スクウェア・エニックスより2022年10月27日に発売されたプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、Steam用ソフト『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』。楽曲を担当した桜庭統氏と、桜庭氏とともに楽曲制作に携わった伊藤奈々氏、青木芳憲氏に同作の音楽やサントラの魅力について語っていただいた。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」
本記事は『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』の提供でお送りします。
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桜庭統氏(さくらばもとい)

作曲家。『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』の楽曲を担当。
『SO』シリーズすべての楽曲も手掛けてきた『SO』の顔。

伊藤奈々氏(いとうなな)

スクウェア・エニックス所属。
『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』アシスタントプロデューサー。
作品全体に関わってはいるが、おもにBGMやサウンドを担当。

青木芳憲氏(あおきよしのり)

トライエースのサウンド制作部所属。
『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』サウンドディレクター。
BGMのほか、SEやボイスの方向性決めや発注を担当。

待ちに待った『SO』シリーズの作曲

――桜庭さんといえば、1作目からずっと『スターオーシャン』の音楽を手掛けられていますが、最初はどのようなきっかけだったのですか?

桜庭『スターオーシャン』の前に『テイルズ オブ ファンタジア』というゲームの音楽をやっていたのですが、そのチームがトライエースという会社を作ったことがきっかけです。

――桜庭さんにとって『SO』シリーズはどういった存在ですか?

桜庭僕はSFとか宇宙ものの作品が好きなので、自分にピッタリだと感じています。曲を作っていてすごく楽しいタイトルですね。

――SFだけではなく、ファンタジーの世界もあったりしますが、『SO』だから苦労する部分はありますか?

桜庭いえ、曲を作るのは好きなので、苦労を感じたことはないです。

――『SO6』の曲の依頼が来たときはいかがでしたか?

桜庭「待ってました!」といった感じですね(笑)。『スターオーシャン:アナムネシス』もありましたが、僕はどちらかというとスマホよりもコンソール向けの作品の音楽を作るほうが好きなんですよ。やっぱりコンソール版のほうがしっかりとしたスピーカーから音楽を流せるので。

――青木さん、伊藤さんはどのような感じで桜庭さんに依頼をされたのですか?

青木主人公のレイモンドが銀河連邦に属していないというところがいままでのシリーズ作とは大きく異なるので、曲も『SO』なんだけど新しい雰囲気も出したいという感じで伊藤さんと話し合いをしましたね。「どう変えていこうか」みたいな。

伊藤我々には“『SO6』では新しい『SO』を目指す”という使命があったのですが、桜庭さんであれば上手に『SO』として落とし込んでいただけるという信頼があったので、お願いする際はまったく心配はなかったですね。

――“新たな『SO』”という依頼に関して、桜庭さんはどのように仕上げようと考えられましたか?

桜庭主要キャラクターのデザインを見たときにこれまでとはかなり違う感じで、荒々しさも感じたので、そこを曲に取り入れるようにしました。

――『SO5』に比べて、曲数は増えましたか?

青木若干多いくらいですね。

伊藤新規の曲は80強で、過去シリーズから転用したものもあるので数自体はかなり多いと思います。

――このインタビューが公開されるころにはサントラも発売されていると思いますが、4枚組のボリュームですもんね。

桜庭『SO』シリーズはいつも多いですね。

――桜庭さんの引き出しの多さには驚かされます。

桜庭引き出しの多さとかは全然意識していないですね。似たような曲もあったりするかもしれません(笑)。

伊藤マップも多く、世界も広いので、雰囲気の違う曲ばかりですよね。

桜庭たしかに今回は、ゲームとしても振れ幅が大きいなと感じました。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」

――たくさんある中で、どの曲から着手をされたのですか?

青木“ダブルヒーローシステム”の復活ということで、レイモンドとレティシアでバトル曲を変えようというアイディアが最初からありました。なので、ふたりの汎用バトル、それとボスバトルの曲から依頼しました。

――ふたりの曲のコンセプトは?

桜庭レイモンドからは荒っぽさを感じたので、いままでよりも泥臭さを入れた曲にしようと思いました。僕が手掛けたRPGのなかで、今回のようなバトル曲はなかったと思います。一方でレティシアのほうはクラシカルで正統派な感じにしつつも、速いテンポの曲にしました。

伊藤レイモンドの曲は最初にあがってきたものと最終的なものはかなり違いましたね。

桜庭そうでしたね。結局、2曲書いた感じにはなってしまいました。バトル曲は一番耳にすることになる曲なので、そこきっかけで2周遊びたいという意見も多いように感じます。

青木それはうれしいですね。

伊藤キャラクターの性格が曲にも表されているので、その辺を意識してくださるとより楽しめると思います。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」

生演奏だから出せる音へのこだわり

――桜庭さんがとくに気に入られている曲は何ですか?

