2022年8月6日、7日、日本最大規模のインディーゲームの祭典BitSummit X-Roads(ビットサミット クロスロード)が京都市勧業館 みやこめっせにて開催。活気溢れる集英社ゲームズブースで出展されていたのが、集英社による新人クリエイターの発掘・支援の取り組みとなる“集英社ゲームクリエイターズ CAMP”のタイトルの1本として、昨年2021年に発表された『ハテナの塔 -The Tower of Children-』。
昨年2021年の“BitSummit THE 8th BIT (ビットサミット ザ エイト ビット)”時は、PVのみが公開されて、まさに“ハテナ?”状態だった『ハテナの塔 -The Tower of Children-』だが、今回はSteam向けに2022年に発売されることが明らかにされたうえでのプレイアブル出展。いよいよその全貌が見えてきたという感じだ。本稿では、集英社DeNAプロジェクツのシニア プロデューサー杉山晃一氏へのインタビューから、本作の全貌に迫る。
『ハテナの塔 -The Tower of Children-』Steamサイト曲やビジュアルに接しているだけでも、森林浴をしているような気持ちになれて楽しい
杉山晃一氏
集英社DeNAプロジェクツのシニア プロデューサー
――発表から1年経ちますね。
杉山いま年内で発売を目標にして、ようやくSteamのページもこのあいだオープンしたところです。
――いきなりこんなことをうかがうのもなんですが、コンソール展開は予定しているのですか?
杉山できるならぜんぜんやりたいと思っています。まだ少しいろいろな調整がありますので。少なくともまずはしっかりSteam版を作ってから、マルチ展開できたらいいなと、いまは考えています。
――発売時期も確定して改めて本作をどのような思いで作られたのか、お教えいただけますか?
杉山『ハテナの塔 -The Tower of Children-』は、子どもたちが主人公で、果ての見えない高い塔の頂上に集落を作って暮らしています。1周のプレイでは9人の子らが出てきて、その子どもたちを全員塔のいちばん下に降ろしたら、その周回はクリアーとなります。そのために進めないところを解除していったりとか、いろいろなギミックが立ちはだかるのですが、それぞれ不思議な感じの演出になっています。
“ハテナ”というタイトルにもしているくらいなのですが、けっこうナラティブというか、ひとつのイベントに対して複数の答えがあったりするんです。たとえば今回プレイアブルで実装している“サステナブルな骸骨”というNPCがいるのですが、「貧困や飢餓をなくすために活動しています。パンをください」とお願いしてくるんですね。それでパンをあげると「ありがとうございます!」と言ってきて、一定数あげるといい事があります。逆にあげないと、「それは要りません」と塩対応をしてくるんです。なんなら毒パンというアイテムがあって、それをあげると「ありがとうございます。ん?これは毒ではないですか。私はこういう善意を装った悪意が大嫌いなんです」といって、襲ってきたりします。
――あら(笑)。
杉山要は、ひとつのイベントに対しても、いろいろな攻略の仕方があるという設計になっています。それらを自分の持っているカードからいろいろな選択をして、自分なりの攻略方法を見つけていくというのが、ひとつの楽しみかたになっています。
前後するのですが、このゲームのコンセプトはディレクターの池田トムが表現したい“生命の重さ”です。子どもたちは塔の上の不便な集落で暮らしているのですが、「地上に楽園がある」という噂をどこからか聞いて、その地上の楽園を目指します。その過程で、“ハテナ”な出来事にあったときに、さまざまな選択を迫られます。
子どもなのに戦士にならないといけないという状況になるわけです。戦士になって下を目指すという定めがあり、パンを集めて集落に持って帰るということをしないといけなくて、パンが尽きるとみんな餓死して集落が滅んでしまうんです。
――ああ。
杉山『ハテナの塔 -The Tower of Children-』は、集落を存続するために食料を集め、どんどん下に進めるように攻略して……という、サバイバルしてローグライクするというゲームです。
――幅広いゲーム性を持っているのですね。
杉山このゲームのユニークな特徴は、リアルタイムで展開するカードバトルという点です。敵の攻撃をタイミングよくガードすることで相手を怯ませたり、相手が怯んでいる隙に連撃を加えて一気にダメージを与えたりと、ある種のアクション性を持っています。ですので、ふつうのローグライクデッキ構築ゲームとは違って、デッキ構築がメインではなくて、プレイングの部分を楽しんでもらう設計になっています。
答えがひととおりではないがゆえに、「これってどうすればいいんだろう?」という試行錯誤がそこで生まれるんです。
――プレイヤーに選択肢を与えるというか、「考えてほしい」というのが、本作のひとつの狙いになる?
