Xbox Game Studiosによるインタラクティブドラマ『As Dusk Falls』が、2022年7月19日よりXbox Series X|S、Windows PC、Steam向けに発売された(Xbox Game Pass、PC Game Passにも提供)。

 『As Dusk Falls』は、1998年にアリゾナの小さな町で起きた強盗事件を起点に、数十年間にわたる物語が2編にわたって描かれる。プレイヤーの選択が登場人物たちの人生に大きな影響を与えるのが特徴で、物語中に起こる出来事へのキャラクターたちの決断や行動をプレイヤー自身が決め、多岐にわたる分岐点を経て、結末まで進んでいくことになる。

 本作が生まれた経緯について、開発を担当するINTERIOR/NIGHT CEO兼クリエイティブ・ディレクターのキャロライン・マーシャル氏とプロダクションディレクターのチャル・ディソット氏にお話を聞いた。

『As Dusk Falls』Microsoft Storeサイト

“シネマティックグラフィックノベル”のスタイルは、本作に合うように作り上げた

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Caroline Marchal氏(キャロライン・マーシャル・写真左)

INTERIOR/NIGHT CEO兼クリエイティブ・ディレクター

Charu Desodt氏(チャル・ディソット・写真右)

INTERIOR/NIGHT プロダクションディレクター

――まずは、日本のゲームファンに、INTERIOR/NIGHTがどんなスタジオなのか、簡単に教えてください。どのような開発ポリシーをお持ちなのですか?

キャロラインINTERIOR/NIGHTは、私が2016年に設立したまったく新しいスタジオです。私は20年の経験を持つゲームデザイナーです。私は『ファーレンハイト』の制作に携わり、『HEAVY RAIN 心の軋むとき』と『BEYOND: Two Souls』ではリードゲームデザイナーを担当しました。小回りの利く当社の多様なスタジオチームは、受賞歴のある業界のベテランと新興の才能の組み合わせで構成されており、本格的なテレビ番組とビデオゲームの交差点に位置するように設計された独自の体験型の物語を作ることを目指しています。

チャルキャロラインのような明確なビジョンを持つクリエイティブ・ディレクターとともに仕事ができる貴重な機会を前にし、INTERIOR/NIGHTに最初から参加できるということにワクワクしました。『As Dusk Falls』はテレビ、映画、ビデオゲームの交差点に立つ作品として、物語のジャンルの境界を押し広げていくというスタジオの精神性を実現しています。

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――『As Dusk Falls』を開発するにいたった経緯をお教えください。

キャロラインゲーマーでない方とゲーマーがいっしょにプレイできる、開放的でディープな体験を生み出したいという願いからこのゲームを作られ始めました。私たちは、プレイヤーとなった皆さんが、“本格的なドラマにインスパイアされた、感動的な大人向けの物語を分かち合い、共感できる登場人物に同情し、操作を気にすることなくいっしょに決断を下す”という喜びを、体験できるようにしたいという考えのもと制作に挑んだことを記憶しています。共同体験としてこのゲームを設計するにあたって、最初期のインスピレーションは“Twitch Plays Pokémon”(※)でした。

※2014年にスタートした、Twitch上で、何千人ものプレイヤーが、チャットにコマンドを入力し、ひとつの『ポケモン』をプレイするという試み。

チャルこのゲームの開発は、親しみやすいマルチプレイ体験のための堅実なデザインから始まりました。もちろん、私たちは脚本にも多くの時間を費やしました。ゲームの分岐やストーリーの範囲は野心的で、映画10本分の脚本に相当する1200ページが最終的に書き上げられました。独特のアートスタイルや音響手法などは、すべてが脚本から膨らんでいきました。最終的に完成したのは、ビデオゲームの特徴をとらえた、体験型の物語と言えるでしょう。

――開発にあたってもっとも心がけた点をお教えください。

キャロライン最初のビジョンに忠実であり続けることを心がけました。7月20日に発売された『As Dusk Falls』は、何年も前にデザインされたものですが、物語とデザインのクオリティーを見事に押し上げた非常に才能のあるチームのおかげで、2022年にふさわしい、アップデートされたものに仕上がっています。

