『UNDERTALE』と『DELTARUNE Chapter 2』のアニバーサリーを記念してスタートした、作者トビー・フォックスさんの連載コラム“Toby Foxの秘密基地”。
月一回のペースで、トビーさん書き下ろしのコラムをハチノヨンさんの公式翻訳でお届けする週刊ファミ通とファミ通.com合同連載コーナー。
第4回は、“Tobyが訊く”スペシャル回として、なんとトビーさんから『ゆめにっき』作者ききやま氏への、取材企画をお届けします。あまりにも貴重な取材の顛末、ぜひじっくりお楽しみください。
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UNDERTALE - Switch (【永久封入特典】ストーリーブックレット 同梱)第4回 “Tobyが訊く” スペシャル ききやまさんに10の質問
トビー:『RPGツクール2000』/『RPGツクール2003』で制作されたゲームには、「インディーゲーム界の星」といえるような存在になった作品がたくさんあります。
たとえば、『OFF』、『Ib』、『To The Moon』などなど……。でも、そんなゲームたちが誕生するより前に、太陽のように光り輝く無料のRPGツクール製ゲームが生まれていました。そのゲームは、最近作られたインディーゲームたちにも影響を与えつづけていて、『OMORI』や『Lisa』、『UNDERTALE』の一部の要素なんかも、その例です。
それは、2004年にリリースされた、『ゆめにっき』というゲームでした。
『RPGツクール』で作られてはいるけれど、『ゆめにっき』はRPGじゃありません。バトルも、はっきりとしたストーリーも、レベルアップのシステムもナシ。
作者のききやまさんの言葉を借りれば、「とても暗い雰囲気の、夢の中(という設定)の世界を歩き回るゲーム」。
『ゆめにっき』とは、まさにそういうゲームです。
ゲームプレイの大半は、入り組んだ広大なマップをさまよいながら、「エフェクト」をくれる特殊なNPCをがんばって見つけることです。
エフェクトを入手すると、「窓付き」という主人公の見た目が少し変わって、ものによっては新しい能力が使えるようになります。たとえば、「じてんしゃ」は必須の能力で、移動が速くなる。そして、かの“有名な”「 ほうちょう」は、ほかのキャラクターを殺せるようになります。
『ゆめにっき』の世界は、それこそ夢の中みたいに、進んでいくと、見える景色も聞こえる音もガラッと変化します。
あるエリアはデパートのような場所で、そこには、いろんな色をした顔のない奇妙な姿の人っぽい何かがさまよっています。速度を落とした電車の音がえんえん鳴りひびいて、誰かに話しかけようとすると、みんな体がゆがんで、逃げていきます。
別のエリアへ行くと、今度はササッと描いたみたいな白黒のだだっ広い砂漠が広がっていて、静寂を破るように、ときどき音程の狂った鐘の音とひっかくような音がして……。
また別のエリアへ行くと、そこはゲーム内のすべてが8ビットで描かれる世界で、かわいくてなつかしい音楽とグラフィックスが『MOTHER』そっくりで……。
言葉で伝えるのがすごく難しいんですが、洗練されたアートと、ループするアンビエントなBGMと、唯一無二の世界観を備えた『ゆめにっき』は、ゲーム史上最も独特な“空気”を味わえる作品のひとつなんです。
いくつものエリアをひたすら歩き回っていると、ゲームをプレイしているというより、現実離れした世界で美術館を見学しているような気持ちになります。
リリースから20年近くたったいまでも、『ゆめにっき』のファンだという人はたくさんいるし、それはまったく不思議なことじゃありません。
だけど、これほど長く人気を保っている理由のひとつとして、このゲームがとにかくナゾだらけだという点も、大きいんじゃないかと思うんです。セリフはぜんぜん出てこないし、一部のNPCを「キャラクター」と考えることはできるものの、すべてはプレイヤーの解釈にゆだねられています。
ゲーム制作者の中には、Twitterなんかで自作のゲームのナゾだの隠し要素だのの解説を全部してくれちゃう人もいるかもしれないですが、『ゆめにっき』では、そういうことは一度も起こりませんでした。ナゾをあえてナゾのままにしてくれた、作者さん様々です。
その作者であるききやまさん自身も、作品同様、ナゾ多き人物です。『ゆめにっき』リリース後は完全に沈黙を守っていて、SNSアカウントもなければ、現在連絡を取る窓口もありません。唯一みんなが知っているのは、「18年前、『ゆめにっき』を作った」ということ。当然、インタビューに応じたこともありませんでした。
……今日までは。
外部への情報発信を一切してこなかったききやまさんですが、ときどき公式コラボなどには応じてくれることが知られていて、『UNDERTALE』のグッズ製作を手がけているFangamerという会社は、ききやまさんから間接的に公式グッズの製作許可をいただく機会に恵まれました。
そこで僕は、ダメもとで、ききやまさんにインタビューを申し込んでみることにしたんです。
正直、「まー、ムリかもな」と思っていました。いまとなってはもう、ききやまさんが鳴りを潜めていることも含めて、『ゆめにっき』というゲームの“体験”、みたいになってしまっているので。
だから僕は、今回インタビューを申し込むにあたって、自主的に制約を設けることにしました。
まず、「ゲームの内容に関する質問は一切しない」。
そして、「『はい』か『いいえ』で答えられる質問のみにする」。
それから、「質問の数は、ききやまさんに決めてもらう」。
……そしたらなんと、オーケーをいただくことができたんです。
そんなわけで、前置きが長くなりましたが……。
トビー:以上です! 今回の質問の答えが何を意味するのかは、『ゆめにっき』の内容と同様、読者の皆さんの解釈にお任せします。
大事なのは、ききやまさんはたぶん生きているということ。そして、ムリやり「デ○ーズ」へ連れていかれたら何をオーダーするかわかったことです。
あ、僕ですか? 期間限定のブドウパフェにします!
(※ 現在、ブドウパフェの提供期間は終了しています)
※次回は、2023年3月に掲載予定です。
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