将棋ゲーム決定戦”、ぜひ結末を見届けてください。
全選手入場です!!!!
使用ソフト紹介
令和の最強棋士は最強将棋ゲームなのか!? すべての棋士を勝利へ導く、優しきAI!『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』
Switch『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(Amazon.co.jp)SSJ(シルバースタージャパン)の最終兵器(リーサルウエポン) 囲い・戦法を詳しく教えてくれる、将棋ゲーム界の将棋辞典『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』
Switch『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』(Amazon.co.jp)神武以来の天才とはよく言ったもの! 子どもから大人まで将棋初心者のための教科書『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』
Switch『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』(Amazon.co.jp)ゲーム好き女流棋士と言えばこの人! 週刊ファミ通でも連載中ッ 女流四段『香川愛生とふたりで将棋』
Switch『香川愛生とふたりで将棋』(Amazon.co.jp)「アタマが悪いから東大」とは言わせないッ! 将棋ゲームの最高峰『新・東大将棋』
AI将棋はお手の物! 森田和郎が参戦だぁーッ 対局するほど強くなる、学習するAI将棋『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』
速さなら絶対に敗けん! 全将棋ゲームファンが渇望した高速の一手『超高速将棋』
ルールのない将棋がしたいから“真剣師”になったのだ! マンガの物語を追体験、将棋ゲームの革命児『ハチワンダイバー』
安ゥゥゥゥいっ説明不要!! 将棋ゲーム界のシンプルイズベスト1500円![税抜]『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』
鉄壁の囲いはどんな手でもはねのける、穴熊の貴公子『田中寅彦のウル寅流将棋 居飛車穴熊編』本名で登場だ!!!
世界の将棋がいま実戦で爆発する! 日本の将棋を世界に知らしめた国際将棋ゲーム『Shotest Shogi』
Xboxから永世棋聖が上陸だ! Xboxイチの思考エンジン『米長邦雄の将棋セミナー』
とくに理由はないッ羽生が強いのは当たり前! 協会の紹介動画入りだ! 日の下開山! 最強の一端は定跡を覆す。日本が誇る策略家『最強 羽生将棋』
将棋ゲームだったらこの人を外せない! 超GBA級将棋士『森田将棋あどばんす』だ!!
定価12800円[税抜]! 将棋“皇”の名は伊達ではなかった、将棋ゲームの切り札『高速思考将棋皇』
レコード『おゆき』はミリオンセールス! 自在に操る棋風は誰にも止められない『本将棋 内藤九段将棋秘伝』
内藤国雄『おゆき』(Amazon Music)参加作品と対戦組み合わせ
- 『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』
(Nintendo Switch/GameStudio/2020年3月5日発売) - 『田中寅彦のウル寅流将棋 居飛車穴熊編』
(プレイステーション/アークシステムワークス/1999年9月9日発売) - 『最強 羽生将棋』
(ニンテンドウ 64/セタ/1996年6月23日発売) - 『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』
(プレイステーション2/ディースリー・パブリッシャー/1998年10月22日発売) - 『香川愛生とふたりで将棋』
(Nintendo Switch/シルバースタージャパン/2021年3月25日発売) - 『米長邦雄の将棋セミナー』
(Xbox/サクセス/2002年6月13日発売) - 『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』
(Nintendo Switch/ポケット/2018年12月20日発売) - 『ハチワンダイバー』
(プレイステーション2/シルバースタージャパン/2009年9月17日発売) - 『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』
(プレイステーション2/ディースリー・パブリッシャー/2000年6月27日発売) - 『超高速将棋』
(プレイステーション2/サクセス/2001年1月25日発売) - 『Shotest Shogi』
(Xbox360/Microsoft Studios/2009年12月22日発売) - 『高速思考将棋皇』
(スーパーファミコン/イマジニア/1995年3月24日発売) - 『新・東大将棋』
(プレイステーション3/マイナビ/2011年12月22日発売) - 『森田将棋あどばんす』
(ゲームボーイアドバンス/ハドソン/2001年7月12日発売) - 『本将棋 内藤九段将棋秘伝』
(ファミリーコンピュータ/セタ/1985年8月10日発売) - 『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』
(Nintendo Switch/シルバースタージャパン/2022年2月24日発売)
第1回戦(8試合)を一気に!