桜庭好きなのはラーカスの森の曲(『The Weald』)ですね。とてもきれいな曲に仕上がり、気に入っています。

伊藤最初にプレイヤーが冒険する地ということで、ワクワクする感じがありつつも、優しすぎず冷たすぎず、といった感じで幻想的な曲になっていると思います。

――オープニング後に耳にするので印象も強いですよね。

青木夜からスタートすることもあり、ちょっとしっとりとした感じもありますね。

伊藤自分としてもこのタイプの桜庭さんの曲を耳にするのは初めてでした。

青木いままでの『SO』にはない曲ですよね。

――あきまんさんに描いていただいたファミ通の表紙イラストにもなっていますが、結婚式まわりの曲も力はいっているんじゃないかなと思います。

桜庭正直言いますとそこまでですね(笑)。もちろん全部力は入っているんですけど。

――わりとすんなり完成したんですね(笑)。

桜庭そうですね。

青木ストーリー的には大きなイベントですし、曲もしっかりシチュエーションにマッチしていますね。

――個人的にはオーシディアス周辺の曲も印象に残っています。

伊藤オーダーでは、ちょっと桜庭さんを惑わせてしまったところですね。最初のデザインでは、東ヨーロッパの感じだったので「民族的な曲にしたい」とおっしゃられていたのですが、ニルベス大陸というもっとクセの強い場所があったので、そちらとのコントラストを重視してわりとマイルドな仕上がりにしていただきました。

桜庭そんなこともありましたね。

――オーダーの変更に関してはどうでしたか?

桜庭確かに迷った部分はありましたが、結果的によくなったと思います。

――作曲されていて、ほかに苦労された点などはありましたか?

桜庭ちょっと難しいな、と感じたのがシンセサイザー系の音とオーケストラの音を合わせるときの楽器のバランス取りですね。どちらを立たせるべきか、というところには頭を使いました。

――なるほど。オーケストラの部分は生演奏のものを使われているようですが、こちらにはやはりこだわりが?

桜庭やっぱり人が演奏する音というのは、打ち込みでは出せないので、生演奏にこだわりましたね。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」
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――収録の模様もお写真で拝見させていただいたんですが、サウンド・シティ アネックスというスタジオ(2022年1月31日に閉館)はよく使われていたのですか?

桜庭ほかの仕事も含め、けっこう利用させていただきました。かなり使いやすかったですね。

――オーケストラ収録の際の思い出話やトラブルなどあればお聞かせください。

桜庭トラブルはとくになかったですよ。印象に残っているのは、伊藤さんの差し入れで演奏家さんたちのテンションが上がっていたところです(笑)。

伊藤カロリーには気をつけつつ、毎日バリエーションを変えるようにしていました(笑)。

桜庭あのおかげでみなさんのテンションが維持できたと思います。

――差し入れというと、お弁当とかですかね?

伊藤近所のパン屋さんのオススメとかですね。

桜庭ドーナツも人気でした。わりといつも自分が立ち会うレコーディングはアットホームな感じになっている気がします。

――収録は何回くらい行ったんですか?

伊藤トータルで7、8回だったと思います。

桜庭一度に録れるものはそうするんですけど、楽器ごとに個別に収録することも多かったです。

――個別に録ったものを後から重ねると。

桜庭そうですね。ゲームの曲の場合はそちらのほうがよかったりすることも少なくないです。

伊藤桜庭さんの曲は演奏が難しいものも多いですからね。分割して録らないと大変だと思います。

桜庭みなさん練習すればできると思うんですけど、その場で譜面を見て演奏することになるので、そこは大変ですよね。むしろすごいと思います。

――生演奏の曲を使われるのは『SO』シリーズでは初めてですか?

桜庭いえ『SO3』以来ですね。細かく言うと、他の作品でも弦楽器は生のものを使っていたりはするのですが、金管楽器まで生のものを使うのは『SO3』以来ということになります。

伊藤アナムネシス』も金管楽器は生じゃなかったですね。

青木『SO』では、SF感をシンセサイザーで表現して、ファンタジー部分を生演奏で表現する、といった感じにすることが多いです。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」
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キャラクターや勢力、地域ごとに異なる音色

――SFの曲とファンタジーの曲で使う楽器はハッキリと分けられたりしているのですか?

桜庭一部はそうなっている曲もありますし、少し混ざっている曲もあります。

青木先進惑星でもロケーションによって変わったりするところもありますからね。

桜庭シンセサイザーの種類を変えたりもしています。

伊藤いろいろな勢力も登場するので、そこ合わせた音作りも意識していただきました。

――本作では本当にいろいろな勢力が登場しますが、切り分けは大変だったのではないでしょうか?

桜庭そうですね。いっぱいいるなって思いました。「誰がどの勢力だ?」ってなることも多かったです(笑)。

伊藤「ここは銀河連邦な感じでお願いします」ってお願いしたらちゃんと銀河連邦の音が返ってきたときは「さすが!」って思いました。

桜庭銀河連邦はずっと登場してますもんね。

――キーワードとしてわかりやすい部分はあるということですね。細かい勢力に関してのオーダーはちょっと難しそうですね。

青木そうですね。ある程度はこういう音色を使ってほしい、といったオーダーはします。

伊藤スコピアムの音、ヴィープスの音、いろいろありますね。

青木ここはコーラスも使ってほしい、といったお願いもして差別化を図りました。

――DUMAはこれまでの作品にない不思議な存在ですが、どのようにテーマ曲をオーダーしたのですか?

