2022年8月24日~28日(現地時間)に、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて開催のヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2022。同イベントの注目タイトルの1本と目されているのが、gamescom開催前夜に行われた“gamescom Opening Night Live 2022”でも最新映像が公開されたKRAFTONの『The Callisto Protocol』(カリストプロトコル)だ。
2022年12月2日に、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けに発売予定の本作は、『Dead Space』を開発したクリエイターたちが集結したStriking Distance Studiosが手掛けていることでも注目を集めているSFサバイバルホラー。2320年の木星の衛星カリスト(Callisto)を舞台にした本作は、貨物船のパイロットである主人公のジェイコブ・リーが、最大限のセキュリティを誇るブラックアイアン刑務所から脱出し、ユナイテッドジュピター社の恐ろしい秘密を解き明かしていくことになる。
gamescom 2022会期中に行われた取材陣向けのプレゼンでは、“gamescom Opening Night Live 2022”で披露された映像と同等のシーンをプレイしたデモが紹介。ジョシュ・デュアメル演じる主人公のジェイコブ・リーが、施設の奥深くに乗り込んでいく様子が15分あまりにわたって披露された。
デモプレイ後、Striking Distance StudiosのCTOであるマーク・ジェームズ氏にインタビューすることができた。デモなどから見えてきた『The Callisto Protocol』の詳細に迫ってみた。
『Dead Space』から一旦何もかも捨てて、本作に合っていると思うものを戻した
マーク・ジェームズ氏
Striking Distance Studios CTO
――まずは、本作の開発に至る経緯を教えてください。
マーク本作は当社トップのグレン(グレン・スコフィールド氏)のビジョンから生まれたものです。『Dead Space』を完成させた後も、彼の頭の中には別のSFホラーゲームのアイデアがあり、このジャンルで何か新しいIPを作りたいと考えていました。それをKRAFTONに提示したところ、KRAFTONが気に入ってくれて、スタジオの創設に協力してくれたのです。ここ3年間、新しいスタジオと新しいSFホラーのIPを構築してきました。
――SFホラーにこだわっているのですね。
マーク私たちはホラーゲームが大好きですし、作るのも楽しいです。SFは世界観の拡張を提供してくれます。決まった枠の中に収めるのではなくて、SFの設定で自由に想像力を広げてワールドを構築することができます。300年先の未来にワールドを作れば、いまのワールドを変えることができるのです。さらに、ホラーは引き込まれるようなナラティブととても相性がいいです。
――ホラーに心惹かれているのですね。
マークはい(笑)。これは映画や本でもいっしょですが、私は“ホラーエンジニアリング”というアイデアが好きなのです。心理学的になぜ私たちが怖いと感じるのか、恐怖を持つのか、そしてこうした恐怖がほかの人に起きても自分のことのように思えるのかに惹かれます。
私たちはゲームの中でさまざまなタイプの恐怖に魅力を見出します。刑務所での孤独の恐怖、流血による身体的恐怖、予期できない恐怖(パイプの水に押し流されるなど)、制御できない恐怖など人はいろいろな恐怖を感じますが、私はこういう恐怖を感じたいですし、恐怖心理に惹かれます。ゲームの中にあるすべての心理に訴えたいと思っています。
※[参考ページ]PlayStation.Blog PS5/PS4『The Callisto Protocol』が12月3日発売! 新たなSFサバイバルホラーを初公開!
――本作は、『Dead Space』がもとにあっての新しいIPということなので、『Dead Space』はひとつの基準になっていると思います。新作を作るに当たって、『Dead Space』から踏襲しようと思った部分と変えようと思った部分を教えてください。
マークじつは、新作はまったく違う新しいものにしたいと思ったので、実際には『Dead Space』を一切参考にせずにプロジェクトはスタートしました。しかし開発していく中で『Dead Space』の大好きな部分がわかってきて、それを加えたいと思ったのです。
そのよい例は、“stomp”(ストンプ・足で踏みつけること)です。これは、低く地を這う敵を感じる方法として優れていると思いました。これ以上のメカニズムは思いつかなかったので、『The Callisto Protocol』でも“ストンプ”を取り入れることにしたのです。プレイしていて、とても自然に感じられます。
『Dead Space』から何もかも取り入れるのではなくて、その反対からスタートして、何もかも捨ててから『Dead Space』のプレイヤーにとって重要であり、私たちが本作に合っていると思うものを戻していくようにしました。
――本作を開発するにあたって、もっともこだわったポイントは?