『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(Switch)VS『田中寅彦のウル寅流将棋 居飛車穴熊編』(PS)
第1試合は、Nintendo Switch用ソフト『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(先手)とプレイステーションで1999年に発売された『田中寅彦のウル寅流将棋 居飛車穴熊編』(後手)です。
振り飛車対策として“居飛車穴熊”という囲いを全国に定着させた田中寅彦棋聖と藤井聡太王将という夢の対決です。それではさっそく対局開始。
対局当初、『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』は“左美濃囲い”を作り、中盤から攻めに転じる考えでしたが、『田中寅彦のウル寅流将棋』の守りが薄いと判断したのか、飛車と角を使って強引に攻めます。対する『ウル寅流』は角の道を作り、定跡通りに駒を指します。
途中、飛車と角を『ウル寅流』に取られましたが、『藤井聡太の将棋トレーニング』は攻めをゆるめずに駒を取り続けて玉に肉薄します。最後は“叩きの歩(※)”で玉を釣り、藤井聡太王将から取った金や飛車などの大駒を使う間もなく、田中寅彦棋聖の敗退となりました。
※持ち駒の歩を相手の駒の1マス前に打つこと。動かしたい駒の筋をひとつ前に出させて駒どうしの連係を弱くする作戦。
対局結果
- 勝利:先手『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』
(79手)
『最強 羽生将棋』(N64)VS『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』(PS)
1回戦第2試合目は、ニンテンドウ 64の将棋ゲームと言えばこれ! 『最強 羽生将棋』(先手)、プレイステーションから『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』(後手)。『最強 羽生将棋』はニンテンドウ 64の本体と同時に発売されたローンチソフト。
また、『SIMPLE1500シリーズ Vol.2 THE 将棋』は将棋ゲームながら30万本超を売り上げており(※)、かつて将棋ゲームが各ハードのキラータイトルであった“時代の雄”どうしの戦いと言えるでしょう。
※数字はファミ通調べ。
序盤は両者ともに守りを固め、『THE 将棋』は“雁木囲い”、『羽生将棋』は“矢倉”の形を整えていきます。中盤に入ると『THE 将棋』が先に動き、『羽生将棋』に対して雁木の囲いを解いて攻めていきます。
『THE 将棋』が盤面左にあった駒のほとんどを取り、終盤の持ち駒は
-
先手:『羽生将棋』
香車
-
後手:『THE 将棋』
角(×2)
金
銀
桂
香
歩(×7)
となり、『THE 将棋』が12枚も多く持っています。圧倒的有利。
『羽生』はもうダメか……と思った175手、『羽生将棋』はたった一枚の持ち駒・香車を▲8四香と打ち反撃の王手を掛けます。
「これは詰められるのを避けるための無茶打ち、最後のあがきだろうな……」と、観戦記者(僕のことです)のため息が漏れました。
しかし、そこから我々は羽生マジックを目の当たりにすることになるのです。続く手はこうなりました。
- 『THE 将棋』:9四玉
- 『羽生将棋』:9二竜
- 『THE 将棋』:9三金打
- 『羽生将棋』:8三香成
- 『THE 将棋』:9二金
- 『羽生将棋』:8四成香
香打ち後、わずか6手で詰み! 先手『羽生将棋』の大逆転勝利となりました。
そのとき、僕(代打大久保)と編集(堅田ヒカル)のふたりは入力作業を行いながら、
僕「え? これ詰みの手順あるんですかね?(ぜんぜんわかんない)」
編集「ぜんぜんわかんない」
僕「もう『羽生』に持ち駒はないですもんねえ」
編集「ぜんぜんわかんない」
僕「え? え?」
編集「詰むのかなあ?」
僕・編集「……。」
僕・編集「詰んだあ~~~~~~~!!!」
と、本当に将棋の最終盤見ているかのように固唾を飲んで、ふたりの戦いを見守る観戦記者と化していたのでした。やっぱり羽生さんはすごい。
というわけで『最強 羽生将棋』は2回戦で『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』との戦いへ。羽生善治VS藤井聡太、“王将戦”がゲームでの再現となります。熱い戦いに大いに期待します!
