王道RPGとは何か。
少し前から盛んに言われるようになった言葉だが、何をして王道なのか、よくわからなかった。
最初に言っておきたい。筆者はRPGが大好きだ。そんな筆者が、現在事前登録も開催されており、まもなくリリースを迎える最新スマホRPGのレビューの話をいただいた。
それがMOAI Gamesから2023年2月28日(火)リリース予定の『TRAHA INFINITY』である。
この記事は『TRAHA INFINITY』の提供でお送りします。
同社の『TRAHA』は好きなのでかなりプレイしている。スマホという持ち歩き容易なデバイスで“腰を据えた”RPGを楽しめる、本格的なスマホRPGだ。PCや家庭用機でRPGをがっつり遊んできたユーザーにとってありがたい。
だが、じつのところ最近はスマホRPGをあまりプレイできていない。ほかのスマホゲームやブラウザゲームと併行して遊ぶとなると、時間をかけて楽しむことが前提の本格派RPGは掛け持ちが難しいのだ。
『TRAHA INFINITY』をプレイするために、どれか1本を諦めないといけないのか。そんな悩みを抱えつつプレイしたところ……。
これはあれだ。ここ数年におけるスマホゲームの定番ジャンル“放置ゲーム”だ。放置ゲームのお手軽さをMMORPGに落とし込んでいるのである。
いや、それよりも輪をかけて遊びやすくないか。狩りやクエストの進行などを、ほぼすべてフルオートで進めてくれるほどに手軽。
なるほど、いまどきのスマホゲームらしい仕様だ。プレイを始めた当所、筆者は「これはRPGなのか?」と首をかしげた。勝手に「『TRAHA』の続編だろうから、王道MMORPGに違いない」と、固定観念を抱いていたのかもしれない。
だが、プレイを進めていくと、スマホゲームらしさとRPGのおもしろさを両立したシステムであることに気づいた。
あえて言おう。これこそがいまの時代の王道であると。
“王道RPG”とはよくゲーム紹介で使われる表現だが、よく考えたら何が“王道”なのかよくわからなかった。そこに対して、“スマホゲーム時代の王道”を示しているような気がするのだ。
今回は『TRAHA INFINITY』のシステム面と実際のプレイフィールをお伝えしていく。なお、画面写真については開発段階のテスト版アプリを使用しているため、和訳やUIなどに実際のリリース版とは異なる点がある点はご了承いただきたい。
オートプレイを極めた昨今のスマホRPGの理想形
まずは本作の概要から解説していこう。本作の舞台は万物が共生する太古の地“リスタニア”。ある種族の欲望をきっかけに滅亡しかけた人類の中から、エルフの賢者シリオンの働きかけによって生まれた超越的な能力を持つ人間“TRAHA”たちが、強大な蛮族たちに立ち向かっていく物語が描かれる。
プレイヤーは以下の5つのクラスのいずれかのTRAHAを選択し、自らを鍛える旅に出る。クラスごとに性別は固定で、髪型や目の色、ボイスなどのカスタマイズが可能だ。
- 巨大な剣を振るうウォリアー
- 大鎌と亡霊を駆使するリーパー
- 双剣で不可視の高速攻撃をくり出すアサシン
- 杖により強大な魔法を操るソーサリス
- 精霊の力を弓矢に宿し戦うアーチャー
操作やUIは、いまやスマホRPGのオーソドックスとも言える形式だ。俯瞰視点で自分のキャラクターを見下ろし、画面左下の仮想レバーで操作する。画面右下の攻撃ボタンやスキルボタンをタッチすることで攻撃をくり出す。
なお、今回のレビュー範囲のゲームプレイでは、最初の操作確認のとき以来、1回もこのレバーとボタンを使っていない。本当だ。信じてほしい。
クエスト中やダンジョンなどでの戦闘は、ほぼフルオートで解決。敵に向かっての移動、スキルの使用、ポーションによる回復など、すべて自動でオーケーだ。
戦闘だけでなく、クエスト受注もすべて自動進行が可能となっている。たとえばメインストーリーのクエストが終了すると自動でつぎに話しかけるNPCのところへ移動し、会話を自動で進めつつ、つぎのクエストを受けてくれるわけだ。
メインストーリークエストは、キャラクターの総合的な強さを示す数値“戦闘力”が一定に達していないと受注できない。その場合は1日10回まで受注できる“地域クエスト”や、何回でも受注できるが地域クエストより報酬が少なめの“狩りクエスト”などを受け、キャラクターを育成する必要が出てくる。
