スクウェア・エニックスより2022年10月27日に発売されたプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、Steam用ソフト『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』。キャラクターデザイン担当のあきまん氏、シナリオ担当の和ヶ原聡司のスペシャル対談の模様をお届け。
※本記事は週刊ファミ通2022年11月10日号の記事を増補改訂したものです。
あきまん氏
カプコンで『ストリートファイターⅡ』などを手掛けたのち、独立して多くの作品のキャラクターやメカデザインを担当。『スターオーシャン』シリーズには、『5』から参加している。
和ヶ原聡司氏(わがはらさとし)
『はたらく魔王さま!』で鮮烈なデビューを飾った作家。シリーズには『スターオーシャン:アナムネシス』の第二部から参加。『SO6』では、五反田義治氏、更伊俊介氏とともにシナリオを担当。
強い信頼で結ばれたふたり
――『スターオーシャン』シリーズより前にあきまんさんと和ヶ原さんがいっしょにお仕事をされたことはありましたか?
和ヶ原『スターオーシャン:アナムネシス』でごいっしょさせていただいたのが初めてです。
あきまんそのときに和ヶ原さんのアイデアをもとにしながらキャラクターを描く、 という作業をしたんです。 密室で長時間いっしょにいたので、とても印象に残ってます(笑)。
――おふたりだけでですか?
和ヶ原いえ、 ほかにも何人かいて、 たしかキャラクターのラフを一気に作っちゃいましょう、 という会でしたね。 ストーリーを書いた後、 各キャラクターの設定は作っていたのですが、スクウェア・エニックスさんが一気に詰めてしまいましょう、 ということで場を設けてくださいました。 あきまんさんは、 僕が作家としてデビューするずっと前から存じ上げているレジェンドですが、 勇気を出して自分が描いたラフ絵を持っていったんです。
あきまんそうでした。素晴らしかったです。
和ヶ原ラフ絵がみるみるブラッシュアップされていくのを目の当たりにしたのですが、こんな感動したことはありませんでしたね。
あきまんそう言っていただけるとうれしいですね。ありがとうございます。
和ヶ原そのときは、たくさん新キャラクターを用意する必要があったんですよね。
あきまん1ヵ月で10体以上デザインする必要があって、 そのときの集まりでラフを完成させるのが目標になっていましたね。
和ヶ原5~6時間はやってましたよね。
あきまんいや~もうちょっと長かった気がします。 そのときの和ヶ原さんの反応がとてもおもしろくて、信頼できる方だなと思いました。
和ヶ原ライトノベルのほうでは、 自分の考えたキャラクターをイラストレーターさんに描いていただくようなやりとりは経験済みでしたが、 メールでのやりとりが中心だったんですね。 しかし、 このときは目の前でスイスイとラフが完成していくのを見ることができて、とても楽しかったです。 ひとりでキャーキャー騒いでいた記憶があります。
あきまんかなり叫んでましたね。 そのリアクションでこっちもノッてきちゃいました。和ヶ原さんのいいところは、 定番のキャラクターのように見えて、 ギリギリのところでなにか違うんですよね。 尻尾がたくさんあるキャラクターがいたんですが、「尻尾はやっぱり9本ですかね?」と聞くと、熟考した後「6ですね」と。 なぜかはわからないんですが、「そうなんだ!」となりました(笑)。
和ヶ原(笑)。 いちおう補足しておくと、 これはカーリンというキャラクターのことなんですが、『SO』シリーズの世界にはすでにいたフォックステイルという種族だったんですね。熟考したとおっしゃられていたのは、 自分が設定を思い出していたんだと思います。 何十年で1本増える、とかそういう感じだった覚えがあったので、6にしたんですよね。
あきまんなるほど! アクセサリーの指定も独特で、すごいなと思っていました。
和ヶ原『アナムネシス』は各キャラクターをフィーチャーしたサブイベントやコミカライズも予定されていたので、 フックになるような要素をちりばめるようにはしていました。
あきまんそういう経験を経て完成した『アナムネシス』がすごくおもしろかったので、和ヶ原さんに対しては信頼しかないですね。
――初対面から濃密なやりとりですね。
あきまん和ヶ原さんがどういうタイプの方なのかを知ることができました。
和ヶ原絵が完成していく様子を見ていたら、じっとしていられませんでしたね。
あきまんそこでずっとしかめっ面だったら、印象はかなり違ったと思います(笑)。
和ヶ原絵を描けない人間にとっては、 夢のような時間でしたね。 当然あきまんさんが作られた『ストリートファイターII』は友だちとたくさん遊びましたし、 僕がこの世界に入るのに必要不可欠だったピースのひとつとなっているので、 そういう意味でもあきまんさんは憧れの存在でした。
あきまん光栄です。 僕も『はたらく魔王さま!』は楽しませていただきました。
『SO』はとんでもない発明
――あきまんさんは『SO5』からの続投ですが、『6』のお話がきたのはいつ頃ですか?