対局結果
- 勝利:先手『最強 羽生将棋』
(181手)
『香川愛生とふたりで将棋』(Switch)VS『米長邦雄の将棋セミナー』(Xbox)
1回戦第3試合目はNintendo Switchから『香川愛生とふたりで将棋』(先手)、Xboxから唯一の参戦となる『米長邦雄の将棋セミナー』(後手)です。
ゲーム好き棋士として知られ、週刊ファミ通でもゲームコラム『香川愛生の香車のうら』を好評連載中の香川女流四段(が監修した将棋ゲーム)と、対するは、将棋連盟会長も務めた米長邦雄永世棋聖(が監修した将棋ゲーム)の対戦ですから、これは将棋ファンならずとも注目の一戦と言えるでしょう。
序盤は守りを固め、両者ともに“高美濃囲い”の構え。
先に動いたのは『香川愛生とふたりで将棋』。盤面左から飛車で突破し、攻めの道を作ります。自身の囲いも銀冠に発展させ、もはやスキがありません。『米長邦雄の将棋セミナー』は中盤、『ふたりで将棋』の駒を多数取りますがじょじょに劣勢となり、最後はひたすらに玉を逃がすのみに。
詰められまいと逃げに逃げる姿は「う~む永世棋聖の残す棋譜には見えない」という外野からの野次(我々が飛ばしている)も受けつつ、最後は123手で決着。
逃げる執念、追う執念。これも将棋という勝負のひと幕で、人間らしい戦いとなりました。AIですが。
1回戦で退場となってしまった『米長邦雄の将棋セミナー』ですが、米長邦雄永世棋聖は非常に人間的魅力に溢れた方ですので、興味深いエピソードの数々はぜひ皆様ご自身の目でお確かめください。
対局結果
- 勝利:先手『香川愛生とふたりで将棋』
(123手)
『加藤一二三九段監修 ひふみんの将棋道場』(Switch)VS『ハチワンダイバー』(PS2)
1回戦4試合目は『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』(先手)。相対するのはプレイステーション2から、同名将棋マンガをゲーム化した『ハチワンダイバー』(後手)です。
1954年、14歳7ヵ月の若さで当時史上最年少棋士になり(※)、4年後には18歳3ヵ月で最高峰のA級リーグに昇格、最年少A級昇級の記録を持つ加藤一二三九段による『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』。
対するは週刊ヤングジャンプで掲載されていた将棋マンガ『ハチワンダイバー』という異色の対局です。『ハチワンダイバー』は作中最強クラスのキャラクター“澄野久摩(★★★★★★)”が挑みます。
※当時。現在の最年少記録は藤井聡太竜王の14歳2ヵ月。ちなみに最年少A級昇級の記録は藤井聡太五冠でも破れませんでした(19歳7ヵ月)。
ここまでの対局とは打って変わって、両者ともに守りを作らず歩の特攻で始まりました。お互いにノーガード戦法でひたすら駒の取り合いをくり広げ、
「バチ」「ダンッ!」
「バチ」「ダンッ!」
と、激しく響くマンガの擬音がまさに似合う一戦へ。
このきびしい戦いを制したのは『ひふみんの将棋道場』。
決着手数は77手、対局時間はわずか10数分で終わりましたが、角や銀などを奪い、最後まで熱い攻めの姿勢を崩さなかった『ハチワンダイバー』の強さも垣間見えた一局でした。
対局結果
- 勝利:先手『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』
(77手)
『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(PS2)VS『超高速将棋』(PS2)
1回戦第5試合はプレイステーション2対決で、『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(先手)と『超高速将棋』(後手)です。
じつは両作品とも販売価格2000円[税抜]だった、リーズナブルな将棋ソフト。安価ながら仕上がりは本格派の2作による対決です!