杉山そうですね。さまざまな選択肢に対してどんな解があるのかというのを、プレイを通じていろいろ模索してもらいたいです。また、作中のいろいろな“ハテナ”に関しても、考察して楽しんでいただきたいポイントです。
――ゲームのコンセプトが“生命の重さ”ということで、とても気になるのですが、もう少しお話いただけることがありましたら……。
杉山そうですね……。ご説明するのは難しいので、ぜひ、お手にとって遊んでいただけたら嬉しいです。ただこの“ハテナの塔”という世界そのものが、けっこういろいろなメタファー(隠喩)が仕込まれていて、いちばん大きな謎は、「“ハテナの塔”っていったい何なの?」というものです。プレイしていると、いろいろな疑問が湧いてくると思うんです。
そういったものをプレイ中は覚えていなくていいのですが、ふとしたときに考えてもらったりしていただけるとうれしいです。ぜひ最後まで遊んでいただいて、ハテナを明らかにしていただけたらと思います。それが、「これはこういう理由からだったんだな」とわかるようにはしているつもりです。
――それは、プレイしてみるしかないかもですね、
杉山いろいろなものに対して、「これって何なんだろう?」というのを考えていただくと、取っ掛かりがあるかもしれません。
――インタビューの冒頭で、1周のプレイでは、9人が出てくるとおっしゃっていましたが、本作では20人の子どもたちが登場するんですよね? 本作は何周かプレイするゲームということですか?
杉山最初にプレイするときに、“ニード”という男の子は固定で出るのですが、残りの8人は19人からランダムに出現します。僕がプレイしたときと、ほかの人がプレイしたときとでは、違う子どもたちが9人出てくるんです。
――ああ。
杉山人によってどんなキャラクターが出てくるのかも変わってきます。それもナラティブさというか、体験を変えています。
――キャラクターによって、謎を解くアプローチも変わってくる?
杉山変わる可能性があります。
――となると、必ずしも2周、3周する必要はないということですね。
杉山必要性はないのですが、いろいろな個性的な子どもたちがいるので、2周、3周していただくと、いろいろな子に出会えることになるので、より楽しみが広がるかもしれません。
さらに、子どもたちのたちには愛情度を示す値があって、その子をダンジョンに行かせたり、イベントを体験させることで愛情度がどんどん上がっていくんです。愛情度がマックスになると、プロフィールが最初は途中までだったのが、さらに展開されたりとか……。ほかにも愛情を注ぐ子に対してはいろいろな変化が生じるので、お気に入りの子が見つかったら、2周、3周して、ぜひ育ててほしいというのはあります。
――ああ、いいですね。最後に、発売を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
杉山『ハテナの塔』って音楽がメチャメチャいいんです!イラストもものすごくキレイに仕上がっていて、まずは見た目や曲から入る感じでもいいので、気になったら触っていただけるとうれしいです。曲やビジュアルに接しているだけでも、森林浴をしているような気持ちになれて楽しいと思います。
もちろん、じっくりプレイしていただいても、本作は期待を裏切らないです。本作には不思議なこと、“ハテナなこと”がいっぱいあって、プレイヤーの選択に任せているというのはお話ししましたが、本当にいろいろな選択が待っています。
たとえばですが、日本って平和で、食べるものも豊富にあって、餓死するような状況ってあまりないですよね。そういうふだん私たちが接したことがないような苦境に立っている子どもたちに対して、自分がどういうふうに導いていくかというのは、悩ましいですよね。親心というか、キャラクターに湧く愛着もひとしおで……そんな仕掛けにもなっています。
また、これもぜひとも強調しておきたいのですが、先ほどもお話した通り、本作は“ハテナな出来事”に対して、いろいろなカードプレイングを楽しめるゲームになっています。戦略的なバトルももちろん、それ以外にもいろいろ仕込んであるので、10人いれば10人なりの楽しみかたが見つけられるゲームです。ぜひ体験版に触っていただいて、TwitterやSteamに登録していただいて、発売日をお待ちいただけるとうれしいです!