あきまん『アナムネシス』が始まった少し後くらいですかね。「ひとりで全部やりますか?」と言われて、 本当は全員デザインしたかったんですが、あまりにも物量がすごかったので、おもにメインキャラクターのほうを担当させていただくことになりました。
――3作を手掛けられて『スターオーシャン』についてはどう感じてらっしゃいますか?
あきまん世界観に関しては全然詳しくないのですが、 人類が宇宙に飛び出すとファンタジー世界がある、 というのはとんでもない発明だなと思っています。 皆さん普通に受け入れられてるようですが、「これがすごいことだと思わないのかな」と感じたりするくらいですね。 この世界を視覚化するお手伝いができている、というのはうれしいです。
和ヶ原すごくわかります。
あきまん宇宙に行く作品は多いんですが、だいたいが『スタートレック』みたいな雰囲気じゃないですか。これが、『スターオーシャン』だとだいたいの世界が牧歌的な感じなので、このコンセプトは残していかなくてはいけないという個人的な気持ちもあります。
――和ヶ原さんはいかがですか?
和ヶ原僕が最初に触ったのはスーパーファミコンの『スターオーシャン』ですね。 あきまんさんほど深く考えていたわけではなかったのですが、SFとファンタジーが融合して、 このふたつの世界の人物がおなじ物語の中に存在するというのは、 当時の自分にとってはとてつもないインパクトでした。 さきほどあきまんさんが見事に言語化されてるのを聞いて、「なるほど!」という感じですね。
あきまんありがとうございます。
和ヶ原1作目のころはゲームがめざましく進化していた時期で、 オープニングが始まると生の声が流れたんですよね。 それがいかにも映画的で、 しかもSFもファンタジーも楽しめるという二度美味しい感じが最高でした。
『SO』が和ヶ原聡司を生んだ!?
――和ヶ原さんは、1作目以降もずっと『SO』シリーズを遊ばれてきたのですか?
和ヶ原よくぞ聞いてくださいました。作家、和ヶ原聡司は『スターオーシャン』という作品がなければ存在しなかったと断言できるほど、『SO』シリーズにのめり込んでましたね。人生でいちばん遊んだゲームはと聞かれたら、 迷わず『SO セカンドストーリー』と答えられます。
『アナムネシス』に参加させていただいたときは、昔ながらのファンに自分のような人間が突然現れたことへの反発があるかもしれないと思っていました。 一方で、 いままで積み重ねた『SO』への愛をここで放たずしていつ放つ、といった心持ちでしたね。
――ものすごく『SO』への情熱を感じます。
和ヶ原最初に『アナムネシス』第一部の小説を書いたんですけど、もし『SO』への愛や知識を疑われたときには、SNSにこれ(※下の画像)を載せようと思っていました。
あきまんものすごい量ですね!
和ヶ原これは一部で、 実家にはまだまだいろんなグッズがあるんですよ。
――『SO』フリークということはふだんからアピールされていたんですか?