『SIMPLE2000』は“カニ囲い”、『超高速将棋』は“雁木囲い”で守りを固めます。
両者ともに攻め手を欠き、膠着状態になります。陣地に入ってもすぐに守りを固めて攻め返し、お互いに同様の手で一進一退の対局が続きますが、『超高速将棋』側の時間切れで『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』の勝利となりました。
対局結果
- 勝利:先手『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』
(125手)
『Shotest Shogi』(Xbox360)VS『高速思考将棋皇』(SFC)
1回戦第6試合はXbox360から『Shotest Shogi』(先手)、スーパーファミコンから『高速思考将棋皇』(後手)です。
両ゲームとも、各ハードから唯一の出場となるこの対局。いわばXbox360代表 VS スーパーファミコン代表の戦い。
どんな戦いになるのかと思いつつゲームを起動すると、想定外の事態が発生します。
「『高速思考将棋皇』のCPU設定が最弱しか選べない!」。
まず弱めのCPUを倒すことでつぎのレベルの対局者が登場するようで、ゲーム開始時では最低レベルのキャラクター“山名桂子”しか選択不可なのです。
「機種も数世代違うし、最低レベルだし、この対局は戦うまでもなく『Shotest Shogi』の勝ちかな……」という思いが胸に去来したつぎの瞬間、またもや想定外の事態が。
「『Shotest Shogi』のCPUも最弱しか選べない!」
こちらもプレイ開始時には高いレベルのCPUが選べません。
両ゲームともに“プレイをしないと強いCPUが使えない”というシステムが発覚しました。ですがこのまま続行です。
『高速思考将棋皇』からは福岡県出身3月3日生まれでA型のお嬢様“山名桂子”、『Shotest Shogi』からは髪型がかっこいい“一樹”を選択しての対戦となりました。
“ゲーム開始時に選べる中でもっとも強いCPUどうし”というレギュレーションには合致するものの、各ゲーム中ほぼ最弱レベルどうしの組み合わせ。果たしてどうなるのか、逆に予測がつきません。
序盤は互角の対局をしていた両者。しかし中盤からは山名桂子が駒を多く取り始め、「このまま進めば『高速思考将棋皇』の勝ちになるのでは?」という状況に。
しかしそこは低レベル設定、山名桂子は取った駒をまったくと言っていいほど活用しません。駒台に置きっぱなし。
これはつまり、各作中最弱のCPUですから「なるべくプレイヤーに勝たせよう勝たせよう」と、いわば“接待将棋”をくり広げているようです。
「相手に気持ちよく勝ってほしい」。
勝負の世界には珍しい、AIのそんな気持ちが我々にも伝わってくるようでした。
山名桂子はそんな調子でやんわりと、ふんわりと攻め続けるので、有利のようには見えますが有利なのか確信を得られないまま対局は終盤へ。
そのまま真綿で首を絞めるようなやさしい攻めを続けた桂子が、最後は玉を守る駒のなくなった一樹を追い詰め『高速思考将棋皇』が勝ちを収めました。
これまでの対決ではより新しいソフト、よりパワフルなハードが勝利していましたが、ここにスーファミがXbox360に勝つという大下剋上を成し遂げたのです。すごいぜ、桂子!
一方、敗れた『Shotest Shogi』一樹ですが、彼は『Shotest Shogi』の中で最弱の存在……というわけで、より強いCPUを開放していけば異なる結果となったと思われます。
一樹のようなレベルのCPU設定があるというのは、初心者プレイヤーにとっても勝ちやすい設定が用意されているというわけで、将棋ゲームとしてはより親切な存在と言えるでしょう。
桂子と一樹、ふたりの健闘にどうぞ拍手をお送りください。
対局結果
- 勝利:後手『高速思考将棋皇』
(144手)
『新・東大将棋』(PS3)VS『森田将棋あどばんす』(GBA)
1回戦第7試合はプレイステーション3から『新・東大将棋』(先手)、ゲームボーイアドバンスからは『森田将棋あどばんす』(後手)です。
『新・東大将棋』の序盤は“中住まい”でバランス重視の守りを選択。対する『森田将棋あどばんす』は左右に駒の道を作り、攻めの姿勢で駒の配置をしていきます。
しかしそれが仇となったか、駒を取られた筋から『新・東大将棋』側の飛車を招き入れてしまい、金銀など強力な駒をつぎつぎ取られてしまいます。最後は叩きの歩で玉を釣られ、終わってみればわずか77手。『新・東大将棋』圧勝で終わりました。
将棋ゲームの名手(開発者)森田和郎氏の名を冠する『森田将棋あどばんす』は、同じく森田氏の名がついた『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』に、優勝への想いを託すということになりました。
甲子園で智弁学園が負けたら智辯和歌山に後を託すみたいな……(高校野球を知らない読者には伝わらないたとえ)。
対局結果
- 勝利:先手『新・東大将棋』
(77手)
『本将棋 内藤九段将棋秘伝』(FC)VS『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』(Switch)
1回戦第8試合はファミコンから、内藤國雄九段が監修した『本将棋 内藤九段将棋秘伝』(先手)、Nintendo Switchからは本企画に出場している16タイトルでいちばん新しい『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』(後手)です。
ハード性能的にも発売時期的にも、ちょっとバランスの悪い組み合わせではありますが、監修の内藤國雄九段は“自在流”と呼ばれるほどに自由な戦法を得意とした棋士。乱戦に持ち込めば結果はわかりません!
