2022年6月10日に2KとSupermassive Gamesより発売された、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、Steam用ソフト『クアリー ~悪夢のサマーキャンプ』。ひと夏の思い出を作ろうとする若者がたいへんな目に遭うゲームだ。ホラーファンの大好物である。
ホラー映画さながらの映像を楽しみながら登場人物に感情移入し、中盤以降で恐怖に怯えながら彼らを導いていく本作。先頃のアップデートで最大8人(ホスト1名、参加者7名)のオンラインマルチプレイモード“狼の群れ”が実装された。
“狼の群れ”は、ホストプレイヤーに対して、ほかのプレイヤーが指示を出したり行動選択に参加するモードだ。故意に足を引っ張ることもできる。“悪夢のゲームキャンプ”と題してライター3人が挑戦し、それぞれがレビューを書くことになったので、ここではホラーゲーム大好きな筆者の視点でリポートしていく。
さてどうしてやろうか……。身内に犯人がいるのもホラーやミステリーの王道である。
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今回の参加者は、シングルプレイでゲームを1周以上クリアーしている3人。ホラー映画好きなタワラ氏がメインでホストを務め、ホラーが苦手なカイゼルちくわ氏と筆者は参加者側に回った。3人ともオンラインマルチプレイは初の挑戦だ。
もちろん、筆者も物語のネタはすべて知っている。つまり、シナリオのドキドキがあるかというと、一切ない。あるのは、いままで救ってきた若者たちを恐怖のどん底に突き落とせるのかという好奇心のみである。いったいどんなホラーな演出ができるのだろう。
ということで、バットエンドへ向けてフルスロットル!
本作のマルチプレイは、ホストとなるプレイヤーの行動を、参加者全員の投票によって決めていく。“全員の投票率”と“投票結果を確認したうえでホストが最終決定をする”という、2種から選択可能だ。
ひとまずプロローグ(チュートリアル)を“全員の投票率”でゲームを進めていくことにした。最初はみんなで「本来なら絶対に選択しないだろうな」という選択肢をチョイス。
結果、操作キャラクターであるローラは随分と生意気な女子になり、一周回ってホラー映画で最初に退場しそうなキャラクターに大変身した。
QTEの結果も物語に影響を与えるため、あえて皆でミスってみると、森の中で枝に頭をぶつけるわ、木の根っこに足をひっかけズッコケるわで、顔面ドロドロ。めちゃくちゃかわいそうなこととなり、3人で爆笑していた。いいね、ホラーしてきたぞ。
青春パートを荒らしてみた
本編からは、最終判断をホストに委ねる形でゲームを進めていく。QTEだけは全員の成功率によって成否が決まるシステムだ。
ホラーに慣れたふたり(ホストのタワラ氏と筆者)はいいとして、ホラーが苦手なカイゼルちくわ氏からは楽しい悲鳴が上がりまくるので、ホラー展開を選ぶのによりいっそうの気合が入る。この仕事にアテンドした編集者はグッジョブだ。
さて、話をゲームに戻そう。本作の序盤となる2~3時間は、キャンプ場を舞台に6人の若者による青春ドラマがくり広げられる。ここで友人同志の関係を構築して理解し、これから来る惨劇に立ち向かうというのが本来のありかたである。
……が、筆者が見たいのは甘酸っぱい青春ではないのだ。見たいのは、悲鳴が響き渡り、血が舞い踊り、殺戮の限りが尽くされる光景なのだ。
そのためにも、とにかくキャラクターの仲違いと分断をひたすら試みた。選択肢はホストの最終決定で確定するので、人狼ゲームで鍛えた話術でふたりを言葉巧みに誘導し、後々に響きそうな場所はとにかく荒らす。
秘密が隠れていそうな場所にいるキャラクターには見て見ぬフリをしてもらい、QTEでは何かと理由をつけて失敗。脱出用の車を大炎上させ、死亡フラグを乱立させ、キャンプ場に騒音を響かせる。もうひとりの参加者からツッコミと悲鳴が聞こえるが、きっと気のせいだろう。
ただ、結果から言うと、ここでの選択肢は、ほとんど物語に影響をしていないようにも思えた。車を燃やしたことで明らかな分岐はあったものの、後々の展開にもあまり影響がない気がする。チュートリアルも兼ねているからだろうか。
お話的にも、この時点でホラー要素はほぼなく、スキップなどのシステムもない。シングルでクリアーしてストーリーを知っている我々は別展開の予想などで盛り上がったが、それがないと少し退屈な時間に感じるかもしれない。
お気に入りのポイントでツッコミを入れたり驚きのリアクションを聞くのは楽しい。たとえば一度見たエピソードのスキップ機能や早送り機能を今後のアップデートで入れるなど、さくさく遊べるようになってほしいと願う殺人鬼(狂言回し)であった。
IQを下げて夜を過ごそうぜ!