察しのいい人はお気づきだろう。メインストーリーの自動進行中に戦闘力が不足した場合、自動でこれらのクエストの受注と進行までしてくれるのだ。
画面に一切触れずにオートで進行できるゲーム内容に加え、“瞑想”というシステムがいい味を出している。
ログアウト時(あるいはゲームプレイ中に何もしない状態)、キャラクターが瞑想状態になる。瞑想を続けた時間に応じて、再ログイン時やプレイ再開時に経験値やお金を大量に得られるのだ。
ダンジョンの報酬など、さまざまなところで得られる“具現の石”を使用すれば、さらにボーナスが発生。本来は狩りやダンジョンでしか得られないキャラクター育成用の素材を、これもまた大量に得られる。
ここまで解説した段階で、「完全なオート&放置ゲームで、RPGらしさがなさそう」と感じた人も少なくないと思う。たしかに、筆者もプレイし始めた初日あたりには、そのように思った。数時間かけてこつこつ稼ぐ狩りの成果より、8~9時間ほどの瞑想で得る報酬の方がはるかに多いのを見て、目を丸くしたものだ。
だが、昨今のスマホゲーマーからすれば、ある種の理想形なのだと思う。手をかけずに育成できる仕様が充実していれば、ほかのタイトルと並行して遊び、なおかつ時間をさほどかけずに目玉の要素(上位コンテンツなど)を楽しめるのだから。
RPGとしての側面を強く打ち出した『TRAHA』などのタイトルとは異なり、スマホでの遊びやすさを重視。そこに形を変えたRPGを落とし込んでいる。このパラダイムシフトはスマホでリリースするうえで重要なポイントだ。
“RPGらしさ”をスマホゲームで表現する挑戦
いまはRPGらしさをスマホに求める時代ではないのだろうか。そんなふうに考えつつ、さらにゲームプレイを進めること数日。筆者は不意に、本作がちゃんとRPGらしさ、そのおもしろさを追求していることに気づけた。
記事冒頭でも少し触れたように、筆者はRPGの魅力とは、こつこつとがんばった結果キャラクターが成長していくことで得られる達成感と、ストーリーで得られる感動だと考えている。本作でとくに重視されていると感じたのが、この前者の“成長の達成感”だ。
昨今のスマホRPGではキャラクター強化コンテンツは豊富に用意されているのが一般的。武具に装着するオプションパーツや特定のコンテンツで得られるポイントで能力値とは別に伸ばしていくサブステータスなど、多種多様に広がっている。
日本人のディープなRPGプレイヤーには、こうした育成の幅が広く、やることがいくらでも増やせる仕様を好む傾向があるのだろう。RPGとしては魅力的だが、スマホゲームらしさという側面から見ると話は別だ。ともすると、やることが多く複雑に思えてしまう。
『TRAHA INFINITY』の育成要素は、筆者が確認したところでは6個ほど。個人の主観もあるのでこれがベストとは言いにくいが、個人的には理解しやすい数だと思う。それぞれの強化が可能になると対応ボタンが表示され、そこをタップするとあっさり強化が終わる。
装備の強化のほかにメインとなる強化は、素材を放り込んで実行すると各種の能力が挙がっていく“コア強化”だろうか。以下のような要素もあり、これは比較的わかりやすいと思う。
- カード関連:持っているだけで能力が上がる各種“カード”を収集。同じカードを重ね合わせると能力が強化されるほか、カード同士を合成して新たなカードを作成可能
- ペット:連れているとステータスにボーナスが加わる。ダブったペットは合成可能。
- 乗り物:任意のタイミングで登場すると移動スピードアップ。ダブった乗り物は合成可能。
これらの強化が非常に手軽な仕様になっており、悩まされることがほとんどないのも本作の特徴だ。たとえば装備強化。オンラインRPGでは高価な素材を溜め込みつつ、いざ強化するときには一定の確率で失敗するという仕様が多い。
だが、本作は装備強化で失敗しないのだ。強化するたびに確実に強くなるので、ストレスになる要因が一切ない。その分、強化レベルの上限が数千レベルと遠大なのは笑ってしまったが。
また、多くの素材を集めてやっと強化ができる仕様の場合、収集中は成長のない停滞状態が続き、キャラの成長の実感が得られないストレスも生まれる。その点、本作では装備やコア強化などの素材が手に入りやすいことに加え、それらで強化を行なえば少しずつではあるが毎回能力が上がり、戦闘力が上昇。わかりやすい形で成長を実感できる。