序盤は両者ともに守りに徹し、『銀星将棋DX2』は“居飛車穴熊”、『内藤九段』も本美濃で玉を固めます。中盤、『銀星将棋DX2』は角で強引に敵陣を突破。駒を奪っていきます。
対する『内藤九段将棋秘伝』は玉のまわりに多くの駒を配置していましたが、守りの駒もどんどんと取られていき、最後は『銀星将棋DX2』の金や銀で玉を釣られてしまいました。
ファミコン VS Switch、この対局は74手というスピードで『本将棋 内藤九段将棋秘伝』を降し、『銀星将棋DX2』の勝ちとなりました。
対局結果
- 勝利:後手『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』
(74手)
一回戦の対局結果
2回戦 『羽生』VS『藤井聡太』が実現!
『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(Switch)VS『最強 羽生将棋』(N64)
2回戦第1試合、棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』と『最強 羽生将棋』の対局が始まります。
待望の“ゲーム版王将戦”実現となるこの組み合わせ。現実の前哨戦となるでしょうか。
Nintendo Switchの最新ソフトとニンテンドウ 64の作品ですから下馬評は『藤井聡太』有利となるでしょう。ですが、『羽生将棋』も1回戦のような羽生マジックを再び見せてほしいところ!
序盤は両者ともに守りを固めていき『藤井聡太』は“美濃囲い”、 『羽生将棋』は“居飛車穴熊”に取りました。
中盤に入り、2六飛、2二歩打ちで藤井聡太王将が攻勢をかけ、桂馬、香車の奪取に成功します。続けて取った桂馬を2五桂馬で打ち、『羽生将棋』の持つ角を取るという鮮やかな手で翻弄していきます。
この一手が分岐点となりつぎつぎと駒を奪取。最後は『羽生将棋』の投了で対局が終わりました。
じつは本記事のプレイで“投了”が行われたのはこれが初めてで、唯一でした(ほかは詰みや切れ負け)。
形勢逆転不可と悟るや自ら投了した『羽生将棋』。
その潔さ、志の高さは、「さすが『羽生』だ」と称賛されるべき決着で、観戦記者(僕のことです)は何か美しいものを見たような心持ちすらしたのでした。
ちなみに本物の王将戦第6局は2023年3月11日から。こちらも目が離せません。
対局結果
- 勝利:先手『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』
(107手で『最強 羽生将棋』の投了)
『香川愛生とふたりで将棋』(Switch)VS『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』(Switch)
2回戦第2試合はNintendo Switch対決となり、『香川愛生とふたりで将棋』と『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』の対局となります。
バラエティー番組にもたびたび登場するひふみんと若く美しい女流棋士。じつに個性的で絵になる棋士が盤を挟んで対峙します。
序盤は手堅く守りを固めるかと思いきや、お互いに角を取り合うという攻めを見せます。角交換となり、その後は両者ともに“かぶと矢倉”ですぐに守りを固める展開になりました。
ここから激しい殴り合いが始まりました。
互いに多くの駒を取り合い一進一退が続きますが、47手目で『香川愛生』が打った2六角、ここがひとつのターニングポイントになりました。『香川愛生』の駒の4八に飛車がおり、『加藤一二三 九段監修 ひふみんの将棋道場』が4四に指していた銀をターゲットにすることでひふみんの玉へ道をこじ開けます。
そこを突破点として守りを崩し、取った金2枚と飛車を駆使してひふみんの玉を追い込んだ香川女流四段の勝利となりました。
対局結果
- 勝利:先手『香川愛生とふたりで将棋』
(93手)
『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(PS2)VS『高速思考将棋皇』(SFC)
2回戦第3試合は『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』と、1回戦で大下剋上を成した『高速思考将棋皇』の山名桂子の対局。
もちろん操作は公平に行いますが、なにしろPS2対SFCの対決。おそらく不利かつ、かわいい女の子キャラクターということで、観戦記者たちは心情的についつい山名桂子に肩入れしながらの対局開始となりました。
さて、その山名桂子。序盤から飛車を駆使して突破口を探りますが、『SIMPLE2000』は桂子の攻撃をすべて受けきります。
ですが山名桂子は猛攻を止めず、盤面左から歩で崩しにかかります。『SIMPLE2000』は右翼に駒を密集させて玉将は逃げる場所がない状況になっているため、山名桂子が盤面左から攻めるのは理にかなっているんです。
2試合続けてのジャイアント・キリングの気配に沸き立つ観戦席。
「桂子、いいぞ!」
「桂子、がんばれ!」
実際の静謐な対局席にはありえない、さながら応援上映のような熱い声援が画面外で飛び交います。
盤面左の駒を減らした山名桂子。つぎは中央から攻勢を仕掛け相手の玉を盤面左に誘導することに成功しました。
「これは、もしかすると……!」。
盛り上がる観戦記者。
そして、山名桂子はさらに怒涛の攻めを展開していくのです!