かくして、ようやく夜を迎えた青年たちは、楽しいキャンプファイヤーを開催。本当のパーティーはここからだ。最速でグループを分断するぞ~♪
物語はいわゆる公式カップリングで別行動するようになっているので、それぞれに仲たがいをしていただきたい。具体的に言うと、ライアン×ケイトリン×ディラン、アビー×ニック、エマ×ジェイコブの3組だ。
中でも、アビー×ニックとエマ×ジェイコブの2組が、死亡フラグをバシバシに立てながらグループから離脱していくので狙い目である。キャンプファイヤーが始まって早々に喧嘩が始まるので、カップリングごとに別行動を開始してもらおう。
最初はアビー×ニックのパートから。本作に登場するキャラクターの中でも心優しいカップリングで、見ていて応援したくなるふたりなのだが、物語として最初の犠牲者になってもらうしかない存在でもある。断腸の思いで、微笑ましいふたりの関係に終止符を打とう。長い長い夜の開幕だ。
※編注:”断腸の思い”というのは誤りで、正しくは“ノリノリ”です。心にもないことを記事にするのはしのびないので訂正させていただきます。
あぁ! ニックが!(にっこり)
そして、襲われたニックの横で、アビーが“逃げる”か“助ける”かで物語が分岐するので……。
ちくわ氏(ホラー嫌い) 早く助けないと!
筆者 いや、ここは逃げましょう。救助者が二次被害を受けたらダメって言いますし(冷静)。
タワラ氏(ホスト) たしかに。よし、逃げるか。
ちくわ氏(ホラー嫌い) えぇ……(ドン引き)。
全力で駆けだすアビー。さよならニック。必ず助けを呼んで帰ってくるからね。助かるとは言ってないが。
これで1ダウン。シーンは変わって、つぎのターゲットはエマ×ジェイコブだ。彼らはスクールカーストの上位に君臨するような陽キャなので、慈悲はいらない。
彼女たちは、まだ自分たちが狂気の渦に飲み込まれていることに気付いていない。湖でいちゃいちゃなんぞし始める。まったく。ホラー作品で水辺と桟橋には近づいてはいけないと、あれほど言っているのに。
とりあえず、ジェイコブにはエマを川の中に放置してみんなのもとに戻ってもらおう。なお、序盤で車を燃やしたため、ここで彼の行動に分岐が発生している。別の展開を見たい方は、ぜひ本作をプレイしてほしい。
3人がそれぞれに単独行動となり、ひとりは生死不明ときたものだ。数分前まで仲よくキャンプファイヤーをしていたとは思えない。いい状態ができた。
そうこうしているうちに、森を何とか駆け抜け逃げてきたアビーがライアン、ケイトリン、ディランの3人に合流。ニックが襲われていることを伝えると、猟銃(ショットガン)を持ったライアンが救出へ! 無事にニックを救出して戻ってきた。
……が! そのとき! 近くの草陰に何かの気配が!
ちくわ氏(ホラー嫌い) なんかいる!
