2022年9月15日(木)~2022年9月18日(日)に開催される“東京ゲームショウ2022”(TGS2022)。その3日目、スクウェア・エニックスのブース内スタジオから“TGS2022『Voice of Cards 囚われの魔物』発売記念!シリーズ3作品揃った今こそ大集合するしか!スペシャル”が配信された。
剣と魔法の世界における物語や戦闘など、すべてのシーンや演出を、語り部となる“ゲームマスター(GM)”役の声優さんの声と、イラストが描かれたカードのふたつのみで表現するRPGシリーズ『Voice of Cards』。
9月13日(火)に三部作の第3弾『Voice of Cards 囚われの魔物』が発売されたことを記念して、これまでのシリーズ作品を紹介しつつ振り返るのが本トークショーの主旨だ。
出演者は、第1弾『ドラゴンの島』でGM役を務めた声優・安元洋貴氏、シリーズのクリエイティブディレクターを務めたヨコオタロウ氏、エグセクティブ・プロデューサーの齊藤陽介氏、ミュージックディレクターの岡部啓一氏、キャラクターデザイナーの藤坂公彦氏、ディレクターの三村麻亜沙氏だ。
トークショーでは、統括する立場のヨコオ氏も聞いてなかった開発逸話や、ぶっちゃけすぎた秘話もところどころで飛び出した。以下、その模様をお伝えしていく。
「全部カードにしたら楽じゃん、と思って」「いや大変でした」
トークショーは「岡部氏がお金持ちなのでみんなで奢ってもらおう」というジャブから始まった。まずは2022年10月28日に発売された1作目『ドラゴンの島』の発売当時のテイザームービーを見てから、作品のおさらいと開発経緯を振り返る。
経緯としては、すべての要素をカードで構成したゲームを作りたいというヨコオ氏の発案が始まりだったとのこと。その理由とは。
実際はどうだったのか。三村氏に聞いてみると「めちゃめちゃ大変でした」との返答。全部カードで表現してくださいとコンセプトを聞いた当初は「はて?」といった反応だったという。
本作をカードゲームと勘違いしている人もいるだろうが、実際はGMが進行するテーブルトークRPGのような作品だ。ヨコオ氏は安元さんをはじめとする実力派声優の“噛み”がたくさん聞けるところを熱く推す。
噛んだセリフや咳払いさえ収録しているのは、部屋で友だちとテーブルトークRPGを遊んでいるような感覚を大事にしたいというコンセプトに沿ったものと、ヨコオ氏は熱弁した。
続いては2作目『できそこないの巫女』のテイザームービーを上映し、当時の思い出を振り返っていく。本作でGMを務めた声優・速水奨さんからは、第3作の発売を祝いつつ、収録当時の苦労にに触れたボイスメッセージが届けられた。ちなみに、速水さんは収録外でもずっとこのいい声らしい。
なお、2作目のメインシナリオライターは和田侑樹氏。「本作がダークな雰囲気なのはヨコオ氏のせい」だと言われている。それに対して、横尾氏は「あれは和田さんのせいです」と釈明を試みた。結局のところ、最終的にOKを出しているのはヨコオ氏とのことだが。
その流れで、トークショーは第3作『囚われの魔物』の話題へ。発売されたばかりのタイトルということで、三村氏から本作の特徴が紹介された。魔物をスキルカードとして収集する要素と、ステータスがそれぞれ異なる仲間たちにスキルを使用させていくシステムについてだ。
前2作から一転し、GM役に女性声優・石川由依氏を抜擢。理由は「声が低い男に飽きた」(ヨコオ氏)。……冗談はさておき、作品のコンセプトには女性が朗読したほうが合う、と判断したとのことだ。
1作目のコンセプトは“3人組の王道RPG”、2作目は“海を中心としたさまざまなペアの物語”。3作目では敵側の思惑が入ってきて立場や物語が逆転するところもあるため、GMの性別をがらりと変えるのもいいかな、と考えたという。
ヨコオ氏によると、3作目のシナリオ面ではトラブルもあり、かなりの人数で書くことになったという。そこで1作目、2作目ではシナリオにほぼタッチしていなかったヨコオ氏自身をはじめ、周囲のライターの力を集結。血の涙を流しながら、人が増えてかみ合わない部分を何とか合体させることに最後までこだわったそうだ。
なお、シナリオ内でひどいことが起きて、安元さんの言葉を借りれば「なんちゅうことやってんだ」と思うことがあった場合は、「3作目については俺のせい」(ヨコオ氏)という言質も取れた。