5二に金を打ち、6二桂成、8四香打ちと、攻めを緩めません。
「もう少しで詰めるのでは!?」
記者席は沸き立ちます。
しかし……彼女の快進撃を阻んだのは、ルールの綾。ここで山名桂子の持ち時間が切れてしまい彼女の負けとなってしまいました。
「桂子おおおおおぉぉぉ……!」
スタンドの桂子ファンから慟哭が響きます。ふたりの観戦記者は山名桂子の惜敗に涙しました。グッバイ、山名桂子。福岡県出身3月3日生まれでA型のお嬢様。
対局結果
- 勝利:先手『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』
(88手で『高速思考将棋皇』の持ち時間切れ)
『新・東大将棋』(PS3)VS『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』(Switch)
2回戦第4試合は『新・東大将棋』と『遊んで将棋が強くなる!銀星将棋DX2』の対局。
序盤から駒の取り合いが終盤まで続きます。『銀星将棋DX2』が高美濃、『新・東大将棋』が“早囲い”の形を作りますが、どちらも早々に互いの飛車が攻め合い、囲いが崩れます。
両者ともに飛車と角を駆使して攻め道を作ろうとしますが、どちらも決め手に欠けてしまいます。最後は『銀星将棋DX2』の持ち時間が切れて『新・東大将棋』の勝利に。
ここで意外にも優勝候補筆頭の『銀星将棋DX2』が姿を消しました。
いっぽう、勝った『新・東大将棋』はまさに東大、まさにハイパワーという盤石の勝利。PS3に搭載された高性能CPU、cellプロセッサの力が2023年に火を吹くのでしょうか。
対局結果
- 勝利:先手『新・東大将棋』
(114手で『銀星将棋DX2』の持ち時間切れ)
2回戦の対局結果
トーナメントは終盤に! 将棋ゲーム最強の称号はどのタイトルに輝く!?
『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(Switch)VS『香川愛生とふたりで将棋』(Switch)
準決勝第1試合は『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』(先手)と『香川愛生とふたりで将棋』(後手)です。同じNintendo Switch用ソフト、発売時期も遠くないソフトどうしの対決、対局は僅差になることが予想されます。
試合は序盤から両者ともに飛車を駆使して駒の取り合いとなりますが、『藤井聡太の将棋トレーニング』側の角が取られて苦しい展開に。
代わりに飛車を取るも想定以上に駒を多く取られてしまいます。『藤井聡太』の巻き返しを期待したいですが、『香川愛生』の角を中心とした攻勢に『藤井聡太』は防戦一方へ。
自身の玉を守る囲いは作りますが、攻め駒が足りない『藤井聡太の将棋トレーニング』は終始苦しい展開になります。
中盤は拮抗した戦いとなるものの、終盤戦には『藤井聡太』は詰めから玉を逃がすのに手いっぱいとなってしまい、終始攻め続けた『香川愛生とふたりで将棋』が142手の大勝負の末に勝利を納めました。
対局結果
- 勝利:後手『香川愛生とふたりで将棋』
(142手)
『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(PS2)VS『新・東大将棋』(PS3)
準決勝第2試合は『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(先手)と、『新・東大将棋』(後手)の対局。
PS2ソフト VS PS3のソフト。そして最新ソフト『銀星将棋DX2』を下した『新・東大将棋』が有利になるかと思われます。対局は静かな立ち上がりとなりました。
序盤では角換わりのため、『新・東大将棋』は“かぶと矢倉”、『SIMPLE2000』は“へこみ矢倉”で落ち着きます。そこからは両者ともにお互いの出かたを見るような打ち筋に出たため、なかなか大きな動きを見せないまま時間だけが過ぎていく展開になります。
先に動きを見せたのは『新・東大将棋』でした。角と香車で玉に肉薄しますが、『SIMPLE2000』は的確に守りの駒を配置して『新・東大将棋』の攻めを華麗に受け流します。
防戦に回る『SIMPLE2000』ですが、その後もまったくと言っていいほど攻めずにひたすら守りを固め続けます。
まさに持久戦、ガードを固めて亀のようになり、一気にKOを狙ってくる『新・東大将棋』の猛ラッシュを耐えに耐えました。
『SIMPLE2000』はまるで相手の持ち時間切れを待っているかのような指しかたを見せます(相手の設定時間を察するような機能はないはずなのですが……)。
この作戦が功を奏し、けっきょく『新・東大将棋』の持ち時間が切れ、『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』の勝利となりました。
結果的に『SIMPLE2000』が試合巧者っぷりを見せつけて下馬評を覆す勝利、『新・東大将棋』は悔しい負けとなってしまいました。
残すは決勝戦の1試合のみ。『SIMPLE2000』が本大会最大のダークホースとなるのでしょうか?
