2022年8月6日、7日、日本最大規模のインディーゲームの祭典BitSummit X-Roads(ビットサミット クロスロード)が京都市勧業館 みやこめっせにて開催。
集英社ゲームズブースでは、先日正式タイトルや対応プラットフォーム、発売時期などが明らかにされたばかりのKENEI DESIGNによる3Dアクションゲーム『ONI - 空と風の哀歌(エレジー)』(発売元:クラウディッドレパードエンタテインメント )が世界初プレイアブル出展された。ここでは、そのプレイレビューと、開発を担当したKENEI DESIGNの葉山賢英氏の、昨年2021年に引き続いてのインタビューをお届けしよう。
【プレイレビュー】シンプルながらも戦略が求められるバトルに期待!
今回の試遊版で用意されていたのは、人にして悪鬼である“桃太郎”に復讐すべく、主人公である鬼の空太と相棒の風丸が、“鬼世島”で修行に励むというシチュエーション。おそらく本編ではゲーム冒頭のチュートリアルにあたる部分ではないかと思われる。相対することになる敵は鬼や鹿を思わせる動物たち。鬼である空太が、鬼と戦うのはなぜなのか、試遊版では明確な説明はなかったが、修行の島だからということなのかもしれない。
ちなみに、試遊版では冒頭で、空太のことを知っている人間の女の子が登場する。空太は彼女に食べ物を半分分けてあげたりと、相当仲がよさげ。“人にして悪鬼である桃太郎に復讐する”という本作のストーリーを聞くと、空太は人間のことを嫌っているのではないか……と思われたが、どうやらそうでもなさそう。何か、桃太郎と因縁があるのかもしれない。どのような物語になっているのか、気になるところだ。
なにはともあれ、試遊版の主眼であるバトルを体験。本作のバトルのひとつのキモとなるのが、一度倒した敵でも、そのままでいると一定時間経過後に復活してしまう点だ。ではどのようにして倒すかというと、敵がダウンすると現れる“心玉”を攻撃して破壊しなければならないのだ。複数の敵がいた場合、一部の敵をダウンさせても、生き残っている敵に相対しているうちにダウンした敵に心玉が戻り、復活して後ろから襲いかかられる……なんてことも。
一方で、複数の敵の心玉を連続破壊する“心通連撃”というものもあり、必殺技で一気に多数の敵をダウンさせたあとで、心玉を一気に連続で破壊するといったことができる。これがなかなかに爽快で気持ちいい。
バトル自体は、空太の最大4連撃の通常攻撃と周囲にダメージを与える回転切り、風丸の吸着&吸引を軸にしつつ、回避、必殺技を織り交ぜて戦っていくのが基本的なスタイルとなる。通常は空太を操作して、R1ボタン(プレイステーション5用コントローラー操作時) を押し続けているあいだは、風丸を右スティックで操作できるようになる。
風丸は、敵に重なった(吸着した)タイミングでL1ボタンを押すと、相手のHPを吸引して倒すことができる。空太で近くの敵を倒しつつ、遠距離の敵や足の速い敵は風丸に任せるといった感じだ。遠距離から敵を狙えるため強力ではあるが、吸引には風丸のスタミナが必要となり連発できるというわけではない。なお、スタミナは敵の心玉を破壊すると回復し、心通連撃では回復量が2倍となる。また、時間の経過でも徐々に回復する。
空太と風丸をそれぞれ動かしていくことに関しては、最初はそれぞれを操作するのに少し苦戦したものの、敵の特徴を掴んでうまく使い分けられるようになると、スムーズにバトルを進められるようになった。
先述の心玉をどのタイミングで破壊するかといったことや、キャラクターの使い分けや必殺技を使うポイントなどで、戦略が求められるバトルに仕上がっていると感じた。
ちなみに、空太の武器やパンツといった装備も変更可能。マップにはこっそり宝箱も隠されていたので、アイテム収集といったやりこみ要素的な部分にも期待したいところだ。
【インタビュー】こだわりを持って作った世界観に注目してほしい
――ついに正式タイトルが発表になりましたね。タイトルにはどのような思いが込められているのですか?