筆者 撃ちましょう。
タワラ氏(ホスト) OK!(ズドン)
迷狙撃手のライアン君が迷いなき散弾を草むらに打ち込み、4人の平和は守られた。めでたしめでたし。
そして、夜の湖にひとり置いてけぼりとなったエマは、湖の中にある孤島にひとり上陸中。彼女は人気の動画配信者とのことで、ここでも呑気に自撮りをしながら孤島を探索していく。
配信者の鏡だが、ここはホラー作品の世界だ。単独行動=死である。
順調に死亡フラグを立てながら、やがて小屋に到着するエマ。しかも、下着姿である。上の階からは「ガタン!」と物音。足元を見やればバッグが落ちている。
ちくわ氏(ホラー嫌い) ほら! バッグがありますよ!バッグ!
筆者 そんなことしていたら撮れ高逃しちゃいますよ。ほら、早く。
タワラ氏(ホスト) アー! テガカッテニー!(落とし戸を開ける)
ちくわ氏(ホラー嫌い) やっぱりー!
エマ―ッ!(にこにこ)
かくして、上の階から落ちてきた“ナニカ”にエマは襲われ、血だまりの中で人知れず息を引き取るのだった。お色気シーンを、ありがとう。
あとがき
残されたメンバーの行く末はいかに! ……これ以上のネタバレは避けたいので、この辺でリポートは終了。
すでにシングルプレイをプレイしている我々にとっては驚きこそないものの、それぞれが見たことのなかった選択肢による変化を楽しんだり、「それ、絶対に選ばないでしょ」という選択肢をあえて選んで笑ったり、誰かが避けたルートをあえて突き進んでみたりと、ひとりで遊ぶのとは異なる体験ができた。友だちの家に集まってホラー映画を見るような楽しさだ。
もちろん、初見の人を集めて遊べば、本作の本来の魅力を十分に味わえる。加えて、自分の意思とは異なる方向に進むマルチプレイならではの体験が、ホラーゲームとしての魅力をよりいっそう際立たせるだろう。参加するプレイヤーごとにキャラクターの選択肢を決める権利をあてがい、群像劇的な展開を楽しむのもありかもしれない。
ちなみに、プラットフォームごとに体験版が配信中で、ゲーム本体を持っているフレンドに誘ってもらえばマルチプレイも可能。まずは触れてみて、筆者のように潜り込んで場を荒らす快感を味わってほしい。配信中のポッドキャストを聞いて、恐怖体験のイマジネーションを膨らませるのもいい。
一方、本作は1回クリアーするまでに10時間を超える時間が軽く必要なので、マルチプレイを気軽にできるかというと、「かなり難しい」と思うのが正直な感想だ(筆者はシングルプレイでクリアーするのに16時間かかっている)。
プレイのコツは最序盤の青春パートにある。“狼の群れ”はフレンドと遊ぶ機能なので、基本的に参加者は気心の知れた人のはず。2~3時間ほどかかるので軽食でも食べて雑談しながら過ごせば、中盤以降に向けて気分が高まるだろう。
そのようにカジュアルに遊ぶためにも、やはり前述したスキップ機能がほしい。本作の魅力であるテレビ番組やビデオを見るような演出を生かし、テープの早回しができれば映像的にかっこいいし、ストレスフリーで遊べるようになるのではないかと、今回のプレイ中に常々思った。シングル・マルチのいずれも周回前提の作りとなっているため、ここは今後のアップデートで熱望したいシステムだ。ホラー好きとしてはいろいろな惨劇を見たいのである。
映画に負けない映像美がホラー作品としての恐怖を掻き立て、そこに自分の意思で介入できるゲームとしておもしろさと体験が加わり、選択によって変わる物語を追うのが楽しい本作。シングルはもちろん、マルチで何度も遊びたくなるホラーゲームである。クオリティの髙いホラゲーを遊びたい方におすすめの1本なので、ぜひプレイしてみてほしい。
そして、開発者の皆さまにおかれましては、ぜひ、スキップと早送りの実装をお願いいたします!