ヨーロッパ最大規模のゲームイベントとしておなじみのgamescom。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年、2021年はオンラインのみでの実施となったgamescomだが、今年は3年ぶりに来場者を招いてリアルに会場でも開催。ドイツ・ケルンにて、2022年8月24日~28日(現地時間)にgamescom 2022として行われ、来場者数は26万5000人を記録した。

 コロナ禍前に行われたgamescom 2019の来場者数は37万3000人だったので、さすがにそれと比較すると及ばないが、会場を歩いていると例年と変わらないくらいの熱気ぶり。何よりもうれしかったのはゲームに接しているときの皆さんのうれしそうな顔で、リアルイベントのよさを改めてしみじみと実感したものだ。

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3年ぶりにリアル開催され、「待ってました」とばかりに多くの来場者が詰めかけたgamescom 2022。

 そんなgamescom 2022の会場で、gamescomの担当者にお話を聞く機会を得た。gameにて、gamescomを統括するクリスチャン・バウアー氏だ。gameというと、何ともその名もずばりな感じだが、ドイツのゲーム業界の団体であるよう。現在390の企業が参加しているという。日本で言えばCESAみたいなものであろうか……。

 gameの設立自体は2018年と比較的最近だが、それまでドイツにはBIU(Bundesverband Interaktive Unterhaltungssoftware)とgameというふたつの組織があり、BIUはおもに大手パブリッシャーが参加し、gameはおもにインディペンデント系スタジオが集っていたようだ。それが2018年に、「業界のすべての目標をよりよく伝えるため」(バウアー氏)ふたつの団体が統合され、新生gameとしてスタートすることになった。

 gamescomは2009年からBIU主導のもと開催されていたが、2018年以降はgameがその立場を引き継ぐこととなった。ちなみに、gamescom自体の主催はケルンメッセで、gameはケルンメッセにgamescomのライセンスを提供しているという関係になるようだ。

 「ユーザーから政治家まで、ゲーム業界に関わるすべての人が集う場所としてgamescomは極めて重要です。ときにゲームに親しくない方も参加したりと、大きなネットワークとして機能しているのです」とバウアー氏はインタビュー開始にあたって、gamescomの意義を語った。

開催するまでには紆余曲折があって、途中で難しい局面もあった

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クリスチャン・バウアー氏

game ヘッド・オブ・gamescom &イベント

――2020年、2021年とgamescomは開催できませんでしたが、ダメージは大きかったですか?

バウアー2009年にスタートしたgamescomは年々成長を遂げ、2018年には37万人の来場者を記録。2019年には出展者は1153社で、37万3000人の人が訪れました。2019年の段階で、展示総面積は初めて20万平米を超えています。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ショックは大きかったかと問われば、おそらく地球上のすべての人がそうだったのではないかと思います。

 2020年は、関係者と相談して、リアルでイベントができない変わりにデジタルで開催させていただきました。2020年、2021年と2年間は完全デジタルで実施しました。とてもたいへんでしたが、世界中の多くの方に視聴していただけて、成功を収めることができたのは成果でした。

――2022年にgamescomをリアルで実施することは早い段階から決めていたのですか?

バウアー実際のところは2021年に行うことも可能ではあったかもしれません。2022年にやりたいということは早い段階から決意を固めていました。“リアルでイベントを行う”という決定は、すべてのステークホルダー(関係者)が支援してくれました。2021年冬にはオミクロン株の波が来て、感染者が急増したことで開催が危ぶまれたこともあったのですが、お互いが助け合って、なんとか開催にこぎつけることができました。

――開催に向けていろいろあったようですね。

バウアー開催にあたっては、いくつかの前提が必要でした。わけても、出展者のためにも来場者のためにも、“本当に安全な環境を作る”というのは大前提でした。それが実現できることがわかったので、ゴーサインを出しました。結果として、53カ国から、1100の出展者が参加してくれて、gamescomに戻ってきてくれました。中には、「今年はまだ出展しない」という決定をしたメーカーさんもいますし、タイミングが合わなかったところもあるようですが、来年戻ってきてくれたらいいなと思っています。

 とくに私たちにとって大事だったのは、たくさんのメーカーさんが今年初めて出展することを決定してくれたことです。いままで出展していた会社が今回は参加を見合わせたりもしたのですが、その分今回はインディーゲームのスペースが増えました。クリエイティブでオリジナルな会社が来場者を喜ばせてくれて、よかったと思います。

 テンセントやKRAFTON、HoYoverseなども初参加ですね。

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例年よりも多くのスペースが割かれ、来場者も多数訪れたインディーゲームブースは熱気に溢れていた。
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HoYoverseは『原神』を出展。コスプレイヤーの姿も見られ、人気を集めていた。

――「開催できないかも……」という不安はなかったのですか?

バウアー今年の頭に実施することに決めたあとも、開催するまでには紆余曲折があって、途中で難しい局面もありました。たくさんのサポーターが「開催したい!」ということで力を合わせてくれました。

 企業はもちろんですが、gamescomにとって何よりも大事なのはファンのコミュニティーです。gamescomには彼らのために、コスプレやレトロゲームなど、独立したイベントを企画しています。そういったファンコミュニティーが「リアルでイベントを開催したい」ということで、一致団結しました。開催までに不安なこともたくさんあったのですが、コミュニティーの皆さんに力をもらって、実現できました。

――手応えはいかがですか?

バウアー開催できてほっとしたというのが正直なところです。ウイルスに感染する人が出ないことを祈っています(※インタビューは会期3日目に実施)。

 会場を見回ってみると、皆さん生き生きとした表情をしていて、gamescomで3年ぶりにいっしょになっているという感じがいいです。

――来場者がたくさん来てくれていますね。土曜日は入場チケットが売り切れたようですが、ここまで人が来ることは期待していましたか?

バウアー開催する前までは、たくさんの人が来てくれる可能性は大いにあると思っていましたし、来てくれることを期待いたのですが、正直来てくれるかどうかはわかりませんでした。来ていただけて本当にうれしいです。

――やり遂げることができた理由は?

バウアーみんなが愛しているゲームがなければ実現できませんでした。ゲームを愛しているみんなでコミュニケーションを取って、1歩1歩進んでいきました。

――今回gamescom 2022を実施してみて、新たな気づきなどはありましたか?

バウアーHall6では、これまでになかった取り組みとして、イベントアリーナを設けました。gamescomのチケットを購入すれば無料で参加できます。オープンステージで、ゲーム大会やコンサートなどを催したのですが、大盛況でした。これには手応えを感じています。

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出展状況の兼ね合いもあったかとは思われるが、Hall6はイベントスペースに。多くの来場者が訪れ大盛況だった。

――来年2023年も開催されることが明らかにされていますね(※gamescom 2023は2023年8月23日~27日に開催)。決意表明みたいなものなのかしら。

バウアーそうです! 来年も開催しますので、ぜひ戻ってきてください!

――最後に、gamescom 2023に向けての抱負をお願いします。

バウアーまずは、gamescom 2022に来てくださった方に、「今年参加してよかった」と思っていただけるとうれしいです。そしてまた来年も参加していただけたら……。ステップバイステップですね。

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