和ヶ原あまりしていませんでしたが、『アナムネシス』のリリース後、僕のSNSは書いた本についての話と『アナムネシス』の話ばかりだった時期はありました(笑)。 どこかのタイミングで『アナムネシス』の小説を書きたい的なことをツイートしたら、ある日スクウェア・エニックスさんから連絡をいただいたんです。そのときの電話は、 本で賞をいただいたときと同じくらい緊張しましたね。
――偶然ではなく必然だった気もしますね。
和ヶ原日本でも指折りに幸せなオタクだと思います。 子供のころに憧れた世界のシナリオを書かせていただき、しかもあきまんさんがデザインを担当なんて、夢みたいな話ですよね。
『SO』の父・五反田氏の存在
――『SO6』 の人物をデザインするうえで、『SO5』から方針の転換はありましたか?
あきまん最初にトライエースさんで全体の方向を決めることになったんですが、最近は海外含めてエッチなものにきびしいので(笑)、『SO5』のフィオーレのような際どい衣装は避けようということになりました。 そこでアベラルドなど数キャラのおおまかなデザインは決まりましたね。
あとは、五反田さん(五反田義治氏のこと。トライエースで『SO』シリーズのメインコンセプターを務める)が「今回の主人公は高身長でごつい男でもオーケー」的なことをポロッとおっしゃっていたので、「これは僕の好みだ!」と思って絶対そうしようと思いました。
――和ヶ原さんのほうから、 デザインに関してのオーダーはありましたか?
和ヶ原『SO6』に関してはそういうことはありませんでしたね。 これは僕の目線の話になるのですが、『SO6』のプロジェクトは僕が『アナムネシス』のシナリオに参加してすぐくらいには始まっていた気がします。 そのとき、 僕は『アナムネシス』にどっぷりで、 新型コロナが流行する少し前のラジオ収録の際にレイモンドとレティシア、 マリエルのラフイラストを見た記憶があります。
あきまん『アナムネシス』にレイモンドを先行して登場させようという話もありましたね。
和ヶ原そうだったんですね。僕が『SO6』に参加したころには、 五反田さんによるとてつもない量の原案が完成していたのもあって、デザインに関して意見することはほぼありませんでした。 唯一意見したのはアベラルドくらいですかね。、 理由としては「シナリオがこうなったのでこうしたほうがいいだろう」という感じで、 そこに関しては人伝いにあきまんさんに意見が届いたんじゃないですかね。
あきまんそういう流れがあったんですね。アベラルドのデザインに関しては、 変更したおかげでマルキアとの関係が生まれましたね。
和ヶ原はい。 あとは、 プロットの段階ではマルキアとテオはいまのものとはまったくの別の人物で、JJは存在すらしなかった気がします。この3人に関しては、開発的な都合やキャラクターが持つ武器のバランスなども考慮しながら、肉付けをしていきました。
あきまん『SO6』は、武器のチョイスが意欲的というかいつもと違う感が強くて、 開発の皆さんのやる気を感じましたね。
和ヶ原『アナムネシス』はシナリオが僕に一任されていたので、僕が何か言わないとあきまんさんがデザインできなかったんですよね。『SO6』の場合は、五反田さんのプロットを受け止めつつシナリオ化する、 というところでキャラクターが生まれていったので、『アナムネシス』よりはあきまんさんとのやりとりは少なかったですね。
あきまん僕はレイモンドのデザインでかなり苦労しましたね。 和ヶ原さんも五反田さんによくシナリオを直されていたと耳にしていたので、「あ、 僕だけじゃないんだよかった」と思いました。 五反田さんの“譲れない何か”というのは僕にはよくわかりますし、 和ヶ原さんもきっとそことぶつかりあってるんだろうな、 と仮想のやり取りを思い浮かべつつ、デザインの修正をがんばりました(笑)。
和ヶ原(笑)。 実際に五反田さんとは濃密なやりとりをしていましたね。 なかなか意見が合わなくて止まった部分もありましたが、 正面から話し合えたからこそ最後にカチッとハマった気がします。 レイモンドは、 シナリオに関してもシリーズにないキャラクターなので二転三転はありましたね。
――レイモンドは、 デザインもシナリオも難産だったようですね。
あきまん僕はデザイン担当なので、 単純に世界観への理解が不足していたのかなとも感じました。 最初はパワードスーツっぽいものを着させたりもしていたのですが、 これがどうも不評で。五反田さんからは「パワードスーツっていうのは未開惑星の技術なんですよ」と言われたんです。それを聞いて「ああ、そうだ
ったんだ!」ってなりました(笑)。
――ファイナルトレーラーではテオやJJがお披露目になりましたが、JJの姿は印象的でしたね。