青木最初に必要な曲目のリストを作るのですが、それを見て曲のイメージを固めていったんです。桜庭さんには「いちばんハイテクな感じで」とお願いしました。

伊藤加えて、無機質な感じであり有機質でもある、という不思議な注文もしたのですが、桜庭さんは見事に表現してくださいましたね。

――桜庭さんは曲作りをされる際には、どの程度ゲームの情報を頭に入れられるのですか?

桜庭情報過多になるとこちらの想像も膨らまくなるので、あらすじ程度のストーリーを入れるようにしています。

伊藤今回は膨大な資料をお渡ししちゃったんですけど、大丈夫でしたか(笑)?

桜庭はい、問題ありませんでした(笑)。

――できあがった曲の影響で、ゲームのほうに影響が出ることはありましたか?

青木それはなかったですね。逆にこちらがスムーズに作れてないところがあったりするので、動画ではなく、制作過程の画像をお見せしながらこういう曲調にしてほしい、というお願いをすることはありました。

――曲をオファーした段階では、あきまんさんのデザインは完成していましたか?

伊藤できていましたね。キャラクター設定や性格を決めたりする場にも出向いて直接やりとりしている場にも参加し、作家さんたちが何を大事にしているかを確かめつつ、それを曲にも反映するようにしました。

――キャラクターを見て、「やっぱりこうかな?」みたいな調整はされるのですか?

桜庭しますね。作った曲を聞きながらイラストを見て「違うな」と思ったら、変えることもあります。

――まだ戦えてないのですがサントラにあった隠しボスと思しきバトル曲を聞いたときは、「おっ、これこれ!」と思いました(笑)。

青木(笑)。そこはあえてこれまでの『SO』のイメージをそのままもってくる感じにしました。

伊藤隠しボスはトライエースさん恒例のお遊び要素ですよね。とはいえ2種類ともかなり新しいアレンジになっています。

桜庭確かにかなりアレンジは加えていますね。まだ聞かれていない方は楽しみにしていてください。

――少し話は戻りますが、オーケストラを収録されたのはいつごろですか?

伊藤昨年(2021年)の10月から今年の1月にかけてですね。

桜庭ヴァルキリーエリュシオン』と同時に曲を作っていてちょっと大変でした(笑)。

――ほぼ同時に発売されましたよね(笑)。作業は長期間に渡ったと思うんですが、いつごろに終わりましたか?

桜庭僕の方はレコーディング終了後にミックスをしてもらって終わりという感じでした。いちおう、サントラのマスタリングもあったりはしました。

青木曲が完成した後は、ゲームに落とし込んでいく作業があったのでわりと僕らのほうが大変でした(笑)。イベントシーンは、イベントが完成しないと曲の実装ができないので、スケジュール管理には苦労しましたね。

――そういった作業中に桜庭さんと連絡をとったりは?

桜庭なかったですね。

青木その段階にまでくると基本的には連絡しないですね。

――体験版の公開からプレイヤーの反響がかなり大きかったですが、そちらを見た感想はいかがですか?

青木ゲームの遊びの部分に関しての意見だけでなく、BGMにも言及してくださるかたが多くて、僕が作ったわけではないですがうれしかったですね。

――桜庭さんは評判を意識されたりしますか? SNSでエゴサーチしたりとか……。

桜庭とくに意識はしないですね。エゴサーチも絶対にしないです(笑)。

――最後に『SO6』のサウンドの聞きどころやサントラのアピールをお願いします。

桜庭ぜひ何周もプレイしていただいてゲームといっしょに曲も楽しんでいただきたいです。その後、サントラで聴くと細かい部分まで味わえると思います。テクノっぽい曲からオーケストラまで幅が広い音楽をじっくりとお楽しみください。

伊藤桜庭さんもおっしゃっていますが、ゲームといっしょに曲を楽しんでいただきたいです。ゲームが難しくて困っていますという方はサントラを手にとっていただくと……(笑)。遊んでからサントラで聞いていただけたら、曲だけでゲームの情景が頭に浮かび、味わいも深まると思います。

青木勢力や種族、キャラクターごとに音色を変えたりしていたりするので、そこに注目しながらゲームと遊んでいただけるとよりいっそう楽しくなると思います。『SO6』はシリーズ作ではあるんですけど、新しいものに仕上がっている自信があるので、多くの方に遊んでいただき、曲も聴いていただけるとうれしいです。

『スターオーシャン6』桜庭統氏+サウンド担当者インタビュー。「SFとか宇宙ものの作品が好きなので、曲を作っていてすごく楽しいタイトルです」