マーク絶え間ない恐怖です。このゲームでもっとも重要なのは、やはりホラー要素です。開発当初の目標は、次世代コンソールでいちばん怖いゲームにすることでした。プレイした後で、次世代コンソールでいちばん怖い体験だったと思ってもらえたらうれしいです。
――怖いと思わせるために、どのような取り組みをしたのですか? その一例を教えてください。
マークひとつの方法はオーディオです。何かを聴くということは恐怖を感じるとても重要な部分です。敵が攻撃してくる場合、音はその敵がどこにいるかがわかる、わずかなヒントを与えます。パイプをよじ登る音、壁を引っ掻く音、遠くの叫び声などを新しいコンソールの3Dオーディオの機能を使ってリッチなオーディオ体験にすることができます。3D配置オーディオのクールなテクニックを提供してくれるのです。これにより、敵が遠くにいて近づいてくることがわかります。
私たちはこれを“ブラックキャット・モーメント”と呼んでいるのですが、これは映画から来ています。映画では黒猫が壁から何かを落とすシーンを見たことがあると思いますが、私たちはこのオーディオ版をやりたいと思ったのです。プレイヤーは何かの音を聞いて、その何かが近くにいて自分を攻撃してくると感じます。これは絶え間ない恐怖の一例です。本当に攻撃してくるかもしれないし、してこないかもしれませんが、恐怖の要素が重要なのです。
――本作では戦闘にもこだわっているとのことですが、戦闘で注目してほしいポイントは?
マーク『The Callisto Protocol』の戦闘は、近接攻撃と銃の50対50のミックスになっています。可能な限り銃とスタントボタンを使えます。単一の敵の攻撃では、“グリップ”と銃のボタンを切り換えられます。異なる戦闘状態が容易に融合でき、しかも流動的に感じられるのです。本作では、ボタンだけで対応するのではなく、“グリップ”だけでもなく、敵の状況を把握して、臨機応変に対応する必要があるのです。
――“グリップ”というのは、デモでも公開されていた、敵を引き寄せる力のことですね?
マークそうです。”グリップ“という手袋です。これはもともと、刑務所で受刑者を別の居房へ動かすために看守が使っていた道具です。ジェイコブが“グリップ”を発見して、パワーアップし、敵を引き付けられるようにしたのです。戦闘では、敵を引き寄せて近接武器で攻撃するか、あるいは押しのけてターゲットとのあいだに距離を作って銃で撃つかを選択できます。ゲームプレイでこの選択ができる。つまり敵の場所を動かすことで、自分の好きな戦闘に持っていくことができるというわけです。
――そういえば、デモでは敵がミューテーションで変化していましたね。
マークしばらくプレイしていると敵の行動や攻撃の仕方がわかってきます。しかし私たちはここで予測不可能な要素を攻撃のアプローチに取り入れました。素早く敵を倒さないとミューテートして頭や胸から触覚を伸ばしてきますが、これが最初の段階です。その後も倒せないとさらに強く早くなります。戦略的なアプローチをプレイヤーの戦闘に提供したかったのです。手早くやっつけないと状況が悪化します。戦闘に可変性を加えたわけですね。
――なるほど。SFにこだわっているとのことですが、設定で注目してほしいポイントは?
マーク現在のテクノロジーが300年後にどう変わっているかというアイデアが気に入っています。たとえば、3Dプリンティングはいますでに可能です。しかし300年後にはどうなっているのか? このデッドムーンの植民地でどのように存在しているのか? 3Dプリンターで武器を作り、アップグレードしているかもしれません。いまのテクノロジーを取り上げて300年後にどのような姿になっているかを想像します。これはファンタスティカル(幻想的な)SFというより、リアリティーに基づいたSFになっていると思います。
――デモでも、3Dプリンターを使用していましたね。本作では、ジョシュ・デュアメルや福原かれんといった俳優が器用されていますが、どのような効果をもたらしていますか?