あきまん“メカと侍は相性がいい”という前例があって、JJはそれに則ったんですが、単純に混ぜるとよくある感じになってしまうとも思いました。『キングゲイナー』のときのように僕らしさをいれなきゃということで、結果的に線がとても増えることになり描くのが大変になりました(笑)。
完成したCGを見たらかっこよかったので安心しました。JJだけじゃなく、ほかのキャラクターもやっぱりCGになって動いている姿を見ると感動しますね。マルキアの衣装がキラキラしていたのはとくに印象に残っています。
――マルキアの衣装はすごく綺麗ですね。
あきまんマルキアは動いてるときの腕の演技がすごくいいですよね。デザインに関しては、最初「マルキアはスライムです」って言われてちょっと引きましたけど(笑)。
和ヶ原僕もです(笑)。マルキアはトラッセンという種族なんですけど、この名前は五反田さんとの打ち合わせの中でヒントがあったんです。トランスルーセントっていう生物学的な概念があるんですよ。ネットで検索すると骨が透けてる熱帯魚みたいなのが出てくると思うのですが、マルキアはそういうイメージだと言われたんですね。とはいえ、マルキアはスライムで武器はナックル、と聞いて「どうなるんだ?」と思っていました。
あきまん僕も最初はどういうキャラクターなんだろうと思ってました。
和ヶ原最終的に、スライム的な特性はアベラルドとの関係にも活かされましたし、シナリオを書きながら悩むことも多かったマルキアですが、ファイナルトレーラーでフーガという空を飛ぶ兵器に乗っているシーンを見たときにはかっこよくて感動しました。
あきまんあのシーンはかっこいいですよね! 僕も何回も見てしまいました。ミダスのデザインをスチームパンクっぽくしてスコピアムとの差別化を測ったんですが、かなり自然な感じに見えてよかったです。
──フーガ(ゲームに登場する小型の飛行機)のデザインは、ミダスのスチームパンクっぽさがヒントになって作られたとお聞きしました。
あきまんそうだったんですね。よかったです。
和ヶ原たしかに、アスターの機械はスチームパンクっぽさを感じる部分が多いですね。レティシアがミダスの村を訪れるシナリオを書いたときは、工数的に無理かもしれないと開発の方から言われていたんです。いざ蓋を開けてみたら、素晴らしい出来になっていて驚きました。村にはミダスが作った機械があったりするので、遊ばれる方には注目していただきたいですね。
あと、最初の方に話に戻るんですが、この村はある意味SFとファンタジーの融合という『スターオーシャン』の魅力を象徴する場所になっているようにも感じます。五反田さんのプロットでも、かなり初期の段階からビジュアル的なイメージも固まっていましたからね。
――フーガに関しては、五反田さんと和ヶ原さんでひと悶着あったともうかがいました。
和ヶ原悶着というほどではありませんが(笑)。さきほどからチラホラと話も出ていて、ちょっとネタバレにもなってしまうのですが、アベラルドという人間を掘り下げるシナリオを作りたくて、左腕を失ったという設定を用意したんです。そこで失った左腕をどう補うのかということで「『鋼の錬金術師』のオートメイル的なものにしましょう、それがミダスを捜す理由にもできると思います」と提案したんです。
すると、五反田さんが「左手を失うという設定はオーケーだけど、いくらミダスでもオートメイルは作れないだろう」という返事が返ってきたんです。そこで、マルキアも絡むシナリオに変化していったんですね。
――かなり厳密に技術レベルが設定されていたんですね。
和ヶ原そうなんですよ。そんな中で、フーガが登場する場面のシナリオを書くときに、五反田さんに「フーガってどうやって作られたんですか」って聞いたら、ぼんやりとした答えしか返ってこなかったんですよ。レイモンドやクロエがアスターに落下するシーンでも、角度まで厳密に決められていたのに、フーガの設定だけゆるかったんですよね(笑)。そこで、急いで材質や航続距離、エネルギー源なんかを五反田さんに決めてもらいました。
――設定を決め忘れていたんですかね(笑)。
和ヶ原星と星の距離など、そのほかの設定はすべてガッチリ決まっていただけにびっくりしましたね。五反田さんが非常に作家性の強い方だということはそれまでの打ち合わせで感じていたことですが、改めてSF的世界観により強いこだわりを持っているのだと感じました。
あきまんたしかに。僕もそう感じましたね。
和ヶ原僕自身、『はたらく魔王さま!』のコミカライズやアニメ化でこだわったりした部分もあったので、五反田さんの気持ちはよくわかりました。設定をいじったりする提案を受け入れてくださったときには、忸怩たる思いもあったのかもしれません。シナリオに関しては、かなり時間がかかってすべて書ききるのに1年以上かかりましたがとてもいい経験になりました。
――いままでのお仕事とは勝手が違いましたか?