チャル私たちは苦労してでも、直感的で、かつシームレスに遊べるゲームを作りたかったのです。時間をかけて、随所に至ってマルチプレイを意識し、コンパニオンアプリ、意思決定システム、手の込んだアートスタイルなど、このゲームをユニークなものにする特徴として組み込みました。

――本作は実写のドラマを絵にしたような独特のビジュアルですが、こういったテイストを選択した理由を教えてください。

チャルこの物語に合うように作り上げたアートスタイルを“シネマティックグラフィックノベル”と私たちは呼んでいます。プレイヤーが絵ではなくその奥のキャラクターを見るよう、人間として本能的に理解ができ、極めて繊細な感情の発露を捉えられるアートスタイルを求めました。俳優たちと撮影を行い、キーフレームを選び、それらを手描きの絵へと変化させる作業は、私たちの強いこだわりから実現したものですが、それだけの価値があったと感じています。結果として、登場人物の感動的な瞬間の合間にプレイヤーの想像力を掻き立てる、手描きのビジュアルが生まれました。

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――物語は2編によって描かれるそうですが、前編(1編)の分岐は後編に大きく影響しますか? それとも、後編まではある程度同じようなストーリー、結末を辿るのでしょうか?

キャロラインこれらのふたつの物語は、基本的には同じストーリーが地続きになっており、さらに細かく言えば6つの章に分かれています。最初の3章 (または1巻) はモーテルでの人質事件から始まり、プレイヤーに緊張感を与えます。後の3章 (2巻) は、モーテルでの出来事の後、アメリカのいくつかの州を横断する脱出劇。このゲームは、テレビドラマのシーズンのように書かれているので、6章の最後であなたの旅が終わることになるのです。

――2章まではヴィンス家、タイラー家が物語の中心人物でしたが、後半で登場人物などは変わりますか?

キャロライン『As Dusk Falls』は、1998年に最初に運命が衝突し、以後数十年にわたってよくも悪くも交流が織りなされ続けているふたつの家の物語です。2冊のブック (6つの章) を通して、プレイヤーは3人の主人公である、ヴィンス、ジェイ、ゾーイに代わって意思決定を行います。

――開発者として、とくに注目してほしいキャラクターはいますか?

キャロライン『As Dusk Falls』 には、3人の主要なプレイアブルキャラクター (合計5人のプレイアブルキャラクター) が登場します。愛する家族の父親であるヴィンス、成長した彼の娘ゾーイ、そして必死に生きるホルト家の末弟ジェイ。プレイヤーが登場人物の全員に共感し、全員に確かに存在する繊細な感情の揺らぎについて考えてくれることを願っています。人間であるということは、矛盾した意見や動機を持つことを意味することもあれば、悪い決断を下す善人であることを意味します。もちろん、その逆の善い決断を下す悪人が存在する場合もあります。それこそまさに、登場人物を用いて私たちが探求したかったことなのです。

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――物語が無数に分岐していく本作ですが、全員生存、逆に全員が死亡するようなルートはありますか?

キャロラインプレイヤーは登場人物の運命を決めることができますが、人生の中でも時々あるように、いくつかの選択は少し予測不可能な結果を招くことがあります。ストーリーは非常に細分化されているので、誰もが登場人物と自分だけの旅を体験することができます。一つ言えることは、確かな成功を約束された道はありません。すべてのプレイヤーが自分たちだけが歩む旅に満足することを願っています。

チャルこのゲームで私が気に入っているのは、意思決定とプレイヤーが登場人物の運命を決め、自分だけの物語を作れるということです。本当に正しいとか間違っているということはなく、すべてのルートが興味深く、繊細な人の物語を綴ってくれるのです。

――エンディングは全部で何パターンあるのでしょうか?