マーク本作におけるかれんのキャラクターは、ジェイコブと同じときに刑務所にいて、彼のことを嫌っています。しかし敵との戦いにおいては、敵対するこのふたりのキャラクターが並んで進むことになり、(ネタバレしないようにしますが)最後には違う関係になります。本作では、彼女のキャラクターはオーディエンスの一部として表現されています。ジェイコブを見ている人物となってもらいたいのです。
私は『ザ・ボーイズ』が好きで、かれんのファンなのですが、彼女の仕事を評価していました。また私たちは、ジョッシュとはまったく違う、アクションスターっぽくない、知性ある敵となる俳優を探していました。ステージでとても相性がよく、身体的外見も感情表現も違うので、とてもよかったです。多くの人に遊んでもらえるようなタイトルにしたかったので、人気スターを起用したいと思っていました。
そういう意味では、ジョシュと、いま注目されているかれんを起用できて幸運でした。キャラクターに親近感を持ってもらえるゲームにしたいと思ったので、ジョシュやかれんなどが演じることで、クやラクターとのつながりが感じられるのではないかと期待しています。
――ちなみに、本作のプレイ時間は?
マークそれは、それは何回死ぬかによりますし、このゲームでは何度も死ぬことになると思います。スムーズに進めてのプレイ時間が10〜12時間として、その倍はかかるでしょう。
また、本作には探索要素もたくさん入っているので、それをやればさらにその倍になります。探索して弾やクレジットを見つけ、居房に入って受刑者の話を聞くこともできます。探索してろいろなエリアに入ってアイテムを集めれば、それだけ多くの時間がかかります。プレイスタイルによって異なるのではっきり言いにくいですね。
いま、プレイテストをしているところなので、私たちにもわかっていません。探索して完璧に何かを集めたい人もいます。武器のアップグレードメソッドでボタンを完全にアップグレードすることができますが、その後にもう一度プレイすればほかの部分をアップグレードできます。リニアにプレイしてもどこでいつ何をアップグレードするかによって変わってくるので、リプレイアビティティはとても高いですよ。
――デモの最後で主人公の身体が真っ二つになってしまって衝撃的でしたが、あの後もストーリーが進むのですか? それともあれはバッドエンドだったのですか?
マーク(笑)。プレイヤーは前の時点に戻ってまたプレイできます。プレイヤーの死にもリワード(報酬)があるようにしたいと思いました。死ぬことで新しいものが見えます。パイプを滑っていくところで環境のせいで死んでも、それをユニークなものにしてリワードにしたいのです。これはおもしろい取り組みだと思いましたし、プレイヤーの脆弱性を受け入れることにつながります。死ぬことから何かを得る、新しいものを見るので、不満が溜まることはないと思います。
――ずばり、本作のストーリーのテーマは?
マークネタバレしないように言うと、“償い”、“贖罪”です。ゲームのテーマには絶望感、孤独感などもありますが、刑務所に送られたことで破壊されていったキャラクターの償いです。最初は人に好かれないタイプのキャラクターがその欠点を補うようになるのです。ストーリーアーク(小説やストーリーのプロットを時系列で構成したもの)があり、長いストーリーです。これから数ヵ月でストーリーについてお話しできると思います。ゲームを楽しんでほしいので、多くはお話しできませんが。
――最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
マーク先ほどもお話ししましたが、私たちのゴールはこのゲームを新コンソールでもっとも怖いゲームにすることです。すべてのフィーチャーを掘り下げ、すべての体験、ハプティックフィードバック、フル3Dオーディオ、ビジュアルを通してリアルだと感じてもらえるようにしています。こうした努力が組み合わさっていますので、皆さんにプレイしてもらうのをとても楽しみにしています。