石川由依氏も、ボイスメッセージ内で「お話を読んでいて、マジか! ヨコオさーん! と思った展開がありました」と述べていたので、間違いなさそうだ。
「吉田明彦さんですら直してくれるのに」「その名前出すのはズルくない?」
シリーズ全体の振り返りに続き、イラストと音楽の話題へ。おもなスピーカーは藤坂氏と岡部氏だ。
キャラクターデザイナーの藤坂氏は、カードイラストを描くうえで、ヨコオ氏から頼まれた“アナログ感”を出すことに苦心したという。そこで、デジタルな四角にしか見えないゲーム上のカードに、動く際に光を反射する“箔(はく)”をつけること、この課題は解決。
1作目から3作目の各コンセプトは、家庭用ゲームが世に出回り始め最初期のころから最近までの流れを追うようなテイストを考えたとのこと。
イラストの話については、クリエイティブディレクターであるはずのヨコオ氏から「初耳です」との発言も。
また、2003年発売の『ドラッグ オン ドラグーン』時代からの付き合いであることを踏まえつつ、ヨコオ氏からは「この人は僕がリテイク出しても本当に絵を直さないんですよ!」とのぶっちゃけ話も飛び出した。
※吉田明彦氏:『伝説のオウガバトル』や『ファイナルファンタジーXII』など数多くの作品を経て、ヨコオ氏が手がけた『ニーア オートマタ』でもメインキャラクターデザインを務めたデザイナー。
齊藤氏によると、藤坂氏は必要があればふつうに直してくれるらしいので、ヨコオ氏の言うことだけを聞かない疑惑が浮上した。「ここら辺はヨコオさんのいうこと聞いてないんだなぁとか思いながら遊んでみてください」と、安元氏。
「さすが現代の○○船!」「そんなことない」
続いては音楽について。岡部氏が1作目から順に各タイトルのコンセプトを語った。第1作では探りを入れつつ、王道ファンタジーの方向性を感じてもらえるようにアイリッシュやケルトのテイストを採用。曲自体は3年前には制作に入っていたとのこと。
岡部氏とコンポーザーの瀬尾祥太郎氏、オリバー・グッド氏のあいだで相談して楽曲の担当割り振りを決定。1作につき12~13曲ほど制作することになり、聞き疲れしない曲を目指したという。とはいえボス戦では“圧”もほしい。バランス取りが大変だったそうだ。
3作目のボーカル曲“星を探す旅”は、開発当時ヨコオ氏にツインボーカルブームが来ていると岡部氏が判断。瀬尾氏が曲の制作と男性側のボーカルを担当した。
齊藤氏いわく、岡部氏のサウンド制作会社MONAKAはスタジオ設備がよくなっていて、いまでは歌い放題(以前は岡部氏の自宅で宅録)。『ニーア』でも瀬尾氏にコーラスを歌ってもらったりしたらしい。
岡部氏「そんなことない」
また、2作目で楽曲の雰囲気をがらりと変えたこともあり、3作目は1作目と2作目のいいところを残すミクスチャー作品として、シリーズの集大成にもなっているとのこと。世界観を音楽からも感じてみてほしいと、岡部氏はまとめた。
安元さんから「岡部さんはヨコオさんのいうことは聞くんですか?」と質問があると、岡部氏は「僕はヨコオさんの犬なので、お手と言われれば手を出し、伏せと言われれば寝転がります」。ヨコオ氏も「お金さえ払えばなんでもやってくれる」と言い出して、収拾がつかなくなりかけた。
「もうほかのグッズは絶対出ません」
トークショーは告知コーナーで絞められた。缶バッジをはじめとする『Voice of Cards』グッズはメーカーの厚意でビジネス抜きで出してもらったとのことで、「この配信を見てさらにグッズを出したいと言ってくれる会社があるかも」と言った齊藤氏に対し、ヨコオ氏は「もうほかのグッズは絶対出ません」と言い出した。
また、ダウンロード配信中のサントラに関連して、なぜか岡部氏、瀬尾氏、オリバー・グッド氏の3名が本人の声で裏話を届けるキャンペーンも開催するとのこと。個々人に向けてのメッセージということで、名前も呼んでくれるらしい。
ゲーム本体は、1作目と2作目は2022年9月28日(水)まで、さらに第1作と第2作のDLCとのセットは2002年9月28日(水)から10月12日(水)までセール中。各作品の間にストーリーのつながりはないということで、トークショーで興味をもった人は、好きなタイトルからプレイしてみてはいかがだろうか。
TGS2022『Voice of Cards 囚われの魔物』発売記念!シリーズ3作品揃った今こそ大集合するしか!スペシャル
※記事内の画像は、配信画面からキャプチャーしたものです。