オート狩り中にも、通常の敵が装備強化用の素材やカードをランダムで獲得できるアイテムを頻繁に落とすので、強化可能ボタンがつねに点灯しているような状態だ。タップすれば戦闘力が確実に上がる(10や20といった小さい値ではあるが)。
成長の実感というRPGの魅力を、1分ごと、あるいは数秒ごとに体験できるのだ。
オンラインゲームにとって、ほかのプレイヤーとのマルチプレイもまた魅力のひとつ。もちろん本作にもマルチプレイコンテンツが用意されている。パーティープレイ用のダンジョンもあれば、PvPが可能な報酬多めのダンジョンなどもあるのだ。
オンラインゲームの魅力は他者との交流であると、20年以上も前からさかんに語られている。だが、そこに気疲れや拘束感を感じるプレイヤーがいるのもまた事実。
本作においてはそんな心配は無用だ。パーティーダンジョンやふだんの狩りに“ソウルメイト”というNPCを最大3人まで同伴可能。多人数用コンテンツをひとりでさくっと遊べるようになっている。
ソウルメイトはほかのプレイヤーのキャラクターだ。そのデータを非同期の形で活用するシステムは、ほかのコンテンツでも見られる。たとえば、各地の村などを“占領”するとその近辺で経験値ボーナスが得られるが、この占領地には自分のキャラクターデータを“ガーディアン”として配置し、占領地を奪いに来た他プレイヤーを自動で迎撃できる。
他プレイヤーと1対1で戦ってランキングで競い合う“闘技場”も、他者の非同期データとの対戦となる。リアルタイム対戦ではないだけに、占領と並んで気軽に挑める対人戦コンテンツだ。
放置せずにスマホを手に取ってプレイしているときには、いつでも成長を楽しめるだけでなく、パーティープレイなどのオンラインゲームならではの楽しさも体験できる。非同期システムのおかげだ。
もちろん、リアルのプレイヤーともパーティープレイは可能だ。RPGのおもしろさを自分の時間の余裕などと照らし合わせ、時間があるときはじっくりと、忙しいときは他プレイヤーの非同期データや瞑想を活用してムダなく遊ぶ。どんな状況でも最適の形で楽しめるわけだ。
自分の状況に合わせて遊べるコンテンツの最たる例として、各地に一定時間ごとに出現する強大なフィールドボスについても触れておきたい。出現時間に合わせてスマホを手に取る必要こそあるが、出現時には挑戦用のボタンが表示され、これをタップするだけで現地にワープしてフィールドボスに戦闘を仕掛けられるのだ。
いま遊ぶために最適化したRPG、つまり現代の王道
「RPGらしくない」と最初は思ったものの、“最新のスマホゲーム”という観点で見ると話は変わってくる。その理想系とも言える形にRPG要素を落とし込んであり、筆者はいまではかなり本作を気に入っている。
ただし、もったいないと感じる部分もある。イベントシーンや華麗な映像が矢継ぎ早に過ぎてしまうのだ。個人的にはもう少しじっくり見たかった。
また、グラフィックは非常に美麗なのだが、自動進行に加えて各所への移動をくり返すので、風景を観賞する時間がやや足りないように思えた。この辺は一長一短といったところか。
とは言うものの、スマホというプラットフォームでは筆者の考えかたは古いのかもしれない。以前、若いゲーマーに話を聞いたとき、こういう返答があった。
「ゲーム内の世界設定や説明文より、強敵を友人たちと協力して倒した瞬間のほうがストーリーとして記憶に残る」
これには深く納得させられた。いまは“ストーリー”というものの受け止め方自体が少し変わっているのだろう。
筆者には古いゲーマーだという自覚がある。昔ながらのMMRPGが好きな人は自動進行を止めて自分の足でゆっくり世界を回ればいい。自動と手動、ふたつの遊びかたが用意されているゲームだと考えると、これまで感じていた違和感のようなものがスッと腑に落ちた。
いまどきの手軽に複数遊べるスマホゲームの仕様。それに反して、手間と時間をかけて遊んでこそおもしろさが見えてくるRPGの仕様。これらを両立するのは言うまでもなく難しい。
その点、『TRAHA INFINITY』は手軽さとわかりやすさ、RPGの魅力をいいバランスで持ち得ているように筆者は感じた。これこそが、現代の王道RPGなのかもしれない。
自分のプレイスタイルを、自分のペースでいつでも実現できるという点も大きな魅力だ。フィールドボス戦などでMMORPGとしての興奮を深掘りしたいが、それは正式リリース後のお楽しみとして取っておこう。