対局結果
- 勝利:先手『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』
(80手で『新・東大将棋』の持ち時間切れ)
いよいよ決勝! 栄冠は誰の手に?
『香川愛生とふたりで将棋』(Switch)VS『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(PS2)
長かった戦いもついに決勝戦を迎えます。
決勝に駒を進めたのは、現代将棋ゲームメーカーの代表格、シルバースタージャパンが誇る『香川愛生とふたりで将棋』と、『森田将棋あどばんす』の想いも引き継ぐ『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』の2本です。
発売年的には『香川愛生』有利と考えられるものの、ここまで見てきた通り、本大会ではときに番狂わせが起こるもの。勝負は蓋を開けてみるまで、いえ、駒を振ってみるまでわからないのです。
さて、いよいよ対局が始まります。
圧倒的な攻めで勝ち続ける『香川愛生とふたりで将棋』(先手)とひたすら守りを固める『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』(後手)の対局、どのような展開となるでしょうか。
決勝戦はこれまでの持ち時間10分が倍増し、各20分の持ち時間での戦いとなります。
立ち上がりは意外にも『SIMPLE2000』の“角交換”から始まりました。『香川愛生』は“兜矢倉”で守りを固め、『SIMPLE2000』は準決勝で見せた老獪な動きを再び決勝の場でも見せます。
これに対して『香川愛生』は盤面左から桂馬と飛車、香車で強引に道を作ります。1二に龍を指し、4七に香車、4一には金で玉の逃げ道をふさぐという鮮やかな手でつぎつぎに手駒を配置していきます。
前回に続いて耐える将棋となった『SIMPLE2000』。
ですが、準決勝ではこの作戦で格上の『新・東大将棋』を降しました。決勝でもその作戦はなかば成功を見せつつあり、ここまで『香川愛生』は持ち時間の半分以上を費やし、残り時間は10分を切っていました。
あと半分耐えれば『SIMPLE2000』が優勝。残り時間がゼロになるまでに寄せ切ることができれば、『香川愛生』の優勝です。
残り時間のカウントダウンが始まる中、怒涛の猛攻を見せたのは『香川愛生』。寄せを間違えることはありません。
着実に一手ずつ、確実に相手の玉を窮地へと追い込んでいく。
そのすべてが正着打。正確無比な一手一手に、観戦記者たちは盤面を滑る白く美しい指の幻想を見ました。
最後は4三銀、4二へ金を打ち、『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』を詰ませました。77手。
この瞬間、『香川愛生とふたりで将棋』が本トーナメントを制し、優勝が決定しました!
対局結果
- 優勝:先手『香川愛生とふたりで将棋』
(77手)
優勝決定!
「決勝ともなれば地力を持つ者どうしだから、対局はかなりもつれるのでは?」
と思っていたのですが、終わってみれば『香川愛生とふたりで将棋』の快勝となりました。
先手が有利と言われる将棋の対局で、「今度は『SIMPLE2000』を先手にして対局させてみたら結果が変わるかもしれない」という考えが頭をよぎるほどに『SIMPLE2000』も善戦していたのですが、『香川愛生とふたりで将棋』は終始攻め手を緩めない、さすがの将棋でした。
優勝コメントが到着!
