2022年8月24日~28日(現地時間)に、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて開催のヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2022。ここでは、フランスのパブリッシャーであるFocus Entertainmentから発売予定の、インディースタジオUn Je Ne Sais QuoiとUMANIMATIONの開発による『Dordogne』(ドルドーニュ)を紹介する。
ドルドーニュとは、ご存じの通りフランスの場所の名前。本作は、ミミという32歳の女性が、ドルドーニュ地方で亡くなった祖母の家を訪れるところから始まる。祖母の家に戻ったミミは子ども時代の思い出につながるさまざまなものを発見し、10歳の自分に戻る。プレイヤーは10歳のミミとなって、物語を進めるといった内容だ。
思い出を再構築する方法がユニークで、机や本棚などに隠されている“言葉”を見つけたり、自然の音などを録音したり、風景を写真で撮影したり……といった具合。1日が終わるとそれらの思い出を1冊のアルバムに収めていくことになる。集めた言葉で俳句を作ることもできる。俳句は、その1日の記憶を再構築することに役立つようだ。何とも不思議な肌触りの1作だ。
本作で、何よりも目を惹きつけられるのは水彩画のビジュアル。これは、Un Je Ne Sais Quoiのセドリック・バブーシュ氏が全部手描きで描いたもの。そもそもセドリック・バブーシュ(Cedric Babouche)氏はアニメーションディレクターで、りんたろう監督とも仕事をしているという、その実力は世界に認められている存在。『Dordogne』のプロデューサーであるUMANIMATIONのCEO、アイメリク・キャスタン(Aymeric Castaing)氏も、もともとはアニメ畑の人で、セドリック氏と15年いっしょに仕事をしているという。
2019年にセドリック氏とアイメリク氏はコラボすることになり、インタラクティブストーリーテリングをベースとしたゲームとアニメーションを作ろうということで着手したのが『Dordogne』となる。ふたりともゲームの開発は初めてとのことで、アニメ畑で活躍してきたクリエイターたちが、着手したのが『Dordogne』となる。
「私たちのゴールは、すぐれたトランスメディア・ユニバースを作ることです」と語ってくれたのは、アイメリク・キャスタン氏。本作の前日譚となる、12分のショートアニメーションも制作中で、こちらはミミの祖母がどのようにドルドーニュにたどり着いたのかがわかる内容になるという。ショートアニメは2023年後半にリリース予定とのことだ。
『Dordogne』というゲームの方向性は、じつはアイメリク氏がCEOを務めるUMANIMATIONという会社のネーミングに象徴されているのかもしれない。UMANIMATIONは、UMAMI(旨味)とANIMATION(アニメーション)から来ており、「旨味は塩味、辛味、苦味、酸味などの味のほかにある新しい味ですが、私たちは多くのテクニックを使って新しい方式のエンターテインメントを作りたいと思っています。そのために、絵画やゲームなどのいろいろな手法をミックスしているのです」という。
ちなみに『Dordogne』開発にあたっては、すべての水彩画を紙に描いて、それをスキャニングして3D化し、ゲームエンジンに取り込んでいるのだという。ゲームに取り込むには水彩画がうまく描けていることが必須となるが、「セドリックは14歳のころから水彩画を描き始めて25年になります。彼にとっては容易なことです」とアイメリク氏はこともなげに言う。アニメ界の実力派だからこそ実現したのが、『Dordogne』だと言えるのかもしれない。
ゲームのテーマを聞いてみると、「子ども時代に戻って、その時を再び生きることです。これはセドリックの子ども時代でもあります。子どものころ、祖母に会いに行くのはごく一般的なことで、その思い出があります。私もそうですし、多くの人も同じでしょう。ゲームの中で見られるのは私たちが子ども時代に体験したことなのです。フランスではとくにそうかもしれませんね」とアイメリク氏。
『Dordogne』は、2023年前半にリリース予定で、まずはNintendo Switchで発売され、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けに展開されるという。日本でも発売される予定で、すでに声優も決めているという。どうやらNintendo Switch版はパッケージ版の予定もあるようだ。
最後にアイメリク氏に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いしたところ、以下のお返事をいただいた。「日本の皆さんに楽しんでいただくのは私たちの夢です。当社の名前に日本語を使っているのでおわかりかと思いますが、日本が大好きですし、セドリックも同じです。日本の文化、食文化に惹かれます。東京ゲームショウ2022にも出展しますので、ご期待ください!」