キャロラインひとりひとりの登場人物にはそれぞれ異なる終点があり、『As Dusk Falls』には多くの登場人物が登場するため、いただいた質問にうまくお答えすることはできません。生きていようが死んでいようが、自由であろうが投獄されていようが、個人的な人間関係の中でどこにいるのか、自分の人生をどう感じているのかはプレイヤーの選択に直接影響されます。もし数字を教えるとしたら、それは数ダースになるでしょう。

チャル難しい決断は、それぞれのキャラクターの行動に関する選択よりも、ゲーム内の登場人物どうしの関係に影響を与える小さな決断であることが多いです。人生と同じように、あなたの選択にはすべて意味があり、その結果とともに生きていきます。

――1周するのにかかるおおよその時間を教えてください。

キャロラインゲームは6つの章で構成されており、各章をプレイするのに約1時間かかります。したがって、最初のプレイでゲームを完了するには約6時間かかるはずです。しかし、ストーリーには多くの分岐があるため、何度もプレイして異なる結果を得ることができます。

チャル再びプレイすることを選び、さまざまな人といっしょにゲームを体験することもできます。あなたのプレイスタイルとあなたの選択で、その前にたどり着いたエンディングを完全に変えることができますよ。

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――本作は最大8人で遊べるようですが、マルチで遊ぶ場合はどのようなプレイ方法になるのでしょうか?

チャルマルチプレイでは、最大8人が同じ部屋、またはオンライン、あるいはその両方を組み合わせていっしょにプレイすることができます。何を言うか、何をするかを決定したり、簡単なクイックタイムイベント(QTE)を実行したりすることで、非常にシンプルな操作で物語を体験することができます。

 私たちの目標は、ゲームに慣れている人もそうでない人も、登場人物との感情的なつながりを妨げないシンプルな操作で、誰もがストーリーを楽しめるようにすることでした。そのため、マウス/キーボード、コントローラー、そしてプレイヤーが1本の指で『As Dusk Falls』を楽しめる無料のコンパニオンアプリなど、さまざまな入力デバイスでの本ゲームへ参加する手段を用意しています。『As Dusk Falls』はTwitchでも楽しめるブロードキャストモードも実装しているので、特定の配信者のファンや友だちはチャンネルを合わせて参加するだけでも『As Dusk Falls』を楽しむことができます。

――今後DLCなどの展開は予定していますか?

チャル私たちは、『As Dusk Falls』の発売に焦点を当て、私たちがファンのために作った感動的なストーリーにとても満足しています。ゲームを作る上でもっともよいことのひとつは、プレイヤーがゲームを楽しんでいるのを見ることであり、まずは彼らの感想を聞くのが待ちきれません!

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――本作のストーリーにおけるテーマを教えてください。ちなみにタイトルの『As Dusk Falls』(夕暮れどきに?)には、どのような意味が込められているのでしょうか?

キャロライン『As Dusk Falls』は家族、立ち直る力、そして生きるうえで失っていくものについての物語です。私たち皆がそうであるように、現実の人生の苦闘、欠陥のある人間が世界で自分の道を見つけようとする物語です。夕暮れ(Dusk)とは、太陽が沈み、星々がまだ人々を導かない不確定な時間を指しています。あらゆる出来事が起きうる、あなたの人生を永遠に変えることができる特異点が現れる時間帯を指しています。

――最後に、『As Dusk Falls』が気になっているゲームファンにメッセージをお願いします。

キャロライン過去に『ファーレンハイト』、『HEAVY RAIN 心の軋むとき』、そして『BEYOND: Two Souls』に対して好意的な評価をしてくれた、素晴らしいゲーマーのコミュニティである日本は、私たちの心の中でも特別な位置にいます。彼らには、ユニークなアートスタイル、重厚なストーリー、親しみやすい仕組みの三拍子が揃った『As Dusk Falls』をプレイしていただき、気に入ってもらえることを願っています。個人的なススメとして愛する人たちといっしょに楽しんでみてください。お互いの発見にきっと驚くことでしょう!

チャル『As Dusk Falls』 は私たちのデビュー作であり、ゲーム内の物語を伝える手法を極めて高い水準で確立しながら心を注いできました。プレイすることにやりがいを感じてくれることを願っています。

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