優勝した『香川愛生とふたりで将棋』の監修を行った香川愛生女流四段(本人)から喜びのコメントが到着しました!
「数ある将棋ソフト、とくに準決勝では藤井聡太竜王のソフトとの対戦も経て勝ち上がれたとのことでたいへん光栄です。将棋界は、目下熱戦がくり広げられている王将戦を始め、話題としていただくことが増えてきているなと感じますが、将棋ソフトも高め合いながら、ますます盛り上がってくれたらうれしく思います」
(香川愛生女流四段)
そして、優勝したシルバースタージャパンからコメントと、同社に所属する星野良生プロから棋譜解説をしてもらいました!
広報コメント
将棋ソフトをメインに開発している弊社としては、まさに“絶対に負けられない戦い”。ですが、香川愛生女流四段といっしょに開発させていただいたソフトが優勝となりホッとしております。ぜひ皆さんも最強となったソフトに挑戦してみてください!
(シルバースタージャパン 広報)
決勝棋譜と星野五段による解説
(▲=先手『香川愛生とふたりで将棋』、△=後手『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』)
- ▲2六歩
- △8四歩
- ▲7六歩
- △8五歩
- ▲7七角
- △3四歩
- ▲8八銀
- △3二金
- ▲7八金
- △7七角成
- ▲同銀
- △4二銀
- ▲3八銀
- △6二銀
- ▲3六歩
- △4一玉
- ▲6八玉
- △5二金
- ▲4六歩
- △3一玉
- ▲4七銀
- △5四歩
星野「角換わりでは5筋の歩を突くことは損とされています。実戦でも打ち込みが現れました」
- ▲5八金
- △4四歩
- ▲7九玉
- △5三銀右
- ▲3七桂
- △7四歩
- ▲1六歩
- △9四歩
- ▲1五歩
- △9五歩
- ▲5六銀
- △2二玉
- ▲6六歩
- △3三銀
- ▲8八玉
- △6四銀
- ▲2五桂
星野「機敏な一手。▲7一角の打ち込みが実現して先手が優勢になりました」
- △4二銀
- ▲7一角
- △7二飛
- ▲4四角成
- △3三桂
- ▲3四馬
- △3七角
- ▲1八飛
- △5五歩
- ▲1三桂成
- △同香
- ▲1四歩
- △4三銀
- ▲1三歩成
- △3一玉
- ▲2二と
- △同金
- ▲1一飛成
- △2一桂
- ▲1二香成
- △同金
- ▲同龍
- △2二香
- ▲4五銀
- △3四銀
- ▲同銀
- △4六角成
- ▲4七香
- △2四馬
- ▲4一金
- △3二玉
- ▲4二金
- △同金
- ▲4三銀打
- △同金
- ▲同銀不成
- △3一玉
- ▲4二金
- △同飛
- ▲同銀成
星野「馬を作って優勢になってからも緩まず攻めて先手の快勝譜となりました」
(以上77手)
観戦記者の感想戦
改めて、将棋ゲーム最強決定戦の王将者に輝いたのは『香川愛生とふたりで将棋』でした。
「Nintendo Switchのゲームソフトが上位に勝ち残るだろうな」とは思っていたものの、それでも上位に残った4作品のうち2作品が10年以上前に発売されたゲームになったのは驚きました。それは「昭和の名棋士が現代に蘇ったらどれほど強いか」という“if”の戦いを楽しむような味わいもあり、趣深いものでした。
いまもなお将棋は日々進化しており、進化が反映されている最新ソフトほど強いものですが、持ち時間の制限をうまく活かした(?)、『SIMPLE2000本格思考シリーズ Vol.1 THE 将棋 ~森田和郎の将棋指南~』が決勝まで勝ち残ったというのは正直予想外で、手を入力しながらワクワクを感じました。
最近の将棋ゲームは、つぎに指す駒の最善手や戦法を詳しく教えてくれるので、筆者のような初級者やまったくの初心者でもかんたんにルールや定石を学び、遊ぶことができます。
将棋人気が高まりを見せるいま、ぜひ多彩な将棋ゲームをプレイしてみてはいかがでしょうか。
ライター・代打大久保(ぴよ将棋5級)
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