葉山はい。『ONI - 空と風の哀歌(エレジー)』は音楽にもこだわっていまして、エリアごとに異なるボーカル曲が流れるようになっているんですね。さびしげな歌だったりいろいろありますので、タイトルにも歌という言葉を入れたくてこのタイトルに決めました。
――“哀歌”はエレジーと読ませるのですよね?
葉山はい。プロデューサーとも話して、しゃれた感じの読みかたにしようということになりました(笑)。
――この1年開発してきての手応えはいかがですか?
葉山昨年のBitSummitでは触ってもらえるものがまだなかったのですが、この1年でいろいろなゲームのコアの部分ができあがってきて、特に空太と風丸の2体で同時に戦うバトルでのアクション部分にはぜひ注目してほしいです。
――アクション部分に関して、けっこう手応えが感じられるものになっているのですね?
葉山そうですね。まだ、もう少しブラッシュアップする余地はあるのですが、かなり出来上がってきています。
――発売日も2022年と発表されて、開発も佳境に入ってきていると思いますが……。
葉山いま絶賛開発中です。
――とくにユーザーさんに注目してほしいポイントは?
葉山ビジュアルには強いこだわりを持って作っています。ゲームの雰囲気だとか、それに合わせた音楽も含めて、ぜひこの世界観を味わってほしいです。
――それにしても、鬼が桃太郎を倒すべく冒険するという設定がひねっていますよね。
葉山私はもともと日本の昔話が好きで、『桃太郎』のような昔話をモチーフにしたゲームを作りたいと思っていたんですね。で、『桃太郎』をゲーム化しようというときに、少し構想が大きくなりすぎて、ちょっと違う、鬼を主役にしたスピンオフタイトルを作ろうということにしたんです。
そこから鬼を主役にしたときに、どういった内容にするか考えていた際に、桃太郎に負けた鬼の視点で描くとおもしろい物語ができるのではないかと発想したんです。
――ゆくゆくは、桃太郎が主人公のゲームも作る構想があるんですね。
葉山本作を支持していただければ……(笑)。まずは『ONI - 空と風の哀歌(エレジー)』にしっかり注力しています。
――いずれにせよ、『ONI - 空と風の哀歌(エレジー)』において、桃太郎は敵ではありますが、憎むべき存在ではないということですね?
葉山そうですね。本当に昔話のままで、「人にして悪鬼」と言ってはいますが、桃太郎が悪いわけではありません。それはしょうがないというか、鬼側の立場もありますし、人間側の立場もあります。対立してはいるものの、それぞれの価値観はあるわけです。
――鬼は鬼で、僕たちは鬼にも感情移入はできるのですか?
葉山そうですね。空太を通して、少しづつ桃太郎やこの世界のことを理解していく感じです。
――本作は、“集英社ゲームクリエイターズCAMP”のサポートに端を発して開発がスタートしたと伺っていますが、具体的にはどんなサポートがあるのでしょうか?
葉山大きくは物語のところですね。マンガの編集をやっていらっしゃった方に入っていただいて、そこで監修していただいたりアドバイスをもらえるのですが、そういうところはほかのメーカーさんにはない部分で、集英社さんならではのサポートだと感じます。「マンガだと、こういう感じの持って行きかたがありますよ」といったアドバイスをいただいたりしました。
――展開やストーリー面に関して、集英社のノウハウが生かされているということですね?
葉山そうですね。本作はコンパクトな物語なのですが、コンパクトながらもそこにエッセンスを加えていただいている感じです。
――2022年に発売が決まって、最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
葉山いまはとにかく少しでもゲームの触り心地などがよくなるように、ブラッシュアップをしています。クオリティーは、ビジュアルも含めて満足のいくところまで来ていますので、あとは作り込んで、皆さんにこの世界を楽しんでいただきたいです。
葉山賢英氏
KENEI DESIGN ディレクター