和ヶ原フルプライスのゲームの仕事ということ自体が初めてで、ゲームがどういう風に作られるかという知識もほぼありませんでしたからね。イベントシーンのシナリオを書くとはこういうことだよ、ということを教わりながら進めていく場面も多かったです。
象徴的だったのがレティシア編のオープニングで、レイモンド編と同じくらいのボリュームがいるだろうということで船上のシーンから始めようと思っていたんです。ただ、開発の方からファンタジー世界の船はコストがとても掛かると言われてハッとなりました。今後、船上のシーンも予定がなかったですしそれはボツになりましたね。そんな感じで勉強させていただきながら作業を進めました。
あきまんそんな逸話があったんですね。レティシア編のオープニングが楽しみだなぁ。
最初はマリエルが主人公だった!?
――ダブルヒーローシステムは、 シナリオを書くのも大変そうですね。
和ヶ原実質イベントが2倍のような感じですからね。 しかもDUMAはプレイヤーが選択した主人公に同行するので、 五反田さんにはDUMAが関わるイベントを作るときは注意してほしいと言われていました。 パーティが分かれているときは、DUMAがいないと解決できないシーンは作らないようにしています。
――ちなみに、DUMAのデザインはあきまんさんが手掛けられているのですか?
あきまん頼まれてはいたのですが手が回らず、気がついたらかっこいいものができあがっていました。 密度がみっちりとしていてとてもいいデザインですよね。
和ヶ原理術師のオーブ的な物を想像していたので、 完成図を見て大きさにびっくりしました。想像の5倍くらい大きかったので(笑)。
あきまんいろんな機能が付いているのがいいですね。 そういえば、 女性の主人公って最初マリエルじゃありませんでした? なので、マリエルは主人公のつもりでデザインしていたんです。 裏話ですが、 レイモンドは黒、 マリエルは白みたいな感じで描いていました。
和ヶ原『アナムネシス』のころは物語が“反銀河連邦”的な色が濃く、レイモンドとマリエルが主人公だと聞いていました。 ファンタジー世界の視点も持たせたいということで、 レティシアが主人公に変わったみたいです。 僕が最初に見たキャラクターもマリエルでしたし、すでにいまの姿に近い感じになっていました。
あきまんそうですね。 コートを着ている女の子がおしゃれなイラストレーター界で流行っていたので、コートを着させました。
和ヶ原いままでの『SO』にはない感じでいいですよね。 しかも、 いろんな機能が詰まっていそうでロマンも感じます。
あきまんありがとうございます。
――主人公がレティシアに変わったときにマリエルのデザインがひっくり返されるのでは、と不安になったりはしませんでしたか?
あきまん「色はあまり変えたくないなぁ」くらいにしか思いませんでしたね。 レティシアは僕の好きな感じのキャラクターだったので、むしろうれしい気持ちもありました。 いつかお姫さま騎士的なキャラクターも描いてみたいと思っていたんです。 本当は王冠とかも着けたかったんですけど、 お忍びの旅だからゴ
ージャスにできないな、と思いとどまりました。あとは、 布や革製品を多めにしてほしそうだったんですけど、 僕の好みもあったのでいまのデザインで通してもらっています。
和ヶ原鱗っぽい感じがかっこいいですね。
あきまん鎧の姿を通したのは「お忍びなのになんなの? あの人たち」と思われたいという気持ちも少しありますね。 さっきの話とは矛盾してしまいますが(笑)。
デザインコンセプトはひとり1フェチ!
――レティシアの鎧以外で、 デザインでこだわったところはありますか?
あきまん開発陣からは、「ひとり1フェチ」的な標語を言われました(笑)。『ニーア オートマタ』のA2は胸の形にこだわりを感じましたし、これがグッとくるんですよ。
――鋭い視点ですね(笑)。
あきまん手癖で谷間を作っちゃいがちですからね。 そういうのも目にしつつ、 こういうのもひとつのフェチだなと勉強になりました。ということで、 全キャラクターに何かしらのフェチを入れようとはしました。
和ヶ原「ひとり1フェチ」いい言葉ですね!
あきまんエレナはハーネスフェチ的なデザインで、 いざ描いてみると、 すごく大変でした。レイモンドのテーマは、血管フェチです。血管は需要があるはずですからね。
――テオは何フェチですか?
あきまんテオは最初、 モビルスーツのシナンジュっぽくしようと思ってたんですよ。でも、描いていた鎧を全部剥ぎ取られちゃっていまの姿になりました(笑)。
――最初はもっと鎧を着ていたんですね。
あきまんそうですね。
和ヶ原僕のイメージだとテオのデザインは二転三転しているように見えました。
あきまんたしかにそうかもしれませんね。
和ヶ原それほど数は見ていないんですけど、髪型から腕からいろいろ変わってましたね。
あきまん「鎧取られたな~」て思いました。 なので、 モビルスーツフェチみたいな感じにしたかったんですけど、 結果としてそうはならなかったキャラクターですね。
――残りは皆さんのご想像におまかせして、という感じですかね。
あきまんそれがいいですね。
和ヶ原ニーナは太ももだと思ってます!
あきまんそれは間違いないです。 健康的にしてくれとオーダーされていた気がします。
――今回、 あきまんさんに週刊ファミ通の表紙を描いていただいたのですが、 和ヶ原さんはご覧になっていかがですか?
和ヶ原感無量でしたね。『スターオーシャン』と名の付く書籍は片っ端から集めていた人間なので、 いろんな雑誌もいまだに持っているんですけど、そんな中でこの表紙が本屋に並ぶ、それを買う自分、 と想像するとワクワクが止まらないです。 しかも、 この本の中であきまんさんと自分がいっしょにいられるんだっていうのもたまらないですね。 作家としての自分とオタクとしての自分がしっちゃかめっちゃかになっています。
――すばらしい表紙イラストをありがとうございます。
あきまんこの業界は長いんですけど、 ファミ通さんの表紙を描く機会はなかなかなくて、後輩のほうがさきに描いたりもして当時はもやもやしたりもしましたね(笑)。『SO5』のとき、 ついに描かせていただいたときはとてもテンションがあがりました。 今回の表紙も、パンチのあるものになったと思います。
和ヶ原ふたりがあの姿で登場するのはゲームでも重要な転換点になっているので、 遊ばれる方にはたまらないものになっていますね。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
あきまん『スターオーシャン』というタイトルが『SO5』で久しぶりの復活を果たし、『アナムネシス』を経て『SO6』に至るまで、すべてはつながっていて、 開発の皆さんの「やるぞ!」という気持ちに溢れた作品に仕上がっていることを肌で感じています。 体験版の配信などもあり、 それが皆さまにもいい感じに伝わっているような実感もありますし、 製品版での反応も楽しみです。 ぜひとも多くの方に遊んでいただけたらうれしいです。
和ヶ原あきまんさんもおっしゃったように、このゲームに関わっているすべての方がやる気に満ち溢れていて、命を削って作り上げていることをひとりの開発メンバーとしても実感しています。いまここでお話をさせていただけているのは我々ふたりだけですが、スタッフ全員のいろいろな気持ちがこもったゲームになりました。 過去作の話などもしましたが、 初めて『スターオーシャン』に触れる人も純粋に楽しめるゲームになっているので、期待していてください。